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これからのお金と暮らしを立ち止まって考える

「polca(ポルカ)」が作る、友だち同士の経済圏

【家入一真 インタビュー前編】

岡本尚之 2017年11月24日 17:20
クラウドファンディングプラットフォーム『CAMPFIRE』をはじめとした、さまざまな資金調達の方法を提案する株式会社CAMPFIREが、去る8月10日にローンチしたアプリ『polca(ポルカ)』が話題だ。“フレンドファンディング”と銘打ったこのアプリは、その名の通り、身近な友人同士での資金調達をコンセプトとして開発された。思い付いた企画をすぐに実行できるよう審査も不要で、ひとつの企画を立ち上げるのにかかる時間は約30秒。また、設定できる目標の金額も300円〜10万円と、支援のハードルも低い。SNS上では多くのユーザーによりプロジェクトが拡散され、「やってみた」系のブログも続々と投稿されているように、支援をきっかけとした“祭り”のような現象も起きているほどだ。なぜ今このようなサービスを世に打ち出し、そこにはどのような意図があったのか。代表の家入一真氏に話を伺った。このインタビューは2017年9月1日にINTERNET Watchに掲載されたものです

「身近な友だち同士で始める、フレンドファンディングアプリ」をコンセプトとしてローンチされたpolcaですが、認証フローも早いうえ、小額の目標金額で始められるということから利用者が爆発的に増えています。

家入氏:ありがたいですね。友人の結婚式の動画を作るものや、家族を温泉旅行へ連れて行く企画、ポストカードを作るための小額の資金を調達するといったものなど、さまざまな企画が立ちあがっています。


そもそもpolcaはどのようなきっかけでサービスを開始したのでしょうか?

家入氏:多くの人に気持ちや思いを訴え、共感や応援とともにお金を集める手法であるクラウドファンディングがようやく広がってきましたが、まだまだハードルの高さを感じる方も多い。身近な友人や会社、サークルの仲間など、閉じられたコミュニティの中で緩やかに、気軽にお金を集めたり、支援できたり誰かを応援したりする仕組みは出来ないか? というアイデアから、polcaは生まれました。


現状“お金”と“コミュニケーション”は対極にあるように思います。その距離を縮めようとする試みを、近年は行われていますよね。

家入氏:クラウドファンディングのCAMPFIREを立ち上げたのもそうですし、個人的にもSNSを活用し、お金をもっとなめらかにするための取り組みを色々やってきました。Twitterで電話番号を公開したことでさまざまな人から電話がかかってくるようになりましたし、それがきっかけになって、いまだにリアルにつながっている人もいます。
なので、お金をコミュニケーションのツールとして活用しても良いんじゃないかという、ある種の社会実験のような取組み。そういった思想自体はこの数年、ずっと僕の中にあったんですね。


その思想はいつ頃から?

CAMPFIRE代表 家入一真氏

家入氏:僕自身、かなり貧しい家庭だったというのが前提としてあるのかもしれない……中学から引きこもりになって、そのまま引きこもっていたんですけど、あわせて家も貧しい。絵を学びたいと思ったんですけど、学費を出せるような状況ではない。どうしようと思った時に、新聞奨学生という制度を見つけたんですね。それで、住み込みで朝夕バイトをしてから合間に学校に行くということをやっていました。

 最終的に、父親が事故にあって働けなくなり、自己破産をしてしまったんですね。なので僕が就職して働くことになったんですけど、自分自身はその環境を不幸だと、あまり考えたことは無かったんです。だけど、お金によって選択肢が減ってしまうような子供たちや学生もいますし、大人だって声を上げようにも上げられない人もたくさんいます。それであれば、インターネットがここまで浸透したからこそできるやり方があるだろうというところが、クラウドファンディングを始めた入り口になっています。


polcaの場合はスマートフォンのアプリで、ゲーム感覚での金銭のやり取りができるわけですよね。肌感覚として若い世代がメインユーザーだと思うのですが、実際はどの年代の利用者が多いのでしょうか。

家入氏:18〜24歳が26%、25〜34歳が31%で、確かにユーザーとしては若い世代が多いです。


アプリで利用できることが大きいですよね。最近はPCを所有している人も少ないですし。

家入氏:クラウドファンディング自体、実はアメリカの『Kickstarter』などの事業者も含めてそうなのですが、なかなかアプリにならなかったんですよ。長い間、Webベースだったんですよね。プロジェクトを作ることについても、動画を貼ったり、リターンをいくつか作ったりするから手間がかかる。なので、作る側としてもやはりPCが多かったんです。polcaでは、そのハードルを下げようという思惑もありました。


UI/UXもシンプルになっています。

家入氏:社内でもかなり議論したのは、いかに項目を減らすかということですね。なので、リターンもシンプルにひとつだけ。後々の変更については検討しているのですが、300円から10万円という固定の金額にしているのも、まずは決済がシンプルにできるところを目指しているからです。


拡散や共有については、当初の想定とは変わってきていますよね。

家入氏:基本的には、不特定多数に拡散するものではないという前提で作りました。URLを知っている友人・知人のみがアクセスし、支援できる。例えば、同僚のサプライズパーティを社内で少数の人たちだけでやるとか、祖父や祖母の還暦祝いを親族一同で集めてやるとか。

 そういった、リアルに知っている友人・知人のなかで使うだけのファンディング、つまり「フレンドファンディング」というのを想定していたんですけど、予想以上に、Twitterなどで拡散するというような動きが起きています。しかも300円を支援されて、それをまた別の人に支援するというような新しいつながりも生まれている。面白いですよね、知らない人が知らない人に支援をするというつながりは。


Twitterを見てみると、例えば「#ポルカおじさん」「#ポルカおばさん」のようなハッシュタグが自由に付けられて、支援を求めたり、支援を受けたりとさまざまです。

家入氏:ポルカお兄さん、お姉さんもいますね(笑)。


オープンになること、それに伴い起こるリスクについてはどう考えられていますか。

家入氏:想定は当初からしていました。ただ僕は、このつながりみたいなものをグラデーションのように表現したくて。本当の意味で、ガチガチの知り合いのみにターゲットを絞ったアプリにするつもりだったら、それはできたはずなんです。URLをシェアという形ではなくて、polcaの中でフォロー、フォロワーになり、友人関係のみでしか見られないし、支援もできないという作りにもできた。そうしたくなかったのは、例えば、僕が会社の同僚のためにする企画と、釣り仲間のコミュニティでやる企画、親族でやる企画って本来はバラバラに存在していて、そのなかでの関係性はそれぞれ別々じゃないですか。


つながってはいないですね。

家入氏:僕の親族が、釣り仲間とやっている企画を見ても変に思うかもしれない。そういったことをユーザー目線で見てみると、リスクとしては余計な炎上が起きる可能性はあるわけですね。なので、URLはあくまで知っている人同士でしか分からない、つながれないということは前提。でもそのURLを自分の意思でTwitterに貼ることや、公開された場に貼るというやり方もできますよという提案はやりたかった。実際には公開されていないプロジェクトもたくさんあるんですけど、それは僕らも気付きようが無いんですね。データベースは見られますけど、一切表には出てこないので。


用途によって使い分けることができる。

家入氏:そうですね、社員の退職祝いをみんなでするという形で使われていたりします。社内SNSやSlackだけでシェアするんだけど、そういうのは、支援単価は高いんですよ。1000円とか3000円とか。企画一覧という機能を実装していないのも、ある個人がやっている企画一覧というものが公開されてしまうと、そもそもの僕たちが意図するところから外れてしまいますし、そうやって一覧化されてしまうことへのアンチテーゼみたいなものもpolcaにはあります。

【フレンドファンディングアプリ「polca(ポルカ)」 ~誕生日会編~】
フレンドファンディングアプリ『polca』の使い方がシンプルに解説されている
撮影:片山拓