◆MOVIE Watch (毎週金曜日発行:無料)──────── 1998-11-06                    <第11回東京国際映画祭特別編成号>                    TOKYO INTERNATIONAL FILM FESTIVAL☆今週のHEADLINE☆─────────────────────────────●MOVIE Watchリアル・ランキング MOVIE Watchがオススメする今週の5本(平均値/ライター別評点)●オススメ封切り情報 『ジャングル・ジョージ』 映画のお約束を笑いのめすコメディ映画の決定版 『ぼくのバラ色の人生』 将来は女の子になりたいと願う、カワイイ男の子の物語 『原色パリ図鑑』 パリのユダヤ人地区に紛れ込んだ青年の恋の行方 ○公開作 CHECK5本! 『ハーフ・ア・チャンス』『落下する夕方』 ほか●MOVIE PADDOCK 出走を待ちわびる新作情報(期待値%つき!) 『セントラル・ステーション』  リオの中央駅で出会った、初老の女性と少年の2人旅 『ワン・ナイト・スタンド』  マイク・フィギス監督(『リービング・ラスベガス』)が描く、ビターテイスト    のラブストーリー ほか●TOPICS 『アルマゲドン』、来日記者会見レポート ほか●興行成績ベストテン●特別企画 第11回東京国際映画祭 開幕リレー・レポート 『アルマゲドン』 「俺は穴を掘る。それが俺の仕事なんだ。」 『イン&アウト』 みんなをHAPPYにしてくれるカミングアウト・ムービー●オススメVIDEO 『ユナイテッド・トラッシュ』 見て激怒するのもまた精神の浄化作用?! ○CHECK 6本!●BS&CS今週の3本●THE DAY OF BIRTH●後記                [◆◆◆MOVIE Watchリアル・ランキング◆◆◆]============================================================================    現時点での劇場公開作からピック・アップした、MOVIE Watch独自の        採点による上位5作品。今観るならこれだ!============================================================================  今週末まで映画祭一色の渋谷の街。人混みの中、右往左往に疲れたら  ふと目に留まった映画館に足を運んでみよう。『マーキュリー・ライ  ジング』は終了近し、お早めに。             平均値/ライター別評点(5点満点)                  唯  巴  古  冴 1.ブギー・ナイツ      4.63 5.0 5.0 4.0 4.5 2.モンタナの風に抱かれて  4.38 5.0 4.5 4.0 4.0 3.マーキュリー・ライジング 3.75 4.0 3.0 4.0 4.0 4.マスク・オブ・ゾロ    3.63 3.0 4.0 4.0 3.5 4.マルセイユの恋      3.63 4.0 4.0 3.0 3.5                    [◆◆◆オススメ封切り情報◆◆◆]──────────────────────────────────────『ジャングル・ジョージ』    映画のお約束を笑いのめすコメディ映画の決定版──────────────────────────────────────11月7日より全国松竹洋画系にて公開 '97年/アメリカ/1時間31分 ◇監督:サム・ワイスマン ◇脚本:デーナ・オルセン ◇出演:ブレンダン・フレイザー、レスリー・マン、トーマス・ヘイデン・チャーチ ◇配給:ブエナビスタ '60年代に人気を博したテレビアニメを、ハリウッドで実写映画化。基本はターザン映画のパロディだが、映画に登場する「ありがちな展開」と「紋切り型の表現」を徹底して茶化しまくるパロディ精神には、最初から最後まで、クスクス、ウフウフ、ゲラゲラと笑いどおしだ。筋金入りの映画ファンでも、この映画の展開だけは予想不可能だろう。『Mr.マグー』と2本立てだが、この1本だけでも料金分の価値がある。 □OFFICIAL SITE  http://www.gaumont.fr/gbvi/george/index.html──────────────────────────────────────『ぼくのバラ色の人生』  将来は女の子になりたいと願う、カワイイ男の子の物語──────────────────────────────────────11月7日より公開 '97年/フランス/1時間28分 ◇監督・脚本:アラン・ベルリネール ◇脚本:クリス・ヴァンダー・スタッペン ◇出演:ジョルジュ・デュ・フレネ、ジャン=フィリップ・エコフェ、ミシェール・ラロック ◇配給:GAGA ―ル・シネマ 11:40/13:40/15:40/17:40/19:40(~21:20) 「将来は女の人になって、隣の男の子と結婚したい」と願う少年の物語。主人公リュドヴィックは、人形遊びをしたり、お化粧したり、女の子の格好をするのが大好きな少年。ところがそんなリュドヴィックの存在が、近所や学校で大問題になってしまう……。主人公が思春期前なので、この作品を「ゲイ・ムービー」と定義するのは難しい。むしろ個性的な子供に振り回される親たちの物語と解釈したほうが良さそうだ。 □OFFICIAL SITE  http://www.gaga.co.jp/movie/bokubara1.html  http://www.nihon.net/bunkamura/event/rose/rose.htm──────────────────────────────────────『原色パリ図鑑』        パリのユダヤ人地区に紛れ込んだ青年の恋の行方──────────────────────────────────────11月7日よりル・シネマにて公開 '97年/フランス/1時間40分 ◇監督:トマ・ジル ◇脚本:ミッシェル・ミュンズ、ジェラール・ビトン ◇出演:リチャール・アンコニナ、アミラ・カサール、ヴァンサン・エルバズ ◇配給:アート・キャップ ―ル・シネマ 11:00/13:05/15:10/17:15/19:20(~21:10) 言葉のはずみで、ユダヤ人の経営する生地メーカーに就職したエディは、社長の娘に一目惚れ。しかし彼は社長と経営上の意見が合わず、会社を辞めてしまう。無一文の若者が自分の才覚だけで社会的な成功を収めるサクセス・ストーリーに、異教徒同士の恋と結婚という社会的テーマを交えた野心作。リシャール・ボーランジェが、頑固一徹の叩き上げ社長を好演している。パリ下町の路地のにおいがしそうな映画です。 □OFFICIAL SITE  http://www.nihon.net/bunkamura/event/pari/pari.htm============================================================================○公開作 CHECK 5本!============================================================================★=注目作 ★★=見て損はしない ★★★=これは必見! (未)=未見■『ハーフ・ア・チャンス』 11月7日より銀座テアトル西友他にて公開 ★★★ヴァネッサ・パラディの父親はアラン・ドロン? それともベルモンド?■『落下する夕方』 11月7日よりシネスイッチ銀座にて公開 ★★久しぶりの原田知世主演作。恋のライバルを演じた管野美穂が、強烈な印象を残す。 □OFFICIAL SITE  http://www.shochiku.co.jp/cinema/rakka/index.html■『ニルヴァーナ』 11月7日よりシネセゾン渋谷にて公開 ★『エーゲ海の天使』のガブリエレ・サルヴァトレス監督が描くサイバーパンク映画。 □MOVIE Watch の紹介ページ  http://www.watch.impress.co.jp/movie/■『シークレット・エージェント』 11月7日よりシネマ・カリテにて公開 ★★ヒッチコックも映画化したことがあるコンラッドの原作を、原作に忠実に映画化。■『気狂いピエロ』 11月7日よりシネ・アミューズにて公開 ★ヌーヴェル・ヴァーグの伝説を生み出した、ジャン=リュック・ゴダールの代表作。                           [Written by 服部弘一郎]                        [◆◆◆MOVIE PADDOCK◆◆◆]============================================================================     出走を待ちわびる新作情報を、期待値%つきでお届けします============================================================================──────────────────────────────────────■『セントラル・ステーション』'99年2月上旬/恵比寿ガーデンシネマ(期待値80%)──────────────────────────────────────リオの中央駅で出会った、代筆屋を営む元教師のドーラと、母を亡くした9歳の少年ジョズエ。2人は、一度も会ったことのない少年の父に宛てた1通の手紙を頼りに、父親探しの旅に出る……。ドーラ役にフェルナンダ・モンテネグロ、ジョズエ役には新人のヴィニシウス・デ・オリヴィエラ。1998年(第48回)ベルリン映画祭金熊賞(グランプリ)受賞、ドキュメンタリー出身のヴァルテル・サレス監督作品。──────────────────────────────────────■『ワン・ナイト・スタンド』'99年新春/シャンテ・シネ他(70%)──────────────────────────────────────偶然の出会いから、一夜にして恋に落ちたCMディレクターのマックスとカレン。それぞれに家庭を持つ2人は、互いへの想いを残したまま別れるが1年後に再会し……。『リービング・ラスベガス』のマイク・フィギス監督が描く、ビターテイストのラブストーリー。出演は、ナスターシャ・キンスキー、ウェズリー・スナイプス、ロバート・ダウニーJr.ほか。1997年(第54回)ヴェネチア映画祭主演男優賞受賞作。──────────────────────────────────────■『自由な女神たち』'99年2月/シネ・ラ・セット(70%)──────────────────────────────────────デトロイトに住むポーランド系8人家族。今の生活には何の不満もないのに、なぜか愛人との逢瀬を楽しむ母、ヤドヴィガ(レナ・オリン)を見て育った、自由奔放な娘ハーラ(クレア・デーンズ)。妻の行動を知りながらも、悶々とした日々を送る父、ポレック(ガブリエル・バーン)。そんなある日、ハーラが妊娠し、一家に波紋が広がるのだが……。監督は、これが初メガホンのテレサ・コネリー。                            [◆◆◆TOPICS◆◆◆]----------------------------------------------------------------------------★『アルマゲドン』、来日記者会見レポート---------------------------------------------------------------------------- 10月31日(土)から開幕中の第11回東京国際映画祭。オープニング上映は、特別招待作品『アルマゲドン』。主演のブルース・ウィリス、リヴ・タイラーら豪華ゲストも来日し、メイン会場の渋谷・Bunkamuraは、詰めかけた映画ファンとマスコミ関係者の異様な熱気に包まれた。上映に先立ち、当日正午に東京プリンスホテルで行われた記者会見の席上、ブルースのジョークは冴えに冴え、会場はたびたび爆笑の嵐に。この会見のもようは下記URL、引き続き行われたオープニングのもようは本号の特別企画「第11回東京国際映画祭 オープニングレポート」でお楽しみいただきたい。 □『アルマゲドン』来日記者会見レポート(Reported by 藤原タカシ)  http://www.werde.com/movie/festival/armageddon.html----------------------------------------------------------------------------★『X-ファイル ザ・ムービー』、日本語公式サイト開設----------------------------------------------------------------------------"科学では解明できない不思議な事件"を専門に扱うFBI捜査官、モルダーとスカリーの活躍でおなじみの『X-ファイル』。その映画版、『X-ファイル ザ・ムービー』の日本公開を前にして、初のファン・フォーラムを設置した日本語公式サイトが開設された。オフィシャル・メンバーシップなど、従来の映画サイトにはないコンテンツ提供はもちろんのこと、作品紹介や公開劇場情報、日本語版予告編なども収録されている。『X-ファイル ザ・ムービー』は、12月5日(土)より日比谷映画ほか全国東宝洋画系にてロードショー。 □『X-ファイル ザ・ムービー』日本語公式サイト  http://www.foxjapan.com/----------------------------------------------------------------------------★「ジェラール・フィリップ映画祭ll」、開催----------------------------------------------------------------------------'96年2月に行われた同映画祭の第2弾、「ジェラール・フィリップ映画祭ll」が11月7日(土)~12月18日(金)・テアトル新宿(03-3352-1846)、11月14日(土)~12月25日(金)・キネカ大森(03-3762-6000)で行われる。今回は、劇場初公開のドストエフスキー原作『白痴』、初公開当時より約30分長い『パルムの僧院(完全版)』など13本が上映される。また、期間中にジェラール・フィリップの命日(11月25日)と誕生日(12月4日)を迎えることから、特別上映として、彼の唯一の監督作品である『ティル・オイレンシュピーゲルの冒険』を、11月25日(水)にテアトル新宿、12月4日(金)にキネカ大森で上映する。11月7日のテアトル新宿の初日には、1回目の上映終了後、彼の実の娘で女優のアンヌ・マリー・フィリップの舞台挨拶を予定している。詳細は各劇場へ。                      [◆◆◆興行成績ベストテン◆◆◆]============================================================================  『踊る大捜査線/THE MOVIE』がダントツの1位! 主演の織田裕二、  柳葉敏郎らの舞台挨拶が行われた有楽町マリオンには、3000人を超え  るファンが詰めかけた。『リプレイスメント・キラー』は9位。一見  渋い出足だが、銀座・新宿2地区集計でのランクインはまずまずの結果  といえそう。============================================================================  【配収】 1 初(─)踊る大捜査線 THE MOVIE           ( 1週) 2 ↓( 1)プライベート・ライアン           ( 6週) 3 ↓( 2)ダイヤルM                  ( 2週) 4 →( 4)学校lll                   ( 3週) 5 →( 5)マーキュリー・ライジング          ( 4週) 6 ↓( 3)マスク・オブ・ゾロ             ( 4週) 7 ↑( 8)シティ・オブ・エンジェル          ( 8週) 8 ↓( 7)モンタナの風に抱かれて           ( 3週) 9 初(─)リプレイスメント・キラー          ( 1週) 10 ↓( 9)カンゾー先生                ( 3週) 興行通信社調べ1998/10/31~1998/11/1(銀座・新宿・渋谷3地区代表館集計)                           [◆◆◆特別企画◆◆◆]============================================================================第11回東京国際映画祭 オープニングレポート============================================================================ 昨年、『タイタニック』のお披露目で繰り広げられたディカプリオ騒動。あれからちょうど1年、今年の東京国際映画祭オープニング・スクリーニングには、世紀末と人類滅亡をテーマにした超大作『アルマゲドン』を引っさげて、ブルース・ウィリス、ベン・アフレック、リヴ・タイラーら超豪華ゲストが一堂に会するという贅沢な1日が訪れようとしていた。 わずかに販売されると思われる当日券を求めて、上映前日の10月30日から列ができはじめた会場前。前売りチケットを入手した人も当日早朝から徐々に並びはじめ、31日午前6時の時点で、その数は200人前後にまで達した。                 ☆☆☆ 一足早く、東京プリンスホテルでブルースらの記者会見が行われていた正午ごろ。ホール前では1000人を超える観客が開場を待ち、外国人を乗せた黒の高級車が走り去るたびに、警備員とギャラリーの間に軽いバトルが繰り広げられるという状態が続いていた。報道関係者はそのような動きを尻目に、淡々と撮影の場所決め抽選を行い、到着時間(開場時刻と同じ午後1時30分)を悠々と待っていた(ゲストの「入り時間」がわからないときは報道陣の状態を観察するといい)。 しかし、渋滞の影響もあって、結局予定時刻を若干遅れてゲスト到着。観客のほとんどが入場した後だったため、会場前の混乱はひとまず回避されたもよう。 午後2時40分ごろから、こちらも少し遅れて、オーチャードホールでの第11回東京国際映画祭開幕セレモニーがスタート。メイン司会は松宮和彦氏。映画祭組織委員会会長・樋口廣太郎氏の挨拶に始まり、故・黒澤明監督への黙祷および東京国際映画祭特別功労賞の授与、与謝野馨通産大臣、青島幸男東京都知事、小倉基渋谷区長の挨拶、そしてコンペティション部門審査委員長ジェレミー・トーマス氏ほか国際審査委員の紹介と各開催部門の作品紹介などが進められていく。 午後3時20分ごろオープング・スクリーニング開始。ベン・アフレック、ジェリー・ブラッカイマー、ブルース・ウィリス、マイケル・ベイ、リヴ・タイラーの順に舞台に登場し、戸田奈津子さんの通訳を介してひとりひとりが簡単な挨拶を行った。ベン・アフレックは、「世界に日本の映画ファンは首尾がいいということで知られています。そういう日本に来れてたいへん名誉に思っています。この日、すばらしい方々と同席させていただいたことをたいへん感謝しています。たいへん美しいリヴ・タイラーも来てくれました」。ジェリー・ブラッカイマーは「ご招待を受けてうれしく思っています。製作スタッフ全員を代表してみなさんに深くお礼を申し上げたい」。リヴ・タイラーは「東京国際映画祭のオープニングに参加できてたいへん名誉に思っております。ぜひみなさん楽しんでいってください。監督、プロデューサーの方たちが本当に一生懸命になってつくった作品です」。手がけた作品は本作で3作目という、34歳の若手監督マイケル・ベイは、「とてもエキサイティングな思いをしています。私はまだ経験の深くない映画監督ですが、東京国際映画祭のように若いフィルムメーカーを育てるという催しはとても重要だと思います。そのオープニングに来れて大変名誉に思います」。 最後にTシャツとジーパンというカジュアルなスタイルのブルース・ウィリスが、「東京に来れてたいへん嬉しく思います。私のファン、お友達にお会いできる機会をうれしく思っています。そして私の作品をいつも見ていただき、そのご支援に対しても厚く御礼を申し上げたい。アルマゲドンは非常に誇りに思っている作品です。ぜひみなさん楽しんでいってください」としめた。 以上でオープニングセレモニーはすべて終了。ゲストの会見は全体で10分ほどと、人数の割には実にあっさりしたものといった印象が強かったが、ファンにとって、一度にあれだけの大スターを目の当たりにできたことはこのうえない贅沢な体験だったのではなかろうか。 休憩をはさんで、いよいよ2時間30分におよぶ『アルマゲドン』、上映開始!                              [Reported by 新井学]----------------------------------------------------------------------------『アルマゲドン』 「俺は穴を掘る。それが俺の仕事なんだ。」---------------------------------------------------------------------------- 「運命は自ら引き受けるものではなく、自らの手で切り開いていくものだ」─ハリウッド映画には、歴史を超えたフロンティア・スピリットが息づいている。ウエスタンものなら、小川の流れをせき止めた巨大な石を、男たちが一心不乱にハンマーで粉砕する姿で表されるだろう、その同じ精神が、この作品には生きているのだ。言わせてもらえば、『アルマゲドン』はひたすら穴を掘る男たちの物語。地球に突っ込む小惑星を回避するため、NASAによって選ばれた屈強な男たちならぬ掘削のプロで仕事人。30年のキャリアで1度もミスをしたことのない伝説の男、ハリー・スタンパーを始めとする仕事人のプライドをかけた8人の男たちが、ひたすら仕事をやり遂げるべく穴を掘る。女好きで荒くれで、世間の常識に従えばそれこそどうしようもないヤツらが懸命に穴を掘り続ける姿に、不覚の涙を禁じられるか。是非とも、あなたのその目で確かめてみてほしい。                   [Written by 古山 慶]----------------------------------------------------------------------------『イン&アウト』 みんなをHAPPYにしてくれるカミングアウト・ムービー----------------------------------------------------------------------------東急文化村オーチャードホール。開映時間ギリギリに飛び込むと、1、2階席は既に満席。3階まで駆け上がり一息ついてスクリーンに目を向ける。「ちょっとこれは遠いんではないかい?」と一瞬不安になるが、同時に、ぎっしりつまった1、2階席が目に入り、なんだか嬉しくなる。ふたを開けてみれば、スクリーンは思った以上に大きく目に入ってきて大満足。上映時間1時間半、1階から3階までみんなで素直に笑い、ENDマークには素直に拍手。これぞお祭りといった感じの幸福な空間だった。                 ☆☆☆ 正直なところホモセクシュアルを扱った映画は苦手である。同性愛者を差別するつもりはさらさらない。隣人がゲイだとしてもレズビアンだとしても仲良くする自信はちゃんとある。それでも男性同士のラブシーンなどを見せられると、どうしても「いかんだろう」という気持ちになる。これは女として「ヤバイ」という意識が働くからに違いない。ニューヨークでは、女性があまっているという事実がかなり深刻な社会問題になっていると数年前に聞いた。これはかなり「ヤバイ」状況だ。そして、ホモセクシュアルを演ずる俳優が美しければ美しいほど、女としての「ヤバイ」感覚は増すのである。 こういったさもしい(?)考えゆえか、シリアスであろうと、コメディであろうと、どうもホモセクシュアルを扱った作品は楽しめずにいたのだが、そんな感覚をいっぺんに吹き飛ばして楽しませてくれたのがこの『イン&アウト』。ケビン・クライン演じる田舎教師が、ハリウッド・スターとなったかつての教え子にオスカー受賞の席で何の根拠もなく「彼はゲイだ」と全国放送されたことからはじまる一騒動を描いた物語だ。 なんといっても登場人物のキャラクターとキャスティングがいい。主演のケビン・クラインはもちろん、「ヤバイ」立場に立たされる彼の婚約者を演じるジョーン・キューザックがとてもキュート。古今東西問わない微妙な女心を演じてくれて、「わかる、わかる」と、愛しくなってしまう。さらにこの彼女の窮地を救うのがブラット・ピットもどき(?)の美青年・マット・ディロンというところが大変嬉しい。ハラハラドキドキの彼の両親や生徒たちもみんな素敵だ。そんな一人一人をみんな幸せにしてくれるのだから、見ている方だってHAPPYになれること請け合い。 同情したり、あきれたり、笑えることはもちろんだが、ふっと息を抜いて「素直に生きること」のすがすがしさを感じさせてくれる『イン&アウト』、文句無しの拍手を送りたい。                      [Written by 松岡洋子]-------------------------[◆◆◆オススメVIDEO◆◆◆]------------------------      オススメというか、もしかしたら試練の映画、『ユナイテ      ッド・トラッシュ』。本編冒頭にあるとおり、妊婦の方に      はオススメしません。以下の用法を必ず読んで下さい。----------------------------------------------------------------------------『ユナイテッド・トラッシュ』 見て激怒するのもまた精神の浄化作用?!----------------------------------------------------------------------------【データ】'95年/独/1時間19分(11/7発売:アルバトロス)監督:クリストフ・シュリンゲンズィーフ 出演:ウド・キーア、トーマス・チブエ アフリカ・ジンバブエ駐在の国連軍司令官はゲイのドイツ兵。バージンのはずの妻になぜか黒人の子宝が授かり、ふとした事故で子供はとんでもない能力を得る(その代わりとんでもない顔になる)。国連、アメリカ、ローマ教会、性、宗教、道徳、ボランティア、そして製作国ドイツ、ありったけの権威と常識を破壊する衝撃の問題コメディ。無知で無思慮な人間が撮ったのなら決して笑えないが、計算されたアイロニーは確実に、「正義」を名乗ってはばからない現代の強力な権威たちを攻撃する。作品冒頭で、「この作品はサブリミナル効果を使用しています」とギャグをかましながら、妊婦と心身に障害のある方へ見るのを控えるよう注意を促しているが、確かに困ったシーンもちらほらだからこれは守ったほうがいい。お互いを理解してないカップルにも決して薦めない。しかし。アフリカの強烈な日差しの中、温かい音楽が、ちょっと場違いなレクイエムのように、「世の中本当に怒るべきことはわずかでしょ、目の前の怒りは笑いと踊りで溶かしましょ」と唱いかけるかのように聞こえてくる。ここで泣きそうにもなる。かと思いきや、「参りました」といわせる結末で、やはりパロディの面目を保つ作品なのであった。----------------------------------------------------------------------------○CHECK 6本!----------------------------------------------------------------------------■『友情 フレンドシップ』1時間43分/日本(11/13発売:東映ビデオ)三船敏郎の愛娘・美佳の主演デビュー作品。白血病の少女と同級生たちの励ましの温かさを描いた、実話に基づく物語。監督:和泉聖治 出演:三船美佳、柳葉敏郎、平田満、麻生祐未■『ボディ・カウント』1時間25分/米(11/13発売:東映ビデオ)どうにも困った顔ぶれの強盗団が美術館から1500万ドルの絵画を盗み出すが、しょっぱなからヘマの連続でまとめ役の男は死亡。絵をさばきに行く道中、仲間割れとヘマの続く中、女が合流し、仲間のもつれは頂点へと向かう……。監督:ロバート・パットン・スプルイル 出演:ジョン・レグイザモ■『ジャッカル』2時間5分/米(11/13発売:東宝)冷酷非情な最強の暗殺者「ジャッカル」に対抗するため、元IRAの伝説のスナイパーが刑務所から駆り出される。毒には毒をもって制するという設定を、2大スター俳優の競演で。監督:マイケル・ケイトン・ジョーンズ 出演:ブルース・ウィリス,リチャード・ギア■『不夜街 危険な天使たち』1時間31分/香港(11/13発売:東映ビデオ)公開時のタイトルは『欲望の街・純愛篇 紅い疾風』。香港の裏社会を舞台に5人の女たちが繰り広げるバイオレンス・アクション。監督:ビリー・タン 出演:カレン・モク、ロレッタ・リー、ン・チャンコー■『スティーヴン・キング トラックス』1時間39分/米(11/13発売:大映)『地獄のデビルトラック』のリメイク版。意志を持ったトラックたちが人間を襲う。監督:クリス・トムスン 出演:ティモシー・バスフィールド、ブレンダ・バーキ■『トラックダウン』1時間33分/米(11/7発売:アルバトロス)病院を脱走した異常性格者が次々と見せるバイオレンス・スプラッター殺人の数々。監督:ポール・ウィンターズ 出演:ローレン・ウィンターズ,ジェイムズ・カートニー                           [Written by 唯よーじゅ]            [◆◆◆BS&CS今週の3本◆◆◆]                           セレクター:長谷川未来---------------------------------------------------------------------------- 11/8(日)『ダンテズ・ピーク』 WOWOW(20:00~)----------------------------------------------------------------------------パニックもの(火山編)。地質学者のハリーはアメリカの北西部にある休火山「ダンテズ・ピーク」の異状を察知する。町の住民を非難させ、美人の町長とその家族を救うために火山灰にまみれながらも強烈な精神力で生き残ろうとする人間ドラマ。出演は、ピアース・ブロスナン、リンダ・ハミルトンほか。---------------------------------------------------------------------------- 11/8(日)『豚が飛ぶとき』 NHK衛星第2(深夜0:00~)----------------------------------------------------------------------------酒場の物置にあったロッキングチェアには2人の幽霊が棲みついていた。それを認識できる男と女。そして酒場の店主。半透明な幽霊はフワフワと何かを始めようとする。どこかトボけているけど幻想的、前衛ジャズがハマって少々のトリップ感が楽しめる。出演は、アルフレッド・モリーナ、マリアンヌ・フェイスフルほか。---------------------------------------------------------------------------- 11/10(火)『ワンダとダイヤと優しい奴ら』 スター・チャンネル(15:30~)----------------------------------------------------------------------------ロンドンの宝石店に強盗に入ったワンダ(ジェイミー・リー・カーチス)とその仲間たちは、奪ったダイヤモンドをめぐってひと悶着してしまう。それぞれの病的なまでの個性がネックとなってコトはヘ~ンな方角に。ダイヤは誰のもとに? 優しい奴って結局、誰だ? ケビン・クラインが助演男優賞を受賞している。               [◆◆◆THE DAY OF BIRTH(11/7~11/13)◆◆◆]============================================================================11/ 7 アルベール・カミュ(1913)、フランコ・ロッセリーニ(1935)、    寺田農(1942)、ジョニー・ミッチェル(1943)11/ 8 ブラム・ストーカー(1847)、若尾文子(1933)、    オレグ・メンシコフ(1960)、レイフ・ギャレット(1961)11/ 9 ジャンニ・プッチーニ(1914)、カール・セーガン(1934)、    石田えり(1960)、ロバート・ダンカン・マクニール(1964)11/10 エンニオ・モリコーネ(1928)、ロイ・シャイダー(1935)、    リチャード・マークス(1943)、河原さぶ(1945)、    ローランド・エメリッヒ(1955)、原日出子(1959)、    川島なお美(1960)、清水宏次朗(1964)11/11 サム・スピーゲル(1903)、田中美佐子(1959)、デミ・ムーア(1962)、    レオナルド・ディカプリオ(1974)11/12 グレイス・ケリー(1929)、ミヒャエル・エンデ(1929)、    ロラン・バイコフ(1929)、チャールズ・マンソン(1934)、    ニール・ヤング(1945)、パトリス・ルコント(1947)、    由美かおる(1950)、寺島進(1963)、麻木久仁子(1964)11/13 ロバート・ルイス・スティーヴンソン(1850)、大原麗子(1946)、    ウーピー・ゴールドバーグ(1955)▼星座別オススメ映画はwebへのリンクに移行しました。 http://www.cup.com/yoge/tarot/astro/占い協力:TAROT-ASTROLOGY OF THE WEEK▼MOVIE WatchのHP http://www.watch.impress.co.jp/movie/----------------------------◆◆◆ 後記 ◆◆◆----------------------------■10年以上東京に住んでいまだに人混みが耐えられない。お祭りの混雑は基本的に苦にならないけど、渋谷ハチ公口から放射状に広がる地帯はなんとかして~。  <唯>■この時期、ただでさえ限られている睡眠時間は極限まで絞り込まれる。映画三昧ならぬ仕事三昧。このジレンマに苦しみつつも、映画への愛は変わらず。    <冴>▼問い合わせ先 ──────────────────────────────movie-watch-info@impress.co.jp    :記事内容 ウォッチ編集部ad-sales@impress.co.jp            :広告関連 インプレス A&Dsales@ips.co.jp                   :配信先等 インプレス販売▼購読中止・配信先変更 ──────────────────────────  下記のURLから、ポイントアップシステムのメンバーIDとパスワードを入力し、案内にしたがって、中止・変更をしてください。なお、メンバーID等が不明なときは、sales@ips.co.jpまでご連絡ください。http://www.ips.co.jp/pointup/query.htm──────────────────────────────────────発行人 塚本慶一郎/編集人 井芹昌信発行 株式会社インプレス〒102-0075 東京都千代田区三番町20編集:デラ・ジャパン株式会社(紺野美樹、服部弘一郎、唯洋樹、菊池朋子)Copyright(C) 1997-1998 Impress Corporation.MOVIE Watchに掲載された記事を許可なく転載することを禁じます──────────────────────────────────────