2018年10月22日、第6回日本災害医療ロジティクス研修(事務局:岩手医科大学)が、岩手県宮古市にある県立宮古病院で行われた。災害発生のため孤立した病院へ物資を輸送するという飛行実験で、岩手県ドローン協会とその加盟企業であるドローンショップ仙台、佐藤興産、スカイシーカーが、ドローンの活用の場を広げるために実施した。

災害時に病院が孤立したと想定し、最大積載量6kgの「物資搬送用ドローンQS8」による衛星電話の輸送実験を実施した。

先に中型ドローンを飛行させて周辺の安全確認を行い、その撮影データを参考にQS8の自動飛行ルートを作成、国道や建物から30メートル以上の安全距離を確保するため、病院横の森林上空を飛行させた。

次に、作成した自動飛行ルートを元に、衛星電話を積載したQS8が往復1.5kmの距離を自動で飛行し、目的地(宮古病院)屋上で待つ職員へと無事衛星電話を届ける事に成功した。 また、今回の実験では災害時施設状況伝達横断幕「SOSシート」を活用し、その有効性についても確認することができた。

ドローンの活用

遠隔操作で物資の搬送もでき、 映像も確認できるドローンへの期待が、 高まっている。岩手県ドローン協会・佐藤亮厚代表理事は、「(ドローンの)映像を活用し、被災者の方を迅速に救助できればと思っている。その訓練に、これからも積極的に参加していきたい」とコメントしている。刻一刻を争う災害現場でのドローンの活用は、これからもっと増えていくだろう。

【岩手県ドローン協会の取り組み】
「国内初。 ドローンを活用した冬季の火山噴火対応訓練を実施」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000025357.html

物資搬送ドローンを導入、東京都あきる野市の取り組み

すでに、物資搬送ドローンQSシリーズを導入し、市政に役立てる取り組みを東京都あきる野市では行っている。土砂災害や降雪により、孤立が危惧される地域があるため、孤立地域対策が課題の一つである。ドローンは地上の移動が困難になる災害時でも、迅速かつ確実に空中を移動することができる。QSシリーズには操縦技術を補う自律飛行機能や物資搬送用のボックスも備わっているため、孤立地域の状況確認や支援が可能である。ドローンを活用できる人材育成や防災訓練にも力を入れている。

あきる野市防災訓練

物資搬送ドローンQS8とは

QS8は最大6kg(推奨)の物資を積載することができる、物資搬送に特化した機体である。 さらに、高性能な防塵・防滴性能や拡張性の高いカメラマウントを有しており、様々なカメラが搭載できることから災害現場の正確な状況確認も可能であり、大規模災害現場での飛行に非常に適した機体と言える。DJI社「Windシリーズ」をベースに、スカイシーカーがDJI JAPANと東京都あきる野市と共同開発した機体である。

モーター軸間距離:1520mm
推進システム:E2000
機体重量(MG-12000バッテリー):12.6kg
最大離陸重量:20kg
最大積載量:6kg
ホバリング時間:27分
最大上昇速度:5m/s
最大下降速度:4m/s
最大風圧抵抗:12m/s
最大飛行速度:15m/s

従来のドローンでは、災害現場や山間部での飛行は電波通信が遮断されるという問題から非常に困難だったが、DJI社製QSシリーズでは新型の制御基板により、何らかの原因で電波が遮断されても目的地へ到着後自動で着陸し、安全に物資を搬送することが可能である。

スカイシーカーのドローン導入、 活用の取り組み

同年11月30日(金)に、DJI JAPANとスカイシーカー、ドローンショップ仙台が共同で「ドローン導入・活用セミナー」を仙台市にて実施した。当日紹介されたドローンは、DJIから10月30日に発表されたばかりの新製品「Mavic2 Enterprise」で、主に下記のような機能を持ち、災害時の活用に期待されている。
Mavic2 Enterprise 注目すべき3つの新機能
・M2E スポットライト
・M2E スピーカー
・M2E ビーコン

活用が期待される場面
・夜間の捜索、 人命救助
・夜間の点検、 調査
・夜間の撮影
・空からの巡視
・避難誘導 など

スケジュール(一部)
・Mavic2 Enterpriseの商品紹介、海外での活用事例
・国立研究開発法人 防災科学技術研究所 山内 庄一郎 氏 講演
・ドローンパイロットの育成、導入支援
・デモ、体験会