Element One

 2018年10月8日、小型無人航空機向けに水素推進システムを12年間にわたって開発してきたHESエナジー・システムズは、地域向け水素電気旅客機となる「エレメント・ワン(Element One)」の計画について発表した。

 商業航空の開始から1世紀を経て、同社は新たな形態の航空モビリティーを先駆的に切り開くために、さまざまなパートナーと協力している。新たな航空モビリティーとは、静寂性、ゼロカーボン、パーソナライズ、オンデマンド、分散化の要素を備え地方のコミュニティーに経済的包摂性をもたらすものである。

Element One

 ゼロエミッション*1航空機として設計されるエレメント・ワンは、同社の超軽量水素燃料電池技術を分散型の電気航空機推進デザインと一体化する。HESの分散型システムは、現在のドローンのシステムを変更することなく、モジュール化に加え、多重のシステム冗長性*2によって安全性向上を実現する。

*1生産過程で出る廃棄物をゼロにすることを目指す。
*2稼働中のシステムに障害が発生した際に瞬時に予備システムに切り替えることで損失を最小限に抑える。

 エレメント・ワンは、水素の貯蔵形態によって、4人の旅客を500km〜5000km運べるように設計されている。その性能は、他の電池式電気航空機よりも優れている。小規模な空港や飛行場から成る既存のネットワークを活用して、小さな町と地方をつなぐ新たな航空ルートを設けることができる。また、同機の燃料補給は、自動ナセル交換システムによって10分以内で行うことができる。このシステムは、アマゾンやアリババが使用しているような無人搬送車(AGV)や自動倉庫業務を応用している。

 HESの設立者であるTaras Wankewycz氏は、「HESの超軽量水素エネルギー貯蔵システムを分散型の推進装置構成で使用することで、電池式電気航空機の航続時間の限界を乗り越えられるようになった。エレメント・ワンの設計は、電気航空機向け長距離燃料としての再生可能水素の使用の道筋となる」とコメントした。

 同社は、エレメント・ワンなどのより大規模な電気航空機の配備のために水素燃料対応空港のネットワークで、燃料電池式の無人航空機とオンサイト水素発生装置を結ぶ作業の開始計画について発表した。飛行できる試作機を2025年までに開発することを目指しており、航空分野と水素分野の二つのエコシステムを利用して技術・商業コンソーシアムの構築を進めていく、との展望を示した。