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第21回:『ピストルオペラ』
江角マキコに憧れる少女は、数十年後にサプリメントのCMに主婦役で!?
前回の『少女』に引き続き、“この娘”塾にとって難問題が突きつけられた。失礼な話、今年78歳を迎えた鈴木清順監督の新作が、お目にかかれるとは思っていなかった。長編では前作の『夢二』(91)から10年が経っている。公開当時、「黒澤明の『夢』の続編かと思って観にいったら、違っていたので面食らったぜ」と勘違いにもほどがある友人がいたが、今ではその友人と全くの音信不通なことを考えると、時の流れを痛感しないではいられない。どっこい清順監督は現役だった。まあ、ひとつ年下の石井輝男が、コンスタンスに新作を撮っていることを考えれば、当然と言えるかもしれないが。
しかし、映画のメインターゲット層であるところの若者にとって、清順のネームバリューはいかがなものだろう。ボクでさえ、清順と言えば、映画監督としてよりも、鈴木“気くばりのすすめ”健二と兄弟で競演していた入浴剤のCMや、ドラマ『美少女仮面ポワトリン』での神様役など、ほのぼのしたおじいちゃんのイメージが強い。ところが作風は、以上のような老人像とは全く異なり、エネルギッシュで独自な路線を疾走し続けている。
新作『ピストルオペラ』で監督に見いだされた“コノ娘”が、江角マキコである。殺し屋となった江角は、和服にブーツという出で立ちで、クールに銃をぶっ放す。ドラマ版『ショムニ』でもクールで豪快なOLを演じていた江角だが、現代日本のいち企業を舞台とした『ショムニ』と、時間や場所が特定できない『ピストルオペラ』では全く世界観が異なるため、両者の江角がダブるようなことはなかった。“コノ娘”指数で言うならば、新人の韓英恵の方が圧倒的に高い。江角に憧れる謎に満ちた少女を演じる韓は、「なりたいな、私も殺し屋に」といった危ういセリフで、血なまぐさい登場人物のなかでは、一服の清涼剤的な役割を果たす。
驚くべきことに、彼女は90年の11月生まれで、現在たった10歳の若さ、というか幼さ! 90年と言ったら、平成2年であり、光GENJIがアルバム『Hey!
Say!』(※平成とかかってます)をリリースした時よりも後に生まれたってことだ。さらに驚くべきことは、韓は銭湯のシーンで裸体まで披露しているのだ。10歳、少女、裸、銭湯(お風呂)……これは、『ドラえもん』における源静香ではないか! 同じアニメでも、『GHOST
IN THE SHELL~甲殻機動隊~』(95)など『ドラえもん』とは相反する作品を手がける伊藤和典による脚本の映画で、まさかしずかちゃんに出会えるとは、予想だにしなかった。ま、キャラクター設定はずいぶん異なるのだが。
さて、問題は韓の裸体。これは、我々“この娘”映画塾における最大の試練である。というのも、このシーンを好意的に受け止めれば「グダグダと御託を並べてるけど、結局はロリコン趣味か」と全否定されるかも知れないのだ。それにモーニング娘。の新メンバーよりも年下で、鈴木清順の曾孫でもおかしくない少女の裸を歓迎するような意見は、ポリスからマンマークされそうなご時世である。でも、そんな想いがある塾生たちは、自分を否定しなくてよい。決して開き直りではなく、少女(の裸体)に魅了された自分と、そんな少女を登場させた本作について、真っ正面から向き合い、じっくりと考えるいいチャンスだからだ!……って、本当? おそらく本当。
未成年のヌードでふと頭をよぎったのは、『転校生』(82)における小林聡美である。小林は劇中で、大胆に上半身を見せるのだが、ボクはこのシーンで今ひとつ興奮できなかった。というのも、物語の設定上、姿は小林でも、中身は魂が入れ替わった尾美としのりだったからだ。ニキビフェースな尾美の裸だと考えると、興ざめであろう。あれから20年近く経つわけだが、CMで「ポポンエ~ッス~ッ!」などとやたら張り切った主婦を演じる小林を目の当たりにすると、「まだ中身は尾美のままだな。女性になりきろうとして、逆に張り切りすぎちゃってるもんな」などと、呟いたりする自分がいる。ロリコン趣味も歓迎されないが、この呟きも相当まずい気がする。
なんの話だかわからなくなってきたが、『ピストルオペラ』が韓英恵の衝撃的なデビュー作であるには違いなく、何十年後かの彼女は、才能ある脚本家・演出家と結ばれた後、サプリメントのCMに主婦役として出演……なんてことがあるかもしれない。
(佐藤ろまん)
【関連サイト】
・『ピストルオペラ』OFFICIAL SITE
http://www.shochiku.co.jp/pistolopera/
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【佐藤ろまん先生 Profile】
誕生:1968年、うつくしま未来博、あるいは千葉麗子の出身地でお馴染みの福島県生まれ。
本名:佐藤正文
最終学歴:秋元康作詞塾(通信教育/中退)。
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薄氷を踏むがごとく、どうにかこうにか文筆業で生計をたてている。依頼された仕事は十中八九断らないが、日本映画の他、お笑い、テレビなどに妄想という名のスパイスを加味したりするのが、得意かもねかもねSOかもね! コントも書いたりするけど、その辺はあまり触れないで。映画系だと隔月誌『アックス』(青林工藝舎)にて「ろまん子・ザ・ムービー危機イッパツ!」を連載中。もちろん好きな映画は、『おニャン子・ザ・ムービー危機イッパツ!』で、近影のモニターに映し出されているのは、その中で怪演する関根勤の雄姿。好きなクレージーキャッツのメンバーは、石橋エータロー。好きなドラえもんの道具は、独裁スイッチ。好きなVリーグのチームは、東レ・アローズ。将来の夢はバンテリンのCMに出ることと、西田ひかるの誕生日パーティーにお呼ばれすること。1通の間違いメールから始まる恋に恋するボクに、間違いメールを!
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