FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~それぞれの「引き際」

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●“いわく付き”構想はどうなる?
  自民党の額賀福志郎経済財政担当相がKSD(中小企業経営者福祉事業団)から資金提供を受けていた問題の責任をとって、ようやく辞任することを決断、森首相側に伝えた。

  マスコミ攻勢も凄まじかった。きのうの朝刊の見出しは「額賀氏、きょうにも辞任する見通し」(朝日、東京)。夕刊になると「午後にも辞任」(産経)となり、そして、きょうの朝刊は「深夜のけじめ」(毎日)「けさ首相に辞表」(東京)、「きょう辞任」(読売)。

  朝日が1面トップのリード記事で「ただ、額賀氏が早期の辞任に難色を示したことから、辞表の提出は23日にずれこんた」と言い訳しているが、土俵際での粘り腰も一夜限りというわけだった。

  森政権も額賀氏がようやく辞意を表明したことによって「後任に麻生太郎・元経済企画庁長官を内定」(毎日ほか各紙)。「トカゲのシッポ切り」でイメージ回復を狙っているようだが、そうは問屋がおろさない。今度は読売が同じ自民党の「村上正邦議員側に5,000万円、小山容疑者と同時期」とスクープしている。

  村上議員も「ものつくり大学」設立などを支援。そんな折、京都の伝統工芸「西陣織」の肖像画を贈られた森総理は「あんな問題でおかしくなっているけど、こういう職人芸をのこさなきゃならん」と、ものつくり大学の必要性をしきりにアピール。たしか、同大学の設立準備委員会の代表は、「モノ作り」の元祖・豊田章一郎・トヨタ自動車名誉会長が就任するなど産業界も大いに期待をかけていた。 “いわく付き”の構想と森サンの行方は?

  ◇日経は「NTT(9432)グループの長距離・国際通信会社のNTTコミュニケーションズ(NTTコム)が、5月に市内電話サービスに参入する」と報じている。

  NTTコムは、長距離料金をこの3月から最大25%引き下げて、ライバルのKDDI(9431)などより低く設定した、と発表したばかり。「マイライン」争奪戦最中の値下げで、利用客は価格設定が余りにも複雑過ぎて、ますます頭の回線が混線してきた。

  【経済・IT】
  ●「ムーン・トレード」目覚めは?
  証券取引所を通さずに、インターネットを使って夜間でも株式が売買できる私設夜間取引「ムーン・トレード」が22日からスタートした。米大手証券ゴールドマン・サックスが開設したもので、初日は成立が15件、売買代金は約2,500万円。「未だ様子見の投資家が多く、予想より成立件数が低かった」とは関係者の弁。

  相場低迷や当面の取引時間が午後5時から7時までとまだ短い。しかも「株価に大きな影響を与える事態が発生しても、売買停止措置の機能が確立されていない」(産経)など危機管理にも課題が残る。

  ◇気になる東京株式市場は、22日の日経平均の終値が昨年12月26日以来、1万4000円台を回復(毎日)。ただし、日経によると、「家計の株式離れがじわじわと広がっている」と報じている。

  ◇日銀が発表した1月の金融経済月報でも、追い打ちをかけて、「緩やかな回復を続けているが、そのテンポは輸出の減速により鈍化している」(産経など各紙)と分析、「鈍化」を強調して「慎重な見方」に変更している。言葉の遊びは“ベストセラー作家大臣”だけだと思っていたが、日銀まで感化されたらしい。紛らわしい表現だけはいい加減にやめてほしいものである。

  ◇「株価が1万1000円まで下がっても、大手都市銀行16行の自己資本比率の影響は軽微で、公的資金の再注入をしなくても国際決済銀行(BIS)の健全性基準をクリア出来る」と、金融庁の内部試算を毎日が独自に入手して取り上げている。裏を返せば、「株価がそこまで下落する可能性がある」と予測しているほうが恐ろしい。

  【トピック】
  ●春は曙だが「悔いなし」
  「毎日悩んだが、体も利かなくなり、体力もなえた」(東京)。「横綱にのぼれて感謝の気持ちでいっぱい。普通の人が経験できないことが経験できた」(毎日)。大相撲の横綱・曙関が引退会見で、こう語っている。「悔いなし」と言いたいところだろう。同じ引退でも永田町のセンセイとずいぶん違う。綱の重みを守って、燃え尽きた曙関のほうは実に鮮やかな引き際である。

  ◇その日本相撲協会の横綱審議委員会の新委員長に渡辺恒雄・読売新聞社社長が就任(読売ほか)。マスコミ界のドンがプロ野球、サッカーに次いで、大相撲まで取り仕切るとは・・・。

  ◇最後に訃報。レコード売り上げランキングで知られる音楽雑誌「オリコン」の小池聡行会長・社長が脳出血のため、都内の病院で死去。68歳だった。団塊世代には懐かしいが「ギンザ・ナウ」などテレビの音楽番組にも出演、音楽ファンには幅広く親しまれていただけに、悔やまれる(産経)。合掌。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/01.htm

2001/01/23 09:02