ぼくらの自由研究室

エネルギーの徹底的省エネに挑戦! この夏猛烈にエコライフを楽しむ

BMW i3で行く尾瀬へのエコ旅

ダム見学(「知っているようで知らない水力発電所。ダムマニアも驚く見学ツアーを余すことなく紹介!」)をしてからというものダムのおもしろさに目覚めて、気づけば山肌に水力発電所の送水管を探してたりする(笑)。

先日、出張で滋賀県まで行ったのだが、ちょっと日本初の水力発電所を見たくなって京都に遠征! 水力発電を楽しんできたところだ。

じつはコレ、琵琶湖から京都に水を引く「琵琶湖疏水」。手前のトンネルが発電用の取水口。奥の建物は浄水用のポンプ施設
大文字焼きで有名な大文字山の山肌(地下鉄:蹴上駅付近)につくられた送水管。向こうには平安神宮の鳥居と京都市内が見える
今は使われていない蹴上発電所。でも敷地の奥に現役の発電所がある!
こちらは京都市内にある疎水を使った夷川(えびすがわ)発電所。なんと現役!

すっかり水力発電所の虜になってしまったので、今回はとことんエコを極めて、エネルギーの徹底的省エネ化に挑戦してみた!

電気自動車でガソリンを徹底的省エネ! 尾瀬までエコ・トリップ

旅の目的地に選んだのは尾瀬! 「夏がく~れば思い出す~♪」の尾瀬だ。地名は知ってるけど、どこにあるのか知らない人も多いかもしれない。筆者もそのひとりだ(笑)。なので、Google マップで検索してみたら、未開の地グンマーの奥の新潟と福島、さらには栃木の県境で、どうやら4県のDMZ(非武装地帯)らしい。標高は1500mというから、富士山の4合目というあたり。

グンマーとトチーギの関係が気になるところだが、一応DMZっぽい
絶対に風の谷のナウシカに会えそうな気がする!
出典:環境省 尾瀬国立公園 フォトアルバムより

写真を見ると「その者、青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」でお馴染みの美少女ナウシカが、メーヴェに乗って空を舞っていそうな感じだ。しかも、尾瀬の一帯は湿地帯で豊富な水源。なので、水力発電所もアチコチに点在し、食べ放題バイキングのようにダムも楽しめる! 言うなれば“ダムの「すたみな太郎」”的なロケーションだ。

湿地の尾瀬は豊富な水源となっているため、近隣には水力発電所がひしめき合う
出典:環境省 尾瀬国立公園 フォトアルバムより

そのなかでもそそられるのが、「丸沼ダム」だ。詳細は後述するが、ダムマニア垂涎のダムとキタ!

これで旅の目的は決まった! 尾瀬でナウシカ山ガールを見つけて丸沼ダムでデート! せっかくの超エコな旅なので、移動手段も電気自動車で行こうじゃないの!

100%EVのBMW「i3」を借りてエコドライブ!

今回の旅はエコがテーマなので、尾瀬に向かうクルマは、100%EV(電気自動車)でなきゃ意味がない。高速と山道を走るので、ハイブリッド車だとスグにエンジンが回っちゃうからだ。さらに「ガソリン車を電気化しましたー」的な「なんちゃってEV」もダメ。ということで、BMW「i3」に決定! ちなみに100%EVとして設計されたクルマは、数えるほどしかない。

前々から乗ってみたかったi3。コンパクトで街乗りもできるし、スポーティーな走りもできるEV
i3に乗れるのがうれしくて、待ち合わせ時刻よりも2時間前に着いちゃったぜ!(笑)

こんなこと書くと「なんだよ、ステマかよっ!」って言われるが、ステルスもクソもあったもんじゃないので、エコヒイキと呼んでいただきたい!

出発地点は、東京はお台場、フジテレビ湾岸スタジオ近くのBMWのショールーム「BMW GROUP Tokyo Bay」。ここに来れば、BMWの全車種をチェックできる。もちろんMINIもだ。

EVだからボンネットを開けてもエンジンがないのだ!

さて、計算では無充電で尾瀬まで行けるバッテリー容量なのだが、予測不能な首都高と関越道の渋滞(渋滞すると走行じゃなくエアコンでバッテリーを消費しちゃう)と山道、そして途中の充電ポイントで先客がいたら通過しないと間に合わないというスケジュールだったので、レンジエクステンダー搭載車にした。レンジエクステンダーは、軽自動車クラスのエンジンが後部に積まれていて、もし、バッテリー切れしてしまった場合は、エンジンで発電機を回してバッテリーを充電するというもの。充電ステーションの設置数は、都道府県によって差があるので、ぜひつけたいオプションだ。

SAやPAにはだいたい充電ステーションが1つしかない。1台30分充電するので、先客がいると時間を30分以上ロスしてしまうので、予定どおりに充電できない場合も考慮しておく必要がある
トランクの下に発電用エンジンが入っているが、トランクの容量もバッチリ! 大きめのリュックなら2つぐらい余裕で入っちゃう
リアドアのヒンジが後ろについているので、ドアは観音開きになる
センターピラーがないのでドアを全開にすると開口部が広い! 凄い存在感を放つ! これがモテるのだ! リアの室内空間もさほど狭くない

そんなi3だが、ハッチバック式のトランクは余裕の広さ。3人なら2~3日のキャンプはできるぐらいの荷物を積み込める。

そして、最大の特徴は、観音開きの「コーチドア」(馬車ドア)。SAやPAでクルマを降りるとき、リアのドアを開けて荷物を取り出すと、かなり注目されるハズ! 観音開きってだけでなく、センターピラーがないので、ものすごく開口部が大きく、存在感を放つのだ。これなら、尾瀬でナウシカをナンパしてもモテモテ確実!?

首都高に乗って走り出すと、まさにEVっていう低速のトルク。アクセルをチョンと踏むと、グハッと加速。ガソリン車だと3リッターエンジンじゃないと出ない感じの加速だ。そのままアクセルを踏むと、どんどん加速する。まさに電車と同じ加速。

ハンドリングは、小気味よくミッドシップカーみたいによく曲がる。遊びがほとんどないので、狙ったラインまで徐々にハンドルを一発で切り込んでいく必要がある。途中で補正すると、それがすぐ横Gで伝わっちゃうから、峠道や首都高のカーブがめちゃ楽しい!

ライン取りしながらOut-In-Outで、アクセルを踏み込みつつカーブを出ると、最高に気持ちいい!

インパネまわりは、ハンドル前の小さなディスプレイと、センターにある横長ナビゲーションディスプレイ。シンプルなうえにモデルによっては、天然木を使っていたりしてエコ。ちょっと未来的なコクピットも運転を楽しくしてくれる。

渋川伊香保IC付近では、以前に登ったサージタンクが見える!
必要最低限な情報のみコクピット前の小型ディスプレイに表示される。バッテリー状態などの詳細はセンターのナビディスプレイに表示
天然木を使用したインパネ。軽くニス引きしてある程度なので、木の温かみがそのまま活かされたデザインだ

EVはアクセルを戻すと、モーターを発電機にしてエンジンブレーキのように減速しつつ、電池にエネルギーを戻す回生ブレーキがかかる。この回生ブレーキは、停止直前まで、へたすりゃ停止までかかるので、ブレーキ操作はほぼ必要ない。たとえて言うなら、鉄道模型はボリュームひとつで停止から高速運転までできるが、あんな感じでアクセルを微妙に操作して走らせるのがi3だ。ちなみにi3の回生ブレーキはハンパないので、アクセルワークを慎重にしないと、同乗者を酔わせてしまうので注意。

ボディはカーボン・ファイバー強化樹脂(CFRP)。アルミよりも軽くて剛性に富む素材。最近では航空機の主要部材としても使われている
床部に積んだリチウムイオン電池と搭乗者を事故から守るシャーシ。まるでプラモデルみたいな感じだけど、高い剛性と衝撃吸収性を持たせている

i3のシャーシは、搭乗者とバッテリーを何が何でも守る剛性を持ちながらも、キャビンは軽いカーボン・ファイバー強化樹脂(CFRP)。しかも、外部のドアやフェンダーなどはオールプラスチック製だ。ゼロからEVとして開発されているだけに、ほかのクルマとはまったく違う。だから、i3の走りが生まれるといっていいだろう。

こんなゆるいカーブの連続が超気持ちいい! ええ。もちろん法定速度は守ってますよ~

とにかく軽いボディにパワフルなモーターを搭載しているので、高速道路の合流、ワインディングの登りカーブの抜け出しなど、思いのままにクルマをコントロールできておもしろい。

充電は関越道を降りるちょっと前の上里SAで行った。スタート地点からおよそ120km。猛暑だったのでフルでエアコンをかけ、がんがんアニソンを流して走ってきたので、バッテリー残量は50%まで減。ここで昼食を食べている30分間だけ、急速充電をする。結果90%超まで回復し、あとの山道はグイグイとアクセルを踏み込んで(法定速度で)走ることができた。

現場に向かう電気屋! ではない! スポーティーな走りにご満悦なのだ!
給油口は、エヴァンゲリオンのアンビリカルケーブルみたいな充電コードを差し込むようになっている
充電中。120km走って残量は50%ぐらいになったが、まだ97km走れる計算。とはいえ、念のために充電しておく。まぁ、スマホのバッテリーと同じ感覚

高速道路などでは急速充電が可能だが、200Vのコンセントからも普通充電できる。もちろん、太陽光発電で得た電力を使うことも可能だし、雨降りが続く日は普通に電力会社から電気を買えばいい。しかし、筆者がオススメするのは、東京電力の「eチャージポイント」

e-チャージポイントは申し込むだけでいい。乗っているクルマを証明するために車検証の情報入力が必要になる
i3のページでは、電費コストのシミュレーションもできる

i3をはじめ提携メーカーのEVやPHVに乗っていて、かつ東京電力の新しい電気料金プランに加入している場合は、「e-チャージポイント」に無償で登録申し込みするだけで、毎月300ポイント。年間で最大3600ポイントもらえるのだ。ほかにも細かい条件があるものの、ほとんど人は楽勝でクリアできるはず。

ちなみに3600ポイント(円)を充電代に充当したとすると、なんと1年で1000km以上走れる計算(i3の電費コストシミュレーターによる)。ガソリン車だとせいぜい走れて500kmなので、EVのランニングコストの良さも実感できちゃう!

さて、ちょっと話がそれてしまったが、沼田ICで降りたところで標高450m。ここから尾瀬の玄関口の尾瀬戸倉温泉まで40kmの一般道で標高500m駆け上がる。i3を運転していて一番楽しいのはワインディング。i3のタイヤは、フロントが155/70R19インチ。直径があってカッコイイのだが、薄くて扁平率も高いから設置面が少なく、ヘアピンには弱い。なので、伊豆スカイラインのような、ゆるいカーブの山道が一番楽しいだろう。

山深くなってきた尾瀬戸倉温泉の駐車場にi3を置いて、以降は30分ほどバスに乗って尾瀬の登山口「鳩待峠」に向かう

こうして目的地に着いたときは、バッテリー残量は60%ほど。帰りは山道を回生ブレーキかけながら下っていくので、バッテリーも余裕で持ちそうだ。

なお、鳩待峠へは自然環境保護のため、公共交通機関しか通れない。ただ、納得いかないのは、全長がおかしいディーゼルターボのハイエースのジャンボタクシーが通れて、なぜi3が入れないの? という点だ。

トレッキングでデブにエコ! 腹の脂肪を燃焼!

尾瀬の入山口に着いたら、ここから先は、当たり前だが歩きだ。尾瀬にはいくつもの入山口があるが、今回は群馬県の鳩待峠から入った。

ここまで来るとケータイの電波も入らない。トイレも浄化槽の管理のためチップ制(目安は100円)

山道を1時間ほど歩き、宿泊地である「尾瀬ロッジ」に向かう。尾瀬というと、一面の沼地に木が渡してあって、いいお散歩コースを想像するだろう。しかし入山口から1時間ほどは、山道が続く。とはいえ、岩がゴツゴツで昔は修行僧が……というところは少なく、木で道がつくられているので歩きやすい。しかも、1本道になっているので、地図も方向感覚もいらない、初心者向けトレッキングコースだ。実際にボクらが訪れた日は、地元の小学5~6年生の遠足で、いくつもの学校が訪れていた。

ここから1時間ほどのトレッキング。体にエコするぜ!

ほとんどの道のりは、木々にかこまれた林道。ときおり澄み切って、凍りそうに冷たい小川が流れていたり、林の合間から日が差し込んだりと、景色もいろいろ変わるので飽きない。また、ところどころに休憩用のベンチも設けられているので、自分のペースでトレッキングできるのがいい。

整備された道で歩きやすい。鳩待峠からのトレッキングコースは、はじめて尾瀬に行く人に最適だ
ヒグマも生息しているので、途中クマ除けの鐘がある
もう30分も歩いたか? というところ。余裕で元気だ!
このぐらいなら余裕だぜ! なんたって小学生だって遠足に来てるんだもん。意地でも弱音は吐けネー!

とくに往路は、下り坂なのでカップルでデートに行くのにもいいだろう。もちろん、流行りの「ゆるキャン」(ゆるいキャンプ)や、山ガールのトレッキングとしてもオススメだ。

尾瀬国立公園内は、宿泊施設が20以上ある。施設によっては、テントを張れるところもあるので、楽しさもひとしおだろう。有名なところでは、弥四郎小屋東電小屋尾瀬小屋龍宮小屋などがあり、景色や雰囲気、料理も楽しみのひとつ。しかも、一般的な山小屋は、相部屋でお風呂もなく、ちょっと匂う(笑)というのが定番だが、尾瀬はキチンと管理されており、お風呂や水洗トイレ、個室まである(繁盛期は全室相部屋になる場合も)という充実っぷりだ。

国民宿舎の尾瀬ロッジ。1泊朝夕食付きで9000円。素泊まり6000円もあるけど、近所にコンビニはないので注意! あとチェックアウトが8時までと激早!
食堂、売店、喫茶、お風呂、水洗トイレも完備
男5人の起床後(笑)。部屋が空いていれば2人から個室も取れる

ボクらが泊まったのは、料理がおいしいと評判の国民宿舎の尾瀬ロッジだ。ただし、ここで注意点がある。尾瀬の山小屋は、一般的な山小屋に比べると設備もサービスもいいが、リゾートホテルではない点に注意。トイレや洗面は共同だし、豪華なロビーや客室もない。自然を守るため、お風呂では石鹸やシャンプーなどの使用も禁止。あくまで、尾瀬の自然を守りながら、尾瀬の自然と一体になって楽しむところだ。

コースの選び方で初心者~上級者まで楽しめるトレッキングコース。環境省のページより、東京電力のページが一番わかりやすく解説しているのでオススメ
出典:東京電力Webページの「尾瀬とTEPCO」より

トレッキング初心者は入山口から近い場所の山小屋、上級者は遠い山小屋を泊まり歩き何泊かするという。レベルに合わせた楽しみ方ができるのも、尾瀬が多くの人に愛されている理由だ。

さて、歩きやすい道のりとはいえ、日ごろ一日原稿書きで一日の平均歩数が300歩(笑)という筆者には、ちょうどいい運動。デブなボクの体にはちょうどエコなトレッキングだ。なにせ山道を1時間歩いても筋肉痛にならないのだ。京都の山にある神社巡りや紀州の熊野観光のほうがよっぽどキツイ!

以前に熊野古道をちょっとトレッキングしたが岩だらけで、2~3日は筋肉痛で歩くのが大変だった。これに比べたら尾瀬はラクチン!

また、山小屋の一日もじつにヘルシーでエコ! なんと夕飯は18時で、売店は19時30分(自販機がある山小屋もある)に終了。朝食は6時というのだ! とはいえ、18時の夕食でも、ここまでに消費した体力で、余裕で食べられちゃう。ごはんはおかわり自由で食べ放題だが、「エネルギーの省エネ化してデブもエコになる!」という目標のため、ここは腹8分目で我慢。

しかし、食後にくつろいでいると、ほかの部屋から聞こえてくる「プシュ!」という缶ビールを開ける音。これには負けてしまい、売店が閉まる19時30分に駆け込みで500ml缶を2缶買ってしまった。

就寝はビールの酔いも手伝って22時。ふだん絶対できない人間的な生活が楽しめる。まぁ、ケータイの電波も届かないし、Wi-Fiもつながらず(一部のキャリアは使えるというウワサ)、やることないので寝るしかないのだが(笑)。

本当は夜空の星のキラメキを楽しめるのだが、宿泊日の夜はあいにくの雨。残念ながら夜のエンターテインメントは中止となった。

初日の夕食は豚の陶板焼きとポトフと野菜。山小屋でこんなご馳走にありつけるのはうれしい
翌日の朝食も素晴らしい!

翌朝は、6時に朝食と言われていたのに、5時30分には食事の用意ができたと館内アナウンス。この声に起こされて、しっかり朝食を平らげる。見た目は「普通かよ!」と思うかもしれないが、ここは標高1500mの山の中。食材は全部麓の片品村からヘリコプターや、ボッカ(歩荷)と呼ばれる荷物背負いのプロにより運搬されている。それを考えれば、ビジネスホテルの朝バイキングのような朝食が食べられるんだから感謝しなくては! なお、前日に頼んでおけば、朝食をお弁当にもしてくれるとのことだ。それはそれで、尾瀬のなかで食べたらおいしさ10倍ぐらいになるだろう。

翌朝ロッジ近くは、朝露できらめくキレイな草原になっていた

整備された木道と美しい風景で心もエコ

尾瀬は、東西6km/南北に2kmに広がった盆地。そこに張り巡らされた木道のトレッキングコースは、新潟、群馬、栃木、福島の4県にまたがっており、全長65kmもある。しかも、行き違いができるように、コースは上りと下り線の複線。ほとんど目にとめることがないかもしれない木道は、1本1本に焼印がしてあるのだ。

延々と続く木道が完備されているので、歩きやすく道に迷うこともない。広大な土地をGoogle マップなしで歩けちゃうのが、スゲエ!
木道には東京電力の新旧ロゴが焼印されている

木道には3種類の焼印が入っており、ひとつは東京電力のマーク、旧ロゴと新ロゴが点在している。そして、もうひとつは「環」マーク。これは環境省のマークだ。3つめは「FSC」というマーク。このマークは、国際的な団体「Forest Stewardship Council」(森林管理協議会)が認証するもので、森林環境に配慮し、地域の社会的な利益にかない、森林の将来を考えた木材に与えられる。いわばエコロジーでエコノミーな木材というわけ。じつはi3のインパネまわりに使われている木材もFSC認定だったりする。

薄くて見づらいが「環H28」と焼印されている。この木道は環境省が平成28年に整備したというマークだ
FSCのマーク

さて、ここで疑問に思われるのが東京電力のマークだろう。国立公園なので環境省のマークは納得がいくが、なぜ東京電力なのか?

じつは、尾瀬一帯は水力発電の水源にしようと、古くから東京電力が買い取った土地(実際には電力確保のため国策で買い取られ、後に利根発電→東京電灯→東京電力に引き継がれた)なのだ。その広さは国立公園の40%。そのなかでも特別保護区の70%が東京電力の土地なのだ。

群馬県の鳩待峠から入山する特別保護地区(中央オレンジ部分)。この7割が昔に水力発電の水源として確保された地区で、現在は東京電力が保有する土地
出典:環境省Webページ「尾瀬国立公園」より

しかし、標高1500mにあるほとんど手づかずの自然は、日本でも珍しく、水力発電の建設は中止となる。本来なら、東京電力はこの時点で土地を手放すのだが、そのまま所有していた。

時はくだり戦後も落ち着いた昭和30年代後半。一大ハイキングブームの到来と、「夏がく~れば思い出す♪」の「夏の思い出」の大ヒットにより、尾瀬を訪れるハイカーが急増。

公園の整備がハイカーの急増に追いつかず、急速に自然破壊されてしまった尾瀬
この沼に浮かぶ小島は、枯れ草が泥に分解されて積もった島。この程度の大きさになるには6000~8000年(0.7mm/年)かかると言われ、非常に貴重な自然の財産

木道の整備もままならず、貴重な草木を踏み倒して歩く人や、その上に座って食事をする人などで、一気に尾瀬の環境が破壊。これではいけないと、東京電力は一層の環境保全に乗り出し、環境省に加えて地元とも協力し、一気に整備をはじめたのだ。全長65kmの木道のうち20kmを東京電力が管理し、10年ごとに木を交換している。焼印は交換するタイミングを示すため。そのため東京電力のマークの横には、交換した年度が入っているのだ。

一度は破壊されてしまったが、長年の努力で自然がよみがえってきた

しかし、東京電力は土地の所有者というだけで、本来は環境保全する義務はない。とはいえ、土地を国に売却するわけでもなく、環境保全をボランティアでやっているのだ。なので、環境省の尾瀬のホームページ以上に、尾瀬の観光案内が詳しかったりする。先に紹介した山小屋の中に東電小屋というのがあったが、じつは東京電力が運営している山小屋なのだ。ほかにもいくつか東京電力が運営している山小屋がある。

東京電力が運営する「尾瀬とTEPCO」。子どもにも初心者にもわかりやすい。環境省のページはお堅くて上級者向け
インターネットで山小屋の予約もできる

さらに、尾瀬の公衆トイレや東京電力が運営する山小屋には、浄化槽が備えられており、川の水と変わりないレベルまで浄化し、川に戻している。国民宿舎の尾瀬ロッジの場合は、ヘリコプターで汚水を下界まで下ろし処理しているのだ。

途中にキレイな小川も。水は手が凍りつきそうなぐらい冷たい。景色がいろいろ変わって歩いてて楽しいのが尾瀬の魅力

話がそれてしまったが、尾瀬のトレッキングは格別。冬季は雪に閉ざされるので入山することはできないが、5月から9月までの期間は、尾瀬は珍しい花でいろいろな色で塗りつぶされている。夏は緑、そして秋になると草木が紅葉して、それはもうナウシカの世界にいるかのようになるという。

ヒオウギアヤメの紫がキレイ。途中に流れる小川は魚も泳いでいるし、なんといっても冷たい!

体を鍛えたいという人なら、合宿で仲間と訪れて長距離で高低差のあるルートを選び、山小屋でお腹いっぱいごはんを食べ、健康的な生活をするのもいい。

個人的にオススメしたいのは、キャンプの装備をそろえるのは大変だけど、自然と手軽なアウトドアを楽しみたい人。とくに日常から離れたいという場合は、ケータイの電波も届かず、仕事の電話もメールも一切来ないので、誰にも邪魔されない一日を満喫できる。最近のキャンプ場はWi-Fiを完備(!)してたりするし、ケータイの電波が届かない地域は、国内ではもう極わずかしないのだ。

リュウキンカやニッコウキスゲの黄色も一面の緑に映える。あとは青空があれば、最高の写真が撮れる

そして、“友達以上恋人未満”というカップルにはとくにオススメだ。グループで来れば、泊まりで楽しめるだろうし、さらに深い仲なら、2人で山小屋の個室にお泊りもありだ。ハイキング中はいろいろな話ができるだけでなく、普段とはまったく違う朝と夜の景色に、言葉もいらないだろう。意中にある人なら、落ちないほうがウソだと思う。

マニア垂涎の丸沼ダムで水力発電の魅力満喫! 地球にエコ

さて、尾瀬の自然を満喫し、心もエコになったところで訪れたのは、ダムマニア垂涎の「丸沼ダム」。このダムは国交省が配布しているダムカードにも含まれているので、訪れるマニアも多い。しかも、国内約3000基あるといわれるダムのなかでも、昭和初期につくられた8基のうち現存する6基しかないバットレスダムのひとつ。国内最大級にして重要文化財に指定されたのが丸沼ダムだ。

ダムマニアのみなさんゴメン! 取材を申し込んだら東京電力が特別に内部に入らせてくれました
通常はこの柵越しにしか見られない丸沼ダム。マニアは下流側から撮影する
ダムの底まで長くて急な階段を下りていく

バットレスダムとは、利用するコンクリートを最小限に抑えた構造のダム。バットレスを簡単に言うと、ハリボテやテレビのセット、等身大ポップなどを立てた板を支える、床に伸びた支柱のこと。

通常は水をせき止める面と、水の圧力を受け止める構造体が一体化し、ダム全体にコンクリートを打つ。しかし、丸沼ダムの場合は、遮水壁と呼ばれる水をせき止める板を、その圧力を支える鉄筋コンクリートの支柱との組み合わせでつくられているのだ。

しかも、遮水壁の厚さは、一番分厚いところで1.6m、薄い上部ではたった55cmというから驚きだ。それで高さは32mもあるのだ。

斜めになった遮水壁を三角の足で支え、その三角の足同士をコンクリートの支柱で支えあっている
遮水壁の一番奥から見上げたところ

さらに、驚くべきはその遮水性能。地下鉄やトンネルなどでもお馴染みだが、コンクリートを打ち込んでも水は染み出てくるもの。ダムも例外ではない。丸沼ダムは、1931年(昭和6年)の完成から88年も経過しているにも関わらず、漏水は2.5リットル/分しかないという。

しかも、このあたりは冬季になると気温がマイナス20度になることもあり、ダムでせき止めた丸沼湖は氷に覆われる。すると、氷に押されたダム全体が歪むのだという。メンテナンスや改修工事が行われているとはいえ、これが毎年繰り替えされて88年も経過しているのに、この構造で水も漏らさず、風雪に耐えてきた丸沼ダムはカッコイイとしかいいようがない。

地元の方がダムマニアのために手づくりした「いかだ」。これに乗ると敷地内に入らずとも、迫力あるバットレスダムが見られる
こちらはダム内部の水門。意外にあっさり

なお、冬季の歪みは、垂直器(建設などでよく使う糸に三角錐の重りがついた計器)で測定し、漏水は転倒枡漏水器を使って逐次モニタリングしているそうだ。ダムの近くによると、時おり“カコーン”という金属音がするのだが、これは遮水壁から集めた水を「ししおどし」のような枡にあつめ、何回カコーンしたかで漏水量を調べているというから驚きだ。アナログ過ぎる!

また、地震による影響も見逃せないので、震度計も取り付けてあった。

天井(堤)から下がっている管の中にワイヤーロープを通し、下の箱の中に重りが入っている。この垂直器で冬季に凍った水面でダムがどれだけ歪んでいるかを測定している
中央の出前の箱みたいなのが転倒枡漏水器。シャッターのような奥には遮水壁があり、その水を枡のなかに集める。そして、一定量の水がたまるとししおどしのようにカコーンとなる(笑)
遮水壁に伸びる何本かのパイプは、冬季になるとエアーを送って遮水壁面が凍りつかないようにしている。氷の膨張力はバカにならず、ダムのコンクリートがひび割れないようにするしくみだ

さて、この丸沼ダムだが、向こう側に小さく見えるのが丸沼発電所で、このダムは発電所の吐水を受けているだけだ。丸沼ダムでためた水を使って発電しているのは、放流した水をためている大尻沼の取水口(丸沼ダムの程近く)から取り込まれ、下流の一之瀬発電所に送られて発電に使われる。

上流側の丸沼湖を見ると、対岸に送水管が見える。その下に丸沼発電所がある

「ダム=発電所」じゃないってことの詳細は、ダム見学の記事(「知っているようで知らない水力発電所。ダムマニアも驚く見学ツアーを余すことなく紹介!」)を参考にしてほしい。本当に水力発電は奥深くておもしろい!

ダムと発電所はこんな関係になっている。マジか!

ちなみに、上流側のせき止め湖が丸沼湖になっていて、下流の大尻沼の間に魚道はつくられていないが、生態系は変わりないという。というか、人間の都合で、大尻沼は2年に1度だけ禁漁が解禁されるので大尻沼のほうが大物を狙えるんだとか。

最近、送水管を見るとクルマを止めちゃうクセが!

さらに、下流に進むと、同じ丸沼の水を使った鎌田発電所が道沿いにあったりして、ホントにここはおもしろい。

さて、悶絶級にカッコイイ丸沼ダムの内部まで入らせてくれた東京電力に、感謝の念を込めてちょっと宣伝(笑)。いや、それぐらいしてもいいでしょ。

ダムマニアなら必見! そうでなくても自然や環境を大切にしたいという方にオススメしたいのが、東京電力の「アクアエナジー100」という電力プラン。

ダムマニアならマストで加入したい「アクアエナジー100」

通常は、電力は火力も水力もすべてがごっちゃになって送電線に送られ、各家庭に届けられるので、購入した電力が100%水力発電というのは保証できない。しかし、このプランは、細かいしくみは長くなるので割愛するが、使用する電力が水力発電の電力のみということを保証してくれる画期的な電力プランだ。少しだけ一般的なプランより割高になるけれども、先に挙げた方々なら十分にペイしてお釣りが来るぐらいの特典がある。

どうよ? ダムマニアにとってはプライスレスなツアー!

まず、水力100%の電気なので、当然使用する電力のCo2もゼロ。この夏の酷暑でCo2削減に目覚めた方も多いのでは? さらなる特典は、加入者のみを対象にしたダムや水力発電所の見学会だ! 佐久ダムの記事を冒頭で紹介したが、この見学会に同行させてもらったわけだが、すごい楽しかった! 今後の予定は見学会のお知らせページでチェックできる。そして、加入の決め手となるのは、プラン加入者のみもらえるダムカードだ。こちらの詳細もホームページを参照してほしい。

片品村役場でダムカードをゲット! 高原野菜をお土産に

旅の最後は片品村観光協会でダムカードをもらって、2018年7月21日(土)にオープンしたばかりの道の駅「尾瀬かたしな」でお土産だ。

7月21日(土)にオープンした道の駅「尾瀬かたしな」
あいにく到着した日はオープン数日前。残念
準備中の食堂

丸沼ダムや尾瀬からの帰り道に国道120号を走っていると、オープンしたばかりの道の駅「尾瀬かたしな」がある。トイレはもちろん、レストランやお土産屋さんなどもあるのでぜひ寄りたい。EVの場合はなおさらだ。なんと急速充電器も用意されているので、往路の山道でバッテリー残量が減った場合は、ここでチャージ!

しかも、道の駅の施設内には無料の足湯もあるので、キレイな山並みを見ながら優雅な気分を味わえる。

裏手には無料の足湯も。雄大な山々を見ながら楽しめる
尾瀬の産物屋「かたしなや」で、地元の新鮮な高原野菜をお土産にゲット! 現在は道の駅「尾瀬かたしな」内で「かたしな屋」として営業中

また、お土産コーナーでは、地元の新鮮な高原野菜などが激安で手に入るのでぜひチェック。オススメはレタスとトマト。とくに片品村のトマトは有名で、おいしいトマトジュースもたくさんある。

国交省バージョンの丸沼ダムカード
片品村スペシャルのキラキラカード

さて、目的のダムカードは、道の駅の向かいにある片品村観光協会でゲットできる。丸沼ダムで撮ってきた写真を提示すれば、国交省バージョンのダムカードがもらえる。さらに、尾瀬を含め片品村の宿泊施設に泊まった領収書を見せれば、片品村オリジナルのスペシャルバージョン(ホログラム処理されたキラキラカード)も一緒にもらえる。つまり、尾瀬に泊まって丸沼ダムに行けば、ダムガードが一度で2枚ゲットできるということだ。

この夏~秋、みんなも尾瀬に行ってみないか!?

すっかりダムにはまった筆者が計画したエネルギーの徹底的省エネ化の旅はいかがだっただろう? 単純に尾瀬の自然に触れるという旅でもかまわないが、旅するときは何か裏テーマをつけて計画を立てるとおもしろいだろう。

尾瀬で買ってきた野菜でカルパッチョをつくって、家族に振る舞ったところ大人気。もちろんトマトジュースも!

今回は移動手段にEVのi3を使ったが、夏ならば青春18きっぷも使える。これなら電車賃をかなり安く抑えられて便利だ(1人で5日、1回で5人使ってもOK。合計1万1850円で1日(人)あたり2000円ちょっとで日本全国のJRが乗り放題。年齢制限ナシ)。青春18きっぷの旅については、また詳しくお伝えする機会もあるだろう。

今回はi3でエコで爽快なドライブを楽しんだ
夏なら青春18きっぷで電車賃を安くすることも!

トレッキング中はかなり歩いた。2日間の歩数は2万6000歩。消費カロリーは、1736kcal、燃焼した脂肪に換算すると101g! コレだけ体もエコになった。あ、イヤ、飲んだビールはノーカウントってことで。

少しは痩せたかな? 写真ではげっそりやせ細って見えるんだが……

お財布に地球に、体に心にエコな尾瀬。みなさんもぜひ一度訪れてみてはいかがだろう。

藤山 哲人