ぼくらの自由研究室

W杯現地観戦のついでに、モスクワ観光のススメ

W杯ロシア大会の日本代表メンバーが発表され、いよいよ迫ってきた感がありますね。とても不安ですが。熱心なサポーターのなかには現地で応援するぜ、という人がいることでしょう。

日本代表がグループ戦で舞台にするのは、コロンビア戦がサランスク、セネガル戦がエカテリンブルク、ポーランド戦がボルゴグラートと、日本人にはなじみがない都市ばかりです。これらの都市に日本からの定期直行便はなく、とこかで乗り継ぐ必要があります。もっとも一般的なのは、JALかアエロフロートでモスクワに行き、そこで乗り換えるというルートでしょう。

日本代表がモスクワで試合をするには、属するHグループを1位で抜けなければなりません。そうすると7月4日(水)にGグループ2位とモスクワで対戦できる日程になっています。その先は、準決勝の7月12日(木)、そして決勝戦。なんとか一回はモスクワで戦ってほしいです。

モスクワでの日本戦実現は祈るのみですが、ロシアでの現地観戦でモスクワに寄る人に、ぜひ現地を楽しんでいただきたいです。単なる経由地にするにはもったいない、魅力あふれる都市だと思っています(個人的には)。

最初からおどかすわけではありませんが、英語の通用度は高くないです。ロシア語がわからず、英語で何かをたずねる必要が発生したら、若い人をねらってください。かつてはホテルを出たら英語が通じる人に出会うのはまれでしたが、近年は英語の学習熱が高まっているようで、商店でも英語を話す若い店員に遭遇します。

地下鉄の出入り口のサインには、すごく小さくですが、英語が併記されています

ねらうべきは、テレビで見るフィギュアスケートやテニスなどに出ているロシア人選手のような人か、それに準ずる人。なぜかというと、モスクワには旧ソ連の中央アジア諸国から労働者がたくさん来ていて、私の体験ではその人たちへの英語の通用度は低かったからです。人を見た目で判断するなといわれても、これも旅のサバイバル術。

モスクワには旅客定期便が就航している空港が4つあって、いまは市内の中心部までアクセス列車が走っていて、信じられないくらい便利になりました。アエロフロートでモスクワ北部にあるシェレメチェヴォ空港に着き、入国審査を終えるのに1時間半かかり、中心部への足は、渋滞に巻き込まれていつ着くかわからない路線バスか、満席にならないと出発しないマルシルートカと呼ばれる路線タクシーしかなかったころと比べると……。

モスクワ南部にあるJALが就航しているドモジェドヴォ空港駅から、パヴェレツ駅ゆきの列車。切符はコンビニのレシートそっくりでした

モスクワ中心部での移動は、地下鉄を強くおすすめします。「地球の●き方」などに載っている観光物件を回るなら、路面電車やバスに乗る機会はほぼないでしょう。

決勝戦会場のルジニキー・スタジアム最寄り駅のひとつ、ヴォロビヨーヴィ・ゴールィ(雀が丘)駅。むかしこの駅で撮影していて警察に拘束されかかりました

地下鉄自体が観光物件といってもいいと思います。各駅の装飾などがとにかくすごい。環状線の内側の駅にほぼ限られますが、あちこちの駅を見ていたら、ほぼ一日地下にいたことがありました。

必ず紹介される5号線(環状線)コムソモーリスカヤ駅
パリのメトロを意識したアールヌーボーっぽい3号線スラヴャンスキー・ブリヴァール駅。昨年12月に、バスが事故で入口階段に突っ込みました……
私がもっとも気に入っているのは、1号線のクロポトキンスカヤ駅。この間接照明の巧みさと美しさ
モスクワ地下鉄のパワースポット、3号線プローシャチ・レヴォリューツイイ(革命広場)駅の像。犬の鼻をなでるといいらしいです

モスクワ市内交通を利用するには、当たり前ですが切符を買う必要があります。種類がいろいろあるんですが、赤い紙製ICカードが一般的です。地下鉄だけじゃなく、路面電車やバスにも乗れます。一回券は55ルーブル(最近は1ルーブルは2円弱)で、地下鉄なら改札を一回通れるということです。乗り換えは改札がないので、一日中地下にいることもできます。私がはじめてモスクワ地下鉄に乗った2004年は10ルーブルでした……。毎年のように値上がりしています。プラスチック製ICカードの「トロイカ」もありますが、買うハードルが高いかも。

紙製ICカードとトロイカ

モスクワを象徴する、またはロシアを象徴する建物の見学ははずせないです。聖ヴァシーリー大聖堂です。色とりどりのタマネギが乗ったような奇妙な建物です。赤の広場を突っ切ったところにあります。

何度見ても、美しいとは思えないんですが……

クレムリンにもぜひ入りたいです。入場券売り場がすごく混むので、朝早めにいくといいでしょう。クレムリンはときどき入場禁止になります。中に大統領府があるので、国家的な要人が来ているときは入れません。

ちなみにクレムリン(ロシア語でクリェームリ)とは城塞のことで、ロシアのほかの都市にもあって、モスクワ固有の物件名ではないです。

クレムリンを外側から
クレムリンの中。警官が近づいてきました。ロシアではよくあることです。筆者の横を通り過ぎていきましたが

モスクワには、「スターリン様式」といわれる建物があります。7つあるので、セブン・シスターズといっているらしいです。その長女といえるのが、モスクワ大学本館。旧ソ連には、無駄にデカい建物がけっこうありますが、その代表です。スターリン様式は、ニューヨークのエンパイアステートビルを意識してできたという説があります。高さはあっちですが、圧はこっちです。

28mmレンズで撮りました

社会主義のにおいがしてきたので、そっちへ行きましょう。旧ソ連国民経済達成博覧会場、略称ВДНХ(ヴェーデンハー)です。社会主義のリーダーであるソ連のプライドが、パビリオンから伝わってきます。

ヴェーデンハーの正門
レーニンもいます
右に見えるのは、アルメニア館でございます
社会主義がどこかへ行っちゃってからは、遊園地のような様相に。この子はほんとうに楽しそうでした
もともとはヴェーデンハーにあった有名な像、「労働者とコルホーズの女性」。ソ連映画が好きな人にはおなじみでしょう

モスクワに来たからには、宇宙飛行士記念博物館もぜひ訪れたいところです。何しろ人類初の宇宙飛行士を輩出した国ですからね。館内で写真を撮らなかったんですが、見どころがすごく多いので、2時間くらいすぐ経っちゃいます。

宇宙飛行士記念博物館の上にそびえる「宇宙征服者のオベリスク」。台座の社会主義っぽさと宇宙的な部分が、すごくマッチしていない感じですね。左端にオスタンキノ・テレビ塔を入れてみました。高さ540メートル。2000年の火災で長年閉鎖されていましたが、現在は入れるようです
ユーリイ・ガガーリンさん、そっちから見える地球は、まだ青いですか?
女性初の宇宙飛行士、ヴァレンティナ・テレシコヴァさん。その後政治家に転身

モスクワには、三ケタの数の日本料理店があるといわれています。でも、入ったことはありません。ロシアではないんですが、ポーランドの友人のパーティに招かれ、見た目だけマネをした巻きずしを食わされて以来、変な日本食のようなものにカネと時間をかけるくらいなら、現地土着のものを数多く試すことにしているからです。

ヤキトリヤっていう店です。ヤキトリはすでにロシア語に取り込まれている感じがするくらい知られています
「京都」という店です。イスラム教のモスクが描かれていたり、よく見るとアラビア文字も。入る勇気はありませんでした
クレムリン前にあった、「プラニェータ・スシ」。すしの惑星ですから回ってるわけで、わかりやすいですね

ここで紹介したものをすべて見ると、三日はかかります。ほかにも多くの博物館や美術館、大きい教会なども。しかもロシアは一街区が広いので、けっこう歩きます。

いかがでしょうか。W杯観戦のついでにモスクワを観光する気になったでしょうか。えっ、ならない? それは残念です……。

万国の労働者よ、モスクワに来なさいと、カール・マルクスさんもいいたそうです

海老澤蟹男