ドローン業界を代表する二人が、国内ドローンビジネスの現状、人材、注目すべき企業、2018年の展望、これからドローンビジネスに参入する人たちへのメッセージなどを自由に語ってもらう特別対談企画です。聞き手:ドローンジャーナル編集長=河野大助



――「“インフラ老朽化先進国”の日本だからこそチャンス」

編集部:まずは、現在の日本におけるドローン産業の状況を、それぞれどう捉えていらっしゃるかを教えてください。

徳重:ドローンをホビーとして楽しむのに、日本の規制はとりわけ厳しいと思いますが、業務分野ではむしろ発展のためにいいことだと思っています。“規制”というとネガティブに捉えがちですが、ルールがあるということは仕事をするうえでむしろいいことではないでしょうか。規制がないということは白か黒かの判断が付かないグレーゾーンで、業界の本丸の企業は取り組まない。規制ができれば「何をやっていいか、何をやったらダメか」が明確になります。フランスでは日本に比べてかなり前からドローンに対する規制が作られていたからこそ、ドローン産業が発展しました。

編集部:千葉さんはいかがでしょうか。

DRONE FUND:千葉功太郎 General Partner/Chief Dronist

千葉:私も徳重さんと同じ意見です。2015年12月に航空法が改正されたおかげで、個人レベルではドローンを飛ばしにくくなりましたが、B to Bはやりやすさが加速して新しい人の参入が増えたのもこの2年のことです。特にドローンを使ったソリューション関係のプレーヤーが続々参入して、世界の中でも日本はこの分野が強くなったと思います。

編集部:特に日本で育ってきたドローンの活用分野はどのようなものがありますか。

千葉:僕は日本を“インフラ老朽化先進国”だと思っています。人口の高齢化が進むと同時に、東京オリンピックに合わせて建設されたインフラのその寿命も一気に押し寄せてきています。崩落や事故が相次ぐ中、点検や保守をするにも人手が足りず、ロボティクスの導入は急務です。インフラを維持するために、ドローンに限らずロボティクスとAIをなるべく早く導入する必要があるという社会課題が明確で、実はそのために産業が発展するということは、むしろ歓迎すべきことではないでしょうか。僕はこれを前向きに捉え、あえて“インフラ老朽化先進国”と名付けて使っています。実はこの言葉がけっこう国や自治体の方々に刺さるんですよ。事実、この2年間でソリューションを中心にした、そういった分野のドローン産業が育ってききています。

――「産業の現場とドローンの両方を知るプロデューサーが必要」

編集部:ただ、日本のドローン産業はまだ実証実験の枠から出ないという見方もありますが。

千葉:私にはまったくそんな感覚はありません。B to Bの分野は順調に立ち上がっていて、2017年にこれだけ数多くの実証実験が行われたことは、正常進化ではないでしょうか。ありとあらゆる大企業が実証実験でしっかりデータを取り、失敗もしながらその次の社会実装に向けてのアルファテスト、ベータテストを踏まえてして本リリース、といった流れを作っています。日本の大企業が素晴らしいのは、動き始めたら遅いけれどもちゃんと3年で社会実装まで持って行くということです。日本のドローン産業はしっかり動き出している、っていうところを評価してほしいですね。

徳重:僕たちはUTMという管制システムにも取り組んでいます。これも2年前の日本であれば世界からとても遅れていて、コンセプトも何もない状況でした。そこで「これではまずい」と、経産省が2016年10月に世界中からイケてるUTMの会社を集めて会合を開いたんです。それはもう、政府のやるぞという強い気持ちの現れでした。現在、 日本 の UTM はアメリカのNASAよりもずっと進んでいると思っています。今後は、お客さんが誰であってそれをどうマネタイズするか、というビジネス化が課題ですが、いずれにしてももっと加速していくと思います。僕たちが取り組んでいるi-Constructionもそうですが、業界の中でこの分野に取り組んでいる方々の割合は、たぶん世界の中でも圧倒的に多いと思いますよ。

2016年11月、テラドローンはドローンの運行管理システムであるUTM(Unmanned Traffic Management)事業の開始を発表。Unifly NV(本社:ベルギー、アントワープ)に約5億円を出資し、戦略的パートナーシップを締結。


千葉:親方日の丸が効きやすい業界ほど、決めたら早いんですかね。

徳重:おっしゃる通りです。そういう意味で、国の旗振りはこの分野でとても大きな役割を果たしていますね。

千葉:土木分野のi-Constructionがしっかり確立すれば、輸出産業になり得ると思います。すると、農業や他の分野でそれぞれの省庁が「i-Constructionがうまくいくんだったらウチもできるんじゃないか」と横展開し、そこにロボティクスやドローンが入っていける。ちゃんと業界と国との間に接点を作って今の状況を正しく伝える人や企業がいれば、国の施策として落とし込まれて、日本でもロボティクスの産業が発展するのではないでしょうか。

徳重:僕もドローンを活用しやすいのは、農業や土木、インフラ点検といった古い伝統的な産業だと思います。ただ、ドローンというハードだけ、ソフトだけをその分野の人たちに届けてもうまく利用できないでしょう。その人たちと一緒にソリューションを作り込んでこそ、ドローンがかわいがられる存在になるのではないでしょうか。

テラドローン株式会社:代表取締役社長 徳重徹

編集部:ドローンと各産業の両方の知識がある人が必要ですね。

徳重:そこはまさに“プロデューサー ”の仕事です。それも現場をよく知っている人ですね。そんな人をゼロから育てていたら、僕たちの事業がこんな早く立ち上がることはなかったでしょう。その人に蓄積された経験やノウハウがあるからこそ、スピード感を持って展開ができたわけです。だから、我々はこれをやるぞと決めたら、とにかくたくさんの人に会いに行きます。確か千葉さんにもお会いしましたよね(笑)。いろんな人に会いまくって、その中で戦略フォーカスを決めていくことが大事です。

千葉:現場を知っている人はとても重要ですね。

徳重:それがわかっていないと、いいソリューションは得られません。

千葉:僕は今のようにほぼ専業でドローンを仕事としてやるようになったのも、2年間ずっと趣味でドローン飛ばしたっていうのがベースにあります。ドローンの技術が未熟な頃から誰よりも早く飛ばしていました。首相官邸ドローン墜落事件の頃には、一部上場企業のコロプラの副社長がドローンを飛ばして、そのデータを公開するとか、どれだけ社会から批判を浴びるかわかりません。当時の会社のIR部門からは「危ないじゃないですか!」とめちゃくちゃ怒られていました(笑)。でも結果としてそれがよくて、現場を知ることができましたし、周りにたくさん人が集まってきてくれたんです。

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