◆MOVIE Watch (毎週金曜日発行:無料) ─────────1998-3-6

●HEADLINE―――――――――――――――――――――――───―――――――

[特別企画]
 ●「MOVIE Watch読者が選ぶ1997年ベスト10!」結果発表!!

[新企画 MOVIE PADDOCK]
 ●出走を待ちわびる最新作情報をお届けします。

[オススメROAD SHOW]
 アカデミー賞9部門ノミネート◆『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』
 ロックバンドの旅巡業を描く青春ドラマ◆『バンドワゴン』
 レトロで格調高いネズミ版『ホーム・アローン』◆『マウス・ハント』
 ●CHECK10本!

[TOPICS]
 ◆『タイタニック』の総興行収入、10億ドルの壁破る! ほか

[ザ・ランキング]
  『フェイス/オフ』が首位奪取!

[特集]
 『フェイス/オフ』──ジョン・ウー アクションの魅力!

[オススメVIDEO]
 『冷たい一瞬を抱いて』
 ──もう何もいえなくなる。少女はこんなにも懸命に大人になった。
 ●CHECK2本!

[BS&CSチェック]
 今週はこの3本!

[REVIEW]
 『クロノス』──永遠の生命を巡る、ホラーという衣をかぶった愛の世界

[COLUMN]
 【世間はシナリオだ!(4)】──君は、『タイタニック』をちょー見たか?

[占星映画術]
 ◆THE DAY OF BIRTH/星座別オススメ映画

              ──●特別企画●──

      「MOVIE Watch読者が選ぶ1997年ベスト10!」結果発表!!

  去る1月30日(金)から2月26日(木)までの期間、読者のみなさまのご協力で
  行われた、特別企画「MOVIE Watch読者が選ぶ1997年ベスト10!」の集計結果
  (上位)を発表いたします。(厳正な抽選の上、ペア・チケットを獲得された
  方には、後日あらためてこちらからご連絡いたします。)たくさんのご応募、
  ありがとうございました。


         「MOVIE Watch読者が選ぶ1997年ベスト10!」

                <作品賞>

         第1位 『タイタニック』
         第2位 『もののけ姫』
         第3位 『メン・イン・ブラック』
         第4位 『セブン・イヤーズ・イン・チベット』
         第5位 『エアフォース・ワン』
         第6位 『コンタクト』
         第7位 『フィフス・エレメント』
         第8位 『スター・ウォーズ(特別編)3部作』
         第9位 『新世紀エヴァンゲリオン(劇場版2部作)』
        第10位 『Shine/シャイン』

                <監督賞>

         第1位 ジェームズ・キャメロン『タイタニック』
         第2位 宮崎駿『もののけ姫』
         第3位 三谷幸喜『ラヂオの時間』

                <男優賞>

   第1位 レオナルド・ディカプリオ『ロミオ&ジュリエット』『タイタニック』
   第2位 ブラッド・ピット『スリーパーズ』『セブン・イヤーズ~』他
   第3位 役所広司『うなぎ』『失楽園』『CURE/キュア』他

                <女優賞>

   第1位 ケイト・ウィンスレット『日陰のふたり』『タイタニック』
   第2位 ミラ・ジョヴォヴィッチ『フィフス・エレメント』
   第3位 ジュリア・ロバーツ『陰謀のセオリー』『ベスト・フレンズ~』


  詳細情報は、 http://dela.cup.com/watch/special/1997best.html でチェック!


           ──●新企画 MOVIE PADDOCK●──

     このコーナーでは、出走を待ちわびる最新作情報をお届けします。

■『ウインター・ゲスト』 4月中旬/シャンテシネ
生きることの難しさに立ちすくむ1組の母娘(フィリダ・ロー、エマ・トンプソン)。
人間同士のかけがえのない絆をみつめるアラン・リックマン監督作品。

■『マッド・シティ』 4月GW/丸の内ピカデリー2他、全国松竹・東急洋画系
人質を取って博物館に立てこもる銃撃犯と、偶然その場に居合わせたTVレポーター。
ダスティン・ホフマンとジョン・トラボルタが、マスメディアの恥部に挑む。

■『ディアボロス -悪魔の扉-』 近日/丸の内ピカデリー1他、全国松竹・東急洋画系
新進気鋭の若き弁護士(キアヌ・リーブス)が、欲望と虚栄の街N.Y.で開いてしまう
悪魔の扉─「悪魔」の概念を根底から覆すアル・パチーノが出色。

■『南京1937』 5月2日/中野武蔵野ホール
1937年12月13日の南京大虐殺。戦争の狂気の中で、庶民がいかに生き、民族を超えた
か。『フェイス/オフ』のジョン・ウー監督が渾身の力を込めて世に問う問題作。

■『アンナ・カレーニナ』 4月/有楽町スバル座他、全国東宝洋画系
トルストイ不朽の名作を、『不滅の恋 ベートーヴェン』の実力派バーナード・ロー
ズが監督・脚本。ロシアの名花にソフィー・マルソーが新たな命を吹き込む。

           ──●オススメ ROAD SHOW●──

  情報誌には山ほど映画が載ってるけど、本当に面白い映画はどれだろう……?
    そんな疑問に答える耳寄り情報。この週末はこれさえ見れば大丈夫!

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アカデミー賞9部門ノミネート◆『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』
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3月7日より全国松竹東急洋画系にて公開 '97年/アメリカ/2時間7分 ◇監督:ガ
ス・ヴァン・サント ◇脚本・出演:マット・デイモン、ベン・アフレック ◇出演
:ロビン・ウィリアムス、ミニー・ドライヴァー ◇配給:松竹富士

 アインシュタイン並みの頭脳を持つ孤児ウィルは、最愛の妻を亡くした悲しみから
立ち直れない心理学者ショーンと出会う……。主演のマット・デイモンは『戦火の勇
気』で注目された若手俳優。本作では脚本も担当し、既にゴールデングローブの最優
秀脚本賞を受賞している。いつもはどんな映画でも全面に出るロビン・ウィリアムス
が、今回は一歩下がって抑えた芝居。新旧スターがぶつかる、重厚な人間ドラマだ。

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ロックバンドの旅巡業を描く青春ドラマ◆『バンドワゴン』
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3月7日よりシネマスクエアとうきゅうにて公開 '96年/アメリカ/1時間43分 ◇制
作・監督・脚本:ジョン・シュルツ ◇出演:リー・ホームズ、ケヴィン・コーリガ
ン、スティーブ・パーラベッキオ、マシュー・ヘネシー ◇配給:大映
 ―シネマスクエアとうきゅう
 (日10:40)12:45/14:50/16:55/19:00(土21:05~23:00)

 バンドを結成した若者たちが、敏腕マネージャーに率いられ、プロを目指して地方
巡業。中古のワゴン車にメンバーと楽器を積み込んで、町から町への流れ旅。幾度か
解散の危機を乗り越えて、バンドは続くよどこまでも……。主人公たちが一歩一歩成
功への階段を上っていく様子は、定石通りに手堅くまとめられている。『ザ・コミッ
トメンツ』や『すべてをあなたに』以上に、何とも後味が爽やかな青春映画なのだ。

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レトロで格調高いネズミ版『ホーム・アローン』◆『マウス・ハント』
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3月7日より全国東宝洋画系にて公開 '97年/アメリカ/1時間38分 ◇監督:ゴア・
ヴァービンスキー ◇脚本:アダム・リフキン ◇出演:ネイサン・レイン、リー・
エバンス、ビッキー・ルイス、クリストファー・ウォーケン ◇配給:UIP

 父親から相続した古い屋敷に意外な財産価値があることを知った兄弟が、屋敷をね
ぐらにする1匹のネズミを追い出そうと四苦八苦する物語。『ホーム・アローン』ば
りのドタバタもテンポがよくて面白いのだが、映画ファンならむしろ、序盤のしっと
りしたドラマを好きになるだろう。美術やコスチュームなどの、ちょっぴりレトロな
雰囲気がオシャレ。こうした世界観があるからこそ、後半のドタバタも生きるのだ。


●CHECK10本!

★=注目作 ★★=見て損はしない ★★★=これは必見!

■『長靴をはいた猫』 3月7日より全国東映系にて公開 ★★
歴代東映アニメの人気投票で、見事第1位。同時上映の新作アニメより断然面白い。

■『傷・心/ジェームズ・ディーン愛の伝説』 3月7日より銀座シネパトスにて ★
偉大な伝説に恐れをなして、誰も手をつけなかったジミー・ディーンの伝記映画。

■『REVIVAL OF EVANGELION』 3月7日より全国東映系にて公開 ★
昨年ブームを呼んだ『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』の再構成・決定版。

■『ラブ&ポップ』 新宿東映パラス3にて公開中 ★★★
気鋭の新人監督(?)庵野秀明が撮ったコギャル映画。映像感覚は『エヴァ』譲り。

■『フェイス/オフ』 全国松竹東急洋画系にて公開中 ★★★
これさえ見れば、夏まで他の映画を見なくても生きていける……。

■『アミスタッド』 全国東宝洋画系にて公開中 ★★★
スピルバーグに人間ドラマを求めてどこが悪い! 歴史に材をとった感動作。

■『PERFECT BLUE』 PARCO SPACE PART3他にて公開中 ★★★
アニメーションであることを忘れさせる、日本初の本格派のサイコ・ミステリー。

■『川のうつろい』 新宿シネマ・カリテにて公開中 ★★
砂漠に広がる恋と冒険の日々。植民地に左遷された男の目から見たフランス革命。

■『ハムレット』 3月6日までみゆき座にて公開 ★
芝居仕立ての興行もいよいよ千秋楽。7日からはスバル座で1週間だけのアンコール。

■『リング』『らせん』 3月6日まで全国東宝系にて公開 ★★
大ヒットしていたのに無情にも上映終了。3月7日より銀座シネパトスにて追加興行。

                            [Written by 服部弘一郎]

               ──●TOPICS●──

◆『タイタニック』の総興行収入、10億ドルの壁破る!
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先月末、米国内・海外を合わせた興行収入で世界一を達成した『タイタニック』が、
1日までの集計で、史上初、総興行収入10億ドルの壁を破っていたことが明らかにな
った。配給元であるパラマウントの調査によれば、『タイタニック』の観客のうち2
回以上見た「リピーター」は20%(通常の10倍)で、彼らの存在も今回の快挙に大き
く貢献したといえよう。

◆第33回淀川長治映画塾開催
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アテネ・フランセ文化センター主催の「淀川長治映画塾(第33回)」が、3月28日に
同センターで開催される。今回の演目は「フランチェスカ・ベルティーニとイタリア
映画の魅力」で、講演と『アッスンタ・スピーナ』(監督グスタヴォ・セレーナ、主
演フランチェスカ・ベルティーニ)の上映。

◆『SADA』、第48回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞
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第48回ベルリン国際映画祭(2月22日閉幕)で、日本から唯一コンペティション部門
に出品されていた松竹作品『SADA』(監督/大林宣彦、主演/黒木瞳)が、国際批評
家連盟賞を受賞した。なお『SADA』は4月11日より松竹系でロードショー公開される。

◆パイオニアLDC、DVDで世界へ
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パイオニアLDCは、CICビデオ・インターナショナル社(ロンドン、ポール・ミラー
社長)と同社が保有する作品『ベートーベン』『ザ・ペーパー』『シャドー』の3本
を皮切りに、DVDフォオーマットで世界市場に参入することに関し合意した。北米を
除く世界各国へ販路を広げる予定で、今後の作品、発売日、価格は未定。


             ──●ザ・ランキング●──

  『フェイス/オフ』が首位奪取! 主演の2人が、ああまで光ればもう納得。
  それでも『タイタニック』の動員数は先週より増えているし。今週末公開の
  『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』で春休みパワー全開か。来週の
  予想順位は、フェイス→タイ→グッド→ゲーム→アミスタッド。

  【配収】
  1 初(─)フェイス/オフ            ( 1週)
  2 ↓( 1)タイタニック             (11週)
  3 →( 3)ゲーム                ( 4週)
  4 →( 4)リング/らせん            ( 5週)
  5 初(─)アミスタッド             ( 1週)
  6 初(─)コップランド             ( 1週)
  7 ↓( 2)スポーン               ( 3週)
  8 ↓( 7)HANA-BI                ( 6週)
  9 →( 9)G.I.ジェーン             ( 5週)
 10 ↓( 8)ピースメーカー            ( 7週)

 興行通信社調べ
 1998/2/28~1998/3/1(銀座・新宿・渋谷3地区代表館集計)


                    ──●特集●──

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『フェイス/オフ』──ジョン・ウー アクションの魅力!
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 顔を変える、よりによって自分の子供を殺した犯人の顔に─それが任務とはいえ、
とんでもない命を受けたFBI捜査官の物語。荒唐無稽ハチャメチャと言うなかれ。炎、
銃弾、スピードに彩られた男の熱い闘い、これが『フェイス/オフ』だ。香港フィル
ム・ノワールにこの人あり。ジョン・ウー(呉宇森)にとってはこの作品がハリウッ
ド進出第3作となる。エンターテインメントてんこ盛りだった香港映画界(過去形に
なってしまった!)の中でもジョン・ウーは特別に輝いた存在だった。その理由のひ
とつは「男の美学」を徹底的に追及すること。己の美学をハリウッドに渡っても貫き、
この映画を完成させた。相手に向かって銃を突き付け合う2人、教会での鳩のはばた
き、コートのすそが翻るスローモーション、十字架の前の死闘、激しい銃撃音と美し
き「オーバー・ザ・レインボー」。鏡に映った顔と真の自己との戦い、善と悪の果て
しない闘い、それに到っては哲学的でもある。
 なんてツベコベいうヒマなくどんどん物語は転換していってしまうのだ。これが実
に心地いい!! 監督の「だまし」にもすすんでひっかかろう。ものわかりのよくなっ
たお父さんに戸惑いながらも喜ぶ家族や、どんどん手柄をあげる上司をたたえる捜査
官たちと同じ気分になってくる。そして監獄に閉じ込められた囚人には「一刻も早く
脱獄しなくては」と声援を送ってしまうのだ。
 女性の役割もジョン・ウー作品を支える太い柱のひとつ。1人の男を守るためマシ
ンガンをぶっ放し、銃撃戦もものともしない。それでいてセクシーで賢く、ひたすら
愛を信じる「いい女」。FBI捜査官ショーンもテロリストのキャスターも妻子持ちな
のだが、この2人の奥さんがとにかく偉い。家族愛から始まり、家族愛で終わる物語
にも、説得力が増してくる。それにジョン・トラボルタとニコラス・ケイジも、とび
きりスタイリッシュだから命かけてもいいかも、と思えてくるんだな。
  アフリカ系や中国系人物を要所に配し、マイノリティへの視線も忘れない。アーチ
ャーの義弟の家には漢字の額が。『フェイス/オフ』を堪能された方はジョン・ウー
の香港時代の作品もぜひ見て頂きたい。「出たがり」監督の顔も見られるし、どこか
で見たしかけやシークエンスが必ず見つかるはず。ちなみに子供を抱いたニコラス・
ケイジに『ハードボイルド』のチョウ・ユンファを見たぞ。

                            [Written by 瀧谷由紀]


            ──●オススメVIDEO●──

 ◇ 今週のオススメは日本未公開作品。重たいけど前向きな、すがすがしく ◇
 ◇ はないけどツーンと突き抜けた何かが、胸に残る作品です。      ◇

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『冷たい一瞬を抱いて』
──もう何もいえなくなる。少女はこんなにも懸命に大人になった。
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 アメリカの田舎で、交通事故の直後に生まれ、母親が意識不明のあいだに父親不明
の「私生児」とされてしまったボーン。だが優しい親戚に囲まれた彼女にとってそん
なことはまだ微笑ましい手違いに過ぎなかった。やがて母は再婚、新しい父親は優し
くてハンサムで、まもなく事故で死んだ。そして少女ボーンの母親は、情熱的だが短
気な、若い男と結婚する……。自分が成長するだけでも大変な時期に暴力と男のにお
いに耐えながら、寡黙に気丈に生きていく少女を演じるのはジーナ・マローン。昨年
公開の『コンタクト』でジョディの少女期を演じた注目株が涙にじむ名演を見せる。

【データ】'96/米/1時間37分(3/13発売:アドバピクチャーズ)
監督:アンジェリカ・ヒューストン 出演:ジェニファー・ジェイソン・リーほか
原作:ドロシー・アリソン「BASTARD OUT OF CAROLINA」


●CHECK2本!

■『私たちが好きだったこと』1時間49分/日本(3/13発売:東映ビデオ)
岸谷五朗、鷲尾いさ子、夏川結衣、寺脇康文らが演じる男女4人の奇妙な共同生活。

■『マルタイの女』2時間12分/日本 監督:伊丹十三(3/13発売:東宝ビデオ)
殺人事件を目撃し、身辺保護対象者「マルタイ」となった女と彼女を守る刑事たち。

                           [Written by 唯よーじゅ]


            ──●BS&CSチェック●──

◆今週はこの3本!
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3/7 (土)『ゲッタウェイ』 NHK衛星第2(19:35)
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出所した無法者のドク(スティーブ・マックイーン)は、政界の実力者と、釈放を引
き替えに銀行を襲う取引をするが……。過激な暴力描写で独自の美学を追求した、サ
ム・ペキンパー監督'72年の作品。

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3/8 (日)『ゴールデンアイ』 WOWOW(15:30)
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冷戦後のロシアを背景に繰り広げられる新たなる陰謀に、5代目ジェームズ・ボンド
こと、ピアース・ブロスナンが挑む。007シリーズ最新作『トゥモロー・ネバー・ダ
イ』公開前のこの時期だからこそ、ぜひ!

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3/13(金)『月の出をまって』 パワームービー(昼12:45)
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若かりし頃のピカソ、マチス、ヘミングウェーらのパトロン役を果たした、アメリカ
の女流小説家ガートルード・スタインと、その秘書アリス・B・トクラスの、信頼と
友情を描く「詩的ドキュメンタリー」。


                   ──●REVIEW●──

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『クロノス』──永遠の生命を巡る、ホラーという衣をかぶった愛の世界
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 永遠の生命は魅力だろうか、恐怖だろうか。それは、直面した者にしかわかり得な
い問題かもしれないが、人の心を救うものが何であるかを、この作品は語ってくれる。
 クロノスとは、中世の錬金術師が造った卵形の黄金のかたまりで、人間に永遠の生
命を与える装置である。しかし、手にした者は永遠の生命と引き替えに、体に張り付
くクロノスに自分の血を捧げなければならない。物語には、人生の終わりに差しかか
った2人の老人─クロノスの魔力と、その使用法が記された日記を所有し、体の不自
由な自分の代わりに、甥を使ってクロノスを探す大富豪と、ささやかな日常に幸せを
感じながら日々を送る骨董品屋の老主人─が登場するが、偶然は、クロノスを大富豪
ではなく老主人の手に渡してしまう。
 クロノスの存在によって、共に歯車を狂わされた2人。狂った歯車を修正すること
は不可能だ。が、老主人の孫娘にとっては祖父が祖父であることに違いはなかった。
彼女は「おじいちゃん」が醜い吸血鬼の姿となり、人目を避けなければならない状態
になってからも、ただひとり、ずっと傍らに寄り添う。常に無言のままの彼女だが、
自分自身にすらおののくようになった祖父を思う気持ちは、スクリーンを突き破って、
見る者に痛いほど伝わってくる。大富豪の醜い欲を対照的に描くことによって浮かび
上がる、人の心を救う愛の強さ。これは、ホラーというひと言ではくくりきることの
できない、愛の物語なのだ。
                            [Written by 巴りよた]


              ──●COLUMN●──

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【世間はシナリオだ!(4)】──君は、『タイタニック』をちょー見たか?
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 『もののけ姫』の空前の大ヒットも、『タイタニック』の全地球的スーパーヒット
で吹っ飛んだ感がある。たぶん『タイタニック』の記憶を薄めるには、今年の夏の
『ゴジラ』を待つほかないだろう。このような、話題としての共通体験や共時性とい
ったものは、映画が持っている大きな魅力のひとつである。事実、去年の秋くらいか
ら、電車に乗り込んでくる女子高校生たちが、映画の話をしているのを多く見かける
ようになった。別に聞き耳をたてているわけじゃないが、彼女たちの声が大きいので
まるまる聞こえてしまうのだ。

「見たい映画たまっちゃってさー」
「まだMIBだけだよ、見たの」
「ブラピも見たいし、ディカプリも来てるじゃん」
「『タイタニック』、誰か見たぁ?」
「ちょー見た」
「ええ?誰とぉ?」
 ……ギャハハハハ

という具合である。「ちょー見た」の「ちょー」は、まったくおかしな使い方だが、
許す。映画の話をしていたことに免じて、というよりむしろ、「ちょー」の臨場感は
なかなかのものだなどと感心してしまった。思えばこの15年、こんな光景は、めった
にお目にかかれるものではなかった(「ちょー」のことではなく)。映画がみんなの
共通の話題ではなく、まして、ある1本が一世を風靡するということは、ほとんどな
かったのかも知れない。おそらく、全国民レベルという意味では、『E.T.』が最後だ
ったのではなかろうか。
 先日の「映画の日」に、私は3度目の『タイタニック』体験をしたが、こんな素晴
らしい時間を1000円で買ってしまったのか、ということに半ば驚愕した。3時間強だ
から、1時間あたり330円だ。こんな娯楽がほかにあるだろうか? 普通に払ったと
しても、1時間あたり600円。ものすごく安い。ディズニーランドで10時間ねばると、
ほぼ同じになるが、映画は常に新世界体験をさせてくれるのだから、映画のほうが断
然安い。もちろん、映画にはアタリとハズレがあるから一概には言えないが、今年は
『タイタニック』1本で、ならしてもきっと安い。
 みんなで『タイタニック』を「ちょー」見て、『タイタニック』の話を「ちょー」
しよう。
                           [Written by 中 孝次郎]


          ──●占星映画術(3/7~3/13)●──

◆THE DAY OF BIRTH
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 3/ 7 上條恒彦(1940)、馬渕英里何(1979)

 3/ 8 高木ブー(1939)、キース・ジャレット(1945)、篠ひろ子(1948)

 3/ 9 MIE(1958)、リンダ・フィオレンティーノ(1960)、
    ジュリエット・ビノシュ(1965)

 3/10 チャック・ノリス(1940)、シャノン・トゥイード(1957)、
    シャロン・ストーン(1958)、熊谷真実(1960)、藤谷美和子(1963)

 3/11 北村和夫(1927)、梅宮辰夫(1938)、トム・サビーニ(1946)

 3/12 志村喬(1905)、ジュリア・キャンベル(1963)

 3/13 ヘンリー・ハサウェイ(1898)、吉永小百合(1945)


◆星座別オススメ映画
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占い協力:TAROT-ASTROLOGY OF THE WEEK
 http://www.cup.com/yoge/tarot/astro/

○おひつじ座(3/21~4/20)
  オススメ映画は『ジャンク・メール』。何かが足りない、その不足感を補う時に
  人に当たってはいけません。小さな心のすき間は、今は応急手当で十分です。
○おうし座(4/21~5/21)
  オススメ映画は『a.b.c.の可能性』。自分の未熟さを自覚していれば、すべては
  前向きに花開いていきます。が、思い上がってケンカすると、勝っても後悔。
○ふたご座(5/22~6/21)
  オススメ映画は『ラヴソング』。過去にあったことはとりあえず忘れて、未来に
  役立つことに目を向けましょう。緩やかですが運も強く後押ししてくれます。
○かに座(6/22~7/22)
  オススメ映画は『傷・心/ジェームズ・ディーン愛の伝説』。とにかく疲れるこ
  とが多いかも知れませんが、ひとりで煮詰まったときは友人や恋人と会うこと。
○しし座(7/23~8/22)
  オススメ映画は『アミスタッド』。仕事上の頑張りは実を結ぶ運勢です。でも、
  あんまりイケイケだと気づかぬうちに誰かが傷ついているかもしれません。
○おとめ座(8/23~9/23)
  オススメ映画は『桜桃の味』。ちょっと後ろ向きになりがちな週。ブルーになっ
  たらしばらく気が済むまで過去を振り返ってみるのもいいでしょう。
○てんびん座(9/24~10/23)
  オススメ映画は『川のうつろい』。一見お先真っ暗のようでも案外出口は近かっ
  たりします。不必要に落ち込まず時間を有効につかって早く抜け出しましょう。
○さそり座(10/24~11/22)
  オススメ映画は『PERFECT BLUE』。とんでもなくツイている代わりに、入れ替わ
  りに何かがバシッと終わるかもしれません。激しい展開に戸惑わないように。
○いて座(11/23~12/21)
  オススメ映画は『フェイス/オフ』。大樹の陰で安心していると大変なことにな
  ります。甘えて頼りにしているものとか、できるだけ早く総検討して下さい。
○やぎ座(12/22~1/20)
  オススメ映画は『バンドワゴン』。みんなで分け合うこと、分け合える仲間は大
  事に。今は独占欲は禁物。誰かにすべてを捧げるのも、ほかから敬遠されます。
○みずがめ座(1/21~2/18)
  オススメ映画は『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』。欲望を抑圧しても
  いい結果は出ません。適度に発散。加えてひとりで解決しないこと。
○うお座(2/19~3/20)
  オススメ映画は『マウス・ハント』。恋愛運は上々です。とにかく対人関係でこ
  れまで腐心してきたことが、見事に実ろうとしています。



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