FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~「KSD」「景気」次の一手は?

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●証人喚問「わかった」に注目
  きょう28日午後、参衆院予算委員会は、村上正邦前参院議員に出頭を求め、「KSD」事件をめぐる疑惑について証人喚問する。公の場での初の弁明だ。議院証言法の改正でテレビ中継も解禁になったため、リアルタイムで流れる。国民が見つめる前で、深い疑惑をどう語るのか、一応、注目してみたい。

  「東京地検特捜部が出頭要請、受託収賄容疑で強制捜査」(産経)

  「きょう検察首脳会議、立件へ最終確認」「古関被告の要請で、中小企業特別委員会設置を了承、後日、自民へ5,000万円を献金」(読売)

  「KSD、7,200万円受託収賄容疑、国会質問の見返り」(東京)

  マスコミは一歩先を読まなければスクープ報道にならないが、きょうの各紙は証人喚問後に予想される動きを一斉に報じている。読売のリードがシャレで、おかしい。中小企業特別委員会設置を要請され、「わかった」とこれを了承していたことが27日、関係者の話でわかった。

  ◇朝日は、えひめ丸事故で、来日した米政府のファロン特使(海軍省制服組ナンバー2の作戦副部長)が森首相と会談、ブッシュ大統領からの親書を手渡したうえで、船体引き揚げについて「最大の努力を尽くす」と述べた、という記事。

  ◇福島県の佐藤栄佐久知事が東京電力(9501)のプルサーマル計画(使用済み核燃料から取り出したプルトニウムの再利用)を当面拒否する考えを示したが、毎日は、政府が着工のゴーサインを出す予定だった8基の原発計画のうち、6基を延期する方針を固めた、と伝えている。

  地元調整の難航している東京電力の福島第一原発7、8号機などが見送りの対象になっているという。臨界事故などを契機に住民の原子力への不信感が高まり、地元合意が得にくい現状では、計画どおりゴーサインを出すのは困難になっている。

  プルサーマル先送りの記事は読売などが背景をくわしく解説しているので、一読していただきたいが、産経の社説は「地域振興だけで判断するな」という怒った見出しで、佐藤知事を批難、原発を擁護するスタンスを鮮明にしている。いかにも産経らしい主張だ。

  ◇「大手企業が2002年春の新卒採用を拡大する動きが広がっている」と日経が取り上げている。電機、情報関連大手がIT事業などの開発要員を大幅増員するほか、自動車も競争力のカギを握る開発体制の強化を目的に技術系を中心に増やす。リストラの代名詞にもなっていた鉄鋼業界でも積極姿勢に転じるという。技術系はモテモテだが文科系はどうなる?

  証人喚問、謝罪、先送り。相も変わらず暗いニュースが続いているが、きょうは日経だけが前向きな話題を流してくれた。

  【経済・IT】
  ●焦る日銀、エコノミストも手詰まり
  日本銀行が公定歩合引き下げを決めてから2週間余り。低迷する株価は反転の兆しをみせず、もう一段の金融緩和に期待する声が高まっている。きのうの国会でも、リチャード・クー野村総研主席研究員が「5兆から10兆円規模の財政出動が必要」など、さまざまな政策の提言を行った。

  さらに、「次の “一手”私はこうする」。そんなタイトルで、国会に呼ばれなかった著名(?)エコノミストを、産経がフォローしている。「危機的状況では日銀による株購入も」(嶋中雄二氏)「公定歩合を短期金利と同水準に」(湯元健治氏)「ゼロ金利政策を復活」(公文敬氏)。コメントするのは勝手だが・・・。

  ボーダフォンはすでに日本テレコム株15%の取得を決めており、出資比率は25%となり、JR東日本(9020)を抜いて筆頭株主となる。日本テレコムは業界3位、事実上、英企業の傘下に入ることで、欧米勢を巻き込んだ再編が一段と加速しそうだ。

◇「9割引バーゲンセール」で、過去のしがらみを絶ったダイエー(8263)が、新年度に取り組む営業改革の具体策を発表(毎日)。不採算のディスカウントストア「ハイパーマート」などの撤退を決めた。筆者もいろいろな記者会見に出席するが、社長ら首脳陣がカジュアルウエアで登場したのは初めてだ。形式主義を排し「改革」に取り組む姿勢を、自らパフォーマンスで表現したというらしいが、なんともダサーイ。これでは単なる「貧乏父さん」。段ボール生活の準備ならわかるが・・・。

  【トピック】
  ●「あいさつが基本」
  「子供のテレビゲーム離れが加速している」。ゲームソフト関連の業界団体が実施した「子供の遊び調査」でわかった(毎日)。逆に手持ちカードで相手と対戦するカードゲーム、自転車、ドッジボール、トランプ、お絵かきなどが急増しているという。「ファミコン世代」がすでに20代後半から30代に差しかかっているおり、ゲームメーカーも大人向けのソフト供給が増えているのはそのためなのか・・・。

  ◇そんな礼節を重んじない若者が増えている中で「会長へのあいさつなっとらん」と、会社をクビになった武富士(8564)の子会社の男性社員に対して、東京地裁は「解雇権の乱用」と認定し、取り消しを無効としたうえで、640万円の支払いを命じた(読売)。もっとも、この社員は40歳代の課長。知人も某消費者金融に就職したことがあったが、街頭でポケットティッシュを配るのがイヤで、3日で辞めたことを思い出した。「武富士はあいさつが基本」という経営理念は評価できるが?

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー 2月
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/02.htm

2001/02/28 09:11