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ネットギア「Insight」で変わる「会社の無線LAN」

2018/06/28 清水理史

ネットギアから販売されている法人向けのデュアルバンド ワイヤレスLAN アクセスポイント「WAC505/WAC510」は、いわゆる「会社の無線LAN」を誰もが手の届く価格帯へと押し下げた画期的な製品だ。前回、スタンドアロンでの使い勝手を紹介したが、その真骨頂はアプリを使ったクラウド管理機能にある。その実力を検証してみた。

現場が楽になる「Insight」

もしも、あなたが会社で無線LAN設備を担当するとしたら、こうした課題にどう対処するだろうか?

企業での無線LANの設置や運用において、こうした課題は、ごく日常的に発生するもので、ひとたび無線LANの担当者になれば、誰もが一度は経験するものといえるが、実際に対処しようとすると、なかなか答えを見い出しにくい。

もちろん、SIerに電話をかけ、すべておまかせしてしまうのも1つの手段だが、実際の現場は、それほど潤沢に予算があるわけではないだろう。

コンシューマー向けの無線LANと異なり、企業での無線LANの利用には、「つまづきそうな」ポイントがいくつかあり、前回、本稿でそうしたポイントから、ネットギアの法人向けアクセスポイント「WAC510/WAC505」の優位性を紹介したが、じつは、このWAC510/WAC505には、もう1つ、極めて「現場向き」の機能が搭載されている。

それが、ネットギア「Insight」アプリを使ったクラウド管理機能だ。

コントローラーやクラウドを利用した無線LANアクセスポイントの一元管理機能は、法人向け製品であれば当たり前の機能ともいえるが、1万円台(ルーター機能を備えたWAC510で実売1万5000円前後、WAC505で実売1万3000円前後)の製品で、本体のみ、追加料金なし(2台まで)で、クラウド管理機能が使えるのは、とても貴重な存在といえるだろう。

スマートフォンからオフィスのネットワーク機器を一元管理できる「Insight」アプリ。ネットギアの法人向けアクセスポイント「WAC510/WAC505」の管理もできる

Insightで初期設定が楽になる

ネットギア「Insight」は、スイッチ、無線LANアクセスポイント、ストレージ(NAS)といったネットワーク機器を手元のスマートフォンで一元管理することができるアプリだ。 クラウド経由で社内のネットワーク機器にアクセスすることで、ワンタッチでセットアップ、モニタリング、管理といった現場の日常業務に対応することができる。

たとえば、初期設定を見てみよう。

WAC510/WAC505は、ブラウザーを使ったスタンドアロンでの管理とInsightを使った管理の2つの管理方法を選択できるようになっており、Insightを使った管理を選択することで、アプリから簡単に初期設定ができる。

本体背面のバーコード、もしくはQRコードをアプリで読み取るか、同一ネットワークにスマートフォンを接続(他のアクセスポイントでネットワークが構成済みの場合)し、自動的に検出された一覧から機器を選択すると管理対象として登録することができる。

デバイスの登録画面

バーコードやQRコードで機器を登録するか、同一ネットワーク上で自動検出された機器をタップして登録する

便利なのは、「ネットワークロケーション」と呼ばれるプロファイルを用いて、アクセスポイントの設定を自動的に適用できる点だ。

アプリの初期設定時に「Office」や「Shop」などのプロファイルを作成し、このネットワークロケーションに対して、SSIDやパスワードを設定しておく。

この状態で、新しいアクセスポイントをアプリに登録する際に、所属させるネットワークロケーションを選択すると、あらかじめ設定しておいたSSIDやパスワードが自動的にアクセスポイントに設定されるわけだ。

ネットワークロケーションで、管理者パスワードやSSID、パスワード(接続用)などの共通の設定をしておく

ネットワークロケーションに機器を登録するだけで、共通の設定が自動的に適用される

つまり、冒頭で紹介した下のような課題を苦もなく克服できることになる。

複数台設置する場合でも、後から追加する場合でも、SSIDやパスワードの設定はネットワークローケーションとして場所ごとに登録しておくだけ。あとは、設置したアクセスポイントをInsightに登録し、ウィザードの流れに従って、次々に適切なネットワークロケーションに割り当てていくだけでいい。

これはとても楽だ。

2~3台程度のアクセスポイントなら、個別に、手動で設定しても、何とか対処することはできるかもしれないが、それでも手間と時間がかかるうえ、ミスが発生する可能性もある。もしも、別の担当者に管理を引き継ぐことになったときも、説明がたいへんだ。

InsightとWAC510/WAC505の組み合わせなら、こうした課題から解放されることだろう。

定期的なチェックと設定変更に対応できる

Insightは、初期設定だけでなく、日々の運用管理の際にも威力を発揮する。

まず、現在の利用状況を簡単に把握できる。

たとえば、それぞれのアクセスポイントに何台のクライアントが接続されているか、どれくらいのデータがやり取りされているかをグラフで表示できる。

アクセスポイントを個別に管理している環境では、こうした全体的な統計情報を把握しにくいが、アプリからひと目で確認できるのは便利だ。

これにより、冒頭の「無線LANの利用状況を定期的にチェックしたい――。」という課題を解決できる。

アクセスポイントごとの接続台数(帯域ごと)やデータ転送量などをグラフで確認できる

続いて、「セキュリティの観点からゲスト用のSSIDのパスワードを定期変更したい――。」という課題の解決方法を見てみよう。

Insightアプリでは、初期設定と同様に、運用中のアクセスポイントの設定変更も一元的に実行できる。

ネットワークロケーションの設定を変更することで、運用中の複数台のアクセスポイントに対して、一斉にSSIDのパスワードを変更したり、ゲスト用のSSIDを新たに追加することなどができる。

もちろん、パスワードだけでなく、クライアントの相互接続を禁止(Client Isolation)したり、キャプティブポータルの機能を有効化して、ゲスト接続の認証や接続時間制限を設定することなどもできる。

ネットワークの設定から、複数アクセスポイントに対してゲスト用SSIDを一括追加したり、パスワードを変更やキャプティブポータル設定などを一斉適用できる

このように、ネットワーク上に何台のアクセスポイントがあろうとも、基本的な設定はInsightから一度するのみでかまわないことになる。

しかも、これらの機能は、クラウドで管理されているため、社内だけなく、外出先でも利用可能となっている。

これにより、たとえば出張中でも、社内のアクセスポイントの利用状況を把握したり、急な設定変更に対応することができる。

万が一、アクセスポイントがオフラインになったことを検知すれば、その情報が通知されるため、トラブルの発生などもいち早く知ることができる。これなら、社員からの「つながらない」という問合せで、はじめてトラブルに気づき、あわてて対処するというようなこともなくなるだろう。

管理は外出先からも可能。オフラインになったアクセスポイントを検知して通知することもできる

専門知識不要! ワンタップでチャネルや出力を最適化

最後の機能は、トラブル解決に非常に役立つ機能だ。

アクセスポイントが複数台設置されている環境では、アクセスポイント同士で電波が干渉しないように、チャネルを使い分けたり、出力を調整する必要がある。

従来、このような調査には、専用の測定器を用いて状況を計測するなど、専門的な知識が必要で、誰もができるようなものではなかった。しかし、Insightを使えば、こうしたチャネルや出力の最適化をワンタップで自動的に実行することができる。

自動RRMを実行すると、ワンタップで自動的にアクセスポイントのチャネルや出力を調整できる

実際、WAC510とWAC505を同じ44チャネル(5GHz帯)に設定した状態で、隣接して設置し、最適化を実行してみた。

すると、片方のアクセスポイントで、チャネルが自動的に36に変更され、出力も「Auto(Full)」から「Auto(Quarter)」に自動的に変更された。

チャネルが重複することが検知され、自動的に別のチャネルへと変更されたほか、近接しすぎていることが検知され、出力も絞られたわけだ。

多くの人が、どうすればいいのか悩むような難しい設定も、アプリにおまかせで一発で設定できることになる。

これなら、冒頭の「接続が安定しないのでチャネルや出力の設定を見直したい――。」という課題で、頭を悩ませることもなくなるだろう。

隣接したアクセスポイントで5GHzのチャネルを同じに設定した状態で自動RRMを実行。チャネルが44→36に変更され、出力もFull→Quarterに落とされた

管理者を悩みから解放するInsight

以上、ネットギアの法人向けアクセスポイント「WAC510」「WAC505」をInsightアプリを使って一元管理する方法を紹介した。

コンシューマー向け製品でもアプリで設定できる製品は増えているが、さすが法人向けだけあって、複数アクセスポイントの一元管理が楽にできるうえ、モニタリングや調査機能が充実している点に感心した。

Insightを利用することで、アクセスポイントだけでなく、スイッチやNASも遠隔で一元管理できるようになっており、同社のアプリ&クラウドスイッチ(GCシリーズ)の設定が可能となっていたり、同社製のNAS「ReadyNAS」シリーズの状態監視も可能となっている。

アプリ&クラウドスイッチの「GC510PP」は、SFPポート×2とPoE対応の1000BASE-Tポート×8を備えており、1ポートあたり30W、合計195Wの電力を供給できる。しかも、PoEでの給電を維持しつつデバイスを再起動できるため、WAC510、WAC505との組み合わせることで、電力供給+管理の問題を一気に解決可能だ。

ネットギアのアプリ&クラウドスイッチ「GC510PP」

なお、先に触れたようにInsightでは、2台まで無料で管理できるが、3台以上管理したい場合は年間560円/1台で利用可能となっているほか、アプリだけでなく、Webのクラウドポータルでも管理したい場合はPremiumで月120円/1台または、年1,125円/1台ほどの出費で済む。今後、運用監視サービスを行うネットワークインテグレーターに適したProプランもリリース予定となっており、より高度な管理に対応できるだろう。

3台以上の場合もリーズナブルな価格で管理できる

「法人向けアクセスポイントは高価で、その導入も素人に難しい」というのが、今までの無線LANの常識だったが、本製品は、こうした概念を打ち破る画期的な製品といえる。製品的にも優れているが、高度な活用ができる法人向けアクセスポイントの機能を、中小の現場でも手軽に入手できるようにした点を、何よりも高く評価したいところだ。