◆MOVIE Watch (毎週金曜日発行:無料)──────── 1998-11-13


☆今週のHEADLINE☆─────────────────────────────

●MOVIE Watchリアル・ランキング
 MOVIE Watchがオススメする今週の5本(平均値/ライター別評点)

●オススメ封切り情報
 『トゥルーマン・ショー』 ジム・キャリー主演のファンタジックな感動作
 『始皇帝暗殺』 製作費60億円をかけた超豪華な歴史大作
 『アンツ』 声優の豪華さでは歴代ナンバー・ワン間違いなし!
 ○公開作 CHECK5本!
 『ニキ・ド・サンファル/美しい獣(ひと)』『クジラの跳躍』 ほか

●MOVIE PADDOCK 出走を待ちわびる新作情報(期待値%つき!)
 『天使が見た夢』 '98年カンヌ国際映画祭・主演女優賞をダブル受賞した話題作
 『流★星』 自分の運命を変えるために、奇妙な3人組が挑む大賭博 ほか

●映画4人衆
 『ニルヴァーナ』 自ら"知覚のドア"を開けて、探り当てる自分

●TOPICS
 淀川長治氏、死去 ほか

●興行成績ベストテン

●特別企画
 「第11回東京国際映画祭」、クロージング&総括レポート
 「東京国際ファンタスティック映画祭'98」をふりかえって

●オススメVIDEO
 『ワグ・ザ・ドッグ』 淡々としたペースがいい、アメリカという国の黄昏
 ○CHECK 6本!

●BS&CS今週の3本

●THE DAY OF BIRTH

●後記


                [◆◆◆MOVIE Watchリアル・ランキング◆◆◆]
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    現時点での劇場公開作からピック・アップした、MOVIE Watch独自の
        採点による上位5作品。今観るならこれだ!
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  精神性を重視した独特の世界観が持ち味の、ガブリエレ・サルヴァトレス
  監督作『ニルヴァーナ』がランクイン。作品のカラー自体では好みが分か
  れるかもしれないが、観終わったあと妙にあたたかい何かが残る、不思議
  な1本。
             平均値/ライター別評点(5点満点)

                  唯  巴  古  冴
 1.ブギー・ナイツ      4.63 5.0 5.0 4.0 4.5
 2.モンタナの風に抱かれて  4.38 5.0 4.5 4.0 4.0
 3.ニルヴァーナ       4.13 4.5 4.0 4.0 4.0
 4.マスク・オブ・ゾロ    3.63 3.0 4.0 4.0 3.5
 4.マルセイユの恋      3.63 4.0 4.0 3.0 3.5

                    [◆◆◆オススメ封切り情報◆◆◆]
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『トゥルーマン・ショー』     ジム・キャリー主演のファンタジックな感動作
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11月14日より全国松竹東急洋画系にて公開 '98年/アメリカ/1時間43分 ◇監督:
ピーター・ウィアー ◇脚本:アンドリュー・ニコル ◇出演:ジム・キャリー、エ
ド・ハリス、ローラ・リニー、ナターシャ・マケルホーン ◇配給:UIP

 主演作『マスク』が日本も大ヒットして以来、軽薄でおちゃらけた俳優という印象
ばかりが先行していたジム・キャリーの最新作。生まれて以来、私生活のすべてをテ
レビ中継されていた男が、本当の世界に踏み出して行こうとする近未来SF風のシリア
スなファンタジーだ。脚本のアンドリュー・ニコルは『ガタカ』の監督・脚本家とし
て、映画ファンにはお馴染みの人。ハラハラドキドキの後は、大きな感動に包まれる。
 □OFFICIAL SITE
  http://www.trumanshow.com/
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『始皇帝暗殺』             製作費60億円をかけた超豪華な歴史大作
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11月14日より全国松竹東急洋画系にて公開 '98年/日本、中国、仏、米/2時間48分
◇監督・脚本・製作・出演:チェン・カイコー ◇出演:コン・リー、チャン・フォ
ンイー、リー・シュエチエン、スン・チョウ、リュイ・シャオホ ◇配給:ヘラルド

 『さらば、わが愛/覇王別姫』でカンヌ映画祭のパルムドールを受賞したチェン・
カイコー監督が、史上初めて中国を武力統一した秦の始皇帝の若き日を描く超大作。
始皇帝の宮殿を原寸大のオープンセットで再現するなど、アジア映画としては破格の
大予算を投入して重厚な歴史絵巻を作り上げた。司馬遷の「史記」に登場するエピ
ソードをもとに、若き独裁者の栄光と孤独、愛と猜疑心の相克を描き出している。
 □OFFICIAL SITE
  http://www.spe.sony.com/classics/archive/99/assassin.html
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『アンツ』          声優の豪華さでは歴代ナンバー・ワン間違いなし!
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11月14日より全国東宝洋画系にて公開 '98年/アメリカ/1時間23分 ◇監督:エリ
ック・ダーネル、ティム・ジョンソン ◇声優:ウディ・アレン、シャロン・ストー
ン、ジーン・ハックマン、シルベスター・スタローン ◇配給:UIP

 地中に住むアリの世界を、最新の3DCG技術を駆使して描くアニメーション映画。働
きアリのZと王女バーラの冒険に、シロアリとの戦争、兵隊アリたちのクーデター計
画などがからんだ内容だ。アリの大群をCGで描いた場面は、とにかくスゴイ! ウデ
ィ・アレン以下、数多くのハリウッド・スターたちがアリたちの声を演じている。各
キャラクターの顔や表情などが、声優となったスターたちに似せてあるのが面白い。
 □OFFICIAL SITE
  http://www.antz.com/
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○公開作 CHECK 5本!
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★=注目作 ★★=見て損はしない ★★★=これは必見! (未)=未見

■『ニキ・ド・サンファル/美しい獣(ひと)』
                11月14日よりBOX東中野にて公開 ★★
現代美術アーティスト、ニキ・ド・サンファルの半生を綴ったドキュメンタリー映画。
 □OFFICIAL SITE
  http://www02.so-net.or.jp/~pandora/niki.html

■『クジラの跳躍』 11月14日より銀座テアトル西友にて公開 ★★
イラストレーターたむらしげるのファンタジックな世界を、CGを使って映画化。

■『キャメロット』 11月14日より恵比寿ガーデンシネマ他にて公開 ★
騎士にあこがれる少女が、盗み出されたアーサー王の剣を悪者から取り戻す。
 □OFFICIAL SITE
  http://www.warnerbros.co.jp/movie/camelot/index.htm

■『インフィニティ/無限の愛』 11月13日よりシネマ・カリテにて公開 ★
ノーベル賞物理学者ファインマン博士の自伝を、マシュー・ブロデリックが映画化。
 □OFFICIAL SITE
  http://www1.sphere.ne.jp/there-s/in/index.htm

■『時雨の記』 11月14日より全国東映系にて公開 ★
中里恒子のベストセラー小説を吉永小百合主演で映画化。共演の渡哲也が素晴らしい。
 □OFFICIAL SITE
  http://www.toei-group.co.jp/MOVIE/new_mov/shigure/index.htm
 □MOVIE Watch の紹介ページ
  http://www.watch.impress.co.jp/movie/
                           [Written by 服部弘一郎]

                        [◆◆◆MOVIE PADDOCK◆◆◆]
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     出走を待ちわびる新作情報を、期待値%つきでお届けします
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■『天使が見た夢』
'99年正月/シネスイッチ銀座(期待値75%)
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自由で屈託のないイザ(エロディ・ブシェーズ)と、いつも不機嫌で反抗的なマリー
(ナターシャ・レニエ)は共に21歳。正反対の2人は、社会から放り出されてしまっ
たような不安と孤独感で結ばれていた。しかし、マリーが地元の資産家の息子・クリ
ス(グレゴワール・コラン)との報われない恋にのめり込んでいった頃から、2人の
関係は軋みはじめ、次第に衝突を繰り返すようになっていく……。'98年カンヌ国際
映画祭・主演女優賞をダブル受賞した話題作。エリック・ゾンカ監督作品。
 □OFFICIAL SITE
  http://www.spe.sony.com/classics/archive/99/dreamlifeofangels.html
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■『流★星』
'99年1月30日/テアトル新宿(レイトショー)(60%)
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年金生活でささやかな競馬道楽が楽しみの菊次郎(緒形拳)は、ひょんなことから知
り合った少女・ひとみ(清水真実)のためにまとまった現金が必要になり、地元のG1
級の名馬リュウセイを盗もうと思い立つ。そんな菊次郎に反発しながらも次第に心を
寄せ、共にこの計画に挑もうとする街で一番情けないチンピラ・川崎(江口洋介)。
自分の運命を変えるために3人が挑む大賭博を、阪本順治・坂東玉三郎らのデビュー
作をチーフ助監督として支え、監督デビューが待望されていた山仲浩充が描く。
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■『トップレス/TOPLESS』
'99年新春/シネ・ヴィヴァン・六本木(70%)
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カジュアル・セックスで妊娠したリズ、トップレスで生活する女たちをドキュメント
するキレた脚本家のアント、セックスも愛情も抜きの同棲にチャレンジするニールな
どなど……。日常の中の奇人・変人の部類に属する彼らが、愛を知らず勝手なトラウ
マを抱えたまま暴走していくさまを、今話題の天才肌ハリー・シンクレア監督が、徹
底したリアル感覚で描き出す。'97年ニュージーランド・フィルム・アワード8部門受
賞作品。


                         [◆◆◆映画4人衆◆◆◆]
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『ニルヴァーナ』 自ら"知覚のドア"を開けて、探り当てる自分
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2050年12月21日、オコサマ・スター社の専属人気ゲーム・デザイナー、ジミー(クリ
ストファー・ランバート)は、1年前に恋人リザが彼のもとを去って以来、生きる意
味を見失ってしまった。クリスマスに店頭に並ぶことになっている新作ゲームソフト
<ニルヴァーナ>を完成させることもできず、リザの残したビデオ・レターを繰り返
し見つめ続ける日々。そんな時、コンピューター・ウイルスに感染した<ニルヴァー
ナ>のキャラクター、ソロ(ディエゴ・アバタントゥオーノ)が自我に目覚めるとい
う信じられない事態が発生した。彼は自分がゲーム・キャラクターであることを悟り
「自分を解放してくれ」とスクリーンの中からジミーに懇願するのだが……。
                                            (満点は★5つ/半は★半分)

■哲学と直観は永遠に必要。このビシビシくる深く鋭い視点と含蓄、往年の近未来映
画のフェイクなんて思ってると見過ごすかも。見る人を選ぶ映画。 ★★★★半<唯>

■クリストファー・ランバートって、近未来映画にホント、ピッタリ。"ビートニッ
ク"の感覚が好きな人には特にオススメ。             ★★★★☆<古>

■わたしという記憶の不確かさに感じる心地よい恐怖。その未来は、新しさの中に古
くささを感じさせながら、スクリーンの枠を超えて脳に迫りくる。 ★★★★☆<巴>

■物語の進行に従って、日常に埋没していた身体の隅々までの感覚が目覚めていくよ
うに思える。涙や心があたたかさを取り戻して救われていく感じ。 ★★★★☆<冴>

 □OFFICIAL SITE
  http://www.fujicreative.com/nirvana/index2.html

 □MOVIE Watch の紹介ページ
  http://www.watch.impress.co.jp/movie/

                            [◆◆◆TOPICS◆◆◆]
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★淀川長治氏、死去
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映画評論家の淀川長治氏が、11日午後8時7分、心不全のため東京都文京区の東大病院
で死去した。享年89歳。葬儀・告別式は行わず、年内に「さよなら会」が行われるも
よう。1カ月ほど前から体調がすぐれず入院生活を送っていたが、治療を受けながら
病室でも執筆活動を続け、'66年の番組開始から30年以上にわたって解説者を務めて
きたテレビ朝日系の「日曜洋画劇場」の収録を10日に行うなど、最後までその映画に
対する意欲的な姿勢は変わらなかった。編集部では、心からのご冥福をお祈りすると
共に、下記URLにて随時追悼コメントを掲載していく予定。

 □追悼 淀川長治氏
  http://www.werde.com/movie/special/yodogawa.html
 □産経Cinema Clip
  http://www.sankei.co.jp/mov/movie.html
 □「淀川長治の銀幕旅行」最新(最終)ページ
  http://www.sankei.co.jp/mov/yodogawa/98/981110ydg.html
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★ブラッド・ピット来日記者会見レポート
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第11回東京国際映画祭のクロージングを飾った『ジョー・ブラックをよろしく』。会
場には主演のブラッド・ピット目当てに4000人ものファンが集まった。その翌日、11
月9日(月)にフォーシーズンズ・ホテルにて行われたブラッド・ピット来日記者会
見会場にも300人を超える報道陣が駆けつけ、彼の大物ぶりをうかがわせていた。し
かし当の本人はいたって気さくに好青年ぶりを発揮。そんな会見の模様を下記URLに
てお伝えする。

 □ブラッド・ピット来日記者会見レポート(Reported by 清水 匡)
  http://www.werde.com/movie/festival/brad_pitt.html
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★通産省・日本映画輸出促進助成金制度が来年4月より施行予定
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先週6日、渋谷・Bunkamuraにて、来年4月から施行される予定の「日本映画輸出促進
助成金(仮称)」に関する説明会が、製作関係者ら200名ほどを招いて開かれた。こ
の助成金制度は、財団法人東京国際映像文化振興会が通産省の協力のもとで進めてい
るもので、日本映画を海外の映画祭へ出品させる際に、字幕製作費や渡航費、プリン
トのブローアップ費などにかかる費用の一部を、助成金によって補助しようとするも
の。現段階では、(1)対象となる映画の範囲については原則として一切の規定を設
けないこと、(2)交付対象を決定する新たな機関を設置すること、(3)助成対象と
する作品数は年間で10本~20本以下にすること、などが懸案となっている。助成金は
公費によって賄われることから、予算額や細かい規定などは、来年3月の財団理事会
で最終的に決定されるもよう。
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★「鎌倉シネマワールド」、閉鎖決定
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松竹は、同社の創業100周年を記念して100億円を投入した映像テーマパーク、「鎌倉
シネマワールド」を来月半ばに閉鎖することを発表した。10日、本社で緊急会見した
大谷信義社長は、「限られた経営資源を有効かつタイムリーに使うために決断した。
本業の映画、演劇、不動産投資に力を集中したい」と説明、「寅さん」関連のアトラ
クションを前面に押し出した同テーマパークは、華々しいオープンからわずか3年で
姿を消すことになった。

                      [◆◆◆興行成績ベストテン◆◆◆]
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  先週に引き続き、『踊る大捜査線/THE MOVIE』が好調に飛ばして首位
  をキープ。終了間近の『マスク・オブ・ゾロ』『相続人』が再浮上の
  動きをみせたほかは、ほぼ安定した推移。『トゥルーマン・ショー』
  『始皇帝暗殺』封切りの今週末は期待大。
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  【配収】
 1 →( 1)踊る大捜査線/THE MOVIE           ( 2週)
 2 →( 2)プライベート・ライアン           ( 7週)
 3 ↑( 6)マスク・オブ・ゾロ             ( 5週)
 4 ↓( 3)ダイヤルM                  ( 3週)
 5 ↓( 4)学校lll                   ( 4週)
 6 ↑( 7)シティ・オブ・エンジェル          ( 9週)
 7 ↓( 5)マーキュリー・ライジング          ( 5週)
 8 →( 8)モンタナの風に抱かれて           ( 4週)
 9 ↑(11)相続人                   ( 4週)
 10 ↑(12)タイタニック                (47週)

 興行通信社調べ1998/11/7~1998/11/8(銀座・新宿・渋谷3地区代表館集計)


                           [◆◆◆特別企画◆◆◆]
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「第11回東京国際映画祭」、クロージング&総括レポート
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 11月8日、9日間に渡った「第11回東京国際映画祭」が幕を閉じた。クロ-ジング
上映作品『ジョ-・ブラックをよろしく』では、主演のブラピ(ブラッド・ピット)
の舞台挨拶があるとあって、2日前からの徹夜組を含めた2000余人が、会場となった
渋谷オ-チャ-ド・ホ-ルに押しかけた。昨年の『タイタニック』でのディカプリオ
の舞台挨拶に負けず劣らず、ブラピが舞台に登場すると場内は若い女性の嬌声に包ま
れ騒然となった。
 「素晴らしい歓迎をありがとう。今回の作品は、スト-リ-が気に入っているし、
監督とも気があって良かった」と語り、マ-ティン・ブレスト監督については「すご
くのめり込む人で、細部の演出に気づかう」とほめる。「食事をする場面の多くが楽
しめた。素敵なラブ・シ-ンもあるので期待して下さい」と作品をアピ-ルした。
アップにした髪形を司会者から聞かれ、「現在、デビッド・フィンチャ-監督の次回
作(『The Fight Club』)を撮っていて、その髪形なんだ」と説明。舞台を去ろうと
するブラピに、「行かないで!」コ-ルが上がるなど、終始嬌声が鳴りやまない舞台
挨拶だった。
 肝心の『ジョ-・ブラック~』は、大作でない地味な内容(父親と娘の確執、父親
と娘の恋人の対立といった古典的題材を寓話風に描く)のわりに上映時間が3時間と
長く、ややもたれた感じもあったが、ブラピ・ファンにとっては母性本能を刺激する
彼のナイ-ブな魅力が一杯で、長い上映時間も苦にはならないだろう。
 なお、上映前に発表されたコンペティションの各受賞は以下の通り。東京グランプ
リ=『オ-プン・ユア・アイズ』(スペイン)、東京ゴ-ルド賞=『故郷の春』(韓
国)、東京シルバ-賞=『カサバ─町』(トルコ)、芸術貢献賞=『レッド・バイオ
リン』(カナダ)&『スモ-ク・シグナルズ』(アメリカ)、最優秀監督賞=ガイ・
リッチ-『ロック・ストック&トゥ-・スモ-キング・バレルズ』(イギリス)、最
優秀男優賞=ブラッド・レンフロ『ゴ-ルデン・ボ-イ』(アメリカ)、最優秀女優
賞=宮本真希『おもちゃ』(日本)。
 個人的には、イギリス版タランティ-ノともいえるガイ・リッチ-監督のパンク・
バイオレンス『ロック・ストック~』と、コミック『ゼロ』(里見桂)の世界を彷彿
とさせる『レッド・バイオリン』がエンタ-テインメント性充分で楽しめた。

 今年は動員数も15万人を超え、前売り券が完売する作品が多数出るなど全般に盛況
だった。東京国際ファンタスティック映画祭の開会式での「(不況で)暗い世相だか
ら、人々は映画に夢を求めにくる」という小松沢陽一プロデュ-サ-の言葉に象徴さ
れるように、確かに不況時に映画産業は強い。その「東京ファンタ~」では、昨年紹
介されて大ブレイクしたマサラ(インド)映画が再び登場。特に『踊るマハラジャ』
のラジニカ-ント主演作(『ヤジャマン~』『アルナ-チャラム~』)では、彼が画
面に登場するや場内大喝采となるなどすさまじい盛り上がりをみせた。
 ほかにも、英国映画祭、シネマプリズム、女性映画週間、黒澤明追悼作品上映も多
数の観客が押しかけた(情報誌やインタ-ネットで事前情報が飛び交ったせいか、面
白い作品には動員数が多く、年々高まる観客の嗅覚の良さに驚かされた)。
 不況で主催者側の台所事情が苦しくなっていると聞くが、この観客パワ-の勢いを
借りて来年以降も開催し続けることを切に願う。
                           [Reported by 川崎 直也]

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「東京国際ファンタスティック映画祭'98」をふりかえって
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 ヴァンパイアがさまよい、ブルース・リーが怪鳥音をあげ、ジェット・リーが宙を
舞う。悪魔が叫び、マジンガーが大暴れし、スーパースター、ラジニが歌い、踊りま
くった7日間。プロデューサーの小松沢陽一さんは、「今の映画界は大ヒット作と批
評家がほめる作品とが余りにも二極分化している。その間に埋もれている、個性豊か
な作品たちをファンタではこれからも応援していきたい。」と言っていたが、まさに
その言葉どおり、作品と作品の行間を担う各種イベントは、本編以上に見ごたえがあ
り、映画への愛情にあふれていた。
 「夢」を見続けるということは、大変なことだ。だが忙しさの中でそれを忘れてし
まうと、心に潤いがなくなってしまう。この映画祭がほかの映画祭と決定的に違うの
は、波状のない企画に終始する、国境に縛られた旅行ではなく、「ファンタ」という
1つのキーワードを通して、観る者を映画独特の自由な王国を旅したかのような気分
にさせてくれるからだ。国際色豊かな映画祭ならいくらでもある。だがそこに集った
者たちが各々の「夢」を見続けようとして「日常」を越えるほどの瞬間を作り出す熱
気が、ほかの映画祭にはあるのだろうか。
  今の映画を取り巻く事情は複雑化しすぎて、情報やファッション性だけに偏り、映
画本来の楽しさを語るという芽がつぶれかかっているように思える今日この頃。だが
この映画祭に行くと、心の中にそっとしまっていた「素直に映画と遊ぶ」という感情
を、少しでも解放したくなってしまうのだ。その思いを胸に、他の多くのファンと共
にまた、来年の開催を待ちたいと思う。
                           [Reported by 渡辺 一弘]

-------------------------[◆◆◆オススメVIDEO◆◆◆]------------------------
       気に入った人は満足した、というくらいで当初はそれ
       ほど話題にならなかったものの、ひょんな事件で思い
       出された『ワグ・ザ・ドッグ』。話のネタにも一見。
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『ワグ・ザ・ドッグ』 淡々としたペースがいい、アメリカという国の黄昏
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【データ】'97年/米/1時間37分(11/18発売:ポニーキャニオン)
監督:バリー・レビンソン 出演:ロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマン、
アン・ヘッシュ、ウィリー・ネルソン、ウディ・ハレルソン、デニス・レアリー

 大統領の最悪なスキャンダルが発覚の危機にさらされ、謎の「もみ消し屋」(ロバ
ート・デ・ニーロ)が呼ばれた。彼はこれまたクセのある映画プロデューサー(ダス
ティン・ホフマン)と協力し、マスコミと世間の目をスキャンダルから逸らす大がか
りな作戦を展開する。公開時のタイトルは『ウワサの真相』。マーク・ノップラーの
シブイ音楽に乗って進行する、人を喰った雰囲気に評価は賛否両論だったが、豪華キ
ャストがそれぞれに変な役どころを好演。とにかくしみじみと見るとけっこう味のあ
る作品。しかも、この8月にはまさにこの映画を彷彿とさせることをクリントン大統
領が実行、本国アメリカでは本作との関連まで表立って騒がれた。この事件をふまえ
て見るとまた俄然リアリティが増す、かもしれない(!?)。
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○CHECK 6本!
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■『シューティング・フィッシュ』1時間54分/英
(11/18発売:マイピック、テレビ東京、シネマテン)
孤児院のころからの夢、大邸宅での生活を目指して、ふたりの幼なじみがあの手この
手の詐欺商売。大手企業もなんのそので仕組んだ大芝居、バイトに雇った女友だちも
いつしか活躍して、夢の大金へあと少し。しかし……! 甘くない世の中を知恵と運
で切り抜けられるか否か、ペテン版青春ストーリー。
監督:ステファン・シュワルツ 出演:ダン・フッターマン、スチュアート・タウンゼ
ンド、ケイト・ベッキンセイル、ラルフ・イネスン、ニコラス・グレース

■『堕ちてゆく女』1時間55分/仏(11/18発売:日本ヘラルド映画)
若い青年と子持ちの女医との恋愛。その衝撃的な最後を冒頭から見せながらの斬新な
構成で、ふたりの愛情と自意識の移り変わりをリアルに追っていく。
監督:カトリーヌ・ブレイヤ 出演:イザベル・ルノー、フランシス・ルノー

■『ナッシング・トゥ・ルーズ』1時間38分/米
(11/18発売:ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント)
妻と上司の不倫を知ってしまった、広告代理店の重役。最高に虫の居所の悪い彼の運
転する車に、タイミングの悪いカージャックが。アクションもありのコメディ作品。
監督:スティーヴ・オーデカーク 出演:ティム・ロビンス、マーティン・ローレンス

■『タイタニック』3時間16分/米
(11/20発売:フォックス ホーム エンターテイメント)
数々の記録を塗り替えた最大級ヒット作がついに\3980で発売。映画館へ2回3回と
見に行ってその度に泣いた人、さらには10回以上見たなんて人も、今度はビデオで、
見たいとき泣きたいときにいつでも。
監督:ジェームズ・キャメロン 出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンス
レット

■『気まぐれな狂気』1時間46分/米
(11/20発売:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)
出所早々に麻薬の取引現場を襲ったものの予定外のトラブルが……。キーファー・サ
ザーランドの劇場用長編初監督作品。
監督・出演:キーファー・サザーランド 出演:ヴィンセント・ギャロ

■『家族という名の他人』1時間30分/米
(11/20発売:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)
故郷に戻った兄妹の人生を描きながら、家族の姿を浮き彫りにしていく。サンダンス
映画祭で絶賛された、日本未公開作品。
監督:バート・フレウンドリッチ 出演:ロイ・シャイダー、ブライス・ダナー

                           [Written by 唯よーじゅ]

            [◆◆◆BS&CS今週の3本◆◆◆]
                              セレクター:歩知
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 11/14(土)『マスク』 CS-WOWOWシネプレックス(23:00~)
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話題作『トゥルーマン・ショー』の公開を控えたジム・キャリーの出世作。マスクを
つけるとファンキーな怪人になる男の活躍を描いたコメディ。一体ジム・キャリーの
顔面神経はどうなってるの?─余計な心配をしたくなるほどの"顔"演ぶりをお楽しみ
あれ。
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 11/18(水)『シド・アンド・ナンシー』 スター・チャンネル(15:30~)
----------------------------------------------------------------------------
セックスピストルズの"狂人"シド・ビシャスとその恋人ナンシーを描いた実話。セッ
クス、ドラック、ロックンロールを生きた2人の破滅型の愛は心が痛む。シド・ビシャ
スが歌う『マイウェイ』にはどうして涙を誘われるのか。シナトラが歌えばナツメロ
なのにね。
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 11/20(金)『心の指紋』 WOWOW(14:00~)
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末期がんの少年犯罪者が、エリート医師を人質にとって伝説の湖をめざして逃避行を
する。いつしか巻き込まれた医師と少年の間に奇妙な友情が生まれる。マイケル・チ
ミノ監督による作品は、出来の悪い息子のようで黙殺はできない。ダメでも見てしま
うのだ。

               [◆◆◆THE DAY OF BIRTH(11/14~11/20)◆◆◆]
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11/14 ドリス・アンダーソン(1897)、ナルシソ・イェペス(1927)、
    阿藤海(1946)

11/15 フランチェスコ・ロージ(1922)、ヴィルジニー・ルドワイアン(1976)

11/16 マイケル・チミノ(1943)、来生たかお(1950)、内田有紀(1975)

11/17 井川比佐志(1936)、マーチン・スコセッシ(1942)、
    ダニー・デビート(1944)、ソフィー・マルソー(1966)

11/18 斉木しげる(1949)、エリザベス・パーキンス(1960)

11/19 カルヴァン・クライン(1942)、メグ・ライアン(1961)、
    ジョディ・フォスター(1962)、佐倉しおり(1971)

11/20 アンリ・ジョルジュ・クルーゾー(1907)、市川崑(1915)、
    浜美枝(1943)、ボー・デレク(1956)、八木小織(1969)

▼星座別オススメ映画はwebへのリンクに移行しました。
 http://www.cup.com/yoge/tarot/astro/
占い協力:TAROT-ASTROLOGY OF THE WEEK

▼MOVIE WatchのHP
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----------------------------◆◆◆ 後記 ◆◆◆----------------------------
■テアトル系の映画館は毎週水曜日1000円なのをどれくらいの人が知ってるだろう。
映画の日だけじゃなくて毎週だよ。本当は内緒にしようと思ったんだけど。  <唯>

■『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ』(1月公開予定)は絶
対オススメ! ジェット・リーの不老度、ホントに35? 要チェック。    <菊>

■大学時代、淀川さんの講演を聞きに行った。その熱い話しぶりに、映画へのあふれ
る愛が本当にズシズシと伝わってきた。心より、ご冥福をお祈りします。   <巴>

■寒空の下、淀川さんは今も空の映画館で身を乗り出しているのかなあと思いを馳せ
る。どんなときも大切なものを抱きしめてしっかり生きていきたい。合掌。  <冴>

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