情報は時とともに劣化する・・・

　 【1面トップ】
　 ●「アクシデント」だって？
　 墜落など大事故は「アクシデント」、大事故とは言えないような小さな事故は「インシデント」。では、乗客・乗員42人（朝日は41人）が負傷した事故は？

　 「イレギュラー（異常）」。日本航空（9201）の幹部は、今回のニアミス（異常接近）事故をこう表現したという（読売『編集手帳』）。あわや「空中衝突寸前」の事故を「イレギュラー」の一言で片付けようとする心理が理解できない。

　 日経以外の5紙は、きょうもニアミス事故関連のニュースがトップを飾った。

　 読売などによれば、管制業務が訓練中の管制官に移った直後にニアミスが発生。907便が管制官の指示通り降下する一方で、958便が管制官の指示に従わず、TCAS（航空機衝突防止装置）の指示を最優先したためだ。

　 が、958便が航空法違反を犯したとは単純に言い切れない。東京によれば、旧運輸省の規則（航空情報サーキュラー）では、TCASの指示をパイロットが危険だと判断しない限り、「管制官の指示より優先される」からだ。958便の機長が千葉県警の事情聴取に対し、「管制官の右旋回指示が聞こえなかったと説明した」との報道（毎日など）もある。

　 いずれにせよ、ニアミスの原因究明はこれから。907便の機長が捜査当局の事情聴取に応じなかったことが批判的に取り上げられているが、同機の機長は同僚に「私たちは、間一髪で乗客を助けた。管制の指示にそのまま従っていたら、海のもくずと消えていたと思う」と語り、回避行動の正当性を強調しているという（毎日）。

　 ◇ひと足先に導入を決めた自動車・電機大手に続き、鉄鋼大手も2001年度から定年退職者の再雇用による雇用延長制度を導入することになった。日経によれば、2003年度からの雇用延長を検討していた新日本製鉄（5401）、NKK（5404）、川崎製鉄（5403）の3社が前倒しで導入する。

　 ただし、鉄鋼大手5社のうち、業績が低迷している住友金属工業（5405）と神戸製鋼所（5406）は実施を見送るという。

　 【経済・IT】
　 ●「金庫株」よりも「税制」？
　 株価対策を巡る与党内の調整作業が本格化。これまでに日本版401kプランや取引単位株の引き下げで一致したほか、スジ悪のPKO（公的資金を使った株式の買い上げ）をしないことでも一致した。

　 が、自社株の取得・保有の自由化（「金庫株」の解禁）については、早期導入を主張する自民党と、「インサイダー規制の十分な検討が必要」と慎重論を唱える公明党の間で見解が分かれ、調整に手間取りそうだ。

　 株価対策では「金庫株」がクローズアップされているが、市場は「金庫株」よりも「3党が証券税制の整備にどこまで踏み込めるかを注目している」と毎日。

　 ◇「お好みの色やエンジンのクルマが買えます」。マツダ（7261）がインターネットを使った受注生産を開始した。購入者がホームページにアクセスし、好みの仕様を選択、申し込む仕組みで、日本では初めての試みだ。

　 対象車種は「ロードスター」と「ファミリアS-ワゴン」。4週間程度で「カタログにないマイカー」が手に入るが、価格の方は？

　 ◇朝日などによれば、1カ月で2度目の大幅利下げを断行した米国だが、市場関係者の間には早くも追加利下げを求める声が。随分とせっかちだが、米景気失速への懸念がそれだけ強まっているということなのだろう。

　 ◇「1日付朝刊1面の『米1.4％成長に急減速』の記事中、『米連邦後悔市場委員会』とあるのは『米連邦公開市場委員会』の誤りでした」　日経の3面にこんな「訂正」が載っていた。詳しくは、きのうの『瓦版一気読み』をお読みいただきたい。

　 【トピック】
　 ●新説「3月危機」
　 世に言う「3月危機」説は、株価急落による3月期決算の悪化などが根拠になっているが、朝日は「森喜朗首相に新たな『3月危機』が浮上」と報じている。根拠は？

　 首相が施政方針演説で打ち出した政策課題のうち、IT国家戦略の重点計画や社会保障改革の大綱など6項目の期限が「3月末」に集中している上に、「先送りは許されない」と大見えを切ったからだという。

　 「自ら設けたハードルでつまずけば政治責任を問われる」ことになりかねないが、ご本人がそこまで考えた上で発言したとは思えない。これも、得意の「放言」の類（たぐい）だろう。

　 ◇首都圏で地上波放送がデジタル化される際に使用する「第2東京タワー」について、NHKと民放キー局5社が候補地を秋葉原駅前とすることで技術的な合意に達し、最終調整に入った、と読売が報じている。

　 「秋葉原タワー」の建設コストは「500億円」。この資金をどうやって回収するつもりなのだろう。

　 ◇日航機ニアミス事故の関連記事から1本。多数の乗客・乗員が負傷した907便では「シートベルトを着用していたかどうかがけがの明暗を分けた」と朝日が報じている。こんなもの、とバカにしていたが、今後は多少窮屈でもシートベルトを締めっぱなしにしておこうと思う次第であります。

　 [メディア批評家　増山　広朗]