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Review

第1回:災害時に備えた拠点間バックアップを実現する
「ReadyNAS Replicate」を試す

バックアップ自体をどこに保存するか

自社製品の仕様書、一点物の金型の設計図、特許関連の書類など、自社の競争力の源泉とも言える大切なデータをどこに保存すればいいのか?

未曾有の災害を体験した現在、企業にとって、データをどのように保護し、事業の継続性をいかに確保するかが、大きな課題となりつつある。

ハードウェアの障害など、一般的なトラブルへの対策としては、これまでのところバックアップがデータ保護の標準的な手法であった。PCのデータをDVDに書き込むといった単純な対策にはじまり、RAIDなどの信頼性を確保できるNASへのデータの集約、さらにはNASのデータのバックアップなど、複数の対策で大切なデータを保護する例が多かったはずだ。

しかしながら、大規模な災害の前には、このような対策も無力となってしまうことがある。たとえば、同じ建物内でいくら入念にバックアップを繰り返そうとも、そのビル自体が地震等の被害にあったらどうだろうか。さらに言えば、ビル一つでは済まず、その地域一帯が被害を受けることもありうる。PCやNAS、サーバーが故障するだけでなく、バックアップしたデータまでもが破壊され、さらに、その行方すらわからない状態ともなれば、事業の継続は難しくなってしまうだろう。

そこで注目されているのが、データの分散と複製だ。クラウドの利用もそうだが、NASなどのデータ保存用機器を複数の拠点に用意してデータを複製したり、お互いにデータをバックアップしておけば、万が一のトラブル時にも、他の拠点のデータを参照したり、バックアップから復元することができる。つまり、単純にデータを二重化するだけでなく、データのある場所も二重化してしまおうという発想だ。

もちろん、小規模なオフィスや個人事業などの例では、物理的な拠点が1つしかないというケースも考えられるが、極端な話、オフィスと自宅でデータを複製し合う、同じ建物の1階と2階でデータを複製し合うといったことでも、データの安全性を高めることが可能だ。

媒体間での複製から、拠点間の複製へ、バックアップのあり方は大きな転換点を迎えつつあると言っても過言ではないだろう。

レプリケート機能を手軽に実装できる「ReadyNAS Pro」

ReadyNAS Proの機能「ReadyNAS Replicate」なら、複数のNASを拠点間に配置にデータを分散させたり、バックアップをお互いに保存することで、万が一の災害から大切なデータを保護することが可能。今回は写真の「ReadyNAS Pro6」を試用した

とは言え、物理的に離れた場所にある複数の拠点で、どのようにデータを複製すればいいのだろうか?

その答えの1つとなりそうなのが、ネットギアから発売されている企業向けNAS「ReadyNAS Pro」の利用だ。ハイエンドユーザーから高い評価を得ているReadyNASシリーズの中でも、ビジネスシーンでの利用に最適化された製品となっており、ReadyNASシリーズならではの柔軟なRAIDシステムを構成可能なX-RAIDへの対応に加えて、高いパフォーマンスを誇るIntelマルチコアプロセッサ、高い拡張性と、充実した機能を搭載したNAS製品となっている。

「ReadyNAS Pro」には、前述したX-RAIDや外部HDDへのデータバックアップなど、幾重にも及ぶデータ保護機能が搭載されているが、これらに加えて、「ReadyNAS Replicate」と呼ばれるリモートバックアップが利用可能となっている。

「ReadyNAS Replicate」は、ネットワークで接続された複数台のReadyNASの間で、データやシステム全体をバックアップすることができる機能だ。アドオンとして提供されており、1ライセンス約200ドル(デスクトップNAS 1台あたりの年間ライセンス)となっている。無償で45日間試すことができるが、今なら、2011年6月30日までにビジネス向けReadyNASシリーズを2台以上購入すると、ライセンスが購入台数分無料でもらえる「『ReadyNAS® Replicate』無償バンドルキャンペーン」を実施中だ。

なお、キャンペーンの詳細は、こちらで確認できる。

複数台のNASを利用したバックアップ機能は他社製品にも搭載されているが、本製品のバックアップ機能は非常に実用性が高いのが特徴だ。

具体的には、バックアップ設定の集中管理が可能となっている。一般的なNASのリモートバックアップ機能は、機器ごとに設定する必要があるため、台数が多くなるほど設定が煩雑になる。バックアップのスケジュールを変えるだけで、各NASの設定ページにアクセスし、1台ずつ設定を変更していくというのは非効率的だ。

インターネット上のサイトからNASやバックアップジョブを集中管理できる

これに対して、「ReadyNAS Replicate」では、インターネット上の設定サイト(https://www.replicate.readynas.com)から、全拠点のReadyNASのバックアップ設定を管理できるようになっている。このため、たとえば東京、名古屋、大阪、福岡と、各拠点にNASを設置した場合でも、東京の管理者が設定画面から、東京→名古屋、大阪、大阪→福岡などのように、各拠点のNASのバックアップ先やスケジュールを自由に変更することができる。このため、初期導入はもちろんのこと、導入後の設定変更やリストアなどの操作が非常に楽だ。

また、WAN経由でのバックアップ時のトラフィックも考慮されており、バックアップするデータを圧縮することが可能だ。バックアップそのものも差分バックアップなどでデータ転送量を減らすことができるが、これにより回線速度が制限されるケースでもバックアップの取得に支障がないように工夫されている。

このほか、フォルダごとにバックアップを指定できるのはもちろんのこと、NASの設定を含めたシステム全体をバックアップすることができたり、バックアップの履歴を保管することで、任意の時点にリストアすることもできるなど、非常に高機能だ。

すぐに使い始めることが可能

設定は簡単だ。まずは、アドオンを追加する。ReadyNASの設定ページから「アドオン」を開き、「追加」から「ReadyNAS Replicate」をインストールする。

インストールが完了したら、アドオン画面の「Manage ReadyNAS Replicate」からReadyNAS Replicateの設定ページにアクセスする。前述したように、この機能を継続的に利用するにはライセンスの取得が必要だが、45日間は無償で利用できるので、まずは会社名やメールアドレスなどを登録して利用登録を実行する。

登録が完了したら、ReadyNAS Remoteのアカウントを取得する。ReadyNAS Remoteは、インターネット経由でReadyNASを利用するための機能だ。ReadyNAS Replicateは、このサービスを拡張する形で提供されているため、アカウントが必要になる。こちらもメールアドレスなど簡単な情報だけで取得できるので設定を済ませておこう。

取得したReadyNAS Remoteのアカウントでサインインすると、デバイスがReadyNAS Replicateのサーバーに登録され、利用可能な状態になる。この操作をバックアップを複製したいすべてのNASで実行しておく。

アドオンで「ReadyNAS Replicate」をインストール
ライセンスを登録。45日間は無償で利用できる
ReadyNAS Remoteのアカウントを取得
登録したデバイスはhttps://www.replicate.readynas.comから管理できる

登録が完了したら、いよいよバックアップの設定だ。「https://www.replicate.readynas.com」にアクセス後、ReadyNAS Remoteのアカウントでサインインすると、登録したNASの一覧が表示される。ここから、HDDの使用状況を確認したり、温度やファンの回転数、ディスクの状態を確認することもできるので、単純なハードウェアの保守にも便利だ。

バックアップは、大きく分けて2種類ある。1つはデータのバックアップだ。これはNAS内の任意のフォルダを別のNASへとバックアップする機能となる。もう1つはシステムのバックアップだ。こちらは、データだけでなく、ReadyNASの設定情報を含めたシステム全体をバックアップする機能となる。

どちらを選ぶかは回線速度やデータ容量などによっても異なるが、災害対策として利用するのであれば、毎時単位での重要なデータのバックアップと日単位でのシステムバックアップを組み合わせて利用するといいだろう。

バックアップのタイミングに関しては、最短で15分おきを設定することもできるので、重要度の高いデータや更新頻度の高いデータをこまめにバックアップすることも可能だ。

たとえば、システムのバックアップであれば、メニューから「Backup System」を選択し、「Backup From」にバックアップ元のReadyNASを、「Save To」にバックアップ先のReadyNASの保存先フォルダを設定する。その後、スケジュールの設定で、実行開始日と繰り返し頻度(Hourly、Dairy、Every Weekday、Monthly、Cusom)を設定する。頻度を減らすほど、一度の実行につき転送しなければならないデータ容量も増えるため、個人的にはこまめに実行することをおすすめしたいところだ。

最後に設定を確認後、「Limit revisions」で保有する履歴の数を設定し(標準では無制限)、「Apply」をクリックすればジョブが登録される。

システムバックアップの方法。Fromにバックアップ元、Save Toに保存先を設定する
スケジュールを設定。15分おきの設定も可能
バックアップ方向やスケジュールを確認。保存する履歴も設定できる
双方向のバックアップやn対nのバックアップも可能

登録されたジョブは、「Jobs」から確認したり、設定を変更したりすることはもちろんのこと、「Monitor」で実行状況を確認したり、スケジュール外のタイミングですぐに実行することなどもできる。もちろん、実行後のレポートなども参照可能だ。

USBハードディスクなどへの日常的なバックアップと組み合わせて利用するのも良いが、ここまで高機能なので、ReadyNAS Replicateだけでも十分に運用することができそうだ。拠点間だけでなく、LAN環境でノンストップ運用を目指したい場合などにも重宝することだろう。

日頃からの備えが大切

このように、ネットギアの企業向けNAS「ReadyNAS Pro」では、「ReadyNAS Replicate」によって拠点間のバックアップ環境を手軽に構築することが可能だ。特に、Webベースの管理インターフェイスは秀逸で、インターネットにつながる環境さえあれば、どこからでも各拠点のNASを管理することができるようになっている。こういった運用管理上の工夫がなされているのは、企業ユーザーから大きな支持を集めるReadyNASならではの特徴と言えるだろう。

今後、NASを選ぶ基準は、容量やパフォーマンスだけでなく、より大きな視点での耐障害性が大きなウェイトを占めてくると言える。単に無くしたら困るだけでなく、事業の継続が難しくなるようなデータをいかに保護するべきか、その点を真剣に検討する必要がありそうだ。

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清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ

製品情報

■ReadyNAS Proシリーズ 製品情報
http://www.netgear.jp/products/business/nas/ReadyNAS-pro
■NETGEAR ビジネス向けNAS
http://www.netgear.jp/products/business/nas