Dynamic QoSで帯域を自動でコントロール
1733Mbps対応を果たしたネットギア「Nighthawk X4 R7500」

2015.1.14 清水理史

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高性能な無線LANルーターを選ぶメリットとは?

性能を重視すべきか、それとも価格で選ぶべきか?

今、あなたが無線LANルーターを購入するしたとき、きっと頭を悩ませることになるのが、この選択だろう。

2014年1月に正式承認された当初こそ、1300Mbps対応の高性能なハイエンドモデルのみだったIEEE802.11ac対応無線LANルーターは、今やエントリーモデルにも広がり、433Mbps対応や866Mbps対応の製品がリーズナブルな価格で手に入るようになってきた。

その一方で、海外メーカーを中心に、より高性能なモデルが市場に投入されるようになり、同じ1300Mbps対応でもより高速なCPUを搭載していたり、IEEE802.11ac wave 2と呼ばれるより高性能な仕様を満たす製品が登場してきた。

現状、IEEE802.11ac対応の無線LANルーターが対応する規格と製品の価格帯をまとめると以下の表のようになる。

対応速度 使用帯域 MIMO 価格帯
433Mbps 80MHz 1ストリーム 4000~5000円
866Mbps 80MHz 2ストリーム 6000~1万円
1300Mbps 80MHz 3ストリーム 1万2000~2万4000円
1733Mbps 80MHz 4ストリーム 2万4000~2万6000円

速度にこだわらず、単純にスマートフォンやPCをワイヤレスで接続できる433Mbpsや866Mbps対応の製品が1万円以下で並ぶ。その一方で、1300Mbps対応の高性能なCPUを搭載する一部の製品や前述したIEEE802.11ac wave 2の1733Mbps対応製品など、2万円を超える高性能な製品が登場してきたのが現在の状況だ。

今回、ネットギアから新たに登場した「Nighthawk X4 R7500」も、そんなハイエンド製品に分類される無線LANルーターだ。

本体に搭載された4本のアンテナを利用することで、4ストリームのMIMO(Multi Input Multi Output:同一空間中に同一周波数の電波を使って多重化通信する技術)による通信を可能としており、433Mbps×4≒1733Mbpsという高い通信速度に対応。さらに、1.4GHz動作のデュアルコアプロセッサーを搭載することで、実際の通信を高速に処理できるようになっている。

image ネットギアのIEEE802.11ac対応無線LANルーター「Nighthawk X4 R7500」

では、このような高性能なハイエンド製品を選ぶメリットは、どこにあるだろうか?

主なメリットは以下のような点が考えられるだろう。

まずは、大容量データの通信だが、転送速度が高いほど有利になる。最近では、写真や音楽などのデータも高品質化に伴いデータ容量が増えつつある。こういったデータを単純にネットワークでやり取りするだけでも高速な無線LANルーターは有利だ。

また、転送速度が高いということは、複数の端末を接続した際に、それぞれの端末が通信を占有する時間が短くて済むということでもある。低価格な製品では、多くの端末を接続すると、混雑によって通信速度が極端に低下するケースもあるが、高性能な製品であれば、より多くの端末を、より快適に接続できることになる。

もちろん、大量の端末を接続すると、今度は混雑が問題になるが、高性能な無線LANルーターは、こういった混雑時の課題を解決する新技術も搭載している。詳しくは後述するが、今回紹介するNighthawk X4 R7500では、「Dynamic QoS」と呼ばれる技術によって、映像配信やビデオチャットなど、品質が要求される通信の優先度を自動的に上げることが可能だ。最近では、テレビやレコーダーなどで録画したデータをタブレットやスマートフォンでも視聴できるようになってきたが、高速な通信速度を誇る製品は、このような用途に最適だ。

さらに、高性能な無線LANルーターには、無線機能以外の付加機能を搭載していることが多く、外出先などから自宅に安全に接続できるVPN機能を利用したり、本体に外付けハードディスクを接続してファイルを共有したり、写真や映像などのメディアを配信することが可能になっている。単なる無線の親機としてではなく、高度なネットワークを構成する中心デバイスとして活用できるのもメリットだ。

このほか、注目となるのが、これからの無線LAN製品のキーワードになるであろうMU-MIMOへの対応だ。前述したように、Nighthawk X4 R7500は433Mbps×4≒1733Mbpsの通信が可能だが、今後登場するMU-MIMO対応のスマートフォンやPCを利用すると、この通信を4つの端末それぞれに433Mbpsごとに割り当てたり、866Mbpsずつ2つの端末に割り当てて、同時に通信できるようになる。

今後、こういった端末が登場してきた場合でも、すでにMU-MIMOに対応しているNighthawk X4 R7500であれば、無線LANルーターを買い替えることなく、すぐに対応できることになる。将来と言っても、もう間もなく登場するであろう次世代無線LANへの投資と考えるといいだろう。

逆に考えると、無線LANに要求される帯域がどんどん増加し、つなぐ機器が増え続け、次世代の無線LANが登場することがわかっているのに、これらに対応できない低価格な製品を購入することは、決して得策とは言えない。この点を考慮すると、Nighthawk X4 R7500のような高性能な無線LANルーターを購入するメリットが見えてくるだろう。

存在感のある4本のアンテナ

それでは、実際の製品を見ていこう。ステルス戦闘機を思わせるような印象的なデザインの本体に、背面×2、左右それぞれの側面に1つずつ、合計4本のアンテナが備えられている。

本体のサイズも幅285×奥行き184.5×高さ50mmとなかなか存在感があるが、アンテナを取り付けると、高さが約200mm、幅はアンテナの傾き加減にもよるが約400mmほどになるので、それなりに広い設置場所を確保する必要があるだろう。

インターフェイスは、背面側には1000BASE-T対応のLANポート×4、WANポート×1、LEDオン/オフスイッチ、電源ポート、電源スイッチを備え、正面から見て右側面にeSATAポート×1、左側面にUSB3.0ポート×2を備える。詳しくは後述するが、無線LANルーターとして、ハードディスク接続用のeSATAポートを備えるのは、他には見られない本製品ならではの特徴の1つだ。

スペックは、先にも少し触れたが、対応する無線LAN規格は5GHz帯がIEEE802.11ac wave 2対応の最大1733Mbps、2.4GHz帯が最大600MbpsのIEEE802.11n(600Mbps通信は256QAM対応クライアント利用時のみ)となり、特定端末の方向に電波を自動的に調整するビームフォーミングにも対応している。単に最大速度が高いだけでなく、遠距離での通信でも快適なスピードを実現できるのが、本製品の特徴だ。

image 4本のアンテナにはそれぞれ番号が付けられており、取扱説明書の記載に従って取り付ける
image 正面
image 右側面
image 左側面
image 背面
image 背面のポート類
image 右側面にはeSATAポートを備える

サービスやデバイスを判断してカシコク帯域を調整

機能的に注目したいのは、Dynamic QoSだ。QoSは、Quality of Serviceの略で、ネットワーク上でやり取りされるさまざまな通信に優先度を設定できる機能だ。従来の無線LANルーターの中にもQoSの機能を搭載していた機種が存在したが、端末やプロトコルごとに優先度を手動で設定する必要があり、一般的にはあまり利用されてこなかった。

これに対して、本製品では、ダウンロードやストリーミング、ゲームといった通信内容(アプリケーション)を自動的に認識するとともに、テレビやPC、タブレットなど、端末の違いも自動的に認識することで、それぞれに最適な優先度や帯域幅を自動的に割り当てることが可能となっている。

これにより、たとえばあるPCが大容量のファイルをダウンロードしている最中に、他のPCでYoutubeで映像の視聴を開始したような場合でも、Nighthawk X4 R7500がYoutubeの通信を検出し、自動的にその優先度を上げることができる。

image アプリケーションやデバイスを検知して最適な帯域を設定できる「Dynamic QoS」。標準で有効になっている

Dynamic QoSがカシコイのは、単にアプリケーションだけを判断基準としているわけではない点にある。たとえば、同じ映像のストリーミングサービスでも、回線状況に応じて映像品質を自動的に調整するサービスと、映像の品質は固定したままでバッファリングによって回線状況のバラツキを吸収するサービスがある。

このようなストリーミングサービスが同時に利用された場合に重要なのは、前者に映像の品質を落とさせないだけの帯域を確保しつつ、後者で途切れずに映像を再生できるだけのバッファを確保できる帯域を確保することだ。

これを人が自らの設定によって調整することは不可能だが、Nighthawk X4 R7500のDynamic QoSであれば、動的かつスマートに、このバランスを取り、最適な映像配信環境を実現することができる。

image 同じ動画サービスでも種類によって自動調整

同様に、再生するデバイスも自動的に判断することで、たとえば、高品質なストリーミングが必要となるリビングの大画面テレビの帯域を多く確保し、画面が小さくさほど品質が問われないスマートフォンなどの帯域を少なくするといったコントロールも可能となっている。

image デバイスごとにも帯域を自動調整
image たとえば、テレビでストリーミングを再生すると「最高」に優先度が設定される。無線端末だけでなく、有線端末でも有効

このような調整は、ストリーミングサービスだけでなく、さまざまな状況で自動的に有効に活用されており、Skypeやオンラインゲームなど、ネットワークの遅延がサービスの品質に大きく影響するようなアプリケーションに関しては、常に高い優先度で処理されるしくみになっている。

前述したように、現状、MU-MIMOが利用できない環境では、基本的に無線LANクライアントは同時に通信することができない。このため、PCやスマートフォン、タブレット、ゲーム機など、複数の機器が無線LANを利用している状況では、どの通信を優先するかというネットワークの調整が非常に重要になる。この役目をDynamic QoSが、カシコク、しかもユーザーに意識させることなく自動的に実行してくれるというわけだ。

素性の良さと高いパフォーマンス

実際の使用感も良好だ。セットアップもウィザードに従ってインターネット接続を設定できるほか、無線LAN接続もWPSで手軽に設定できるようになっている。ネットギア製品ならではの特徴とも言えるが、暗号キーも「pinktrain」や「cheerfulhill」のように、馴染みの単語をランダムに組み合わせたものとなっているため、iOS端末などのように手動で無線LAN接続しなければならない端末の設定も楽にできる。ハイエンド製品といっても、親しみやすい印象だ。

image グラフィカルでわかりやすいNighthawk X4 R7500の設定画面。インターネット接続のウィザード設定やわかりやすい暗号キーなどが特徴

もちろんパフォーマンスも優秀だ。以下のグラフは、木造3階建ての筆者宅にて、1階にNighthawk X4 R7500を設置し、各フロアでのiPerfの速度を計測した結果だ。クライアントに1300Mbps対応のNighthawk R7000(ブリッジモード)を利用した場合で最大784Mbps、866Mbpsの無線LANを内蔵したMac Book Air 11を利用した場合で最大649Mbpsの速度を記録できた。

高性能をウリにする無線LAN製品は多いが、その中でも一歩リードする結果をたたき出している。このあたりは、1.4GHzという高いクロックのCPUによる恩恵が大きいと言えそうだ。

image ※サーバー:Intel NUC DC3217IYE
※サーバー側:iperf -s、クライアント側:iperf -c [IP] -t10 -i1 -P3
※テスト端末の優先度自動設定を回避するためテスト時はDynamic QoSオフの状態で計測

eSATAでNAS代わりにも使える

Nighthawk X4 R7500の処理能力の高さは、無線LANのスループット以外にも活かされている。前述したように、Nighthawk X4 R7500の側面には、USB3.0×2に加え、eSATA×1が搭載されており、ここに外付けのハードディスクを接続してファイルを共有できるのだが、このアクセス速度もかなり優秀だ。

image eSATAポートを搭載し、HDDやSSDなどのストレージを装着してNASとして活用できる

以下は、USB2.0、USB3.0、eSATAのそれぞれで500GBのSSDを接続し、有線LAN接続のPCからCrystalDiskMark 3.0.2aを実行した結果だ。

USB3.0も高速だが、eSATAが若干上回り、シーケンシャルのリードで45MB/s、ライトで84MB/sとなった。これは、2ベイクラスの低価格なNASと同等、もしくは上回る結果と言っていい。これまでにもストレージの共有機能を搭載した無線LANルーターは多数存在したが、パフォーマンスという点で、NASに肩を並べる存在となったのは、本製品が初と言えるだろう。

CrystalDiskMark 3.0.3aの結果。左からUSB2.0、USB3.0、eSATAの結果

容量もUSB3.0×2とeSATAの合計3ポートをフルに活用すれば、数TBクラスのストレージとして十分に活用することができる。

もちろん、専用のNASと異なり、RAIDを構成したり、ユーザーによるアクセス制限を細かく設定することはできないが、家庭での写真やビデオの共有などであれば十分に活用できる。

このほか、外出先からストレージのデータにアクセスすることができるうえ、「ReadySHARE Vault」でWindows PCのデータをバックアップしたり、iTuensサーバーとして利用することもできる。OpenVPNを利用したVPNサーバー機能にも対応するので、オフィスなどでのセキュアなファイル共有にも活用できるだろう。

image 外出先からのアクセスも可能
image メディアサーバーやiTunesサーバーとしても利用可能
image OpenVPNによるセキュアなリモートアクセスにも対応している

価値ある一台

以上、ネットギアから新たに登場したNighthawk X4 Nighthawk X4 R7500を実際に使ってみたが、カタログスペックに偽りのない高い実力を備えた製品と言えそうだ。

現状、最大の1733Mbpsで通信するには2台セットでの購入が必要となるため利用シーンが限られると考えられがちだが、最大速度だけでなく、Dynamic QoSのような機能も搭載されており、複数の端末を接続している場合でも、インターネット上のサービスをより快適に使える工夫がなされている。

今後、MU-MIMO対応端末が登場してくれば、433×4系統や866Mbps×2系統といった真の意味での同時通信にも対応できるだけに、末永く使える無線LANルーターと言える。

価格は実売で26000円前後と決して安くはないが、Dynamic QoSやNASとして十分な性能を備えている点なども考慮すれば、納得できる価格だ。現時点で、性能、機能ともトップレベルの製品と言って良いだろう。

(Reported by 清水理史)

関連リンク

ネットギア Nighthawk X4 R7500 製品情報
http://www.netgear.jp/products/details/R7500.html
ネットギア Nighthawk X4 R7500 販売ページ
http://www.amazon.co.jp/dp/B00PHST2WW
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