◆MOVIE Watch (毎週金曜日発行:無料)───────── 1998-5-1 ●HEADLINE―――――――――――――――――――――――───――――――― [MOVIE PADDOCK] ●出走を待ちわびる新作情報(期待値%つき!) 幻のSFXスペクタクル怪獣映画が世界初公開◆『プルガサリ/伝説の大怪獣』 スパイス・ガールズの魅力炸裂◆『スパイス・ザ・ムービー』 ほか [オススメROAD SHOW] 遺伝子の支配に反抗した青年の物語◆『ガタカ』 聾唖の両親のもとから巣立って行く少女◆『ビヨンド・サイレンス』 ひたすらエスカレートする空騒ぎ◆『スターシップ・トゥルーパーズ』 ●CHECK10本! [映画4人衆] 『エイリアン4』──人の性(サガ)をみせつけられて [TOPICS] 『Eyes Wide Shut』、一部撮り直し ほか [ザ・ランキング] ●東宝アニメ2本で配収15億円?! [COLUMN] 【城戸朱理のシネマ・クローゼット(6)】──リプリーはエイリアンより強し [オススメVIDEO] 『CURE/キュア』──知らぬ間に増殖する恐怖 『私家版 復讐のページ』──ただのサスペンスではない、罪の重さがそこにある [BS&CSチェック] 今週はこの3本! [ESSAY] 【映画のノイジオグラフィー(4)~音響の博物誌(4)】 ──記憶を挑発する音たちのカラクリ [THE DAY OF BIRTH] ──●MOVIE PADDOCK●── 出走を待ちわびる新作情報を、期待値%つきでお届けします。 ■『プルガサリ/伝説の大怪獣』 今夏/キネカ大森(期待値80%) ────────────────────────────────────── 完成直後の不慮の公開中止から12年。北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国の朝鮮芸術映 画撮影所が、民話をベースに作り上げた幻のSFXスペクタクル怪獣映画が世界初公開。 重要な見せ場を日本の『ゴジラ』シリーズの特撮スタッフが手がけ完成度はピカ一。 ■『ズッコケ三人組─怪盗X物語─』 7月4日/全国東映系(60%) ────────────────────────────────────── 瀬戸内海に面した架空の町を舞台に、小学6年生の男子3人組がさまざまな事件や冒険 に挑む人気児童書「ズッコケ三人組」待望の映画化。6,000人の中から選ばれた主役 の3人を、大河内奈々子、藤竜也、原田大二郎、室田日出男、梅宮辰夫らががっちり サポート。 ■『スパイス・ザ・ムービー』 7月下旬/PARCO SPACE PART3(75%) ────────────────────────────────────── 世界35カ国No.1、アルバムセールス3,000万枚。世界中を熱狂の渦に巻き込んだ英国 出身の女の子5人組、スパイス・ガールズが映画に登場。『タイタニック』に次ぐ、 全米初登場2位を記録した彼女たちのパワーがみもの。 ■『河』 7月中旬/ユーロスペース(85%) ────────────────────────────────────── ある日突然、原因不明の首の病で苦しみ始めた息子を気遣いながらも、ゲイ用サウナ に通い詰める父、裏ビデオの宅配人の愛人との密会を重ねる母、そして息子の崩壊し た家族が流れ着いた先は……。蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督の『青春神話』 『愛情萬歳』に続く3部作完結編。'97年ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。 ──●オススメ ROAD SHOW●── 情報誌には山ほど映画が載ってるけど、本当に面白い映画はどれだろう……? そんな疑問に答える耳寄り情報。この週末はこれさえ観れば大丈夫! ────────────────────────────────────── 遺伝子の支配に反抗した青年の物語◆『ガタカ』 ────────────────────────────────────── 5月2日より公開 '97年/アメリカ/1時間46分 ◇監督・脚本:アンドリュー・ニコ ル ◇製作:ダニー・デビート、マイケル・シャンバーグ、ステイシー・シェール ◇出演:イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ジュード・ロウ、ローレン・ディーン、 ゴア・ヴィダル、アーネスト・ボーグナイン ◇配給:ソニー ―恵比寿ガーデンシネマ (5/2 9:20)12:10/14:30/16:50/19:10(~21:00) この映画は「遺伝子差別」がはびこるディストピアを描いているが、技術さえ実用 化されれば、ここに描かれている未来は明日にでも訪れるだろう。現に妊娠中に胎児 の性別や障害の有無を調べる検査は、今でもごく普通に行われている。これは荒唐無 稽な物語ではなく、我々の暮らしている「今」と地続きの「未来」を描いた作品なの だ。マイケル・ナイマンの音楽が素晴らしい効果を生んでいる。これは必見ですぞ! ・OFFICIAL SITE http://www.spe.sony.com/Pictures/SonyMovies/movies/Gattaca/home.html ────────────────────────────────────── 聾唖の両親のもとから巣立って行く少女◆『ビヨンド・サイレンス』 ────────────────────────────────────── 5月2日より公開 '96年/ドイツ/1時間50分 ◇監督・脚本:カロリーヌ・リンク ◇脚本:ベス・ゼルリン ◇出演:シルビー・テステュー、タティアーナ・トゥリー ブ、ハウィー・シーゴ、ハマニュエル・ラボリ ◇配給:パンドラ ―銀座テアトル西友 10:00/12:15(~14:20) 昨年の東京国際映画祭で、『パーフェクト・サークル』とグランプリを分け合った 作品。両親共に聾唖という家庭で育った少女ララが、成長して両親のもとから巣立っ て行くまでを描くホームドラマだ。父母の手話通訳として、学校や銀行でララが大活 躍する前半を見るだけで、観客は全員彼女のことが大好きになるはず。クラシック音 楽の本場ドイツの映画らしく、音楽を使った場面が素晴らしい。強力プッシュ。 ・KINO WEB(ドイツのサイト) http://www.kinoweb.de/filme/JenseitsDerStille/ ────────────────────────────────────── ひたすらエスカレートする空騒ぎ◆『スターシップ・トゥルーパーズ』 ────────────────────────────────────── 5月2日より全国東宝洋画系にて公開 '97年/アメリカ/2時間8分 ◇監督:ポール・ バーホーベン ◇原作:ロバート・A・ハインライン「宇宙の戦士」 ◇出演:キャ スパー・ヴァン・ディーン、ティナ・メイヤー ◇配給:ブエナビスタ この映画を「好戦的だ」とする否定的意見が、評論家筋から出されている。確かに 表面的にはその通りの作品なのだが、その割にはメッセージが薄っぺらだし、とにか くノリが軽すぎる。これはむしろ、見え透いた戦意高揚プロパガンダや、有無を言わ さず全体主義に陥ってしまう戦争というものを、大いに皮肉った映画と受け取るべき だろう。大馬鹿映画だが、それ以前に、そもそも戦争自体が大馬鹿なのだ。 ・OFFICIAL SITE http://www.movies.co.jp/starship/index.html ●CHECK10本! ★=注目作 ★★=見て損はしない ★★★=これは必見! (未)=未見 ■『ブラックアウト』 俳優座トーキーナイトにて公開中 ★ 酔っ払って記憶が途切れたことのある人は身につまされ、ちょっと怖くなる映画。 ■『新宿少年探偵団』 全国松竹邦画系にて公開中 少年探偵団より女の子達のほうがずっと可愛くて魅力的な映画。これは星なし。 ■『だれも私を愛さない!』 5月2日よりシネ・ラ・セットにてレイト公開 ★ 男に見切りをつけた女たちが共に旅する、コミカルでヒューマンなロードムービー。 ■『バタフライ・キス』 5月2日よりシネ・ラ・セットにて公開 ★★ マイケル・ウィンターボトム監督のデビュー作がいよいよ日本公開。これは注目! ■『ザ・クリーナー』 5月2日より松竹セントラル2にて公開 ★ スティーブン・レイ主演のサスペンス映画。映像には新鮮なテンポが感じられる。 ■『十二夜』 5月2日より恵比寿ガーデンシネマにて公開 ★★ シェイクスピアの戯曲をトレバー・ナンが映画化した、抱腹絶倒のラブコメディ。 ■『南京1937』 5月2日より中野武蔵野ホールにて公開 ★ 悪名高い南京大虐殺事件を香港で映画化。エピソードにはウソも多いのですが……。 ■『ゲット・オン・ザ・バス』 5月2日よりキネカ大森にて公開 ★ 1台のバスを舞台に描かれる黒人社会のエッセンス。監督はスパイク・リー。 ■『ドンファン』 5月2日より自由が丘武蔵野館にてレイト公開 ★★★ ジョニー・デップが現代によみがえった伝説の色事師を大熱演するファンタジー。 ■『リフ・ラフ』 5月4日まで早稲田松竹にて公開中 (未) 『フル・モンティ』のロバート・カーライルが主演したケン・ローチ監督作品。 [Written by 服部弘一郎] ──●映画4人衆●── ────────────────────────────────────── 『エイリアン4』──人の性(サガ)をみせつけられて ────────────────────────────────────── シリーズ4作目の今回は、遠い宇宙で未知なる生物と戦っている人間そのものこそ いったい何なんだ、というSF映画本来の、大胆な問いかけにあえて立ち返ろうとして いる。人類の故郷でありながら、前3作では不思議なほど深入りされずにきた未来世 界の中での「地球」という存在が、エイリアンを乗せた宇宙船が今度こそ本当に着陸 してしまうのではないかと観客にも思わせる説得力をもって、初めて効果的に登場。 物語は劇場で。 (満点は★5つ) ■4作目ともなるとシリーズものとしての楽しみ方ってのがあり、その点本作は○。 前半ちゃんとジュネらしかったし。最後かわいそすぎて泣いたよ。 ★★★★☆<唯> ■泳ぐエイリアンもそれはそれは恐ろしかったのだが、独特の色調と奥行きを感じさ せる映像の中で見せられる人間自身の悪は、もっとすさまじかった。★★★★☆<巴> ■誰が地球に帰るのに値する存在なのか。エイリアンも含め、曲者ぞろいの面々が織 りなす生存競争の極致。つまり、遺伝子が強いヤツが生き残る! ★★★★☆<渡> ■進むにつれ、沢山の疑問符がウヨウヨ動き出して攻めてくる。公開前に現実が先行 してしまったクローンの哀しさ、そんなもんじゃないだろう? ★★☆☆☆<冴> ・OFFICIAL SITE http://www.alien-resurrection.com/index.html ──●TOPICS●── ◆"Eyes Wide Shut"、一部撮り直し ────────────────────────────────────── 最新作"Eyes Wide Shut"がクランク・アップしたばかりのスタンリー・キューブリッ ク監督だが、24日に声明を発表し、主演のトム・クルーズとジェニファー・ジェイソ ン・リーの共演部分(リーは現在別の作品に出演中であるため、マリー・リチャード ソンが代役を務めるもよう)を一部撮り直すことを明らかにした。 ◆春の褒章 紫綬褒章に高倉健 ────────────────────────────────────── 俳優の高倉健(67)は28日、歌手の雪村いづみ(61)などと共に、学問、芸術の分野 で功績のあった人物に贈られる紫綬褒章を受賞した。 ◆「カミング・スーンTV」6月の見どころ ────────────────────────────────────── 4月1日から放送を開始した24時間映画情報専門チャンネル「カミング・スーンTV」の 6月の見どころは次のとおり。 『GODZILLA』特集(6月27日~7月1日、他) 5月18日に行われる米プレミア映像を交え、ストーリー、出演者の声など 『仮面の男』メイキング特集(6月13日~26日) 今夏公開のディカプリオ主演作品『仮面の男』のメイキング 夏休み映画特集(6月21日~7月4日、6月13日~26日) 『ゴジラ』『ジャッカル』『ホーム・アローン3』『アナスタシア』『仮面の男』 『普通じゃない』『オスカーとルシンダ』『不夜城』『リーサル・ウェポン』 『ディープ・インパクト』など 『もののけ姫』メイキング特集(6月27日~7月10日) ビデオと同時リリースの6時間におよぶメイキング公開 ◆『ビヨンド・サイレンス』チャリティ盛況 ────────────────────────────────────── 4月20日夜、有楽町の朝日ホールで『ビヨンド・サイレンス』聴覚障害者チャリティ 試写会(ドイツ大使館主催)が行われ、上映前の舞台挨拶(ドイツ大使/フランク・ エルベ氏、東京聴覚障害者連盟理事長/田中保明氏、音楽プロデューサー/山本コウ タロー氏)も交え盛況のうちに終了した。来場者による寄付金は33万8,359円となり ドイツ大使から田中氏に手渡された。『ビヨンド・サイレンス』は、5月2日から銀座 テアトル西友で1日2回の先行上映が行われた後、5月16日からロードショー公開され る。 ──●ザ・ランキング●── 期待の新作2本が首位を独占した久々の週末。『名探偵コナン~』は依然好調。 『クレヨンしんちゃん~』と合わせると、東宝アニメ2本で配収15億円が見込 めるもよう。大作目白押しのGWの週末が気になるところ。来週の予想順位は、 スターシップ・トゥルーパーズ→エイリアン4→ジャッキー・ブラウン→タイ →名探偵コナン。 【配収】 1 初(─)エイリアン4 ( 1週) 2 初(─)ジャッキー・ブラウン ( 1週) 3 ↓( 1)タイタニック (19週) 4 ↑( 5)名探偵コナン 14番目の標的<ターゲット> ( 2週) 5 ↓( 3)恋愛小説家 ( 3週) 6 ↓( 2)ディアボロス/悪魔の扉 ( 2週) 7 ↓( 4)ビーン ( 6週) 8 ↓( 7)グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち ( 8週) 9 ↓( 8)トゥモロー・ネバー・ダイ ( 7週) 10 ↓( 9)ドーベルマン ( 3週) 興行通信社調べ 1998/4/25~1998/4/26(銀座・新宿・渋谷3地区代表館集計) ──●COLUMN●── ────────────────────────────────────── 【城戸朱理のシネマ・クローゼット(6)】──リプリーはエイリアンより強し ────────────────────────────────────── ===笑えるのに恐い『エイリアン4』=== もう続編はないだろうと思っていたら、またまたやってきた『エイリアン4』。前 作で死んだはずのシガーニー・ウィーバー演じるリプリーは、クローン人間として復 活、またもやエイリアンと一騎打ちを演じる。宇宙船の地球到着まで、あとわずか。 エイリアンの地球上陸という最悪の事態を回避すべく、繰り広げられる死闘─。 第1作のリドリー・スコット監督による息苦しいまでのゆるやかさ、第2作のジェー ムズ・キャメロン監督による息もつかせぬジェットコースター感覚と、1作ごとに特 徴のあるシリーズだが、今回は『デリカテッセン』('91)『ロスト・チルドレン』 ('95)のジャン=ピエール・ジュネが監督。彼ならではのブラック・ユーモアがあ ちこちに息づいている。ブラッド・ダーリフが扮する科学者と、飼育されているエイ リアンがガラス越しに対峙するシーンなど、笑えるのに恐い。ジュネならではの感覚 だ。 ===リプリーはエイリアンより強し=== ところで、映画でリプリーが何を着ていたかと尋ねられて、答えられる人がいるだ ろうか。印象に残らないんだな、これが。共演のウィノナ・ライダーにしても同じで、 ショートカットの髪型ばかりが目につく。リプリーは前作ではスキンヘッドだったが、 今回は肩までのミディアム・ロング。考えてみれば、格闘ありのアクション映画だ、 ロングヘアーも華美な衣装もジャマといわんばかりの姿勢が潔い。 混迷の時代には、女性もショートカット、機能的な服で非常時に備えるということ なのだろうか。世界的にうけているグッチやプラダのミニマリズムも、余計なものを そぎ落とすという点では通底しているところがあっておもしろい。ともあれ、リプリ ーは今回も強い。今や、エイリアンよりも恐いくらいで、このシリーズは、実は女性 に対する男性の潜在的な恐怖心がテーマなのかもと疑いたくなる。ホントに。 [Written by 城戸朱理] ──●オススメVIDEO●── ◇この春、映画館では『リング』が話題でしたが、見ましたか。あの映像◇ ◇の怖さもいい線いってますが、『CURE/キュア』にもまた別の怖さがあ◇ ◇ります。ということで今週はホラーとサスペンス各1本。『私家版』は ◇ ◇サスペンスとしても秀作ですが、プラスαの何かを感じさせる逸品。 ◇ ────────────────────────────────────── 『CURE/キュア』──知らぬ間に増殖する恐怖 ────────────────────────────────────── すぐ前の記憶が飛んでしまうような頼りない若者が、ふらふらと海辺や町を徘徊し ていく。彼と接触した極普通の気のいい人たちは、その後不可解な殺人を犯すことに なる。ウイルスでも撒き散らすかのように「殺人」を植えつけていくその若者は、彼 らにいったい何をしていたのか。映像は決して複雑ではなく、こけおどしもなく、む しろストーリーと同様に淡々と暗い画面が展開していく。しかし随所に仕掛けられた わずかなカットとセリフと音響が、見る者の精神に侵食してくるかもしれない。先が 読める人なら問題ないが、あまり親切な監督ではないのでストーリーに頭がついてい けないとつらいかも。暗い部屋で集中してヘッドホンで大音量で見るべき。 【データ】 '97年/日本/1時間51分(5/8発売:大映) 監督・脚本:黒沢清 出演:役所広司、萩原聖人、うじきつよし、洞口依子 ────────────────────────────────────── 『私家版 復讐のページ』──ただのサスペンスではない、罪の重さがそこにある ────────────────────────────────────── ある日旧友の作家ニコラが老編集者エドワードのところに持ち込んだ原稿は、すば らしい出来であると同時に、エドワードの過去の悲劇を思い起こさせるものだった。 そして現地に飛んだエドワードは、かつて自分の恋人を死に追いやったのがニコラだ と知り、ある行動を開始する。あまりにも静かに、しかし深く沈んだ眼差しには悲し みをたたえつつ、老編集者は「仕事」を着々と進める。そしてその「仕事」がもたら すものは、何だったのか。整然と進行するストーリーは決して予想をくつがえさない のに、これほどハラハラするのはなぜだろう。エドワードの表情に感情移入して見る と、きっと見終わって胸にのしかかるものがあるはず。さすがフランス。 【データ】 '96年/仏/1時間25分(5/2発売:アミューズビデオ) 監督:ベルナール・ラップ 出演:テレンス・スタンプ、ダニエル・メズギッシュ、 マリア・デ・メデイルシュ 原作:ジャン=ジャック・フィシュテル [Written by 唯よーじゅ] ──●BS&CSチェック●── ◆今週はこの3本! ────────────────────────────────────── 5/2(土)『黒いオルフェ』 WOWOW(午前8:00~) ────────────────────────────────────── ギリシャ神話のオルフェとユーリディスの物語を、現代のリオ・デ・ジャネイロに舞 台を移して黒人キャストで見事再現。主題歌「オルフェの歌」にのせて描かれるカー ニバルの熱狂と愛。'59年アカデミー外国語映画賞・カンヌ映画祭グランプリ受賞。 ────────────────────────────────────── 5/3(日)『リービング・ラスベガス』 スター・チャンネル(22:00~) ────────────────────────────────────── アル中で仕事も妻子も失い、死ぬまで酒を飲み続ける決意でラスベガスにやってきた ベン(ニコラス・ケイジ)。やがて娼婦のサラ(エリザベス・シュー)と暮らし始め るが、ベンはサラに、決して「酒をやめろ」といわない約束をさせる。そんなベンに あえてスキットルを贈るサラの愛に胸つまる。ニコラス・ケイジは、この役でアカデ ミー主演男優賞獲得。 ────────────────────────────────────── 5/4(月)『ウォレスとグルミット チーズ・ホリデー』 NHK衛星第2(20:00~) ────────────────────────────────────── ニック・パークの人気クレイアニメシリーズ第1作。発明好きなウォレスとしっかり 者のパートナー、犬のグルミットの冒険を描く。5日、6日の同時間帯、アカデミー短 編アニメ賞受賞作の『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』『ウォレス とグルミット、危機一髪!』も要チェック。 ──●ESSAY●── ────────────────────────────────────── 【映画のノイジオグラフィー(4)~音響の博物誌(4)】 ──記憶を挑発する音たちのカラクリ ────────────────────────────────────── 以前からの習性でふと思い浮かんだ音楽のフレーズを記録するため、小型の録音機 を持ち歩いていた。自分で思いついた曲や、過去に聞いたことのある音楽が浮かんだ り、街角で耳にした音楽など覚えていようとして努力するものの、それをうっかり忘 れてしまう口惜しさは、だれしも心あたりがあろう。一時手帳に音符を記しておこう と試みたが、これがとてもいい加減なものだったので、ついに録音機を持ち歩く羽目 になった。 これがなかなか具合がよい。以前の涙ぐましい努力が嘘のようだ。駅の片隅でこそ こそと鼻歌を録音しようものなら、通りかかった人たちは私をスパイかなにかのよう に眺めていくため、秘密組織の一員になった気分まで味わえた。むろんホームの端で メロディを奏でているスパイがいればの話だが。ともかく速やかに記録ができると同 時に、テレビの録画のそれのように、一度録音してしまうと安心してそれきりになっ てしまうケースが出てきた。溜まっていたテープを聞いてみると、思いがけず夜道を 散歩しながら口ずさんだ曲などがあらわれ、一瞬ノスタルジックな気配を味わったり するのだが、奇妙なことに、そこには写真やビデオの記録だけでは決して味わえない 不思議な空間があるのだ。 本来ビジュアルなものは記憶を受動的に定着させている。たとえば写真を見ただけ では記憶はその写真の図像に引き寄せられ、平面にとどまってしまう。一方音響とい うものは、記憶を能動的に働かせる。音だけの世界の中に、想像の範囲にすら現実感 が膨張し、予想外にリアルな奥行きを体験させさえする。したがって音は実際に体験 した空間以上のものを引き出すことができるのである。 このことを端的にあらわした映画に『イル・ポスティーノ』がある。島の郵便配達 夫が、かつて知り合った詩人に島のことを思い出してもらうために、波の音や鐘の音 を録音してまわり、詩人に送りとどけようとするのだ。ちっぽけな島の人々のことを 忘れてほしくない一心で、島の音を収集する郵便配達夫のけなげな行動が、観る者の 心を揺さぶる。それを聞く詩人の心境を推し測れば、島の豊かな自然の中で詩につい て語り合った日々ばかりか、そんな手間をかけてくれる郵便夫の純粋な気持ちまで聞 きとることができるのである。ただの島のありふれた物音たちが、聞く者によって何 倍もの時空間の広がりをもつようになるのだ。 とりわけ、日夜録音機を持ち歩き、衆人のいぶかしがる視線に耐えてきた経験があ れば、なおさら実感をもって迫ってくるのはいうまでもない。 [Written by 竹本穣] ──●THE DAY OF BIRTH(5/2~5/8)●── 5/ 2 夏木マリ(?)、鮎川誠(1948)、野村祐人(1972) 5/ 3 ビング・クロスビー(1903)、三宅裕司(1951)、野村宏伸(1965) 5/ 4 森繁久彌(1913)、菊池桃子(1968) 5/ 5 地井武男(1942)、高山みなみ(1964)、渡辺篤郎(1968) 5/ 6 ルドルフ・ヴァレンチノ(1895)、カーメン・キャバレロ(1913)、 オーソン・ウェルズ(1915)、ジョージ・クルーニー(1961) 5/ 7 エヴァ・ペロン(1919)、萩本欽一(1941)、トレイシー・ローズ(1968) 5/ 8 ロベルト・ロッセリーニ(1906)、デビッド・アッテンボロー(1926)、 かたせ梨乃(1957) ◆星座別オススメ映画はwebへのリンクに移行しました。 http://www.cup.com/yoge/tarot/astro/ 占い協力:TAROT-ASTROLOGY OF THE WEEK ────────────────────────────────────── ▼問い合わせ先 ────────────────────────────── movie-watch-info@impress.co.jp :記事内容 ウォッチ編集部 ad-sales@impress.co.jp :広告関連 インプレス A&D sales@ips.co.jp :配信先等 インプレス販売 ▼購読中止・配信先変更 ────────────────────────── 下記のURLから、ポイントアップシステムのメンバーIDとパスワードを入力し、案 内にしたがって、中止・変更をしてください。なお、メンバーID等が不明なときは、 sales@ips.co.jpまでご連絡ください。 http://www.ips.co.jp/pointup/query.htm ────────────────────────────────────── 発行人 塚本慶一郎/編集長 井芹昌信 発行 株式会社インプレス 〒102-0075 東京都千代田区三番町20 編集:デラ・ジャパン株式会社(紺野美樹、服部弘一郎、唯洋樹、菊池朋子) Life Watch編成:深栖篤匡/村田敦史 Copyright(C) 1997-1998 Impress Corporation. 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