◆MOVIE Watch (毎週金曜日発行:無料)─────────1998-8-28

☆今週のHEADLINE☆─────────────────────────────

●MOVIE Watchリアル・ランキング
 MOVIE Watchがオススメする今週の5本(平均値/ライター別評点)

●オススメ封切り情報
 『アナスタシア』 ロシアからパリへ! 皇女アナスタシアの大冒険
 『ライブ・フレッシュ』 ロマンチックでミステリアスなデートムービー
  『夢翔る人/色情男女』 ポルノ映画の製作現場にご案内!
 ○公開作 CHECK 5本!
 『勝手にしやがれ』『アンナ』 ほか

●MOVIE PADDOCK 出走を待ちわびる新作情報(期待値%つき!)
 『始皇帝暗殺』 史上最大規模を誇るアジア映画
 『リーガル・エイリアン』 英語だけを用いた日本映画という新しい形に挑戦

●TOPICS
 鎌倉の "お化け屋敷" 大好評 ほか

●興行成績ベストテン

●ESSAY
 【映画のノイジオグラフィー ~音響の博物誌(7)】
  アカデミーの音響史(1)ウォルター・マーチ

●オススメVIDEO
 『川のうつろい』 女のしあわせと苦しみを前にして、男は伴奏するのみ
 『ブラックアウト』 ドラッグを哲学的にえぐる監督が描き出す心理スリラー
 ○特別CHECK 2本!

●BS&CS今週の3本

●COLUMN
 【映画は音楽だ(8)】
  気分は60年代、パリとL.A.、シャンソンとサイケデリック

●THE DAY OF BIRTH

●後記


                [◆◆◆MOVIE Watchリアル・ランキング◆◆◆]
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    現時点での劇場公開作からピック・アップした、MOVIE Watch独自の
        採点による上位5作品。今観るならこれだ!
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  夏休み中はランキングも小休止。普段とはまた違った映画の楽しみ方が
  できる時期なので、できれば上位作品のみならず、気になる小品もおさ
  えておきたい。
             平均値/ライター別評点(5点満点)

                  唯  巴  古  冴
 1.タイタニック       5.00  5.0  5.0  5.0  5.0
 2.L.A.コンフィデンシャル  4.63  4.5  5.0  4.5  4.5
 2.スウィート・ヒアアフター 4.63 5.0 4.5 5.0 4.0
 4.リーサル・ウェポン4    3.75 3.5 4.0 4.0 3.5
 5.スクリーム2        3.63 4.5 4.0 3.5 2.5

                    [◆◆◆オススメ封切り情報◆◆◆]
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『アナスタシア』        ロシアからパリへ! 皇女アナスタシアの大冒険
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8月29日より全国東宝洋画系にて公開 '97年/アメリカ/1時間33分 ◇製作・監督
:ドン・ブルース、ゲイリー・ゴールドマン ◇出演(声):メグ・ライアン、ジョ
ン・キューザック、クリストファー・ロイド ◇配給:20世紀フォックス

 革命の荒波に消えたロマノフ王朝の皇女アナスタシアを巡るミステリーを、豪華な
ミュージカル・アニメーション化。20世紀フォックスが新たに製作スタジオを建設し、
300人のスタッフと3年の歳月をかけて完成させた自信作だ。今年はディズニーの『ム
ーラン』、ワーナーの『エクスカリバー』など、海外アニメ作品の公開が目白押しだ
が、この『アナスタシア』は中でも唯一大人の鑑賞にたえる作品と言えるだろう。

 □OFFICIAL SITE
  http://www.foxjapan.com/anya/
  http://www.toho-group.co.jp/cinema/anasta/welcome-j.html
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『ライブ・フレッシュ』      ロマンチックでミステリアスなデートムービー
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8月29日より公開 '97年/スペイン/1時間41分 ◇監督・脚本:ペドロ・アルモド
バル ◇原作:ルース・レンデル ◇出演:リベルト・ラバル、ハビエル・バルデム、
フランチェスカ・ネリ、アンヘラ・モリーナ ◇配給:フランス映画社
―シャンテ・シネ
 (月~木)12:50/15:00/17:10/19:20(~21:10)
 (金土日)11:50/14:00/16:10/18:20(~20:10)(金土20:30~22:20)

 『神経衰弱ぎりぎりの女たち』『アタメ』『ハイヒール』などで知られるスペイン
の奇才、ペドロ・アルモドバル監督の最新作。戒厳令の夜、娼婦の母にバスの中で産
み落とされた主人公ビクトルは、それから20年後に運命の女に出会う……。主人公ビ
クトルのたどる、愛と復讐と冒険の物語。ロマンチックでエロチックでミステリアス
な物語は、人生の不思議をたっぷりと感じさせる。まさにデートにぴったりの映画だ。

 □OFFICIAL SITE
  http://www.mgm.com/live_flesh/
  http://toho-group.co.jp/cinema/live/welcome-j.html
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『夢翔る人/色情男女』            ポルノ映画の製作現場にご案内!
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8月29日より公開 '96年/香港/1時間39分 ◇監督・脚本:イー・トン・シン、ロ
ー・チー・リョン ◇出演:レスリー・チャン、カレン・モク、スー・チー、ロー・
カー・イン、ラウ・チェン・ワン ◇配給:ポニーキャニオン
 ―シネマミラノ (土日10:40)12:50/15:00/17:10/19:20(~21:15)

 どこの国でも、若い映画監督が映画を撮り続けるのは難しい。この映画からは、そ
んな万国共通の悩みを抱える香港映画界の内情が透けて見える。レスリー・チャン扮
する監督がポルノ映画を作らされる顛末をユーモアたっぷりに描いているが、ヒロイ
ンのポルノ女優を演じたスー・チーがじつにキュート。じつは彼女、実際にポルノ映
画出身の女優なのだとか。カレン・モクもベッドシーンを演じており、ファンは必見。

 □大阪国際シネマドリームいずみさの映画祭のページ
  http://www.nifty.ne.jp/fanta/izumisano/sakuhin/vivaerotica/index.htm
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○公開作 CHECK 5本!
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★=注目作 ★★=見て損はしない ★★★=これは必見! (未)=未見

■『勝手にしやがれ』 8月29日より公開 (未)
ゴダールの天才ぶりを決定付けた傑作。米映画『ブレスレス』はこれのリメイク。

■『アンナ』 8月29日より公開 ★
'66年にテレビ向けに作られたミュージカル映画。アンナ・カリーナがキュート!

■『気まぐれな狂気』 8月29日より公開 ★★
キーファー・サザーランド初監督作。自滅していくギャングたちという定番物語。
 □OFFICIAL SITE
  http://www.spe.sony.com/movies/truthorconsequences/

■『マザー・テレサとその世界』 8月29日よりBOX東中野にて公開 (未)
カルカッタのスラムで奉仕活動を続けたマザー・テレサのドキュメンタリー映画。

■『ダライ・ラマ』 アップリンク・ファクトリーにて公開中 ★
中国が『セブン・イヤーズ・イン・チベット』に対抗して作ったドキュメンタリー。
                           [Written by 服部弘一郎]

                        [◆◆◆MOVIE PADDOCK◆◆◆]
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     出走を待ちわびる新作情報を、期待値%つきでお届けします
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■『始皇帝暗殺』
今秋/丸の内ルーブルほか全国松竹・東急洋画系(期待値80%)
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『さらば、わが愛/覇王別姫』のチェン・カイコー監督の集大成作品。構想8年、製
作期間3年、製作費60億円というアジア映画としては史上最大の規模を誇る超大作。
東京ドーム6個分という始皇帝の巨大宮殿「咸陽宮」のセットもみもの。日本・中国
・フランス・アメリカの4カ国合作。出演は、コン・リー、チャン・フォンイー、
リー・シュエチエンほか。
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■『リーガル・エイリアン』
10月下旬/中野武蔵野ホール(レイトショー)(75%)
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日本で暮らす外国人、ピーターの日常を通して、現代を生きる私たちのアイデンティ
ティを問い直す。監督は、ロンドンの映画学校で学び、帰国後の本作が劇場公開デ
ビューとなる新鋭・辻谷昭則。出演は、マイケル・ネイシュタット、ジュリー・ドレ
フュス、クリス・ペプラー。英語だけを用いた日本映画という新しい形に挑戦した意
欲作(日本語字幕)。
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■『Beautiful Sunday』
11月/渋谷シネ・アミューズ(70%)
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東京のとあるマンションに暮らす人々の日曜日の朝。その風景が伝えるのは、ニュー
スも映画も教科書も教えてくれなかった「ニッポンの現実」。世紀末のこの時期に見
ておきたい「終末の過ごし方」を、CMディレクターとして活躍する傍ら、'97年『夏
時間の大人たち』で長編劇場映画デビューを果たした中島哲也。主演は、今や世界を
フィールドに活躍する永瀬正敏、その相手役に新人の尾藤桃子、周囲を山崎努、岸部
一徳をはじめとする演技派がいかにもの怪演で固めている。

                            [◆◆◆TOPICS◆◆◆]
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★鎌倉の "お化け屋敷" 大好評
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鎌倉シネマワールドでは、この夏のイベントとして"日本で一番恐いお化け屋敷"「怨
霊屋敷」を公開しているが、オープンからの1カ月間に約15,000人を動員する大盛況
となっている。これは、昭和31年に撮影を開始したものの、関係者らの相次ぐ謎の死
によって撮影中止となった、呪われた映画『怨霊屋敷』の封印された撮影セットをそ
のまま42年ぶりに公開し、入場者に見学体験してもらうという設定で行われているも
の。大船撮影所にある同施設のロケーションとリアルなストーリー、映画製作のノウ
ハウを生かしたアトラクションづくりが大人気となっており、TVや雑誌などマスコミ
の人気ランキングでも上位を独占している。開催期間は9月15日(火)まで。大好評
につき、9月下旬からは「怨霊屋敷」の裏側が体験できる「怨霊屋敷の秘密」が実施
される。
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★『L.A.コンフィデンシャル』、32日間で興収1億円台達成
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7月18日からみゆき座ほかで上映中の『L.A.コンフィデンシャル』が、8月18日までの
32日間で興収1億円を突破した。累計は、観客動員数59,569人、興収1億99万1,400円。
ちなみに、『恋愛小説家』は47日目、『フィラデルフィア』は48日目で1億円台に乗
せた。
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★『猫耳』ほか11月レイトショー
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内外のインディペンデント作品を主体に配給を行う(株)ミストラルジャパンが設立
され、その第1弾としてアングラ的な作品、黒沢潤監督の『猫耳』などが11月BOX東中
野、12月大阪シネ・ヌーヴォ梅田でレイトショー公開される。『猫耳』は、1993年の
ロッテルダム国際映画祭に招待されてワールドプレミアが行われた後、ヨーロッパの
25都市で巡回上映され、アングラ・シーンで支持された。今回の劇場公開では、『猫
耳』のほか、黒沢潤監督の短編集(『東京天使病院』『スピノザのレンズ』『片足の
神様』『UNANGE PASSE』)、黒沢圭太監督のアニメ短編集(『みみず物語』『箱の時
代』『春子の冒険』『個人都市』)の3つのプログラムとして上映される。

                     [◆◆◆興行成績ベストテン◆◆◆]
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  新作公開の少ない時期だけに、顔ぶれは変わらず。『GODZILLA/ゴジラ』が
  再浮上3位。公開からほぼ1カ月で興収1億円を突破した『L.A.コンフィデン
  シャル』と『タイタニック』がじりじりと上昇している。
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  【配収】
 1 →( 1)ディープ・インパクト            (10週)
 2 →( 2)スクリーム2                 ( 2週)
 3 ↑( 6)GODZILLA/ゴジラ              ( 7週)
 4 ↓( 3)リーサル・ウェポン4             ( 4週)
 5 →( 5)仮面の男                  ( 3週)
 6 ↑( 7)L.A.コンフィデンシャル           ( 6週)
 7 ↓( 4)TAXi                    ( 2週)
 8 ↑( 9)タイタニック                (36週)
 9 ↓( 8)釣りバカ日誌10               ( 3週)
 10 →(10)ポケットモンスター・ミュウツーの逆襲    ( 6週)

 興行通信社調べ1998/8/22~1998/8/23(銀座・新宿・渋谷3地区代表館集計)

                            [◆◆◆ESSAY◆◆◆]
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【映画のノイジオグラフィー ~音響の博物誌(7)】
 アカデミーの音響史(1)ウォルター・マーチ
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 アカデミー賞といっても、何も作品や俳優ばかりではなく、当然、音響のスペシャ
リストたちも、その功績を称えられている。
 アカデミー音響賞の歴史の中でも、とりわけ画期的な音響設計を示したのが『地獄
の黙示録』(1979年/F.F.コッポラ監督)のウォルター・マーチだろう。
 ベトナム戦争のさなか、ウィラード大尉が、戦場の奥地で狂気のカリスマとなった
カーツ大佐を暗殺するために川を遡っていくという物語には、音響における巧妙な設
計が施されている。つまり川を遡るにしたがって音響の配色を段階的に使い分けてい
るのである。
 映画全体の印象を決定づけてしまう『ジ・エンド』も『ワルキューレの騎行』も第
一段階にすぎない。この段階では、ゲーム感覚の戦争を演出するためにヘリコプター、
ナパーム弾の爆撃機などで彩りをあたえる。ローリング・ストーンズもその一環。川
を登りはじめると、密林の音響として虎の襲撃からプレイメイトたちによるショーの
アクセントを経て、米軍最後の拠点ドラン橋までの第二段階に入る。このドラン橋の
音響は精緻を極めている。そして最後の第三段階としてカーツ大佐の拠点にいたるま
での異様な空間演出。川霧の中の原住民の声、重低音、太鼓、ボウド・グラス、ベー
スによるサウンド、拠点での反響する声、蠅の羽音、瞑想するような音楽など、川を
遡って密林の奥にきてようやく別世界の現出が導き出されるよう仕組まれている。プ
ランニングも周到であれば、特筆すべきなのは、戦争という騒々しい音響が想像され
がちでありながら、戦場の雑多なリアル感を保ったまま、それぞれの段階における音
響にどこにも混ざった印象がないところなのだ。いわば渾沌に秩序が与えられた音響
設計といってもいい。ヘリコプターのプロペラだけではただうるさいだけの戦場に、
ベトナム語訳の拡声器の声を流すだけで、俄然音の持ち味が変わってくる。中盤のド
ラン橋では、夜の静けさの中にも、爆音、地鳴り、機銃、ラジオからのギターソロ、
拡声器の声、水鳥、呻き声、照明弾、兵士の装身具の音、砲撃、ベトナム人の声、蛙
や虫の声といった音響が淀みなく整理されて設計されているのである。
 このウォルター・マーチは、録音技師を題材とした『カンバセーション…盗聴…』
(1974年/F.F.コッポラ)でも音響を手掛けているだけに、その自負をみる思いがす
る。こうした高い技量は、この『地獄の黙示録』でウォルター・マーチの下についた
マーク・バーガー(『ライトスタッフ』『アマデウス』でアカデミー音響賞受賞)に
引き継がれていく。
                            [Written by 竹本穣]

-------------------------[◆◆◆オススメVIDEO◆◆◆]------------------------
     オススメは、味わい深いフランスの香りと、デニス・ホッ
     パーとベアトリス・ダルがしびれるアベル・フェラーラの
     新作。でも『ポストマン』もふれておきましょう。
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『川のうつろい』 女のしあわせと苦しみを前にして、男は伴奏するのみ
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【データ】'95年/仏/1時間50分(9/4発売:アクロス)
監督・脚本・主演:ベルナール・ジロドー 出演:リシャール・ボーランジェ

 『リディキュール』のB・ジロドーによる、フランス革命前後のアフリカの数年間。
愛人をめぐって決闘で王の友人を殺した貴族が、アフリカの植民地に飛ばされ、いつ
戻れるともわからない日々を現地総督として過ごすことになる。部下との語らい、け
だるいチェンバロ演奏、奴隷売買の黙認、時計と無縁な生活。そんな中に、ムーア人
からの贈り物として黒人の少女が差し出される。フランスの貴婦人に売るために言葉
や算術を教えるうち、娘として可愛がり、さらに成長した彼女を女として愛すること
に。危険と隣り合わせで、それでいて時間からとり残されたような、琥珀色の映像の
中で極めて地味に進行する感情の推移は、あとからじわじわとくる魅力。とても静か
で退屈なストーリーながら、頑張って見る価値は十分にあるフランスらしい作品。
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『ブラックアウト』 ドラッグを哲学的にえぐる監督が描き出す心理スリラー
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【データ】'97年/米=仏/1時間39分(9/4発売:アスミック)
監督:アベル・フェラーラ 出演:マシュー・モディーン、ベアトリス・ダル

 根はやさしいらしいが酒とドラッグにどっぷりの映画俳優(マシュー)、自分の記
憶にない暴言がもとで恋人に去られてしまう。カセットテープから流れる自分の悪態
があまりにも哀しい。しかし話はまだ続く。ビデオ映画を撮影しているショービジネ
スオーナー(デニス・ホッパー)の店で酔っぱらったあたりからしばらく、記憶がと
ぎれとぎれとなっており、1年半の後に更生してからも夢でうなされるようになる。
記憶が断片的に失われるブラックアウト現象とビデオ映像を巧みに交錯させ、「自分
が酔って殺人を犯したかもしれない」という、酒飲みなら誰でも可能性がゼロではな
い、シャレにならない恐怖感を、怪しげな酩酊感たっぷりに描く。音楽の一部も担当
し、U2らのサウンドも交えて独特のノリとセンスで撮り上げたのは、『アディクショ
ン』でラップとドラッグと暴力と吸血鬼を哲学でブレンドしてしまった才人、アベル
・フェラーラ。
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○特別CHECK 2本!
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■『ポストマン』2時間58分/米(9/4発売:ワーナー・ホーム・ビデオ)
好意的に笑いながら見ても3時間はきつかったこの作品、しかし一方で熱烈に感動し
た人々がいたのも事実。ひとりのニセ郵便配達夫を通して秩序と愛国心を取り戻して
いく近未来のアメリカの壮大なドラマで、白けるか入り込むかの瀬戸際をゆく本作は
いうなれば、A級並みの金をかけた堂々たるカルトムービー。いろいろな意味で映画
批評史に残るであろう名シーンの数々は、あるいは見ておくべきなのかもしれない。
製作・監督・主演:ケビン・コスナー 出演:ウィル・パットン、ラレンツ・テイト

■『THE WINNER/ザ・ウィナー』
1時間35分/米=豪(9/4発売:徳間ジャパンコミュニケーションズ)
ラスベガスの不思議な男と、ギャンブルにわく街の奇妙な空気を描いた作品。『レポ
マン』『シド・アンド・ナンシー』のアレックス・コックスが懸命に風刺を効かせて
不条理的に描き出したものの、実は彼としては初めての、他人の脚本での監督。しま
いには製作者側により一方的に音楽を全面差し替えされて、監督名の非公開まで訴え
た問題作だけに、評価以前の代物ではある。が、日本のみ、音楽差し替え前の監督オ
リジナル版にて公開し、今回のビデオ化も同じく。
監督:アレックス・コックス 出演:レベッカ・デモーネイ、マイケル・マドセン
                           [Written by 唯よーじゅ]

             [◆◆◆BS&CS今週の3本◆◆◆]
                            セレクター:松岡洋子
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 9/1(火)『誰かがあなたを愛してる』 シネマジャパネスク(正午~)
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チョウ・ユンファ主演。香港からニューヨークへ出てきた女と、チャイナタウンで暮
らすヤクザな男のラブストーリー。派手なアクションや笑いがあるわけではないが、
丁寧に描かれる2人の姿のワンシーン、ワンシーンにホロリとさせられる。監督・メ
イベル・チャン。
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 9/1(火)『ジャック』 パワームービー(21:00~)
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普通の人の4倍の早さで成長する身体を持って生まれたジャックは、本当は10歳なの
に見た目は40歳。心と身体、まわりとのバランスに苦しみながら生き、成長していく
"少年"の姿を演じるロビン・ウィリアムスに素直に拍手、素直に涙。「人生」に疲れ
ている人はぜひ見て欲しい。
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 9/3(木)『アンダーグラウンド』 WOWOW(深夜2:50~)
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第二次大戦中、セルビアの武器商人マルコは避難民を地下にかくまい、そこに武器工
場をつくり、富を得る。戦争が終わった後もその事実は地下の住民に知らされず、ア
ンダーグラウンドでの不可思議な生活が営まれ続ける。夢と現実、地上と地下、境界
線がわからなくなるようなトリップ感覚の作品。'95年カンヌ映画祭グランプリ受賞。

                            [◆◆◆COLUMN◆◆◆]
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【映画は音楽だ(8)】
 気分は'60年代、パリとL.A.、シャンソンとサイケデリック
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◆『恋するシャンソン/オリジナル・サウンドトラック』
(東芝EMI/TOCP-50592/税抜価格\2,548)

 タイトル通りシャンソンの集大成といった趣のサントラ盤。映画のほうは、かつて
『去年マリエンバートで』など難解で不条理な映画をつくっていたアラン・レネ監督
とは思えないような軽いフレンチ・ミュージカル作品。収録曲は、ジョセフィン・ベ
ーカーの1931年の作品から1993年のアラン・スーションまで半世紀以上にわたる曲を
収録。
 シャンソンの巨匠であるシャルル・アズナブールやジルベール・ベコー、エディッ
ト・ピアフをはじめ、フレンチ・ポップスのジェーン・バーキン、フランス・ギャル、
さらにはロック・シンガーのジョニー・アリデイ、アラン・バシュン、そして異端の
セルジュ・ゲンズブールまで、シャンソンに限らず、フランスのポップス音楽をざっ
と見渡せる内容となっている。年配の世代には懐かしいと思わせる選曲だし、若い世
代には新鮮に聴こえる曲ばかりだ。シャンソンへの入門編として、20曲も収録されて
いるこの1枚は“シャンソン・ベスト”盤的な聴き方をしてもいいだろう。

◆『オースティン・パワーズ/オリジナル・サウンドトラック』
(ポリドール/POCP-7293/税抜価格\2,427)

 『ウェインズ・ワールド』のマイク・マイヤーズが脚本を書き、主演をこなしたこ
の作品、60年代ファッションと映画のパロディと「おバカさん」度が話題になってい
るが、サントラの音源も60sフィーリング満載だ。じつはこの映画、バート・バカラッ
ク'67年の名曲「ルック・オブ・ラブ」にインスピレーションを得て、製作をはじめた
という話。じっさい彼の曲も収録されており、70歳になる御大自らの出演シーンもあ
る。セルジオ・メンデス&ブラジル'66やクインシー・ジョーンズらの60年代ヒット曲
とカーディガンズやディヴァイナルズらの90年代ヒット曲、さらには、マイク・マイ
ヤーズ自らがボーカルをとっているミング・ティーなるバンド。それらが渾然一体と
なってはいるが違和感のない選曲は、L.A.のカレッジFM局のホスト、クリス・ドゥー
リダスが行っているおかげ。さすがだ。
                           [Written by 大竹利実]

                 [◆◆◆THE DAY OF BIRTH(8/29~9/4)◆◆◆]
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 8/29 イングリッド・バーグマン(1915)、リチャード・アッテンボロー(1923)、
    ジョエル・シューマッカー(1939)、ウィリアム・フリードキン(1939)、
    谷山浩子(1956)、マイケル・ジャクソン(1958)、
    レベッカ・デモーネイ(1961)、高橋かおり(1975)

 8/30 メアリー・シェリー(1797)、ジョン・エルドリッジ(1904)、
    ロバート・クラム(1943)、キャメロン・ディアス(1972)

 8/31 手塚勝巳(1912)、ジェームズ・コバーン(1928)、田村高廣(1928)、
    ヴァン・モリソン(1945)、リチャード・ギア(1949)、杏里(1961)

 9/ 1 ヨハン・パッヘルベル(1653)、グロリア・エステファン(1957)、
    沢向要士(1966)、三浦理恵子(1973)

 9/ 2 ジュリアノ・ジェンマ(1938)、増田恵子(1957)、横山めぐみ(1969)

 9/ 3 チャーリー・シーン(1965)

 9/ 4 ヤン・シュワンクマイエル(1934)、すまけい(1935)、小林薫(1951)、
    田村翔子(1967)、田中規子(1975)

▼星座別オススメ映画はwebへのリンクに移行しました。
 http://www.cup.com/yoge/tarot/astro/
占い協力:TAROT-ASTROLOGY OF THE WEEK

▼MOVIE WatchのHP
 http://www.watch.impress.co.jp/movie/

----------------------------◆◆◆ 後記 ◆◆◆----------------------------
■8月末といえば、小学生の頃は親にブン殴られながら夏休みの宿題を片づけてた。
この時期映画館にいる子供たち、宿題終わってるのか、これが宿題なのか……。<唯>

■知る人ぞ知る、「BOX東中野」近くの爬虫類ショップ。これがハマるんだ。某所で
やっている「ロスト・ワールド」展なんかより楽しいかもよ。        <実>

■夏を謳歌するように盛大に茂っていた街路樹が、見事なまでに剪定されて、吹き抜
ける風も心なしか秋の装い。映画館でゆっくり時が流れるいい季節、到来近し。<冴>

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