もちろん、高速、高品質、エコな最新プリンタを導入したり、高機能な複合機を導入することは、それだけでも、業務の効率化、長期的なコストの削減、さらに環境対策と、さまざまな点でメリットがある。
しかし、せっかくプリンタや複合機の導入という新たな投資を検討するのであれば、オフィス環境の改善というより広い視点での導入を検討してみてはどうだろうか?
たとえば、印刷枚数や利用状況を「見える化」することによるコスト削減、用紙やトナーの状況やプリンタのエラーなどの稼働状況の把握による管理の効率化、私的な印刷や情報漏洩を未然に防ぐセキュリティの実現など、実際の業務改善などの具体的なソリューションとプリンティング環境の刷新を組み合わせれば、そこからオフィス全体、企業全体につながる新たな価値を創出することができる。
今風の言い方で表現すれば、ソリューションでレバレッジをかけるとでも言うのかもしれないが、これによりプリンタなどの導入を単なる「置き換え」から、「戦略的なオフィスソリューション」へと進化させることができる。その結果、そのオフィスで働く人々や機器が密接に連携しながら、問題を解決したり、新たな価値を創り出す力を高めることができるだけでなく、結果的にその導入を推進した人の評価にもつながることになるわけだ。
これにはさまざまな方法が存在するが、ハードウェアと密接に関係するソフトウェアの導入によって実現するのがもっとも近道だ。たとえば、現在、さまざまな方面から注目を集めているエプソンの「Offirio SynergyWare」というソフトウェアが存在する。
Offirio SynergyWareは、エプソンが販売しているプリンタや複合機、ドキュメントスキャナ向けのソフトウェア群で、主に以下のような製品から構成されている。
| ■PrintDirector | ■認証プロキシ | ||
|---|---|---|---|
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履歴管理やレポート機能を備えた印刷管理ソフト | ![]() |
Active Directory連携による認証印刷を実現するソフト |
| ■DocumentBrowser | ■DocumentStorage | ||
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複合機と連携可能なWebベースの情報&ナレッジポータル構築ソフト | ![]() |
スキャナでデジタル化した文書の管理や検索を実現するソフト |
これにより、たとえばプリンタやスキャナなどの入出力機器と連携するドキュメント管理やコスト管理システムを構築したり、ICカードによる認証印刷や社内認証システムとの連携などといった企業システムとの密接な連携を実現できるようになっている。
要するに、プリンタや複合機、スキャナなどのハードウェアをソフトウェアで連携させることにより、その相乗効果(シナジー)を発揮させようというのが「Offirio SynergyWare」というわけだ。
同社は、このようなハードウェア・ソフトウェアの垣根を越えて情報をより簡単で効率的に利用できる環境を提供し、ビジネスとの相乗効果を生み出すオフィスを「EPSON Synergy Office」と表現しているが、まさにハードウェアとソフトウェアをパッケージ化したソリューションによって、業務改善の実現や新たな価値創出の提案しているわけだ。
今回はその中の「印刷管理」に焦点を絞って紹介する。
印刷コストの削減は、実は単純なようで奥が深い問題だ。単にムダな印刷をやめようと声高にさけんだところで、なかなかコストは削減できない。なぜなら、一ヶ月間に誰が何枚印刷したのかなど、削減すべきコストの実体を正確に把握しなければ、削減すべきムダが見えないからだ。
そこで利用したいのが、エプソンのプリンタ製品「Offirio」シリーズの管理を実現する、Offirio SynergyWareの「PrintDirector」だ。

たとえば、上記のように、ネットワークに接続されたプリンタにPrintDirectorというソフトウェアを組み合わせることにより、以下のような機能が利用できるようになる。
| ■レポート機能 | ■印刷枚数制限による警告や禁止 |
|---|---|
| トナーや感光体など消耗品の利用状況をグラフ化。年間予算などにあわせてコストを管理できる。 | 印刷枚数/部数の上限をユーザーやグループごとに設定 |
つまり、現在のプリンティング環境にかかっているコストを「見える化」することで、たとえば消耗品コストを10%削減するといったように明確なコスト削減目標を立てられるようになるうえ、その具体策としてユーザーに対しての印刷制限などを設定できるというわけだ。
言わば、目標設定(PLAN)、具体的な実行(Do)、状況確認(Check)、改善(Action)という、コスト削減に直結するPDCAサイクルを実現できるソリューションと言えるだろう。
この現場力の向上は、実は先ほどのハードウェアとソフトウェアの組み合わせのままで実現可能だ。また、Offirioシリーズ向けのプリンタドライバにはプリンタのトナーや用紙、エラーなどの状況をリアルタイムにユーザーに知らせる「ステータスモニタ」と呼ばれる機能が搭載されている。
これを利用すれば、いつまでたっても用紙が出てこないプリンタの前にユーザーが立ち尽くす姿もオフィスからなくなるはずだ。
また、管理者の立場で考えた場合でも、前述したPrintDirectorを利用することで、ネットワーク上のプリンタをまとめてリモート監視することができるうえ、その使用状況を元的に把握することもできる。
これにより、たとえば稼働率が低いプリンタを印刷頻度が高い部署へと移動するなど、利用状況に応じたプリンタの適正配置を計画することができる。これはプリンタの混雑緩和などといったユーザーの利便性を向上させると同時に、プリンタ稼働率の平準化という効率化も生み出すことができる。

さらに、上記のように「EpsonNet InstallManger」という無償ダウンロード可能なソフトウェアを組み合わせることにより、あらかじめ設定した初期設定のドライバをスクリプトでユーザーに配布することができる。ユーザーがドライバの設定に悩むことがなくなるうえ、プリンタの入替え、PCのリプレースなども手軽にし、管理者の負担も軽減するというわけだ。
オフィスの印刷環境には、常に情報漏洩のリスクがつきまとう。たとえば、機密文書が勝手に印刷され社外に持ち出される、印刷した重要文書を取り忘れたまま紛失してしまった、うっかり他人が印刷した文書まで一緒に持ってきてしまったなどということは、どのオフィスでも問題になっていることだろう。
しかし、PrintDirectorを利用すれば、このようなリスクを回避し、安全な印刷環境を実現することが手軽にできる。
PrintDirectorは、「誰が」、「何を」、「いつ」、「何枚」印刷したかを確認できる印刷履歴、サイズやユーザーごとの集計をグラフ表示できるレポート機能も備えているため、これらを同時に活用することによって、プリンタというハードウェアの管理だけでなく、印刷というユーザーの行為自体をセキュアに管理できるようになる。
つまり、現状のプリンタからの置き換え、もしくは新規プリンタ導入の際に、このようなシステム構成を採用することにより、単なる共有プリンタを、セキュアなプリントソリューションへと進化させることができることになるのだ。
まさに、オフィスの印刷環境の「見える化」、そしてセキュリティの強化を実現できるソリューションと言えるだろう。
言わば、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによるソリューション、つまり「SOLUTION×(HW+SW)」といったところで、その相乗効果によって、単なるプリンタ、複合機だけでは実現できない新たな価値を提供するものと言える。
印刷に関するコスト、使い勝手、そしてセキュリティなど、これから着手すべきオフィスの課題があるのであれば、プリンタや複合機の導入を期に、Offirio SynergyWareによるトータルソリューションの導入も同時に検討し、オフィスの管理力向上を目指すべきだろう。
清水理史製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ。









