ドローンジャーナル

Mavic 2 Enterpriseが日本市場に登場

-警察・消防・災害現場を支援するツールとして期待される-

 DJI JAPANは11月15日、先ごろ発表された産業⽤ドローン「Mavic 2 Enterprise」の報道関係者向けの説明会を開催した。同機は8月末に発売が開始されたコンシューマー向けドローン「Mavic 2 Zoom」をベースに、おもに警察や消防といった災害救助の現場や、インフラ点検といった用途に向けてカスタマイズしたモデル。LEDライト、スピーカー、フラッシュライトという3つの拡張アクセサリーを取り付けて使えるのが最大の特徴だ。この日は日本市場に向けて同機のプレゼンテーションを行うとともに、警察・消防といった業務でドローンを活用するためのトークセッションも開催された。

DJIのMavic 2 Enterprise。
プレゼンテーションを行うDJI JAPANの柿野朋子氏。

 10月30日に発表され、すでに正規代理店からは販売も始まっているMavic 2 Enterprise。同機はアームを折りたたんでコンパクトな姿で持ち運べるMavicシリーズの特性を生かし、「警察・消防・災害対応・インフラ点検といった用途で、日常の業務ツールとして使えるように開発した」と柿野氏は説明。とくに危険な場所や到達しにくい場所で、こうした関係者の活動を支援するためのドローンだと付け加えた。

 Mavic 2 Enterpriseは、OcuSync2.0の無線システムや全方向の衝突防止システムの搭載、静音性能の高いESCとモーター、プロペラなど、基本的な機体の仕様はMavic 2 Zoomとほぼ共通となっている。大きな違いは撮影機能の部分で、カメラズーム機能の内、デジタルズームがMavic 2 Zoomの2倍から3倍に引き上げられている点だ。結果として35mm判換算24~48mmの光学2倍ズームと合わせて、最大144mm相当の焦点距離が得られることになる。対象物をより遠くから撮影することが可能で、危険な対象物から離隔を取ることで安全性を高めることができるという。

 ハードウエア上のもうひとつの特徴は、機体上面に付属の専用アクセサリーを取り付けられることだ。スポットライト、スピーカー、ビーコンという3つのアクセサリーがキットに同梱されていて、現場の状況や用途に応じて2つのネジで脱着ができる。2400ルーメン相当の照度があるスポットライトは、災害現場で遭難者を探したり、救助の際にその現場周辺を照らすといった用途に使える。スピーカーは空中から遭難者に呼びかけるといった用途に使用。あらかじめ録音した10種類の音声を再生することが可能だ。その音量は100dBで、救急車のサイレンの音量に相当するという。そしてビーコンは災害現場で空域を共有する他の有人・無人航空機に対して自機の位置を知らせるのに役立つ。最大5km離れた場所からでも視認可能といい、FAA(アメリカ連邦航空局)の夜間飛行禁止の適用免除基準も満たしているという。

M2Eスポットライト。2つのLEDが2400ルーメン相当の光を放つ。
スポットライトはローターが回転する前の状態で50%の光量で、離陸すると100%になる。写真は100%の状態。
M2Eスピーカー。小型ながら100dB相当の音を出力できる。
スピーカーから録音した音声が流れる様子。かなり大きな音だ。
M2Eビーコン。天面に突き出たLEDフラッシュライトが点滅する。
ビーコンを作動させた様子。有人航空機の衝突防止灯のように閃光を放つ。

 また、公正な記録を残すという点でも仕様が追加されている。そのひとつがGPSタイムスタンプ機能で、映像データに位置情報を記録することが可能。インフラ点検では不良個所の特定や、映像の証拠能力を高めるのに役立つという。さらに、内部ストレージを8GBから24GBに拡大。パスワード保護機能も追加されており、この機能を使えば内部ストレージへのアクセスがパスワードで制限されるため、万が一機体を墜落などで紛失してもストレージに書き込まれたデータにアクセスされにくい。

映像上にその位置を記録するGPSタイムスタンプ機能。
24GBの内部データストレージを装備。現場にメモリーカードを忘れても対処可能だ。

 また、操縦者が手にするコントローラーやアプリも仕様が変わっている。使用するアプリはすでにベータ版として提供されていた「DJI Pilot」アプリだ。「GS Pro」のような飛行ルートの作成機能も備えているほか、新たに搭載された拡張アクセサリーの調整や、複数台のドローンを管理する「DJI Flight Hub」との連携も可能。さらにコントローラーには新たに周辺の航空機から発せられるADS-B信号を受信する機能を搭載しており、「DJI AirSense」としてアプリの地図上に周辺を飛行する航空機の位置を表示してくれる。

 機体の基本仕様はMavic 2 Zoomとほぼ同じだが、Mavic 2 Enterpriseではバッテリーに自己発熱機能を搭載。離陸前にバッテリーの電力を使ってバッテリー自体を温めるため、-10℃以上であれば低温環境下でも飛行することができる。Mavic 2 Enterpriseのキットは、機体、コントローラーのほか、3つのアクセサリーと3本のバッテリーが同梱。さらにこれらすべてが、頑丈な専用ハードケースに収められている。価格はオープンプライスで、実勢価格は30万円前後となっている。

専用の樹脂製ハードケースに収められたMavic 2 Enterprise一式。
DJI Mavic 2 Enterprise紹介映像:DJI JAPAN/YouTube

いかにしてドローンを災害現場で役立たせるか

国立研究開発法人防災科学研究所の内山庄一郎氏。

 Mavic 2 Enterpriseが警察・消防・災害対応の支援ツールとして位置付けられていることから、この日は消防や警察でドローンの活用を説く二人の専門家がゲストスピーカーとして登壇した。NIED(国立研究開発法人防災科学研究所)の内山庄一郎氏は、『現場従事者にとって「今」得られるドローンのメリットとは?』と題して講演。災害現場においてドローンは手の届かない場所から撮影ができる“空飛ぶカメラ”だとして、情報収集や世偵察、捜索、監視といった用途で現場従事者にとって有効だという。ただし、ドローンを活用する用途が複雑になるにつれて、操縦する技術だけでなく得られた情報をいかに扱えるかという技能が必要になると説明した。

現場上空で機体を北に向けてカメラを真下に向けて撮影することで、現場全体の状況や出場場各部隊の状況が把握できる。
高高度から現場を俯瞰することで、地上からでは発見できなかった要救助者を検索できるため、救助率の向上が期待される。
撮影写真からオルソ画像を生成して災害前の写真と比較。河川の流路の変状、土砂だまりの様子から要救助者の居場所を推定できる。写真測量や飛行計画作成の技能が必要。
撮影写真にGIS(地理情報システム)の住宅地図を重ね合わせることで、被災家屋の居住者や場所、その数などが特定できる。地理空間情報の取り扱いの技能が必要。
現場写真に位置情報端末を持った捜索従事者の移動経路を重ね合わせることで、捜索漏れを可視化できる。

 もう一人のスピーカーはJDRI(一般社団法人日本ドローン無線協会)の酒井淳一郎氏で、酒井氏は警視庁をはじめさまざまな公共機関に対して、ドローンの導入や訓練のアドバイスを行ってきた人物。その経験からドローンの導入プロセスの問題をテーマに挙げた。
 酒井氏によると多くの公共機関がドローンを導入する場合の課題として、導入から稼働までに1~3年という時間がかってしまていることを挙げる。その原因は「導入を検討する段階でドローンによって何ができるかを考え過ぎてしまい、機材が不必要に大掛かりになり、膨れた予算の決済が遅れ、導入が遅くなる」と指摘。「結果として予算が翌年度に跨ってしまったり、決裁権者が人事異動で変わってしまったりして、さらに導入が遅れてしまう」と付け加える。そのため、まずは運用コストの優れた機材を仮導入し、仮運用してドローンに従事する担当者がその中から目的を再考することで、より実のある導入ができるようになるという。さらにチームを作り作業範囲を分担することで、人員が入れ替わっても、蓄積したノウハウが引き継げるようにしておくことが大事だと説明した。

一般社団法人日本ドローン無線協会の酒井淳一郎氏。
多くの導入プロセスでは、目的の検討や予算請求からの決済に時間がかかりすぎて、導入に至らないケースもあるという。
仮導入と仮運用をすることで、その中からドローン導入の目的が明確になり、最終的に有効なドローン導入ができるという。
チームを作ることでドローンを一貫した意思決定のための道具とすることができると酒井氏は説く。