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これからのお金と暮らしを立ち止まって考える

浪費は幸せになるためのリアルガチャ 【劇団雌猫ひらりさ インタビュー前編】

人生を豊かにするために、浪費をする

羽佐田瑶子 2017年12月14日 08:00
オタク女子たち、それぞれのジャンルへの愛と浪費について語られた話題の同人誌『悪友』が『浪費図鑑』(小学館)として書籍化されたのは今年のこと。幸せになる手段としての「浪費」という彼女たちの驚くべき私生活に、「泣けた」という感想が来るほど、ポジティブな浪費の在り方が綴られていた。今回は著者である劇団雌猫のひとり、ひらりささんにインタビュー。前半では同人誌制作のきっかけや、ご自身の浪費生活について伺った。

いちオタク女子として、大変興味深く読ませていただきました。今回、『浪費図鑑』をつくることになったきっかけを教えていただけますか?

劇団雌猫 ひらりさ(以下、ひらりさ):よく一緒に遊んでいた4人でつくりました。それぞれオタクで、毎週舞台に行ったり、アイドルライブに通ったり、さらにオタク活動以外の食費や美容にもお金を使う、生活スタイルが似ているメンバーなんです。ある日の飲み会でたくさん飲み食いしアッパーな気分になり、お互いに貯金額を暴露。

そうしたら想像以上に、全員貯金がなくて(笑)。オタクと一口に言っても、それぞれお金の考え方や使い方が異なります。インターネットでは言えないけれど、同人誌では言えるギリギリのラインで、オタクたちのお金と生活の関係性を掘り下げてみたらおもしろそう、というのが同人誌をつくるきっかけでした。


実際にさまざまなオタク女子からお話をうかがって、いかがでしたか?

ひらりさ:ここに書かれた内容は、身を滅ぼすような闇の浪費エピソードではありません。給料日前は食費をセーブするためにサラダだけを食べたり、預金残高が1000円マイナスになって慌てて入金したり。結構ギリギリ感もありますが(笑)、調整をしながら楽しく浪費をしよう、という感覚を持っている人たちです。ナイトプールを楽しむキラキラ女子とは違う方向でお金を使うオタク女子たちの、浪費生活を知れたことは興味深かったです。


ひらりささんは、どのような浪費生活を送ってきたのでしょうか。

ひらりさ:大学生になって自分で自由に使えるお金が増えてから、散財するようになりましたね。家庭教師のバイトがかなりいい時給で、しかもペニンシュラホテルのマンゴープリンや今半のお弁当を出していただける贅沢なお家だったので、美味しいものはそこでまかなえたんですね。なので、稼いだお金は1円でも多くBLやドラマCDに使うというのが大学時代の私の浪費生活でした(笑)。

社会人になり、インターネットを通じてオタクの友達がさらに増えたことで、興味を持ったジャンルは広くチェックするようになりました。友だちに誘われた予定にはだいたい行くので、意外とお金を使ってしまい……。たとえばミュージカル舞台に行くと、チケット代だけじゃなくてアフターで飲み食いしながらおしゃべりするから、平気で1万5000円〜2万円は出てくわけですよね。それが週1だと本当にお金が減ってしまって……実家暮らしなのにお金が貯まらない、そんな生活をしていました。


貯金をしよう、という気持ちは?

ひらりさ:もちろんあります。でも私の場合は、不味いものを食べたくないし、お酒も飲みたい。また心の栄養として、毎日スタバに行きアルコールもたしなみます。飲み屋ガチャ、みたいな気分で(笑)。BLなど本は物が貯まるので我に返って見直せますけど、ライブや飲食など消え物消費は手元に残らないので、歯止めがきかなくて……占いとマッサージと飲み屋、という精神的に幸せになれるリアルガチャを回し続けています。


リアルガチャ……消え物ガチャは永遠に回し続けられそうなので、怖いですね。これまで浪費で迷惑をかけたことなどはないのでしょうか?

ひらりさ:一時、失恋のショックで毎日占いに行っていて、ものすごくお金を使いました。でも結局、そういうふうに占いに行ってたのは、0から100に気持ちを上げるためではなくて、マイナスを0にする作業だったんですよね。ベースの人生が楽しい上で、ここぞと気持ちを上げたいときにお金を使うのが正しい浪費だと思います。普段からスタバで精神を平らかに保ちつつ、ご褒美的に豪華なバッグやデパコスでぐーんと幸せになる。そういう浪費をしたいです。


お金の使い方には、マイナスを0にするものと、0から100にするものがあるということですかね。

ひらりさ:いろいろな使い方があっていいし前者も大切だと思うんですけど、私は後者をやりたいなと心がけてますね。

それと、周囲を見ていて、推しているジャンルに身と財布を捧げ過ぎて消耗してる人はすこし心配かもしれません。ある意味では「本当に推しているジャンル以外への浪費」もできる余裕は大切じゃないかなと。私も大学時代はBLだけに没頭し、コスメや洋服、異性との交際にお金や時間をつかうのは「勿体無い」と考えていたからの反省ですね。

たとえば、インターネットのヘアカット練習掲示板で美容院を見つけて、お金と時間を節約。そうしたら、社会人になって上司に「きちんとした格好をしなさい」と怒られまして。広い目で見ると、周囲には、身なりもきちんとして、オタク活動以外にもお金を使っている子がたくさんいて。自分でも美容や服装にお金をかけてみたら、いろいろな体験ができて楽しかったです。自分自身にお金をかけるのも楽しいよというのは伝えておきたい。


では、現在のひらりささんの浪費の仕方は、だいぶ変わってきたということですよね?

ひらりさ:いまは化粧品やファッションも大好きです。劇団雌猫の“かん”もファッションが好きで、節約している月は「もっと使わなきゃ!」と衝動的に1日10万使ってしまうこともあるそう(笑)。

『悪友』や『浪費図鑑』をつくるために話を聞いていると、文字通り泣きながらお金を払っているという闇エピソードなんかも聞きます。そういう話も本当に興味深いのですが、個人としては、そういう浪費ではなくて、オタク活動だけに溺れずに仕事をしたり、身なりを整えたり、スタバで精神バランスを整えたり。必要最低限の生活をするためにも自分の時間やお金を使い、穏やかに楽しく、一般人として暮らしながらここぞというときに浪費するのが理想です。

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ひらりさ
平成元年生まれ。酒とBLを主食とする腐女子OLにして、腐女子ライター。
最近は、同人サークル「劇団雌猫」メンバーとして「悪友」シリーズの刊行を行い、書籍『浪費図鑑』(小学館)も話題となっている。

聞き手:羽佐田瑶子
撮影:三浦咲恵