FINANCE Watch
早くも不協和音~難航必至の金融庁など「3省庁連携協議」

  「発想は正しいが、慎重に事を運ぶべきだ」

  金融再生(金融機関の不良債権処理)と産業再生(企業の過剰債務解消)を一体となって進めるため、柳沢伯夫金融担当相が提唱した金融庁、経済産業省、国土交通省の「3省庁連携協議」が、開始前から暗礁に乗り上げている。

  協議の前段階として、金融庁はこのほど、経済産業、国土交通の両省とそれぞれ個別に事務レベル会合を開いた。が、金融庁との意見が全くかみ合わず、協議に臨んだ両省の担当者の中には、金融庁の姿勢にあからさまに不満を表明する向きも少なくない。

  ●官主導むきだしの金融庁
  金融庁としては、今後、公的資金の注入を受けた銀行の経営健全化計画の進捗状況を点検・審査していく中で、経営不振のゼネコンやスーパーなどの流通企業向け債権の動向を重点的に精査。「3省庁協議」を通じ所管官庁の経済産業省と国土交通省から得た個別企業の情報などを基に自力再生が可能かどうかを判断し、「不可能」と判断した場合には経営統合などの抜本処理を企業に促すことを検討している。

  経済産業、国土交通の両省がもつ業界に対しての“顔”を活用し、個別企業の整理も強引に主導しようとする金融庁のこうした姿勢が、両省の不興を買っているわけで、「(同庁の動きに)ブレーキをかけている」(経済産業省幹部)という。

  事務方の動きを静観する平沼赳夫経済産業相も、「銀行の不良債権処理と企業のリストラによる再生は車の両輪であり、一体となって手がけるのは重要だが、官が出過ぎない形で協力していきたい」と、官主導むきだしの金融庁にやんわりとクギを刺す。

  ●同床異夢でスタート
  経済産業省も国土交通省も、「3省庁協議」で個別企業の経営再建問題を取り上げる考えはない。「マクロ経済産業政策の中で金融システムをどう考えるか大局的に意見交換したい」というのが本音で、「そのための場だと思ったからこそ協議のテーブルについたのに、話が違うではないか」といった戸惑いの声が聞こえてくる。

  しかも、両省にはもともと「銀行の不良債権処理がどこまで進捗しているのかを明確に示したデータの作成など、金融庁には3省庁協議の前にやるべきことがあるのではないか」との不満がある。「同床異夢」でスタートすることが確実なだけに、3省庁協議の紆余曲折は避けられそうにない。

■URL
・金融庁
http://www.fsa.go.jp/
・経済産業省
http://www.meti.go.jp/
・国土交通省
http://www.mlit.go.jp/

(野崎英二)
2001/01/31 17:52