2018年11月13日、アイエイチプランニングと竹腰永井建設はタッグを組み、砂防設備管理にUAVを活用するプロジェクトをスタートさせたことを発表した。前者は白山国立公園内の砂防工事などの土木工事において多くの実績があり、そのICT化に取り組んできた。後者はUAVによる調査/点検業務に多数の実績がある。

砂防工事のUAV活用について国土交通省の最新動向

 国土交通省は点検作業の効率化と安全性向上のため、19年度に砂防施設の点検要領を5年ぶりに見直すことを発表した。UAVなどの新技術だけを活用する点検も平時・緊急時を問わず行えるようにするとしている。このような動向に先駆け、砂防工事のプロとUAVのプロが互いの実績と経験を共有しながら将来を見据えた取り組みが開始された。

ICT化技術で「各種プロジェクト」に採択

 「竹腰永井建設」は同年、砂防・治山・山腹工事などについてのICT化において国土交通省の推進する「革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」及び中小企業庁の推進する「ものづくり技術」に採択されている。
 公共事業において、国土交通省主導で石川県でも一部で試行的に行われるようになったICT化だが、急峻な地形・立木・岩盤・転石などの障害が多く衛星感度も低い砂防工事などの現場ではICT化が難しいと言われてきた。
 同社は開業以来50年以上に渡って、砂防/治山/山腹工事に携わってきた経験と技術力を生かし、UAVによる測量や3次元データの活用、ICT建設機械による施工に積極的に取り組み、安全性の強化と生産性の向上を図っている。

UAVについて

 砂防設備のある山間部ではGPSの捕捉が少なくなる場所もあるため機体が不安定になりやすい。GPSセンサを切った状態で安定飛行させることや、斜面に沿って一定の距離を保って手動飛行させて撮影するにはある程度の操縦技術/経験を要するため、UAVの操縦が困難な現場の1つであると言える。
 同プロジェクトでUAV操縦を担当するのがアイエイチプランニングである。航空法における国土交通省の全国包括飛行許可も受けており、これまで橋梁やダムなどGPSの捕捉が少ない現場での調査や、赤外線カメラも使用した太陽光発電設備点検をはじめとする設備点検実績が豊富なパイロットが操縦する。

「可視」「赤外線」2つのカメラで同時撮影

 両社は、白山国立公園内の砂防施設にて2つのカメラを同時撮影できるUAV機体で検証を行っている。高精細な「可視カメラ」による上空からの撮影画像より、人の目線からは発見できない岩盤の亀裂を発見できた。人が立ち入れない場所の状況確認に対しUAVの有用性を見出せた。GPSの捕捉が十分な場所であれば、自動航行の航路を設計し定期的に同じ場所の画像を取得することにより経過観察も可能となる。

 「赤外線カメラ」撮影画像からは、斜面から山水が染み出している箇所を発見。「可視カメラ」だけでは見つけづらい部分も温度分布が一目で分かる「赤外線カメラ」を使うことにより効率的に異常の確認が可能になる。
 また、砂防堰堤工事箇所周辺の高所岩盤部分を今回UAVで上空観察したところ、岩盤部分に大きく亀裂が入っていることも確認が取れており、実際の現地作業時の事前安全対策にも効果を期待できる。

これまでの砂防設備管理の課題とUAVの可能性

 砂防施設の管理はその地形特性上、点検には高所作業や急斜面など足場が悪く転落などの危険を伴う作業である。UAVを点検調査ツールとして用いることにより、危険箇所の把握や土砂水源の確認、また岩盤に発生している亀裂部分の特定、水みちなど実際の作業計画段階での安全対策や法面施工工法の検討などの参考になると確信している、という。
 また、従来通り法面施工後の剥離・経過観察においても可視・赤外線カメラを同時搭載したUAVを活用することで、効率的な点検実施が可能となる。冬場を迎える時期に備え砂防管理エリアの現状把握など今後も引き続き検証を重ねていくとともに、今回行った実績を踏まえ国内の砂防管理エリアにも対応を行っていきたいとの考えを示した。