ドローンジャーナル

一軒家の屋根点検にドローンの活用を推進する一般社団法人日本屋根ドローン協会

屋根点検業界にドローンを使った作業を普及させる目的で、屋根業界とCLUEがタッグを組む

 3月1日東京都港区で、建物の屋根に関わる企業とドローン関連企業、そして有識者が集まり、一般社団法人「日本屋根ドローン協会」設立発表会が開催された。同協会はドローンによって日本の屋根業界が抱える問題を解決し、業界の今後の発展と技術の向上を目指しているという。

屋根点検にある家主の不信感を払しょくし、業者の安全性を向上させる

日本屋根ドローン協会の設立趣旨を説明する、石川弘樹代表理事。

 この日、設立が発表された一般社団法人「日本屋根ドローン協会」は、これまでの屋根に梯子をかけて人が上って点検するという方法に代わってドローンを活用するために、その正しい使い方の普及と人材育成、資格制度の確立、さらに産学連携による技術交流を目指す団体だ。代表理事には、瓦による屋根工事を行い瓦問屋でもある石川商店の代表・石川弘樹氏が就任。また、理事にはドローンのソフトウエア開発を行っているCLUEの取締役である夏目和樹氏が就いている。さらに顧問としてドローン研究の第一人者である東京大学の土屋武司教授や、建築物の雨仕舞の仕組みについて研究を行っている東海大学の石川廣三名誉教授など、ドローンと屋根の専門家、業界代表者らが名を連ねている。

 発表会の冒頭、石川代表理事は挨拶に続いて屋根業界の現状を説明。屋根は長年の風雨に晒されるのに加えて、強風や台風、大雪といった天災によって損傷する。そのため、定期的に屋根を点検することで、未然に雨漏りなどの被害を防ぐことができる。ただ、この“屋根の点検”には大きく二つの社会的な問題があるという。

 そのひとつが、点検によって生まれるトラブルだ。屋根点検を勧める訪問販売業者の中には、無料で屋根を点検する一方で不必要な修理を家主に迫ったり、悪質な業者になると故意に屋根を壊してその写真を撮影し、それを家主に見せて修理の必要性を説くという。屋根に上れない家主は業者の説明を受け入れるしかなく、結果として押し売りや詐欺被害を受けることになる。こうしたことから屋根業者に対して不信感を持つ家主も増えているという。

 石川氏はこうした屋根修理に関するトラブルの多さを裏付けるデータを説明。「住宅リフォーム・紛争処理センターによると、一軒家の10件に1件の割合で雨漏り工事についての相談を受けている」「東京都生活文化局によると、高齢者の相談のうち、工事建築に関するトラブルの相談が3年連続3位以内に入っている」といい、「2017年7月には屋根リフォームの訪問販売詐欺の注意喚起が出ている」と紹介した。

 一方、屋根業者が抱えている問題も多いという石川氏。現在、日本の社会の高齢化が進む中で、建築業界も人手不足となっている中、屋根に上って点検を行う作業は危険が伴うのはいう間でもなく、年間800件を超える転落事故が発生し、そのうち40件は死亡事故となっているという。一軒家の屋根の点検作業のほとんどが、命綱といった安全対策が施されていない中で行われることが多く、こうした事故につながりやすい。また、痛みが進んだ屋根の場合には、点検で屋根に人が上ることで、意図せずに屋根を壊してしまうこともある。

厚生労働省の「労働災害統計」によると、屋根からの転落事故が年間846件発生し、そのうち40件が死亡事故となっているという。

 そこで、この屋根点検にドローンを活用することで、こうした問題を解決することができると石川氏。ドローンを一軒家の上空に飛ばして屋根を撮影し、その写真をオーナーに見てもらうことで、修理の必要性を理解してもらえるという。そのメリットはいくつかあり、ひとつは業者が屋根に上る前にドローンで撮影することにより、故意に屋根を壊してそれを家主に見せるといった詐欺行為を防ぐことができるということ。また、屋根全体を一枚の写真で撮影できるため、修理が必要な場所などが客観的にわかるということ。また、業者が点検のために屋根に上る必要がないため、転落事故などの危険性がないということ。さらに、これまで屋根に上っての点検は、準備も含めると約2時間かかっていたのに対して、ドローンであれば10分もあれば撮影から家主への説明ができるため、時間コストの削減にもつながる。

屋根点検にドローンを活用することで作業の危険性を抑えるだけでなく、作業時間を大幅に短縮することができるというメリットもある。

スティックに触れることなく屋根の写真を撮影できるアプリ

日本屋根ドローン協会の理事であり、「DroneRoofer」を開発したCLUEの取締役でもある夏目和樹氏。

 このドローンによる屋根点検を支えるのが、CLUEが開発したドローン屋根点検アプリ「DroneRoofer」だ。DJIのPhantom4 Proで屋根の写真を撮影するiOSアプリで、DJIのアプリ「DJI GO4」に代えてこのアプリを使うことで、ドローンの一般的な操作をすることなく、屋根の写真が撮影できる。 CLUEではこのアプリとPhantom4 Pro、iPad miniをセットにし、さらにドローン保険、飛行許可申請や導入・アフターサポートも一緒にして、屋根業者に販売していくという。発表会は東京・港区のオフィスビル内で行われたため、実際にその操作や動作を見ることはできなかったが、アプリのボタンを押すだけで自動的に離陸し、屋根の写真を撮影して、自動的に着陸までを行ってくれるという。

DroneRooferで使用するDJIのPhantom4 ProとアプリがインストールされたiPad mini。
撮影した写真は建物(家主)単位のフォルダで管理。Phantom4 Proの2000万画素のカメラによって撮影された写真は、拡大してみることも可能。修理が必要な個所が一目でわかる。
ドローンによる屋根点検サービス「DroneRoofer(ドローンルーファー)」

「ドローンで撮った屋根の写真を見せると、すぐに家主は状況を理解できた」

 発表会後半には協会の理事と顧問の7人が登壇し、夏目氏の司会で「屋根とドローンの未来」をテーマにトークセッションを行った。雨水進入について50年以上研究に取り組んでいる石川廣三氏は屋根点検の重要性について説く。「ポイントは劣化と耐久性にある。腐食腐朽のような劣化は、雨漏りにつながるだけでなく、構造的に性能が落ち、地震で屋根が落ちたり、強風時には屋根が飛ぶといった、大きな災害につながる。もうひとつは経済性。短い周期で定期的に点検を繰り返すことで維持保全の費用を少なくすることができる」と話した。

石川廣三 東海大学名誉教授。

 伝統建築や数寄屋の改修に取り組む藤井禎夫氏。「足場がない状態での高所作業は危険を伴う。1月には埼玉県の屋根業者が足場のない工事で屋根から転落して亡くなった。2月には寺の本堂の改修工事で、やはり屋根から作業員が6m下の地面に落ちて、腰の骨を折る大けがを負った。屋根点検は足場がない現場で作業している。現在、屋根工事業者の人口が減っている中でけが人を出し、死亡者を出すのは考えられない。ドローンを使うことで事故の軽減ができることに期待している」と藤井氏は語る。

藤井禎夫 東京都瓦工事職能組合理事長

 さらに屋根業者として点検や工事に携わる石川弘樹氏は、「もともと屋根点検にドローンを使うことは反対だった。ただ、試しにドローンで撮影した写真を家主に見せると、『あー、これがうちの屋根ね。これなら一目瞭然ね』という反応が返ってきた。いかに今までの説明では家主に状況を伝えきれておらず、家主が理解していなかったかということを痛感した」と自らの経験に基づいたエピソードを紹介した。

石川弘樹 石川商店代表取締役/一般社団法人「日本屋根ドローン協会」代表理事

 ドローンの専門家としては航空宇宙工学を研究している土屋武司氏が登壇。「ドローンは便利な道具ではあるが、まだまだ課題がある。風などの外乱を受けるとバランスが崩れて墜落する可能性があるため、飛行環境をよく見極める必要がある。また、飛行時間が20分、30分と限られていることをよく理解して飛ばす必要がある」と、メリットばかりではないドローンが抱える問題を語った。

土屋武司 東京大学教授

 法律の専門家として協会の顧問に就任した戸嶋浩二氏は、「約2年前にドローンのための航空法が施行されたが、商業利用する面においては比較的柔軟な対応をしているといえる。ただ、今後ドローンの利用が進むと、航空法上の許可・承認を得ていれば、自由に飛ばしていいという誤解が広まる懸念がある。許可・承認を得ていても一定の条件の下でしか飛ばせないことを認識しておく必要がある。さらに、屋根を撮影する場合、隣家が写り込む可能性も高く、プライバシーの問題が生まれたり、さらに飛行する方法によっては、土地の所有権を侵害しかねないといった問題もある」と、安易な利用に警鐘を鳴らした。

戸嶋浩二 森・濱田松本法律事務所所属弁護士

 最期に今後の屋根業界でのドローンの利用について山田勝雄氏がドローンへの期待を述べた。「これまで城郭、文化財、寺院建築の屋根工事に携わってきたが、従来は梯子で屋根に上ったり、高所作業車を使う、足場を組むといった大掛かりな作業が必要だった。しかしドローンを使えば、梯子による事故が少なくなるだけでなく、足場や高所作業車を使わずに調査ができるため、大幅にコストを下げることができる。また、屋根の危険な場所や先端部まで調査することができたり、鬼瓦、寺院建築なら唐草、巴瓦などの紋様を詳細に調査することもできる。50年に渡ってこの仕事に携わっているが、まさかこうした屋根の作業をドローンでできるような時代が来るとは思っていなかった」。

山田勝雄 全日本瓦工事業連盟顧問