シャープが、家庭用LED照明事業に参入して約半年を経過した。
家庭用照明事業では後発となるシャープだが、家庭用LED照明に限ってみれば、市場をリードする企業の一角に位置づけられ、その存在感が日増しに高まっている。なぜ、シャープは家庭用LED照明事業に本格的に取り組むのか。シャープのLED照明事業の取り組みを追った。
意外に思うかもしれないが、シャープのLED事業には長年の歴史がある。
同社がLEDの開発を開始したのは1968年のことだ。当初はインジケータなどの赤色LEDの開発からスタート。1970年からはLED素子の量産を開始し、これを用いた数字表示ユニットなどへの展開のほか、CDやDVDなどの光ピックアップへと事業を拡大。1991年からは青色LEDの開発に乗り出し、現在では、ブルーレイのピックアップ事業にも取り組んでいる。2007年には3.6Wで280ルーメンという、業界最高レベルの照明用LEDモジュールを開発。これにより、LEDを「光る明かり」から、「照らす明かり」へと進化させてきた。
2007年には、新製品、新技術の開発のための社長直轄型組織として、シャープが独自に取り組んでいる「緊急プロジェクト(通称・緊プロ)」に、LED照明のチームが発足。商品事業部、デバイス事業部門、研究開発部門などから約20人が召集され、照明商品の開発に取り組んできた。
プロジェクトチームは、2007年7月には、LED照明の第1号製品として、太陽電池パネルと一体化したソーラーLED街路灯を発表。2008年には業務用LED事業への参入を発表するとともに、2009年6月には家庭用LED照明への参入を発表。2009年夏から調光などが可能な家庭用LED照明商品の出荷を開始している。
その一方で、開発されたLED照明商品は、2009年10月から稼働している大阪府堺市のグリーンフロントフロント堺にも導入。10万灯個のLED照明を採用し、大幅な省エネ化を達成している。
シャープの片山幹雄社長が、「シャープのLED照明技術の強みは、デバイス、モジュール、商品に至るまでの垂直統合体制を敷いている点にある」というように、長年の蓄積によって培われた開発・生産一貫体制に強みがあるのは自他共に認めるところだ。
「一貫した設計、開発、生産の体制によって、いち早く最新デバイスを活用した商品開発が可能になり、また最短でユーザーニーズをデバイス仕様に反映させることができる。モノづくり力、コスト力、すり合わせ技術によって、最先端・高効率のデバイスを活用し、顧客ニーズにあわせたモノづくりが可能になる」とする。
一方で、片山社長は、LED技術を、プラズマクラスターイオン技術、ウォーターヒート技術とともに、健康・環境事業における「21世紀のシャープの主要技術」と位置づけている。
健康・環境事業における2012年度の売り上げ規模は約1兆円。なかでも、LED照明は環境関商品の新たな柱になるとされ、2012年度には、LED照明事業の売上高を500億円規模にまで拡大することになる。
シャープは、これまで不況時において、魅力的な商品を創出し、新たな需要を喚起してきた経緯がある。
1973年のオイルショックでは液晶電卓、1991年のバブル崩壊では液晶ビューカム、そして2001年のITバブルの崩壊では液晶テレビ「AQUOS」である。この公式に当てはめると、リーマンショックを背景にした世界同時不況、100年に一度の経済不況に陥った2009年にシャープが送り込んだのがLED照明ということになる。
同社の試算によると、全世界の照明市場は、2012年度には、2008年度比22%増となる11兆1700億円の規模を見込むが、そのうちLED照明は、約8倍となる2兆3400億円の規模を見込む。2008年度には、わずか3.3%だったLED照明の構成比は、2012年度には21.0%を占めるという。実に5台に1台がLED照明だ。
この傾向は日本市場でも同じである。LED照明の市場規模は、2008年度の200億円から、2012年度には2220億円と、約11倍に拡大すると見ている。 これだけ市場が拡大する背景には、世界各国で省エネに対する意識が高まっていることがあげられる。
日本では、2008年の福田ビジョンで示されたように、2012年度をめどにすべての白熱電球を省エネ電球に切り替えるといった方針が打ち出されたが、オーストラリアでは2010年までに一般家庭や商業施設での白熱電球の使用を制限かするほか、オランダでは、2011年までに家庭やオフィス、街灯に省エネ電球の使用を目指したり、米カリフォリニア州では2012年までに白熱灯の販売を禁止する法案が出されたりといったことが起こっている。
LED照明の特徴は、4万時間という長寿命のほか、器具の小型化や交換する回数が少なくなることでの省資源化、水銀レスで生産できる環境保全、低消費電力や調光による省エネ、熱くなりにくい低赤外線や、虫が寄りにくい低紫外線、ちらつきが少なくはっきり見える視認性といった点でメリットがある。
とくに省エネ性という観点では、1円で11時間の使用が可能であり、24時間点けっぱなしにしても、2.2円で済むという大幅な電気コストの削減にもつながる。その点では、イカ釣り漁船や養鶏場、野菜の栽培といった業務利用にも適しており、新たな分野への応用も期待される。一日10時間使用でも10年間以上交換不要という特性も、高齢化が進み、電球交換が苦労となる世代への訴求にも適している。さらに太陽光発電システムや蓄電システムとの連動によって、街路灯や防犯灯などへの設置も行え、ここでも新たな需要創造が期待される。
加えて、シャープでは、「健康照明」という新たな領域にも乗り出す考えを示す。
まだ検証されてるわけではないが、リラックスできる光や、暑さや寒さを感じない光といった取り組みが、健康照明への取り組みにつながる可能性を模索するものだ。
今後は、研究機関と連動する形で、光と人間との関係や、照明が健康に対してどんなメリットを及ぼすのかといった観点からの研究を促進し、単に照らすだけでなく、健康という価値を付加した照明ソリューション提案を行う考えだ。
シャープが提案するLED照明のコンセプトは、「Change your Light,Change your Life!」。日本語にすると、「明かりが変わり、生活が変わる」となる。
これまでの明かりは、点ける、消すという基本的な動作の繰り返しだった。
だが、LED照明では、調光、調色が可能という特徴を生かして、生活の質を向上させることができると位置づける。
例えば、シャープが発売したLED電球では、調光で7段階、調色で7段階の49パターンの光を生み出せる。
ひとつのLED電球で昼白色から電球色までの変化ができるため、部屋のイメージを変えたり、生活シーンを変えたりといったことが、光によって可能になる。くつろぐのか、あるいは仕事や勉強をするのかといった用途によって色を変えたり、季節、時間帯によって最適な灯りを作り出すといった使い方も可能になる。
こうした様々な光を生み出すことは、生活をより豊かにすることにつながると考えているわけだ。
また、電球そのものが調光でき、調色できるということは、電球そのものが照明器具になるという表現も当てはまる。
赤外線をほとんど出さないことからあまり熱くならず、デザインされた傘などをLED電球に取り付けることも可能。和紙による装飾も可能だ。今後は、サードパーティーとの連携によって、こうした提案も増えていく可能性があるだろう。
このようにシャープが展開するLED電球を第1弾とした家庭用LED照明事業は、多くの可能性を持った商品である、新たな市場開拓も予感させるものとなる。
現時点では今後の商品ラインアップの拡充計画については明らかにはしていないが、電球型に留まらず、埋め込み型などへの展開も期待される。
さらに、シャープが得意する太陽電池やプラズマクラスターイオン技術と連動した製品提案も、注目されよう。すでに街路灯や業務用では、組み合わせ提案もあるだけに、家庭用照明での展開も気になるところだ。
照明市場におけるシャープのブランド力はまだ低いが、垂直統合型の強みを生かして、家庭用照明市場に新たな提案ができれば、存在感はさらに高まることになるだろう。
加えてシャープは「すべての液晶テレビのバックライトをLEDに替えていく」と宣言している。現在の多くの液晶テレビには「CCFL(冷陰極管)」という細い蛍光管が搭載されているが、これを「LED」に替えると言うのだ。たとえば新発売の「LED AQUOS Sシリーズ」(もちろんLED搭載)は昨年発売のCCFL搭載モデルに比べ、年間消費電力量が46V型で41%も削減できる(LC-46SE1とLC-46DS6の比較)。
ご存知の通り
AQUOSは日本では販売台数NO.1のテレビだ。これらのテレビがすべてLEDバックライトに替わったらLEDの実装個数も相当な数に上る。
くしくも液晶テレビで得られる「エコポイント」をLED電球に交換する際には1ポイントを2円とする優遇措置もスタートする。LED AQUOSもLED電球も、次の一手がますます気になる事業である。





