2019年1月31日、エアロセンスは、2019年2月より物資輸送・点検・災害調査など多岐にわたるソリューションに向けた自律飛行型ドローン・プラットフォームとして、新たに飛行性能を上げ可搬性を増強した産業用ドローン(AS-MC03-T)を発売することを発表した。
 同機はAS-MC03シリーズの特長である自社開発フライトコントローラーの採用をはじめ、自社開発制御ハードウェア&ソフトウェアや、国内工場での製造と品質・保守体制をベースにこれまで培ってきた知見とノウハウを生かした独自技術を多数搭載している。

AS-MC03-T

ドローン・プラットフォームとしての提供

 自律飛行型ドローンには、測量・点検用途以外に物資輸送・災害調査・捜索・上空監視など、今後さまざまな利活用が想定される。たとえば、災害調査・捜索・上空監視などの画像伝送をベースとしたシステムの構築においては、リアルタイムで高品位な画像伝送を可能とする動画カメラ・ジンバル・通信モジュールなどのシステム機材の搭載が前提条件となる。また、物資輸送には相応の可搬重量と飛行可能時間が重要な要件となる。これらの実現に当たりドローン側に求められる基本的な性能指標として「可搬重量」と「飛行時間」に着目し、機体に求められる性能がどうあるべきか、数多くの基礎実験や実際の運用を想定した実証試験を通してデータを蓄積しつつ開発を進めてきた。そこから得られた知見とノウハウから、ドローン・プラットフォームとしてAS-MC03-Tが製品化された。

小型との違い、優位性、継続される優位性 これによって解決されること

 既発売AS-MC03は、空撮測量・点検用に特化し小型サイズと軽量化を徹底的に追求したモデルである。
 ソニー製2000万画素レンズスタイルカメラ(UMC-R10C)を標準装備し、高精細なイメージングが可能である。同時に高度な測量技術を必要せず高精度なドローン測量を実現する、同社独自のAEROBORシリーズでの測量ソリューションの一端を担っている。
 今回発売のAS-MC03-Tは、測量用AS-MC03機の持つ高い自律飛行性※1)と充実したフェールセーフ機能※2)はそのまま継承しつつ、機体サイズと推進系の最適化を図ることで可搬重量を700gから3kgまで高めている。

※1)高い自律飛行性
様々なセンサーを組み合わせたセンサーフュージョンを用いた慣性航行システム(INS)を搭載している。測量機器にも使われる大型アンテナを採用した全地球測位システム(GPS)、複数の加速度、角速度、地磁気、気圧の各センサー、及び下向きセンサー(標準機体)により、高度な自律飛行性能を装備している。

※2)充実したフェールセーフ機能
無線切断、GPS異常検出、バッテリー低下、飛行禁止領域内への侵入検知時などの各状況に対応したフェールセーフ機能を装備している。

事例:ドローンによる物資輸送について

 山間部や離島などのいわゆる過疎地域あるいは到達困難地域への日常物資輸送をドローン物流に置き換えることで対費用効果を上げ、これまでの非効率な低積載輸送への代替とする試みが随所で本格化してきている。
 例えば比較的軽量な通常配送物(例えば、郵便物、書類、医薬品など2kg以内に収まるもの)であっても、輸送物としての価値の基準は、重量やサイズではなく時間軸と必要性から決まるものである。また、自然災害により孤立した地域への救援物資輸送など、緊急を要する場においてはなおさらだ。
 ドローンによる物資輸送は、これらの課題を簡便に解決する有効な手段として期待されている。

事例:ドローンによる監視・点検について

 点検や監視の現場では人間だけではなくドローン自体が近づけない場所も多くある。そのような場所においても、20倍〜30倍のズームを搭載したジンバルカメラを搭載することで、今まで難しかったミッションを可能にしている。

カスタマイズ例1~軽量物資輸送

 同機のために開発した搬送ボックスは、軽量かつ断熱性に優れる基材に特殊コーティング処理を付与することで強度と耐候性を確保している。環境変化に対してデリケートな医療資材や生鮮食品などの品質を維持し安全に届けるための輸送パッケージとして提供可能である。同機では搬送物重量2kgまでを想定している。

AS-MC03-T飛行性能
・標準タイプ(バッテリー6S 8000mAh)
飛行可能時間/搭載重量:20分/1kg, 15分/2kg
・大容量タイプ(バッテリー 6S 10000/16000mAh )※カスタマイズオプションにて対応
飛行可能時間/搭載重量:30分/1kg, 23分/2kg(16000mAh時)

AS-MC03-T 搬送ボックス搭載カスタマイズ例

エアロセンスのドローン物流への取組み

 エアロセンスではドローン物流への取組みの一環として、ANAホールディングス(以降、ANAHD)、福岡市ドローン物流協議会主導の元、国交省・環境省「ドローン物流実用化推進調査」に参画している。
 福岡市の玄界島を舞台にANAHDとエアロセンスおよび福岡市が構成する「福岡市ドローン物流協議会」は2018年11月20日から22日まで、延べ4回のドローンを使った輸送検証を実施した。検証試験は目視外飛行を前提とし、福岡市西区の唐泊港から離島・玄界島ヘリポートまでの往復10㎞にわたる海上で実施され、目視外飛行で片道5kmを約9分で飛行しその有用性が実証された。
 今後はドローン物流の仕組み作りとともに、低コスト・高頻度で物流拠点から最終需要者のいるところまで物資を運搬できる、きめ細やかな物流サービスの社会実装に向けて、福岡市の玄界島を舞台に協働していく、としている。

国交省・環境省「ドローン物流実用化推進調査」福岡市での実証試験の様子

カスタマイズ例2~映像伝送

 災害調査・捜索・上空監視などの用途に向け、遠隔リアルタイム画像伝送に対応したカスタマイズオプションを用意した。
・4K / 高感度Full HDのズームカメラ +BLDCジンバル
 カメラブロックに4K 光学20倍ズームカメラを搭載することで、点検や監視に対して非常に優れた性能を実現することができた。また、カメラを高感度Full HDの30倍ズームカメラに切り替えることで、低照度環境においても鮮明な空撮画像を取り込むことができる。また、専用のBLDCモーターを用いたジンバルを自社開発し、搭載することで、高倍率のカメラブロックの性能を損なうことなく高品位な画像を提供することを可能にした。
・IRセンサー(3軸ジンバル付き)
 夜間撮影用として、空撮用IRカメラ市場においてデファクトスタンダードともいえるフリアーシステムズ社のセンサーを搭載可能。

左:AS-MC03-T Full HDカメラ(ジンバル付き)搭載カスタマイズ例/右:映像伝送:ジンバル付きFull HDカメラによる飛行の様子
【AEROBO®「AS-MC03-T」】
名称AEROBO®「AS-MC03-T」
提供開始日2019年2月
価格1,944,000円※1
 (本体 1,800,000円+消費税194,000円)

 同機は受注生産であり、ペイロードなどのカスタマイズは受託・共同開発など要望に合わせて相談可。※1 機体一式収納ケースおよび標準バッテリー3個を含む。操作端末PCは別途。

主な諸元・機能の比較

※1)大容量モデルはカスタマイズオプションとして対応
※2)バッテリー6S 16000mAh搭載時