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これからのお金と暮らしを立ち止まって考える

新しいセーフティネットのために

【家入一真 インタビュー後編】

岡本尚之 2017年11月27日 16:25
クラウドファンディングプラットフォーム『CAMPFIRE』をはじめとした、さまざまな資金調達の方法を提案する株式会社CAMPFIREが、去る8月10日にローンチしたアプリ『polca(ポルカ)』が話題だ。“フレンドファンディング”と銘打ったこのアプリは、その名の通り、身近な友人同士での資金調達をコンセプトとして開発された。思い付いた企画をすぐに実行できるよう審査も不要で、ひとつの企画を立ち上げるのにかかる時間は約30秒。また、設定できる目標の金額も300円〜10万円と、支援のハードルも低い。SNS上では多くのユーザーによりプロジェクトが拡散され、「やってみた」系のブログも続々と投稿されているように、支援をきっかけとした“祭り”のような現象も起きているほどだ。インタビューの後編では、このタイミングにサービスをローンチした理由、今後の展望などを伺った。このインタビューは2017年9月1日にINTERNET Watchに掲載されたものです

なぜ今のタイミングで、こういった形態のサービスを出されたのでしょう。

家入氏:感覚的にですが、クラウドファンディングも含めてお金の流れがこの1〜2年でかなり変わってきたというのはあって、今だ、という感じはすごくありました。例えばpolcaを2年前に出していたら炎上して、サービスとしてすぐに終わってしまったのではないかと。

 他社さんですけど『VALU』というサービスとか『paymo』とか、いわゆる「フィンテック」と呼ばれるようなお金にまつわるサービスが続々と出てくるなかで、ちょうど地ならしがされたというか、ユーザーにとっても決済に対する価値観がだいぶ変わってきたタイミングだと思うんですよ。


別の例につなげると、『メルカリ』などの登場からかなり風向きが変わってきた印象があります。

家入氏:確かに。シェアリングエコノミーということもありますが……メルカリがもう3年、4年くらい前ですか。polcaの開発自体は去年の後半から今年の頭に入ってからですが、思想自体はもともとあったので、土壌ができた今の時期に出そうかと。


現在polcaの利用手数料、振込手数料は無料ですが、このキャンペーン終了後にはどういった価格にするのか、あるいはどういったマネタイズモデルにされるのでしょうか。

CAMPFIRE代表 家入一真氏

家入氏:そこに関して言えば、僕らの目指す、1人でも多くの人に1円でも多くのお金が回る世界を作るというミッション、ビジョンがあります。今この時点で課金してしまうと、それがネックになって使わない方々とか、躊躇してしまう人が出てくるだろうと。手数料を取ればマネタイズは可能ですが、この時点ではお金がなめらかにするためのマーケティングコストだと割り切って、僕らが負担しています。

 今polca自体は大きく伸びていて、これからどんどん実装していきたい仕組みもあるので、そういったものでサービスが便利になっていった時に、きっとマネタイズは違うところでもできるのではないかと。


手数料ではない形でいうと、どんな方法があるのでしょう。

家入氏:例えば、貯まったpolcaポイントを使って何かを買うという時に、買った先の会社から僕らにバックがあるようなモデルもありえますし、「パーティをしたい」という企画で集まったお金で、その場で決済して飲食店側からお金を頂くとか、それなりの流通額になるとマネタイズできるポイントというのは色々とあるんじゃないかとは思っています。

 誰かが誰かに支援したというところで手数料を取るという、普通に考えたらこういったモデルになるんですけど、そこをあえて外した新しいモデルを作ることができないかというのは、ちょっと考えたいところですね。


成長の加速度的にはいかがでしょう。ローンチしてわずか数日で大きな話題とユーザーを集めましたが、その後の成長曲線としては順調に伸びていますか?

家入氏:角度的には上がり続けていてます。まだマーケティングなどもかけていないので、本当にオーガニックで増えているという感じですね。やはりフィンテックという流れの中で、送金サービスや個人間決済サービスなど色々出てきたんですけど、僕らが目指したのは形としては近いんだけれど、あくまでツールではなくコミュニティ、コミュニケーションツールであるということを入り口にすること。

 そのコミュニケーションが生まれる世界というものを先に作らないと、結果としてツールとして使って頂くという部分も全然伸びないんじゃないかという仮説もあったんですね。まずは友だち同士で支援する世界をどう作るかという、そこはUIやUXも含めて考えていたので、今回の伸びにかんしては嬉しいなと。それは、polcaで文化が生まれているのも含めてです。

 メルカリのコメント欄で、勝手に「○○さん専用」というような文化が生まれたりとか、独自の、ユーザーさんによって自由に作られる文化。プラットフォーマー側からすると、冥利に尽きるというか、自分たちもある程度想定はしているものの、想定を超えた使われ方をしていくというのは良くも悪くもですが、面白いですね。


特に「アクティビティ」でコミュニケーションが成り立っているのが面白いなと思いました。現在は雑多に並べられていますが。

家入氏:そこは今後整理する必要があると思っています。自分のプロジェクトもアクティビティ上に並んでしまうので、自分の企画が探せないということがあるので。


SNS、あるいはブログ、polcaを使ってみた感想が数多く書かれていますが、特徴的だったのは批判がほとんど無いことです。

家入氏:そうなんですよ、僕はもうちょっと賛否生まれるものだと思っていたんですけど、そこは意外と無いので逆にちょっと怖いですね(笑)。


やはり小額を支払い、支援するという体験を楽しいと感じているんでしょうね。

家入氏:今って、都度都度カードで決済がかかっているんですけど、例えばよくある投げ銭系のサービスだと最初に3000ポイントとかを買ってからそれを使うみたいなこともありますよね。他の、特に動画系のサービスとか。そういった仕組みも考えたんですけど、前もってポイントを買ってからというのは違うのかなと。

 その場で300円というお金を少額決済で送ってしまうことって、体験的にあまり多くはなかったんじゃないかと思うんですよね。日常生活の中でカード決済をする人って実際にはかなり多くて。


確かに僕もカードで決済しています。

家入氏:今後、銀行APIなどがオープン化されていって、銀行口座と直接つながっていけば、口座から口座へと投げられるような世界観もあると思います。銀行のアプリって、なかなか若い方が使わないような状況になっていますよね。今は流れ的にすごく良いんですよ。銀行APIもこれから色々なところが開放し始めますしね。


リターンの不履行や、その他悪質行為への対応についてはどう考えていますか。

家入氏:まず現時点ではSMS認証を必須にして本人確認を必ず取っています。企画は全部チェックしていて、リターン無しとかはだめなんです。あくまで個人間決済なので。あとはキャッシング枠の現金化のようなことももちろんだめですし、そこに関してはすべて確認した上で対応しています。

 リターンの履行について言うと、サービス上でのコミュニケーションは必ず行って欲しいです。悪質な場合はもちろんこちらから企画者側に通達します。今回、最初にSMS認証を入れたのですが、それは本人性をチェックするためであって、ハードルをまず最初に設けています。


最後に、今後の展望や取組みについて伺えればと思っています。

家入氏: 僕は、新しいセーフティネットの形を作りたいんですね。今まではリバ邸(若者たちの駆け込み寺として作られたシェアハウス)のような居場所を作る活動をしていたりして、今は日本中にあります。ドロップアウトしたような人たちが駆け込むような場所として機能して欲しいと思っているんですけど、これからは経済も小さくなっていくし、どんどん社会の制度とか仕組みからこぼれ落ちる人たちが出てくる。その中で、こぼれていく人に何ができるのかを考えたいというか。

 そういった人たちにシェアハウスという選択肢があれば、そこで暮らすことができるし、戻ってくる場所があればチャレンジしやすくなると思う。インターネットはそういった人たちのためにあるものだと信じています。お金は複雑化してしまい、遠い世界のもののようになっていますが、もともと身近なものであって、もっとお金を介したコミュニケーションを活性化したい。

 そのコミュニケーションがあれば、いざ明日食べるものが無いとなった時に、ある人は米をくれるかもしれないし、ある人は魚をくれるかもしれない。ある人はビットコインをくれるかもしれないし、お金をくれるかもしれない。そうやってお互いがお互いに支え合って生きる世界というものは、実現できると僕は信じたいし、信じています。なので、お金にまつわるサービスを色々と出していく中で、ひとりでも多くの人にお金が回ってくるような仕組みを作りたいですね。

【フレンドファンディングアプリ「polca(ポルカ)」 ~誕生日会編~】
フレンドファンディングアプリ『polca』の使い方がシンプルに解説されている
撮影:片山拓