キミは覚えているだろうか。今年の初夏、世間を席巻した広末涼子の奇行報道を。そのイントロとしては、映画『WASABI』の記者会見で見せた意味不明の涙がある。しかし、ボクには「ワサビが目に染みて涙を流すとは、なんと姑息なプロモーションだ」ぐらいの薄いリアクションしかなかった。それよりも驚いたのは、出演者に“中村愛美”の名を見つけた時だ。

　オーソドックスでミルキーな香りさえ漂うその名前とは裏腹に、何をしでかすかわからない、危なっかしい雰囲気を醸し出す中村愛美。現にドラマ『GTO』『リップスティック』と立て続けに、ドロップアウトした少女役がハマリにハマっていた。『WASABI』ではどんな役なのかは不明だが、大器を予感させる彼女の記念すべき映画初出演が、リュック・ベッソンだか「マイム・ベッソンソンでキャンプファイヤーに突入！」だかいう異人さんの撮る作品だとしたら、日本映画界にとって失態であり、当塾でも悲観すべき出来事である。

　しかし、『WASABI』の前に、一部で物議を醸しだした『発狂する唇』（00）の続編『血を吸う宇宙』へ出演するというではないか！　しかも主演！　どうにかこれで、日本映画の面目が保たれた。ホントに。

　中村の役どころは、残虐な事件を起こし死刑を宣告された女囚で、どんな事件かを回想することでストーリーが進む。“この娘”的にポイントとしたいのは、中村がこの若さで主婦役を演じていること。デタラメなシチュエーションでも、シリアスな表情で演じる中村の“この娘”指数は極めて高い。直接的ではないが、放尿シーンもあったりするが、その是非は各自の趣味にゆだねるとする。

　他の“この娘”としては、三輪姉妹の姉・三輪ひとみが、短い出番ながらも単独で出演。『いきすだま～生霊～』ではロングヘアだったが（おそらくカツラ）、再びショートカット姿を披露している。

　さらに注目したいのが、前作に引き続きＦＢＩの女性秘密諜報員ルーシーを演じる栗林知美だ。カラーコンタクトと金髪、さらにはハイテンションな英語しか話さないという特異なキャラクターを好演している。

　栗林と言えば、デビューとなったテレビ東京のミニ帯番組『平成女学園』で中心的なひとりだった。この番組は、同じテレビ東京の『ギルガメッシュNIGHT』とリンクしつつ、当時はかなりの人気を集めていたものだ。どのくらい人気かというと、大事件があったり、大晦日や元日であろうとも、休まず（土日も休まず！）放送していたことからも察することができるだろう。

　毎日、数名のセクシータレントが出演し、ちょっとしたゲームや稽古ごとするだけなのに、なぜにあんなにも人気を博したのかは、今となっては謎である。もちろんボクも帯で録画予約していたクチなのだが……。

　また、今年の初頭に松尾伴内と入籍を果たしたことでも栗林の名前は知れ渡った。これには、ボクをはじめ塾生諸君もエポックだったはず。「会社では、結構ベテランなのに、今いち出世しないオレ。たけし軍団で例えるなら、松尾伴内なオレにもこんなべっぴんさんと……」といった希望という名の妄想を促進したのだ。

　ふたりの出会いは、テレビ番組の『明石家サンタの史上最大のクリスマスショー』。視聴者から不幸なエピソードを募る番組で出会うとは、これぞ不幸中の幸い！
　
　そんな他人の結婚話をうまくまとめるスペースがあるのなら、もっと『血を吸う宇宙』の内容に触れろっていう声もあるだろうが、はじめからカルトを狙ったカルト映画というスタンスを取っているので、その辺をどう紹介すればいいのかわからないのだ。それが正直なところ。ただひとつ、東映のピンキー・バイオレンス映画をリスペクトしたと思われる、中村愛美が唐突に唄う劇中歌は胸キュンもの、それだけは断言できる。

　詳しく触れるのは野暮だが、どんなことがあろうとも、中村愛美には“この娘”としてスクリーンを彩り続けて欲しい。塾生も同じ気持ちで、彼女を見守ろう！
　おー！

（佐藤ろまん）

click!!↑ 【佐藤ろまん先生　Profile】 誕生： 1968年、うつくしま未来博、あるいは千葉麗子の出身地でお馴染みの福島県生まれ。 最終学歴： 秋元康作詞塾（通信教育／中退）。 　 薄氷を踏むがごとく、どうにかこうにか文筆業で生計をたてる。書いてる媒体＆ジャンルは、本当に雑多で、近いところでは『笑うシネマ～FUNNY CINEMA～』（エンター ブレイン）にて、笑えるアイドル映画について寄稿してます。ほかに、隔月誌『アックス』（青林工藝舎）にて「ろまん子・ザ・ムービー危機イッパツ！」を連載中。好きな映画はもちろん、『おニャン子・ザ・ムービー危機イッパツ！』（DVD化＆モー娘。でリメイク希望）。近影のモニターに映し出されているのは、その中で怪演する関根勤の雄姿です。好きなクレージーキャッツのメンバーは、石橋エータロー。好きなドラえもんの道具は、どくさいスイッチ。好きなＶリーグのチームは、東レアロー ズ。将来の夢は、バンテリンのＣＭに出演すること。映画館から出てきて、「映画にはバンテリンだねぇ」なんてセリフを言ってみたい！ □OFFICIAL SITE「デジタルベストガイ」 佐藤ろまん先生を 応援する為に佐藤ろまん先生自ら制作しているHP http://romang.hoops.livedoor.com/