第4回 ご近所アートめぐり

 ここ近年、子育て世代の女性を中心に、いわゆる「ナチュラル系」インテリアが人気のようだ。雑誌を開けば、天然素材の家具や雑貨でコーディネートされた部屋が紹介されている。カフェのような色数を抑えたくつろぎ空間はさぞ心地よいだろうが、テイストの合わないものを徹底的に排除した部屋づくりは、くつろぎに反しそれなりの労力を要すると想像させる。

 自宅にこもりインテリアに情熱を注ぐ人たちがいる一方で、とことん独自路線のエクステリアを披露する人たちがいる。
 わがご近所には、そんな人たちのユニークな物件がいくつかある。

 通りに面して陶器の犬をずらりと並べた家。かつて店舗だったスペースをサボテンの鉢で埋め尽くした家。ガーデニングお馴染みのオーナメント「七人のこびと」とともに、手芸作品と造花で壁面構成した家。ある理容店は、店の内外にトルソー、絵画、仏像と方々の美術品を展示し、もはや秘宝館の趣だ。

 中でも異彩を放つのは、自作のオブジェで庭先を展開した家だ。
 二宮金次郎像が「とびだし注意」の看板を掲げ、その上でアンパンマンが飛行機を操縦する。日の丸を持ったウサギが富士山を目指し、生きたインコがトンネルを行き来するという仕掛け。

 独特の作風を言葉で伝えきれないのがもどかしいが、ともかく今時のナチュラルテイストとは対極の、ゴテゴテの世界観。おしゃれとは程遠いが、私はこうしたアート(?)になんともいえない愛着を覚える。

 その魅力の一つは、作品からにじみ出るサービス精神だ。通行人を楽しませたいという思いが見てとれる。作品が放つ不思議なエネルギーを少し持ち帰らせていただこうとカメラを向けていると、作者が出てきて丁寧に作品解説をしてくれることもある。たいていは高齢者で、フレンドリーな方が少なくない。

 好きなものに囲まれ、ほっこりおうち時間も素敵だが、個性派シニアアーティストたちの作品を見ていると、われわれ世代、ちょっと元気が足りないのではと思えてくる。

 私も元気で味のあるおばあさんになりたい。
 自分の老後に思いを馳せつつ、件の理容店の先を曲がりかけたとき、造花で装飾されたデコチャリが私を追い越して行った。

(2013/1/17)

1976年生まれ。カメラ誌出版社を経てフリー。カメラ雑誌や書籍での撮影・執筆を中心に、保育雑誌での撮影、その他依頼撮影などに従事。カメラはデジタル一眼レフと各種フィルムカメラを愛用し、フィルムカメラでは特にパノラマカメラHORIZONや中判カメラHASSELBLADがお気に入り。撮影テーマは、郊外、自然・アウトドア、子どもなど。 ブログ:http://bashinote.blog.fc2.com