◆MOVIE Watch (毎週金曜日発行:無料)─────────1998-4-24

●HEADLINE―――――――――――――――――――――――───―――――――

[MOVIE PADDOCK]
 ●出走を待ちわびる新作情報(期待値%つき!)
  人と違っててもいいじゃない?◆『ぼくのバラ色の人生』
   ヒロイン(葉月理緒菜)降板の危機も乗り越えて◆『不夜城』 ほか

[オススメROAD SHOW]
 リプリーがクローンで甦った!◆『エイリアン4』
 お待ちかね、タランティーノの最新作!◆『ジャッキー・ブラウン』
 涙のツボを心得た中島貞夫の脚本にウルル…◆『蓮如物語』
 ●CHECK10本!

[映画4人衆]
 『ディアボロス/悪魔の扉』──「自由意思」は「蜘蛛の糸」

[TOPICS]
 ◆『天使の街』、全米で2週連続トップ ほか

[ザ・ランキング]
 ●『名探偵コナン~』と『クレヨンしんちゃん~』の快進撃、光る

[オススメVIDEO]
 『コン・エアー』──悪役の名優そろい踏みに注目
 ●CHECK 5本!

[BS&CSチェック]
 今週はこの3本!

[COLUMN]
 【映画は音楽だ(4)】
 ――70'Sと90'S、ブラック・ミュージックを極めたい貴方に

[ESSAY]
 【クラシック・ムービー(1)】──たくましき女たち

[THE DAY OF BIRTH]

             ──●MOVIE PADDOCK●──

    出走を待ちわびる新作・再映情報を、期待値%つきでお届けします。

■『ぼくのバラ色の人生』 今夏/Bunkamura ル・シネマ(期待値75%)
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女の子になりたい男の子のピュアな想いを、本作品で国際的デビューを果たしたベル
ギー期待の新鋭アラン・ベルリネール監督が、愛情たっぷりに描いた詩的で色彩豊か
な物語。'98年ゴールデングローブ賞最優秀外国語映画賞受賞作。

■『プライド─運命の瞬間─』 5月23日/全国東映系(65%)
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1948年12月23日、東條英機らA級戦犯7名の処刑で幕を閉じた東京裁判。戦後日本の起
点ともいうべき史実を題材に、人間・東條英機の生きざまを描く。

■『キスト』 6月下旬/シネスイッチ銀座(75%)
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死体を愛する女性とその女性を愛する男性の変化球ラブ・ストーリー。ネクロフェリ
ア(屍体愛)を題材にとりあげたバーバラ・ガウディの問題作を、カナダの新星、リ
ン・ストップケウィッチ監督がファンタジックにまとめあげた。

■『不夜城』 初夏/全国洋画系(80%)
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馳星周のベストセラー小説を完全映画化。さまざまな人種が交錯する新宿歌舞伎町を
舞台に、極限の中で燃え尽きる男女の、3日間の危険な純愛物語。金城武、山本未来
主演、リー・チーガイ監督作品。B'z書き下ろしの主題歌にも注目。


            ──●オススメ ROAD SHOW●──

  情報誌には山ほど映画が載ってるけど、本当に面白い映画はどれだろう……?
    そんな疑問に答える耳寄り情報。この週末はこれさえ観れば大丈夫!

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リプリーがクローンで甦った!◆『エイリアン4』
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4月25日より全国東宝洋画系にて公開 '97年/アメリカ/1時間47分 ◇監督:ジャ
ン=ピエール・ジュネ ◇脚本:ジョス・ウェドン ◇出演:シガーニー・ウィーバー、
ウィノナ・ライダー、ロン・パールマン、ダン・ヘダヤ ◇配給:20世紀フォックス

 前作『エイリアン3』で主人公リプリーが死に、これで完結かと思われていたシリ
ーズが、反則すれすれの力技で見事復活。リプリーの保存血液から作られたクローン
・リプリーとエイリアンが、地球をめざす宇宙船の中で戦う。今度の敵は、リプリー
の中に流れる「エイリアンの血」そのもの。リプリーが自分自身の帰属性をどこに求
めるかという、自己探求の物語になっている。テーマは意外に重いのだ。

 ・OFFICIAL SITE
  http://www.alien-resurrection.com/index.html

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お待ちかね、タランティーノの最新作!◆『ジャッキー・ブラウン』
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4月25日より全国松竹東急洋画系にて公開 '97年/アメリカ/2時間35分 ◇監督・
脚本:クエンティン・タランティーノ ◇出演:パム・グリアー、サミュエル・L・
ジャクソン、ブリジット・フォンダ、マイケル・キートン ◇配給:松竹富士

 タランティーノは過去の自分のアイドルに対して非常に義理堅い人。『パルプ・フ
ィクション』ではトラボルタを復活させ、今度は'70年代ブラックムービーのアイド
ル、パム・グリアーを主役にすえて大活躍させている(次はいよいよ千葉真一か?)。
本作は過去2作に比べるとオーソドックスな映画に見えるが、タランティーノの多芸
多才ぶりを見せつける演出ともいえ、ファンならずとも必見!

 ・OFFICIAL SITE
  http://www.miramax.com:8888/ows-doc/jackiebrown/index.html

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涙のツボを心得た中島貞夫の脚本にウルル…◆『蓮如物語』
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4月25日より全国東映系にて公開 '98年/日本/1時間25分 ◇監督:葛西治 ◇脚
本:中島貞夫 ◇製作:真宗大谷派(東本願寺) ◇出演(声):松方弘樹、倍賞千
恵子、樹木希林、古手川裕子、津嘉山正種、奥田瑛二、吉永小百合 ◇配給:東映

 真宗再興の祖、蓮如上人の没500回忌を記念して製作されたアニメ映画。宗教団体
の製作だが、誰にでも親しみやすい、宗教色の少ないドラマになっている。原作は五
木寛之の同名児童読み物。これに惚れ込んだ松方弘樹が陣頭指揮に立ち、脚本は東映
の大ベテラン中島貞夫が執筆。原作の中から母と子の情愛にスポットライトをあて、
非常に完成度の高い感動作に仕上がっている。この春、一番泣ける映画はこれだ!

●CHECK10本!

★=注目作 ★★=見て損はしない ★★★=これは必見! (未)=未見

■『ア・ラ・モード』 4月25日よりシネマ・カリテにてレイト公開 ★★
パリのユダヤ人街の雰囲気がじつにうまく描けている良質のファンタジー。

■『おかえり』 4月25日より中野武蔵野ホールにてレイト公開 ★★
妻が精神を病んだ時、夫のとった行動は……。誠実な夫を北野組の寺島進が好演。

■『ウィンター・ゲスト』 4月25日よりシャンテ・シネにて公開 ★★
アラン・リックマンの初監督作品。エマ・トンプソンとフィリダ・ローが母子共演。

■『炎のアンダルシア』 4月25日よりシャンテ・シネにて公開 ★★
エジプト製の史劇ミュージカル大作。レコンキスタ以前のスペインを描く異色作。

■『七人の侍』 4月24日より銀座並木座にて公開 ★★★
言わずと知れた黒澤明の傑作時代劇。ビデオもいいけど、映画館で見るのは格別です。

■『杣人(そまうど)物語』 4月25日より銀座テアトル西友にて公開 ★
『萌の朱雀』でカンヌ映画祭パルムドール賞を受賞した河瀬(仙頭)直美の最新作。

■『女刑事RIKO/聖母の深き淵』 4月25日よりシャンゼリゼにて公開 ★★
『[Focus]』で注目された井坂聡監督の最新作は、女性刑事が主人公のミステリー。

■『ベルニー』 4月25日よりシネ・アミューズにて公開 ★
失われた家族を求めてさ迷う孤児が生み出す、血生臭いスラップスティック喜劇。

■『ジェファソン・イン・パリ/若き大統領の恋』
                 4月25日よりシネマ・カリテにて公開 ★★★
後のアメリカ大統領ジェファソンが見たフランス大革命。ニック・ノルティが好演。

■『トゥモロー・ネバー・ダイ』 5月1日まで全国東宝洋画系にて公開 ★★★
まだ見てない人は急いで劇場へ! これは大画面で見てナンボの映画です。

                           [Written by 服部弘一郎]


                  ──●映画4人衆●──

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『ディアボロス/悪魔の扉』──「自由意思」は「蜘蛛の糸」
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連戦連勝の若手敏腕弁護士ケヴィン(キアヌ・リーブス)。フロリダの彼のもとに、
N.Y.のミルトン法律事務所から、ある日破格の誘いが持ちかけられる。愛する妻メア
リー・アン(チャーリズ・セロン)と共にN.Y.を目指すケヴィン。そんな彼の心の隙
に、ミルトン(アル・パチーノ)の魔の手が容赦なく襲いかかり……。
                               (満点は★5つ)

■お金かけた映像のわりに雰囲気がイマイチで、ホラー・ファンとしては消化不良。
でもキアヌとパチーノとセロンの演技で満足。俳優ってすごい。  ★★★☆☆<唯>

■ふむふむ、と興味をそそった前半を、壊してしまうようなくどい後半。一瞬、溜息
をつきそうになったが、パチーノの演技が全てをカバーする。   ★★★☆☆<巴>

■誰の心にも「悪魔」は入ってくる。だが、人間はそれさえ飲み込み、飼い慣らして
しまう。その底なしの貪欲さに、世紀末を乗り切る光をみた。   ★★★★☆<渡>

■不透明で緊迫感に欠ける、日本の司法制度のイメージがどうしても邪魔をする。そ
の隙を許さないでほしかった。キャストは光っているだけに惜しい。★★☆☆☆<冴>

 ・OFFICIAL SITE
  http://www.wbmovies.com/DEVILS/main.html

 ・リアルメディア(リアル・ビデオ/オーディオで予告編などが楽しめる)
  http://ing.alacarte.co.jp/~nimura/devil.htm
S
               ──●TOPICS●──

◆『天使の街』、全米で2週連続トップ
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『フェイス/オフ』のニコラス・ケイジと、『めぐり逢えたら』のメグ・ライアン主
演のラブ・ストーリー『天使の街』が、公開から2週連続で全米トップの座を飾った。
日本公開は今秋、丸の内ピカデリー1ほか。

◆第50回英国アカデミー賞 『フル・モンティ』が最優秀作品賞
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去る19日、第50回英国アカデミー賞が発表されたが、失業した男たちがストリップで
奮闘する話題のコメディ『フル・モンティ』が、『タイタニック』をおさえて最優秀
作品賞に輝き、同作に出演したロバート・カーライルとトム・ウィルキンソンも、主
演・助演両男優賞を獲得するなど話題を独占した。

◆「ヤマガタ in 東京」開催
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山形国際ドキュメンタリー映画祭5回の総集編企画、「ヤマガタ in 東京」が、4月25
日から5月8日までBOX東中野で開催される。同映画祭参加作品のほか、原将人ライブ
上映や、5月9日から同館で上映される『A』(森達也監督作品)のプレミア上映も行
われるもよう。

◆「日映協フィルムフェスティバル'98」グランプリ発表
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協同組合・日本映画製作者協会は、同協会映画祭実行委員会主催の「日映協フィルム
フェスティバル'98」を開催したが、本年度のグランプリは、日活芸術学院の卒業製
作『傘をさがす』(監督窪田祐介=学院本年3月卒業)が獲得した。


             ──●ザ・ランキング●──

  アル・パチーノの怪演と、精悍さを取り戻したキアヌ・リーブスの魅力が
  光る『ディアボロス~』は2位。先日、1998 MTV Movie Awardsで、作品賞・
  ディカプリオの男優賞を含む8部門でノミネートされ、再び話題を振りまい
  た『タイタニック』が首位にとどまった。5位、10位にそれぞれ食い込んだ
  『名探偵コナン~』と『クレヨンしんちゃん~』にはちょっとビックリ。
  来週の予想順位は、エイリアン4→タイ→ジャッキー・ブラウン→ディアボ
  ロス→恋愛。

  【配収】
  1 →( 1)タイタニック                (18週)
  2 初(─)ディアボロス/悪魔の扉           ( 1週)
  3 ↓( 2)恋愛小説家                 ( 2週)
  4 ↓( 3)ビーン                   ( 5週)
  5 初(─)名探偵コナン 14番目のターゲット      ( 1週)
  6 →( 6)フェイス/オフ               ( 8週)
  7 ↓( 4)グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち    ( 7週)
  8 ↓( 5)トゥモロー・ネバー・ダイ          ( 6週)
  9 ↓( 7)ドーベルマン                ( 2週)
 10 初(─)クレヨンしんちゃん 電撃! ブタのヒヅメ大作戦( 1週)

 興行通信社調べ
 1998/4/18~1998/4/19(銀座・新宿・渋谷3地区代表館集計)


              ──●オススメVIDEO●──

  ◇ゴールデンウィークも間近。ずうっとお出かけの方は別として、連休に◇
  ◇遊んで帰宅して、夜更かしついでにビデオ、なんてのも、1日くらいは◇
  ◇いいかも。海外をパスした人は『コン・エアー』で飛行体験はいかが?◇

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『コン・エアー』──悪役の名優そろい踏みに注目
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 仮釈放を受けて家族の待つ故郷へ向かう陸軍隊員ポー。彼を運ぶ飛行機に乗り合わ
せたのは獄中の友人と数名の凶悪犯たち。やがて、厳重な拘束を破った凶悪犯によっ
って飛行機は乗っ取られ、ポーは闘いか脱出かの運命の決断を迫られる。ニコラス・
ケイジの筋肉にも何か鬼気迫るものがあるが、ジョン・マルコビッチを初めとする悪
役たちの悪役らしさも見どころ。中でもスティーブ・ブシェミの役どころは最高。

【データ】
'97年/米/1時間56分(4/25発売:ブエナ ビスタ ホームエンターテイメント)
監督:サイモン・ウエスト 出演:ニコラス・ケイジ、ジョン・マルコビッチ、
スティーブ・ブシェミ、ジョン・キューザック、ダニー・トレホ

●CHECK 5本!

■『ユメノ銀河』1時間30分/日本(5/1発売:ケイエスエス)
夢野久作の『少女地獄・殺人リレー』を『水の中の八月』の石井聰亙監督が映画化。

■『陽炎4』1時間30分/日本(4/25発売:バンダイビジュアル)
高島礼子が女胴師を演じる人気シリーズ最新作。共演は柴俊夫、中村敦夫ほか。

■『陽だまりの庭で』1時間32分/仏(5/1発売:オンリー・ハーツ)
銃殺で父を失った少女とその祖父の交流の物語。フィリップ・ド・ブロカ監督作品。

■『ワイルドサイド』1時間38分/米(4/25発売:ジェイ・シー・エー)
19世紀のカリフォルニアが舞台のアクション。メグ・ライアン主演の日本未公開作。

■『ブレイクコンタクト』1時間37分/米(5/1発売:ケイエスエス エムイー)
宇宙ウイルスに犯された凶悪犯と刑事の攻防を描くSFアクション。

                           [Written by 唯よーじゅ]


             ──●BS&CSチェック●──

◆今週はこの3本!                   セレクター:松岡洋子
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 4/26(日)『トレインスポッティング』 WOWOW(深夜1:00~)
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スコットランドのヤク中、アル中の若者たちを描いた、ちょっと湿った、けれどノー
天気な青春映画。本国イギリスではもちろん、渋谷でもロングランヒットを飛ばして
話題になった。ユアン・マクレガー、ロバート・カーライル等、若手俳優陣がとにか
く魅力的。

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 4/27(月)『愛の新世界』 シネマジャパネスク (深夜0:00~)
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アラーキーの写真集をもとに高橋伴明が撮り上げた、こちらは日本の青春映画。SM女
王レイと、ホテトル嬢のアユミを中心に描く、文字どおり「愛の新世界」。あくまで
も自分自身を楽しむ彼女たちの姿が、不思議にすがすがしい。レイを演じる鈴木砂羽
(『東京日和』でも好演)の魅力はアラーキーも絶賛!

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 4/28(火)『セーラー服と機関銃』 チャンネルNECO(14:00~)
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あの頃はまだルーズソックスなんてなかった。制服を着て遊んでいたら婦人警官のお
姉さんに捕まっていた。そんな中、セーラー服で機関銃を撃ちならし、挙げ句の果て
に「カイカン」などとつぶやいてしまうひろ子ちゃんには、まったくドキドキさせら
れた。相米慎二監督作品。


                     ──●COLUMN●──

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【映画は音楽だ(4)】――70'Sと90'S、ブラック・ミュージックを極めたい貴方に
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◆『ジャッキー・ブラウン/オリジナル・サウンドトラック』
(ワーナーミュージック/WPCR-1738/税抜価格\2,330)

 本編と同時にこんなにもサントラ盤が話題になるのはタランティーノぐらいだろう
か? あえて新録曲は使わず、過去のナンバーからセレクトしていくのだが、毎回そ
のセンスがいい。『レザボア・ドッグス』での70'Sバブルガム・ポップス、『パルプ
・フィクション』での60'Sサーフ・サウンドやR&B、そしてこの『ジャッキー・ブラ
ウン』では70'Sソウル中心の選曲である。今回の主演女優は70'Sブラック・ムービー
で活躍していたパム・グリアー。そのためサウンドトラックもその頃の雰囲気がプン
プンする内容となった。そんな中でも驚くのがテーマ・ソングとなるR&Bシンガー、
ボビー・ウーマックの「110番街交差点」。これはなんと同名タイトルの70'ブラック
・ムービーのテーマ・ソングでもあったのだ。こんな使い方するヤツ他にいるか!
でもカッコイイから許してしまおう。この辺のところはタランティーノのDJ的なセン
スがイイのである。また、今回も毎度おなじみ、曲間に出演者のダイアローグが挟ま
れている。これで映画を見る前、見た後と違う楽しみ方ができるのはいつも通り。


◆『ゲット・オン・ザ・バス/オリジナル・サウンドトラック』
(ユニバーサルビクター/MVCP-42/税抜価格\2,427)

 『ジャッキー・ブラウン』が70'Sブラック・ムービーへのオマージュであるなら、
スパイク・リー監督のこの作品はいまのブラック・ムービーの良質サンプルである。
毎回の人種問題をテーマにしたメッセージ性からか、彼の作品は日本人にはあまり受
け入れられず、今回は本国公開から1年以上、しかもインディペンデントな形での公
開になってしまった。ただ、サウンドトラックのほうは映画自体のうんぬんに関わら
ず毎回クールに決めてくれる。今回のサントラ盤もご多分にもれない。スティービー
・ワンダー、カーティス・メイフィールド、EW&Fらのベテランから、ディアンジェロ、
ブラックストリート、ア・トライブ・コールド・クエストらの旬のアーティストまで
新旧とり混ぜ歌モノ中心の構成だ。「100万人の大行進」ってなに?っていう輩にこ
そ聴いてほしい。
                           [Written by 大竹利実]


                    ──●ESSAY●──

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【クラシック・ムービー(1)】──たくましき女たち
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 女性はしおらしく、なんてのは男の勝手な幻想らしく、映画の世界ではたくましい
女性の活躍がめざましい。タランティーノも新作『ジャッキー・ブラウン』('97)
で、彼特有の男臭い暴力と血に溢れる世界に女性をほうり込んだ。これまでも、グロ
リア姐御やリプリー姐御という先輩がいたわけだが、どうもジャッキー姐御も彼女た
ちの列に加わりそうな勢い。まったく、彼女たちのカッコ良さには「一生ついていき
ます!」と言わしむるものがある。
 で、こういったアメリカ映画のたくましい女性の源流はというと、どうもハワード
・ホークス監督〔1896~1977〕作品の女性にあるような気がする。ホークス監督は男
を描く手腕に長けた人だが、同時にサッソウとした女性をも創造した。男まさりの積
極さ・行動力・芯の強さなどがホークス作品の女性の特徴。『特急二十世紀』('34)
の舞台女優リリー、『赤ちゃん教育』('38)のお嬢様スーザン、『ヒズ・ガール・
フライデー』('41)の新聞記者ヒルディは、それぞれ男と対等に渡り合い(いや、
時としてそれ以上!)、男をタジタジにさせる。リリーは鬼演出家の夫と殴り合いの
ケンカを演じるは、スーザンは意中の人を自分のものにするために、あらゆる策略を
練るは、ヒルディは、特ダネを得ようと情報主にタックルするは……と、そのたくま
しさには、アゼン、ボーゼンとするしかない。しかし、こういった女性描写は、「あ
ばずれ」を描こうという意図からではなく、女性を男の「パートナー」、あるいは、
もっと親しい言葉を使えば「バディ」とみなすホークス監督のさばけた性格から生ま
れたものである。ホークス作品の女性は、牢固な意志を持った一個の人間であって、
男の従属物などでは、決してないのだ。
 昨今、ジェンダー(性差)論とやらが(浅学な筆者には皆目わからない学問だが)
流行しているそうだが、少なくとも、伝統あるアメリカ映画のたくましい女性たちに
は、そんなものは必要なさそうである。
                            [Written by 渡辺慎也]


         ──●THE DAY OF BIRTH(4/25~5/1)●──

 4/25 アル・パチーノ(1940)、ベルトラン・タベルニエ(1941)、
    イザベル・パスコ(1966)、鶴田真由(1970)

 4/26 風間杜夫(1949)

 4/27 柴俊夫(1947)、加藤雅也(1963)

 4/28 メアリー・マクドネル(1952)、生稲晃子(1968)

 4/29 デューク・エリントン(1899)、宝田明(1934)、田中裕子(1955)、
    ダニエル・デイ・ルイス(1957)、ミシェル・ファイファー(1957)、
    ユマ・サーマン(1970)、一色紗英(1977)

 4/30 ウイリー・ネルソン(1933)、バート・ヤング(1940)、
    ラース・フォン・トリアー(1956)、ジョニー・ガレキ(1975)、
    常盤貴子(1972)

 5/ 1 ジュディ・コリンズ(1939)、リタ・クーリッジ(1945)、
    ジョン・ウー(1946)、レイ・パーカー・Jr.(1954)


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