FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~株価回復の“速効策”は・・・

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●首相退陣を巡る“与野党逆転現象”
  「国益を担っているあなたが如何に責任を果たすか、これからにかかっている」

  14日に開かれた党首討論(クェスチョン・タイム)で、野党党首から与党と見紛うような発言が飛び出した。崖っぷちに追い詰められた森喜朗首相にこんな“エール”を送った野党党首は?

  民主党の鳩山由紀夫代表である。

  首相の膝元の自民党内でも退陣論が浮上。今ここで世論調査を実施すれば、内閣支持率は1桁に急落するかもしれない。国民感情を逆撫でするようなフェアウェーでの健康管理、もとい「危機管理」という失態を材料に首相の資質を問う絶好の機会を、野党第1党の党首は生かすことができなかった。

  しかも、“敵”にエールまで送る始末。この期に及んでもなお、「参院選は、確実に勝てる森首相を相手に戦いたい」と考えているのなら、鳩山氏も党首の座を降りた方がいい。

  閑話休題。首相が原潜事故の第1報を受けたゴルフ場の会員権取得を巡る脱税疑惑を朝日が報じている。首相名義の会員権は、実は知人が購入したもので、これを首相が事実上無償で譲り受けていたというのだ。

  貸与されているのだから、資産公開でこの会員権を報告する義務はなく、納税の必要もない―。首相サイドはこう抗弁するが、裏でどんな文書を交わそうと、税務上は名義人が所有者と認定され、納税義務が発生する。少なくとも、私たちが同じことをやれば、税務当局からそう指摘を受け、追徴課税処分を受けるはずである。

  予算委員会の最中に秘書官抜きでゴルフを楽しみ、原潜事故の第1報を受けてもプレーを続行。しかも、そのゴルフ場の会員権を無償で譲り受けていたことまで暴露された。政権崩壊の時は刻々と近づいている。なのに、森氏を追及しきれない野党。歯がゆいねえ。

  ◇「えひめ丸」との衝突の原因を招いた米原潜の緊急浮上に、乗船していた民間人2人が操艦に関与していたことが分かった。ホノルル滞在中の桜田義孝外務政務官と会談した米海軍潜水艦隊の司令官が明らかにしたもので、米側の説明によれば「乗員の厳格な監督の下で、単純な操作に関与した」(読売)という。

  <「あきれて物言えぬ」、地元・宇和島、怒り渦巻く>(毎日社会面)

  この衝撃的な事実に行方不明者の家族はもとより、地元・宇和島でも怒りの声が沸騰。当然の反応である。

  事故の原因が、民間人の操艦にあったかどうかは今後の調査を待たなければならないが、読売・毎日・産経・東京がトップで報じたこの記事の脇に掲載された記事にも愕然とした。

  米国家運輸安全委員会(NTSB)の艦内検証の結果、衝突前の潜望鏡の映像を残したビデオテープも、音響探知機(ソナー)の磁気テープも存在していないことが分かったというのだ。「スイッチを入れていなかったり、誤って消去した可能性もある」(産経)が、もしも「故意」で証拠が消去されていたとしたら・・・

  ◇日経が主要上場企業300社の社長を対象に自社株買いに関する調査を実施したところ、半数の社長が自社株買いを検討、「資本効率を重視する企業が増え、自社株買いへの意欲が高まっていることが浮き彫りになった」という。

  【経済・IT】
  ●首相が辞めれば株価は上がる?
  日銀が、5年5カ月ぶりの公定歩合の引き下げと「ロンバート型貸出制度」の導入を発表したのは9日夕刻。しかし、公定歩合の引き下げだけは事前に漏れ、TBSテレビが午後2時20分頃にテロップで速報、大引け間際に株価が一時300円以上も跳ね上がった。

  市場が日銀の決定を好感したのは、「公定歩合引き下げ=金融緩和」と受け止めたからだが、金融調節のターゲットとなっている短期金利(無担保コール翌日物)が0.25%に据え置かれたままでは金融緩和とは言えない。週明けの株価が再び下げに転じたのは、ごく自然な成り行きである。

  「公定歩合の引き下げは単なる目くらましだ」。朝日などによれば、14日に開かれた自民党の金融調査会・財務金融部会合同会議で、出席者の間からこんな日銀批判が噴き出した。これもまた、予想された反応である。

  では、「めくらまし」の利下げで量的緩和の風圧を交わそうとした当の日銀は?

  量的緩和は「効果が不確実で副作用も大きい」、ゼロ金利復活も「今この時点でやるのは筋が通らない」。同日行われた総裁会見は、風圧をものともしない速水優総裁の独演会で終わった。記者たちの質問が甘いせいでもある。

  ◇与党がまとめた株価対策と日銀の金融政策“変更”に渋い反応を示した株式市場だが、14日午前に共同通信が報じた「公明党幹部が、森首相の早期退陣を促した」とのニュースには敏感に反応。平均株価が一時、130円も急騰する場面があった。

  株価回復の“速効策”は、首相の辞任以外になさそうだが、当の森サンは必死。産経などによれば、日米首脳会を3月上旬に行うことで両国政府が日程調整に入ったという。その直後には日露首脳会談が予定されている。

  3月中に2度の首脳会談をセットしようとする森サンの真意は? 辞めんぞ!という意思表示である。

  【トピック】
  ●FIFAの“お粗末”
  15日午前零時から予定されていたW杯入場券のインターネットによる受け付けが、延期された。昨年10月に続く2度目のドタキャンの理由について、国際サッカー連盟(FIFA)は「データベースが壊れたため」と説明しているが、“お粗末”の一言に尽きる。産経などが社会面で怒るファンの声を取り上げているが、この記事はスポーツ紙で読んだ方がいい。

  [メディア批評家 増山 広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/02.htm

2001/02/15 13:39