ドローンジャーナル

送電網に沿って飛ぶドローン配送が一歩踏み出す

-東京電力、ゼンリン、楽天がドローン物流の共同検討をスタート-

 2018年7月12日、東京電力ベンチャーズとゼンリン、楽天の3社は、ドローンハイウェイを活用したドローン物流の共同検討の開始を披露すると発表した。東京都内で開かれた発表会では、今年6月末に埼玉県秩父市において行われた、第一回目となる共同実証実験の様子を、動画を交えてプレゼンテーションを行った。

 東京電力では昨年3月29日に、東京電力の送電網をドローンの飛行ルートとする形で、ドローンの長距離飛行をインフラ側から支援する「ドローンハイウェイ構想」をゼンリンと業務提携して取り組んでいくと発表した。東京電力グループが保有する送電鉄塔と送電線の周辺空間をドローンの飛行ルートと設定。ゼンリンがこれらのインフラを三次元データ化し、「空の三次元地図」として提供する形で、ドローンの“ハイウェイ”を実現するというものだ。

赤塚新司東京電力ベンチャーズ代表取締役社長

 東京電力では2018年7月から、ドローンハイウェイを実現するチームを含めた新規事業を行う部門を「東京電力ベンチャーズ」として分社化している。記者会見の冒頭、東京電力ベンチャーズの赤塚新司氏は、「ドローンハイウェイ構想の発表から一年がたち、いよいよ実用化に向けて動き出している」と説明を始めた。

送電鉄塔の先端部には風速・風向を計る気象センサーを、離着陸地点には上空200mの風況を計測するドップラーライダーを設置した。
風況に応じてドローンは停止したり、必要に応じて着陸したりするという。

 今回の実証実験に向けて東京電力ベンチャーズでは、ドローンハイウェイを担う送電鉄塔に、風速と風速を計測する気象センサーを設置すると同時に、ドローンの離発着地点には地上から200mの高さまでの風況を観測できるドップラーライダーを設置。これらから得られた情報をリアルタイムにドローンに提供し、10m/sを超えるような強い風が吹いている場合には、飛行中のドローンはその場で停止してホバリングしたり、必要に応じて着陸するなどして安全を確保するという。また、これら気象センサーやドップラーライダーがから得られた情報をビッグデーター化して、風況予測技術を確立するのにも役立てると赤塚氏は説明。さらに、将来はこの気象データをもとに、ドローン自ら安全な飛行経路にリルートするような仕組みにも役立ててほしいと期待を寄せる。

竹川道郎ゼンリン執行役員事業統括本部IoT事業本部長

 次に説明に立ったのはゼンリンの竹川道郎氏。様々な形で日本全国100%を地図化しているという同社では、ドローンハイウェイの空域データの生成を担当した。今回の検証においては、ドローンなどを使って送電鉄塔を三次元データ化。いわゆるSfM技術を使って点群データを作成し、それを地図化して飛行するドローンに提供する。データには送電鉄塔や送電線を包むようにジオフェンスを設け、飛行するドローンが送電網に沿って飛行しながらも、送電鉄塔や送電線に近づかないようにしている。また、このデータは地上でドローンの飛行を監視するオペレーターの端末に「3D Map Viewer」としてルートを視覚的に表示される。

送電鉄塔の三次元データは、ドローンで鉄塔を撮影し、SfM技術で点群データを経て生成している。
送電鉄塔と送電線を包み込む形で三次元地図上にジオフェンスを設定。ドローンはこのジオフェンスを避けて飛行する。

 ドローンハイウェイ構想には、今回の実証実験から参加する形となった楽天。同社の安藤公二氏は「楽天は“ワンデリバリー”として革新的なラストワンマイルの配送の実現を目指している」と説明。いち早くドローンによる物流サービスに取り組み始めた楽天は、自立制御システム研究所と物流ドローン「天空」を開発。2016年からゴルフ場で飲み物などのデリバリーや、LTEを利用した都市部におけるドローン配送の実験を行ってきた。配送サービスに必要な専用アプリケーションを開発し、さらに2017年には福島県南相馬市小高区において、コンビニとの共同配送サービスを継続的に行うなど、ドローンによるデリバリーサービスの実現に向けた実証実験を継続的に行っている。

安藤公二楽天常務執行役員
今回の実証実験に使われた楽天の配送用ドローン「天空」。機体下のピンクの箱を目的地に着陸後、リリースする。

 これまではゴルフ場や同社が設定した飛行コースの中で実験を行ってきたが、今回は埼玉県秩父市の浦山ダム湖沿いにある、約3kmのドローンハイウェイを利用。実験はダム湖上流側にあるの日向公会堂の顧客が、ショッピングアプリで弁当を注文すると、約2km下流のダム下にある旅館の浦山山荘からドローンが弁当を届けるというものだ。ダム湖の左岸側には湖岸に沿って東京電力の送電鉄塔が立ち並んでおり、浦山山荘を離陸したドローンは自律飛行でドローンハイウェイまで進み、そこからは目的地に最も近い場所までハイウェイに沿って飛行。再びハイウェイを離れて日向公会堂まで飛行して着陸し、弁当が入った箱をリリースして、再び同じルートを戻ってきた。

 実験ではドローン「天空」と地上のコントローラーの間は920MHz帯で通信を行い、地上側のジオフェンスの位置情報とGNSSで得た自機の位置情報を照らし合わせながら飛行した。今後、より長距離の飛行を目指すには、ペイロードと通信という二つの課題があるという。この機体は約10kmの飛行が可能であり、通信システムも約5kmのレンジがあるが、飛行中に通信が安定的に保たれる必要があり、中長期的にはLTEを使うことになるだろうと楽天の担当者は話す。

離陸場所の浦山山荘(右下)から着陸場所の日向公会堂(左上)まで、約3kmのルートを送電鉄塔に沿って飛行した。
動画「楽天・ゼンリンとの3社取り組み」(東京電力ベンチャーズ)

 楽天の安藤氏は「ドライバーの不足や再配達率の増加、そして配達量の上昇など、デリバリーサービスを取り巻く環境は厳しさを増している。こうした現状を受けて、楽天では「楽天ドローン」を提唱しているが、まだまだ実験が必要な中で物流を想定したような長距離の飛行ができる場は少なく、ドローンハイウェイのようなオープンな飛行ルートが設定されるのはありがたい」と話す。「今回の実証実験でドローンハイウェイを使えば、安心してドローン配送が実施できると実感した。今後、ドローンハイウェイが整備されれば、ドローン物流の都市部への展開も期待できる」と安藤氏は付け加えた。

 今回はドローンハイウェイを利用して楽天が配送サービスを行うという形となったが、東京電力ベンチャーズとゼンリンでは、実証実験の成果を踏まえ、今後、ドローンハイウェイのテストコースを開通・提供すると発表した。これは、先に紹介した東京電力ベンチャーズの気象観測装置やゼンリンの空の三次元地図といった安全飛行インフラを備えたテストコースを、今年から関東に複数エリアに設定。ドローン物流やインフラ点検の実験や、ベンチャーの先端技術の実証の場としても提供するという。さらに今後の展開として、2019年度には有人地帯における技術や安全性の実証のほか、ドローンポートにおける充電技術の開発と実証を行い、2020年度以降にドローンハイウェイを事業化していきたいと説明した。

東京電力ベンチャーズとゼンリンは、2020年度にドローンハイウェイを事業化すべく、インフラの構築とさまざまなパートナーとの連携を行っていくという。
動画「ゼンリンとの2社実績と展望」(東京電力ベンチャーズ)