◆MOVIE Watch(毎週金曜日発行:無料)──────────1999-5-21


☆HEADLINE☆────────────────────────────

◆オススメロードショー
 『カラー・オブ・ハート』 完璧な世界なんてどこにもないのだ
 『レッド・バイオリン』 壮大な愛と官能の物語が、美しい旋律で紡がれる
 ○ CHECK 5本!
 『シューティング・スター』『沈む街』 ほか

◆新作先取り情報
 『スカートの翼ひろげて』 イギリス発の心地良い女性映画
 『悪魔のくちづけ』 『ユージュアル・サスペクツ』のスタッフが放つサスペンス
 ほか

◆シネマニュース
 『スター・ウォーズ/エピソード1』、全米公開! ほか

◆ピックアップシネマ
 『ペイバック』 天下無敵の「ハードボイルド・コメディー」

◆興行成績ベストテン
 『ペイバック』が初登場でダントツの首位!

◆特集「ヌーヴェルヴァーグ」
 (3)「ルイ・マル」、「アラン・レネ」

◆オススメVIDEO
 『トゥルーマン・ショー』 ひとりの男の自立は、すなわち人類の自立だった
 ○ CHECK 5本!
 ○ Weeklyレンタルビデオランキング

◆BS&CS今週のオススメ

◆今週の美女
 クリスティン・スコット・トーマス

◆MOVIE Watchプレゼント
 『グループ魂のでんきまむし』、『スターウォーズ エピソード1』


           ◆◆◆オススメロードショー◆◆◆

          今週末のオススメ封切り作品をセレクト!
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『カラー・オブ・ハート』 完璧な世界なんてどこにもないのだ
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5月22日よりみゆき座ほか全国東宝洋画系にて公開 '98年/アメリカ/2時間4分 ◇
監督・脚本:ゲーリー・ロス ◇出演:トビー・マグァイア、リース・ウィザースプ
ーン、ジョアン・アレン、ウィリアム・H・メイシー、ジェフ・ダニエルズ ◇配給
:ギャガ=ヒューマックス

 真面目な高校生デイビッド(トビー・マグァイア)の楽しみは、'50年代のアメリ
カの幸せな家庭を描いた白黒TVドラマ、『プレザントヴィル』を見ること。ある日、
彼は、ひょんなことから双子の妹ジェニファー(リース・ウィザースプーン)と『プ
レザントヴィル』の世界に入り込んでしまう。2人の存在によって、完璧な作り物の
白黒世界『プレザントヴィル』に色がつき始め、人々が本来の自分に目覚めていく
ファンタジー。
 しかし、人間的な「カラー人間」と、完璧だが不自然な「モノクロ人間」との確執
をコミカルに語り、時にアメリカの歴史をも風刺したりと、ただのファンタジーでは
終わらない作品だ。モノクロの世界に色がつく美しさを存分に堪能しよう。

□OFFICIAL SITE
 http://www.gaga.co.jp/movie/pleasant1.html
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『レッド・バイオリン』 壮大な愛と官能の物語が、美しい旋律で紡がれる
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5月22日よりシャンテ・シネにて公開 '98年/カナダ・イタリア/2時間11分 ◇監督
:フランソワ・ジラール ◇脚本:フランソワ・ジラール、ドン・マッケラー ◇出
演:サミュエル・L・ジャクソン、ジェイソン・フレミング、コーム・フィオール、
カルロ・セッチ、イレーネ・グラツィオーリ
◇配給:ギャガ・コミュニケーションズ
●シャンテ・シネ 11:00/1:40/4:20/7:00(~終了9:20)

 1681年。イタリアのバイオリン職人ニコロ・ブソッティ(カルロ・セッチ)は、子
供を死産し自らも命を落とした妻、アンナ(イレーネ・グラツィオーリ)への想いを
込めて、製作中だったバイオリンを完成させる。「レッド・バイオリン」と呼ばれる
名器を物語の軸に、4世紀に渡って、このバイオリンを手にした人々の運命を壮大に
描いた作品だ。この名器の謎に迫る鑑定家、チャールズ・モリッツを演じるサミュエ
ル・L・ジャクソンの演技には、バイオリンの魅力を増幅させるほどの説得力がある。
使用されている音楽はすべて、現代クラシック界の巨匠、ジョン・コリリアーノが作
曲、若き天才バイオリニスト、ジョシュア・ベルが見事な演奏を披露している。

□OFFICIAL SITE
 http://www.gaga.co.jp/movie/redvio1.html
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○ CHECK 5本! 今週末時点の劇場公開作、よりどり5本も要チェック
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チェック度1=★ チェック度2=★★ チェック度3=★★★(劇場へ急げ!)

■『シューティング・スター』 5月22日よりシネ・ヴィヴァン・六本木 ★★★
取引現場で出会った麻薬の売人レニーと、マフィアの情婦ジュリエット。2人は、
ひょんなことから手に入れたコカインを元手に一獲千金の夢を見るが……。ユーモラ
スで危険なボーイ・ミーツ・ガール物語。夢見る男女は、時に間違っていても美しい。
□OFFICIAL SITE
 http://www.telefilm.gc.ca/en/prod/film/film97/05.htm

■『沈む街』 5月22日よりユーロスペース(レイトショー) ★★
ダム建設により水没が決まっている町。そこで、日々、真面目に働く男と、旅館で働
く未亡人。2人の日常がある事件をきっかけに交差する。田舎町の人々を、中国の新
鋭ツァン・ミン監督が描いた。各国の映画祭で好評を博したヒューマン・ドラマ。

■『フェニックス』 5月22日より銀座シネパトス、新宿東映パラス3 ★★
アリゾナの刑事ハリーは、ギャンブルによる借金で首が回らなくなり、同僚と高利貸
しを襲おうと計画を立てるが……。レイ・リオッタが製作・主演したフィルム・ノワ
ール感覚のサスペンス。主人公の人間味あるワルぶりが、この映画最大の魅力だ。
□OFFICIAL SITE
 http://www.trimarkpictures.com/trihomevid/phoenix.html

■『日本黒社会』 5月22日より中野武蔵野ホール ★
とある田舎町。日本人と中国人の間に生まれた、呂龍一(ロリュウイチ)、俊霖(シ
ュンリン)、張(チャン)の3人は、ベトナム人が経営する工場を襲って金を奪い、
新宿へ向かうのだが……。三池崇史監督の「黒社会」シリーズがここに完結する。

■『ブレイド』 5月22日よりニュー東宝シネマほか全国東宝洋画系 ★★★
吸血鬼と人間が共存する街。果たして誰が吸血鬼なのか、ただ1人その本性を見破る、
吸血鬼と人間の双方の血を引く謎の男ブレイド。彼と吸血鬼との死闘を描いた、アメ
・コミ生まれのSFホラー・アクション。ウェズリー・スナイプスは活劇ヒーローだ。
□OFFICIAL SITE
 http://www.toho.co.jp/cinema/blade/welcome-j.html

             ◆◆◆新作先取り情報◆◆◆

       公開を待ちわびる新作情報を、期待値つきでお届けします。
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■『スカートの翼ひろげて』
7月/銀座テアトル西友(期待値75%)
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1941年、イギリスの美しい農場を舞台に出会った女性3人(ステラ、アグ、ブルー)。
ある日、爆音とともに、農場に戦闘機が墜落する。その瞬間、3人の心の中で何かが
動き出して……。それぞれの想いをやさしい視点で描いた、友情と恋の物語。監督・
脚本は、デビッド・リーランド(『あなたがいたら 少女リンダ』)。出演は、レイ
チェル・ワイズ、キャサリン・マコーマック、アンナ・フリエルほか。

□OFFICIAL SITE
 http://www.gaga.co.jp/movie/landg1.html
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■『悪魔のくちづけ』
7月下旬/銀座シネパトス(80%)
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造園計画をめぐり、英国紳士たちがそれぞれの野望を胸に、気高くも激しく、恋と策
略を繰り広げるロマンティック・サスペンス。監督は、今回がデビュー作となるフィ
リップ・ルスロ(『リバー・ランズ・スルー・イット』でアカデミー撮影賞を受賞)。
出演は、ユアン・マクレガー(『スター・ウォーズ/エピソード1』)、ピート・ポ
スルスウェイト、カーメン・チャップリン、グレタ・スカッキ。
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■『森と水のゆめ ─ 大雪・トムラウシ ─』
6月19日/BOX東中野 モーニングショー(65%)
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日本屈指の大河である「十勝川」の源流部原生自然環境保全地域に、初めてカメラが
入った。その森は、北ヨーロッパからシベリア、カナダに広がる北半球の大針葉樹林
帯の南限にあたる貴重な原生林。この営みをドキュメントしたのは、藤本幸久監督
(『教えられなかった戦争~侵略・マレー半島』)。出演は、小川豊之進、横須賀邦
子。朗読、能登真由美。北海道の町、新得の人々が作り上げたドキュメンタリー作品。

             ◆◆◆シネマニュース◆◆◆
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★『スター・ウォーズ/エピソード1』、全米公開!
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5月19日未明(現地時間)、ファン待望の『スター・ウォーズ/エピソード1』が、全
米各地で公開初日を迎えた。公開に先立って行われた試写では、出来映えに関する一
部批評家の否定的なコメントが取りざたされる一幕もあったが、そんな騒ぎもなんの
その。前売り券の発売が開始された5月12日までには、駆けつけた熱烈なファンが劇
場前に長蛇の列をなし、米国のあるコンサルティング会社の推計で、約220万人のビ
ジネスマンが会社を休み、およそ380億円の損失が見込まれるほどのフィーバーぶり
をみせている。関連グッズの売り上げも好調で、80種ほどが予定されている新作キャ
ラクターグッズのうち、すでに発売されている40種ほどの売り上げは、これまでにお
よそ5,200億円を記録しているという。1977年、わずか44館の劇場でスタートしたシ
リーズ公開から22年。2,000以上の特撮シーンを駆使し、前3部作の謎を解き明かす期
待のシリーズ最新作は、7月10日に日本公開が予定されている。

□OFFICIAL SITE
 http://www.starwars.com/
□eiga.comハリウッド・ツアーレポート
 http://www.eiga.com/starwars/
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★ソニー、ネットワークイベント「@es(アットマーク・エス)」を開催中
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ソニーマーケティング(株)(本社東京都港区)は、(株)ソニー・ミュージックエ
ンタテインメントおよびデジタルメディアエンタテインメント(株)バイオネット局
と共に、人気サイトとの提携によるインターネット上の仮想イベント、「@es(アッ
トマーク・エス)presented by VAIO」を開催中(7月4日(日)まで)。このイベン
トは、インターネットメディアの可能性を探るための新しい試みとして行われるもの
で、イベントサーバー上では22のサイトがイベント向けの期間限定コンテンツを展開、
毎週新しいステージが登場し、各ステージも日々更新されていく。来訪者はイベント
内の各サイトを自由に閲覧することができ、さらに「パスポート」登録者には、VAIO
オリジナルグッズなど、さまざまなプレゼントを獲得するチャンスが与えられる。ま
た、VAIOを愛用するアーティストたちのインタビュー映像と、ソニーピクチャーズエ
ンタテインメントの映画予告編が多数収録されている「@esオリジナルインターネッ
トCD-ROM」(Windows95/98のみ対応)を先着10万名にプレゼント。詳細は下記サイト
にて。

□「@es(アットマーク・エス)presented by VAIO」
 http://www.sony.co.jp/es3315/
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★「ブルース・リー大会」、キネカ大森で開催
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5月22日(土)から6月4日(金)まで、東京・品川区のキネカ大森で、「ブルース・
リー大会」が開催される。上映作品は、『ドラゴン危機一発』『ドラゴンへの道』
(以上、5月22日~28日)、『ブルース・リーの生と死』『ブルース・リー 死亡遊
戯』(以上、5月29日~6月4日)。入場者の中から抽選で50名に、ブルース・リーお
宝グッズをプレゼント。
また、6月5日(土)からは『燃えよドラゴン ディレクターズ・カット/デジタル・
バージョン』の上映を予定。先着3,000名にB4特大チラシがプレゼントされるほか、
各種イベントも用意されている。
上映時間・料金など詳細は、直接劇場(03-3762-6000)まで。
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★『ハイ・アート』、前夜祭イベント開催
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5月29日から渋谷シネマライズで公開が予定されている『ハイ・アート』(監督/リ
サ・チョロデンコ、出演/ラダ・ミッチェル、アリー・シーディー)の前夜祭イベン
トが、5月28日(金)、六本木"COLOSSEUM HALL"にて開催される(21:00~、入場は
女性のみ)。また、初日最終回の上映前に、米原康正(「アウフォト」編集長)とあ
んじ(モデル)のトークショーも予定されている。お問い合わせは、キネティック
(03-5575-6735)まで。

□OFFICIAL SITE
 http://www.kinetique.co.jp/highart/highart.html
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★全米興行収入、"The Mummy"が2週連続首位
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先週末の全米興行収入は、ブレンダン・フレイザー主演のスリラー&アクション大作
"The Mummy"(『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』/今夏公開予定)が、2週連続で
首位。2位は先週同様、ショーン・コネリー主演の"Entrapment"、3位は、キアヌ・リ
ーブス主演の"The Matrix"。

□"The Mummy" OFFICIAL SITE
 http://www.themummy.com/
□"Entrapment" OFFICIAL SITE
 http://www.foxmovies.com/entrapmentcs.html
□"The Matrix" OFFICIAL SITE
 http://www.whatisthematrix.com/


           ◆◆◆ピックアップシネマ◆◆◆

          劇場公開中の作品レビューをお届けします。
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『ペイバック』 天下無敵の「ハードボイルド・コメディー」
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 結論から言わせてもらえば、あらゆる面でこの映画は成功している ─ もちろんそ
れは、「ハードボイルド・コメディー」としての話だが。
 主人公のポーターを演じるメル・ギブソンは、最初、押し殺したような声で語る。
口数の少ない口にはタバコをくわえ、目をギョロッとさせる無表情さ。これこそハー
ドボイルド的アプローチ……というか、実に『マッドマックス』的なのだ。そして、
ポーターの妻は薬漬けのセクシーな女で、男を駄目にするタイプ(ただし、彼女の登
場は冒頭のみ)。強盗の相棒で、ポーターを罠にはめて14万ドルをせしめたヴァルは
情緒不安定ぎみの男……と、いずれもハードボイルドによく登場するタイプだ。そこ
で再びメル・ギブソンにまなざしを戻すと、彼の顔がピクピクと小さな痙攣を見せは
じめている。これは、彼が、数々のアクション映画(具体的には『リーサル・ウェポ
ン』)で見せる「バイオレンス・サイン」。「来るぞ来るぞ」と思っていたらやはり
来た! 問答無用のバイオレンス!! 被害者は元相棒のヴァル。いつの間にか、主人
公のまわりにはコミカルな要素をもつ人物ばかりがあふれており、中盤を過ぎるころ
には、オフ・ビートな笑いが随所にちりばめられたハードボイルドに、作品全体が早
変わりしているというわけだ。なにせ、あのジェームズ・コバーンまでもが、その一
翼を担ってしまう贅沢さ。ふと気付けば、メル・ギブソンはいつもの皮ジャン姿で、
無表情ではあるが、『リーサル・ウェポン』のリッグス刑事そのままのバイオレンス
と、あたかも自らの出演作をたどるようなパロディ感覚で役柄を楽しんでしまってい
るではないか。
 というわけで、この『ペイバック』、オフビート・コメディとしては無敵な作品に
仕上がっている。ここまでやってのけるメル・ギブソンに、アクション映画の未来を
見た ─ そんな気がしてならないのである。

□OFFICIAL SITE
 http://www.victor.co.jp/movie/payback/index.html

           ◆◆◆興行成績ベストテン◆◆◆
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  『ペイバック』が『恋におちたシェイクスピア』をおさえて、初登場で
  首位を獲得した週末。同じく初登場の『プラクティカル・マジック』は
  10位。先週2位の『スター・トレック 叛乱』が7位に落ち着き、『ライ
  フ・イズ・ビューティフル』の動員数が再び盛り返している。
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 1 初(─)ペイバック                 ( 1週)
 2 ↓( 1)恋におちたシェイクスピア          ( 3週)
 3 →( 3)ライフ・イズ・ビューティフル        ( 5週)
 4 →( 4)8mm                     ( 3週)
 5 ↑( 6)名探偵コナン 世紀末の魔術師        ( 5週)
 6 ↑( 7)シン・レッド・ライン            ( 6週)
 7 ↓( 2)スター・トレック 叛乱            ( 2週)
 8 ↑( 9)39 刑法第三十九条             ( 3週)
 9 ↓( 8)ラウンダーズ                ( 2週)
 10 初(─)プラクティカル・マジック          ( 1週)

 興行通信社調べ1999/5/15~1999/5/16(銀座・新宿・渋谷3地区代表館集計)

               ◆◆◆特集◆◆◆

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「ヌーヴェルヴァーグ」 (3)「ルイ・マル」、「アラン・レネ」
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 先に語ったように、「ヌーヴェルヴァーグ」は、「セーヌ左岸派」と「カイエ派」
の大きな2つのグループに分けることができる。しかし、どちらの派にも属さないが、
「ヌーヴェルヴァーグ」を語るには絶対に落とせない作家、それがルイ・マルだ。
彼は、1956年、『沈黙の世界』というドキュメンタリー映画でカンヌ映画祭のパルム
ドールを受賞し、翌年、若干25歳で『死刑台のエレベーター』を発表した監督。実は、
この作品の成功が、当時無名の若い映画作家たちを、世に排出するきっかけを作った
と言っても過言ではない。彼の『死刑台~』製作の発想は、それまでのフランス映画
界とは一線を画した、新鮮で非常におもしろいものだった。彼自身の言葉によれば、
「私は、この作品全体を三楽章の音楽のつもりで作った。マイルス・デイヴィスの
《ジャズのエフェクト》を全編に生かそうと試みたんだ」。全編で流れるマイルスの
モダン・ジャズは、大都市パリの人々に落とされる孤独や不安の陰を、より一層浮き
彫りにすることに成功している。そしてこの感覚を、当時のフランスの若者たちは熱
狂的に支持したわけだ。この後も、『恋人たち』('58年)、『地下鉄のザジ』('60
年)など精力的に作品を発表し、ルイ・マルの名が私たちの記憶に刻まれていく。

 さて、次に「セーヌ左岸派」のアラン・レネである。レネは当時、「ヌーヴェルヴ
ァーグ」の代表作でもある『二十四時間の情事』('59年)以前にも、短編『ヴァン
・ゴッホ』('48年)、『ゲルニカ』('51年)、『夜と霧』('55年)などの優れた
ドキュメンタリー作品を発表しており、かなり知られた存在だったのだが、『二十四
時間~』でもそれまでのドキュメンタリー作品でも、常に一貫して、外的な「現実」
と内的な「意識」が交錯するところから問題の核心に迫ろうとする向きがあった。た
とえば、『二十四時間~』の冒頭で展開される「見た」「見ていない」という対話。
「見た」と思っていたものを、実はなにも「見ていない」ことから生じる、「意識」
の日常性の崩壊を契機に、果たして我々は真に「見る」ことが出来るのかということ
や、対象との関わり方、「見る」ことの主体化といったものを各作品で追求していっ
た。その意味で、レネの作品は「ヌーヴェルヴァーグ」の作家たちの中でも実に「作
家的」であり、どちらかといえば万人にはウケない要素にあふれた作品が多い。しか
し、『二十四時間~』は、発表されるやたちまち反響を呼び、人々の反応にレネ本人
も驚いたという。これは、とりもなおさず、映画界がレネのような映画作家を待って
いたということにほかならないのである。

□TSUTAYA Web ビデオ検索
 http://ff.tsutaya.ccc.co.jp/


           ◆◆◆オススメVIDEO◆◆◆

       1番のオススメは『トゥルーマン・ショー』となりま
       したが、今週は話題作・注目作が集中。『ビッグ・ヒ
       ット』も楽しめるし、マニアものの2本もいい出来。
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『トゥルーマン・ショー』 ひとりの男の自立は、すなわち人類の自立だった
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【データ】
'98年/米/1時間43分(5/28発売:CICビクタービデオ)
監督:ピーター・ウィアー 出演:ジム・キャリー,エド・ハリス,ナターシャ・マケル
ホーン,ローラ・リニー,ノア・エメリッヒ,ホランド・テイラー

 明るい挨拶とともに出勤する青年(ジム・キャリー)。その姿を、ブラウン管の向
こうで全米の視聴者が見守っていた。その町は巨大ドームの中で管理され、住民もす
べて役者。その青年だけが真相を知らず、生まれたときからずっと、ケーブルTV番組
「ザ・トゥルーマン・ショー」で「見られて」いたのだった。『ガタカ』を監督した
アンドリュー・ニコルの脚本、『グリーン・カード』のピーター・ウィアー監督によ
り、閉ざされた世界に疑いを持ち、作られた運命への反抗を挑む青年の姿を描く。
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○ CHECK 5本!
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■『ヴァンパイア 最期の聖戦』1時間47分/米(5/28発売:日本ヘラルド映画)
時は20世紀末。ヴァチカンの命を受けた聖戦士の率いるヴァンパイア・ハンター集団
は、ヴァンパイアの隠れ家を襲撃。逃れた親玉ヴァレックは復讐を開始、ハンターた
ちを虐殺し、さらにある儀式を完成させようとしていた……。
監督:ジョン・カーペンター 出演:ジェイムズ・ウッズ,ダニエル・ボールドウィン,
シェリル・リー,トーマス・イアン・グリフィス,ティム・グニー

■『X-ファイル ザ・ムービー』2時間3分/米
(5/28発売:フォックス ホーム エンターテイメント)
米TVの人気シリーズ、日本でもビデオ・TVで話題になった『X-ファイル』の映画化。
目撃される数々のUFO、宇宙人に誘拐されたという人々、アメリカ政府の極秘研究…
これまでシリーズで描いてきた謎の一部が全貌を現す。また、危機とともに深まる主
役の捜査員の男女の関係も見どころ。
監督:ロブ・ボーマン 出演:デヴィッド・ドゥゴヴニー,ジリアン・アンダーソン

■『ビッグ・ヒット』1時間31分/米
(5/28発売:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)
仕事の出来は一流、女には情けないほど優しすぎる、組織専属の若き殺し屋。仲間が
企んだ誘拐計画に乗ったせいで、組織から追われるハメに……。『ブギーナイツ』の
M・ウォルバーグ主演による痛快アクションコメディ。
監督:カーク・ウォン 出演:マーク・ウォルバーグ,ルー・ダイアモンド・フィリップ
ス,チャイナ・チャウ,ライニー・カザン,エリオット・グールド,サブ・シモノー

■『クローズ・アップ』1時間30分/イラン
(5/22発売:ユーロスペース,日本スカイウェイ)
有名映画監督の名をかたる青年の起こした詐欺事件を、事件当事者の出演で描いた半
ドキュメンタリー作品。
監督:アッバス・キアロスタミ 出演:ホセイン・サブジアン,モフセン・マフマルバフ

■『レッド・コーナー 北京のふたり』2時間2分/米
(5/28レンタル:ワーナー・ホーム・ビデオ)
北京を訪れたアメリカの弁護士が、夜をともにした娼婦の殺害の罪を着せられた。異
国の裁判で葬られようとする危機の中、法廷弁護人の女性を頼りに陰謀へ挑む。
監督:ジョン・アヴネット 出演:リチャード・ギア,バイ・リン,ツァイ・チン

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○ Weeklyレンタルビデオランキング           5月9日~5月15日
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【 1】( 1)ロスト・イン・スペース           CIC・ビクタービデオ
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【 2】( 2)シティ・オブ・エンジェル         ワーナー ホーム ビデオ
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【 3】( 3)マーキュリー・ライジング          CIC・ビクタービデオ
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【 4】( 4)ディープインパクト             CIC・ビクタービデオ
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【 5】( 5)スピーシーズ 2              ワーナー ホーム ビデオ
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【 6】( 6)始皇帝暗殺          アスミック・エース エンタテインメント
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【 7】( 7)CUBE                     ポニーキャニオン
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【 8】(11)フラッド                     パイオニアLDC
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【 9】( 8)TAXi                     ポニーキャニオン
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【10】(13)L.A.コンフィデンシャル            ポニーキャニオン
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*このランキングは全国の「TSUTAYA」942店舗のデータにより集計されています。
()内は先週のランキング (再)は再度ランクイン
            □TSUTAYAのホームページ:http://www.tsutaya.co.jp/

          ◆◆◆BS&CS今週のオススメ◆◆◆
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 5/23(日)『殺人魚フライング・キラー』 スカイ名画座(23:00~)
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◇監督:ジェームズ・キャメロン 出演:パトリシア・オニール、ランス・ヘンリク
セン、リッキー・G・ポール

 カリブの美しい浜辺で余暇を楽しむ観光客を、突然、魚の大群が襲ってきた。しか
も、空から……。なんと、その魚は、2枚の翼に鋭い歯を持つ、戦争用に開発された
殺人魚だった。
あの『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督が、'81年に放った低予算パニ
ック映画。低予算映画はアイディアが命。やはり、才がある監督は、予算がなくても
面白いものを作る。つまり、バカバカしいアイディアも豊富なのだ。
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 5/25(火)『ハスラー』 WOWOW(20:00~)
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◇監督:ロバート・ロッセン 出演:ポール・ニューマン、ジャッキー・グリースン、
パイパー・ローリー

 若きハスラー(賭けビリヤードのプロ)エディ(ポール・ニューマン)が、「ミネ
ソタの名人」と呼ばれる男、ファッツ(ジャッキー・グリースン)に勝負を挑む。し
かし、逆転で敗れ文無しになってしまう。エディは、ファッツに再戦を申し込むのだ
が……。全編の3分の2がゲームシーン。球に人生を賭ける男たちを描いたギャンブル
映画の教科書。その教科書度は、公開中の『ラウンダーズ』を観ても明らかだ。
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 5/26(水)『家族ゲーム』 NHK衛星第2(23:00~)
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◇監督:森田芳光 出演:松田優作、宮川一朗太、伊丹十三、由紀さおり

 落ちこぼれの受験生(宮川一朗太)のもとへ、ある日、1人の三流大学の学生家庭
教師(松田優作)がやってくる。しかし、この家庭教師が、妙なスパルタで……。話
題の映画、『39 憲法第三十九条』が公開中の森田芳光監督が'83年に放った衝撃作。
テーブルに横一列に並んで食事をする家族の乾いた感覚と、松田優作と宮川一朗太の
ささやき声による会話が印象的だ。故、松田優作、伊丹十三の演技にも注目!
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 5/27(木)『カスパー・ハウザーの謎』 シネフィル・イマジカ(20:50~)
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◇監督:ヴェルナー・ヘルツォーク 出演:ブルーノ・S、バルター・ラーデンガスト

 1828年、バイエルン王国に突然奇妙な若者が現れた。身元は不明。年齢は17歳前後。
ずんぐりとした体格でろくに歩けず、言葉も話せない。カスパー・ハウザーと名付け
られた若者は、社会に適応できるよう教育を受けるのだが……。19世紀にドイツで実
際に起こった事件を元に、ジャーマン・シネマの巨人、ヴェルナー・ヘルツォーク監
督が、謎の青年の存在の意味を探った意欲作。今週一番のオススメだ。

             ◆◆◆今週の美女◆◆◆
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◆クリスティン・スコット・トーマス◆ Kristin Scott Thomas [1960.5.24.生まれ]
くっきりとした目が際だつメリハリのある都会的なフェイス。粋な帽子をかぶればそ
のまま古きハリウッドにトリップしそうな彼女はイギリス生まれで今年まだ39歳。

▽オススメな出演作品
『プリンス/アンダー・ザ・チェリームーン』'86
 監督:プリンス 出演:プリンス
『愛を止めないで』'90
 監督:エリック・ロシャン 出演:シャルロット・ゲンズブール
『赤い航路』'92
 監督:ロマン・ポランスキー 出演:ヒュー・グラント
『フォー・ウェディング』'94
 監督:マイク・ニューウェル 出演:ヒュー・グラント
『ミッション:インポッシブル』'96
 監督:ブライアン・デ・パルマ 出演:トム・クルーズ
『イングリッシュ・ペイシェント』'96
 監督:アンソニー・ミンゲラ 出演:レイフ・ファインズ
『モンタナの風に抱かれて』'98
 監督:ロバート・レッドフォード 出演:ロバート・レッドフォード

         ◆◆◆MOVIE Watchプレゼント◆◆◆
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6月5日より中野武蔵野ホールにて堂々のロードショー
『グループ魂のでんきまむし』の特別鑑賞券を5組10名さまにプレゼント!
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MOVIE Watchでは、6月5日より中野武蔵野ホール(東京)にて公開される、
藤田秀幸監督、脚本の『グループ魂のでんきまむし』の特別鑑賞券を抽選で5組10名
さまにプレゼントいたします。

ご希望の方は下記メールアドレスに氏名、送付先住所、電話番号、を必ず記入のうえ、
『グループ魂のでんきまむし』の特別鑑賞券希望と明記しご応募ください。

 上映の日程は以下のとおり
  ■日時:6月5日より
  ■場所:中野武蔵野ホール

→ ぶっとくて、バッドなコント・グループ“グループ魂”の明日はどっちだ!!
鬼才松尾スズキが主宰する大人気の劇団大人計画から生まれたコント・トリオ
“グループ魂”。
三人の友情は復活するのか? それとも、そんなもん最初から無かったのか??
エキセントリックで歯止めのきかない暴力と笑い。この映画は“グループ魂”の
リアル・ドキュメンタリーなのか? それとも完全なフィクションなのか・・・

  ■応募先メールアドレス
   movie-watch-present@impress.co.jp
  ■締め切りは5月26日(水)

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7月10日まで待っていられないあなたに
全米公開中!『スターウォーズ エピソード1』のグッズをプレゼント!
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●ポスター(1名さま)
5月19日より全米で公開され、「タイタニック」を越える勢いともいわれている、今
世紀最後の超SFムービー『スターウォーズ エピソード1』。
その映画のポスターを編集部がおみやげに買ってきました。
ANAKIN VERT・SPACE BATTLE・POD RACEの3種類を1組にして1名さまにプレゼントいた
します。

●COMMTECHのC-3POのフィギュア(1名さま)
COMMTECHのCHIPが同梱されたC-3POのフィギュアを1名さまにプレゼントします。
このフィギュアは、COMMTECHのREADERに乗せるとお喋りをするという優れもの。
残念ながら編集部が購入したときにはすでにこのREADERが売切れ・・・なので今回は
フィギュアのみ。

ご希望の方は以下のメールアドレスに「ポスター希望」、「C-3PO希望」と明記のう
え、氏名、送付先住所、電話番号、を必ず記入したうえでご応募ください。

  ■応募先メールアドレス
   movie-watch-present@impress.co.jp
  ■締め切りは5月26日(水)

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