FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~原潜も森首相も「非常識」

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●怒髪天を衝く
  ソナー(音響探知機)で「えひめ丸」の航行を確認していながら、追尾を怠り、他船舶の航跡を海図に記入する作業もサボった。しかも、衝突時にソナーを担当していたのは訓練生で、狭い発令所は民間人16人も加わってすし詰め状態になっていた。

  米国家運輸安全委員会(NTSB)が20日公表した中間報告によると、原潜衝突事故は人為的なミスが重なって起きた可能性が極めて高いことが明らかになった。読売、毎日、産経、東京の4紙がトップで報じている。

  「非常識」の一言に尽きる。ソナーの操作を規則通り「ベテラン要員2人+監督官」が担当し、PRのために民間人を発令所に詰め込んでいなかったら、この人災は免れることができたのだから。

  ところで、この事実を公表したのはNTSB。米政府の公式な中間報告である。ワドル元船長ら原潜乗員のお粗末な対応ぶりが公式に確認されたのだから、日本政府は声を大にして抗議すべきだった。

  外交ルートでは、「米政府に『強気』な姿勢を見せている」(東京)らしいが、そんなもんじゃ済まない。この中間報告の公表直後、つまり昨日の時点で森喜朗首相が「日本中が怒りに満ちている。速やかな全容解明を要求する」と抗議のメッセージを発するべきだったのだ。

  が、ご本人は、毎日が21日の朝刊で報じた非常識な「賭けゴルフ疑惑」への対応で頭が一杯。外務省も、機密費横領問題に加え、延期になった日米首脳会談と米特使派遣問題に忙殺?され、そこまで頭が回らない。

  番記者たちも情けない。終日、首相にまとわりついていながら、「中間報告に怒りを感じないのか?」という質問すら発しないのだから。

  ◇KSD(ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団)の政界工作を巡る東京地検の捜査が、疑惑の核心に迫りつつあるようだ。

  朝日によると、村上正邦元労相がKSDに肩代わりさせていた事務所の家賃はものつくり大学についての質問請託の見返りだった、と古関忠男容疑者(元理事長)が地検の取り調べで供述しているという。

  職務権限と対価の因果関係が立件できれば、受託収賄罪が成立する。地検がこの事実をリークしたことで、村上氏への強制捜査は時間の問題になってきたといえる。

  ◇日経のトップは、十八番(おはこ)の企業調査シリーズ。今回は、設備投資動向調査で、全産業の2001年度当初計画は2年ぶりにマイナスに転じる見込み(前年度比6.0%減)という。

  【経済・IT】
  ●旧2公社の話題満載
  政府保有の全株式を売却するJRの完全民営化問題が、「本州3社同時」で決着した。時期尚早を唱えていたJR東海が、税制上の優遇措置などを講じることを条件に完全民営化を受け入れたためで、国土交通省は今国会にJR会社法の改正案を提出、今秋施行を目指す。

  1987年4月の分割民営化から14年。「大勲位」の中曽根政権時代に着手した旧国鉄改革がようやく最終段階に入ることになる。

  が、民営化の代償として政府が負うコスト(優遇措置)が、どのような内容になるかは今後の検討を待たねばならない。ほかにも課題山積の中で完全民営化に向けた準備作業がスタートすることになる。

  ◇NTTコミュニケーションズ、長距離料金の一部を追加値下げ(日経)/NTT東西、電話回線の200倍の速さの一般家庭向け超高速インターネット通信を今春から月額1万円程度で提供(毎日・産経)/公正取引委員会、DSL参入妨害問題でNTT西日本に口頭注意(朝日)

  きょうもNTT関連のニュースが各紙に。

  ◇2000年の米貿易赤字は3,696億ドルとなり、3年連続で過去最悪を更新。対日赤字(813億ドル)も2年連続で過去最高を更新した。貿易赤字と摩擦の相関関係は?

  読売は、「米景気減速で企業業績や雇用の悪化に歯止めがかからなければ、貿易摩擦が再燃するかもしれない」と報じているが、対中赤字が初めて対日赤字を上回ったという事実も見逃せない。毎日は、経済面の関連記事に<摩擦対象、日本と交代>との見出しを掲げている。

  【トピック】
  ●キレた「女房役」
  「首相は人格も非常に立派な方。そんなことも判断できないような非常識な人間とは思わない。気配りもあるし、優しい心根の人」(東京)

  原潜事故の連絡を受けた時、実は「賭けゴルフ」にうつつを抜かしていたと報じられた森首相を、「女房役」の福田康夫官房長官はこう擁護した。が、記者たちの執拗な追及にキレてしまい、記者会見の場で「私はそんなこと(賭けゴルフをしていたかどうか)は確認したくない!」と声を荒げる一幕も。

  ご存知の方もいると思うが、福田氏は首相が率いる森派の中堅代議士である。首相から見れば子分のような存在だが、年齢は首相よりも2歳上。おまけに、3代前の派閥のオーナーは父親(福田赳夫元首相)である。

  息子として父親の政治家ぶりを見てきた福田氏が、品格も見識も数十段劣る森首相に今どんな思いを抱いているか、容易に想像がつく。

  非常識、お粗末極まりない森首相の「最期の時」が刻々と近づいている。本音剥き出しとなりつつある福田官房長官の「最後の会見」が楽しみだ。

  [メディア批評家 増山 広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/02.htm

2001/02/22 09:05