FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~明暗分けた日米政治

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●ブッシュ新政権の“御祝儀”記事
  国民に自己責任を強く求める米国・ブッシュ新大統領。その就任式と演説の模様は週末のテレビでも盛んに放映されていたので、改めて読み直すまでもないが、きょうの各紙は、読売、毎日が1面トップで取り上げているのをはじめ、ブッシュ新政権誕生がらみの“御祝儀”記事のオンパレード。

  就任演説では「礼節、勇気、思いやり、品格」を理念に掲げて、「あなたがたが何を行うかは、政府が行うことと同じく重要だ。傍観者ではなく、責任ある市民になってほしい」と訴えたのがポイント。気負いもなく堅実で偉ぶらないブッシュ氏らしいない内容だが、実は表現こそ微妙に違ってはいるものの、父親のブッシュ元大統領の就任演説とよく似ている部分も多い。リーダーシップに欠ける点はどこの国のジュニアも同じだが・・・。

  ◇大統領の就任と言えば、フィリピンでも汚職と横領容疑で自滅の道を選んだエストラダ大統領の劇的な辞任騒動を受けて、女性のアロヨ新大統領が誕生。きょうの朝日によると、今回の「フィリピン政変」は「軍が極秘にクーデターを計画していた」と1面準トップで報じている。

  ◇米国とフィリピンが前途ある大統領就任の明るい話題に沸いている一方で、国内のニュースは相変わらず国会質問をめぐるKSD(中小企業経営者福祉事業団の受託収賄事件の続報。先週は自民党の小山孝雄参院議員が逮捕されたが、今度は同じ自民党の額賀福志郎経済財政担当相が資金提供問題の責任をとって、きょうにも辞任する見通し(朝日、東京)。

  野党は31日に招集される通常国会で、額賀氏に加え、KSDに深い関係が指摘されている村上正邦元労働相の証人喚問も要求しており、任命責任を追及される森政権は一段と厳しさを増しそうだ。

  その森内閣の支持率が19%と依然として2割を切る最低水準であることが朝日の世論調査で明らかになっている。年始にはアフリカなどの外遊に出掛けたばかり森総理。今週25日からスイスで始まる「ダボス会議」(世界経済フォーラム年次総会)にも出席を予定しているそうだが、お膝元が大揺れではのんびりと “ゲレンデ外交”を楽しむわけにもいかないだろう。もっとも、以前ダボス会議に出席したことのある国際派の某財界人が「英語だけではバカにされる。少なくともあと数カ国語しゃべれなければ肩身の狭い思いをする」と話していたことがあった。森サンが苦手なのは英語だけならいいが?

  きょうのトップは「ブッシュ新大統領」と「KSD事件」。日米の記事で明暗を分けたが、独自ネタの産経と日経は次の経済・ITの欄で紹介します。

  【経済・IT】
  ●苦し紛れの生保
  中堅生命保険の大同生命保険が2002年4月1日に会社の経営形態を現行の「相互会社」から「株式会社」に変更することを決めた、と日経が取り上げている。相互会社は保険会社だけに認められている会社形態で、営利法人でもなければ、公益法人でもない「中間法人」と位置づけられているものだが、株式会社に変えることで、上場も可能で株式市場からの資金調達の道を開き、財政基盤の強化にもつながるのがメリットのようだ。問題は経営の形態よりも実態では?

  ◇政府はパソコンや携帯電話などの情報端末に利用されるLSI(大規模集積回路)の消費電力を100分の1までに下げる技術の実用化をめざす、と産経が1面トップで報じている。実用化は2002年度をめどにしているというが、無駄な電流を抑えられるばかりか、温暖化防止にも役立つという画期的な革新技術になるらしい。

  ◇金融機関のキャッシュカードを買い物に使う「デビットカード」サービスが始まって2年になるが、読売によると、「利用者は低調で、未だなじみが薄い」ことが明らかになった。デビットカードが消費者に定着する日はまだまだ・・・。

  ◇富士通(6702)、NEC(6701)などは人事部門を分社し、インターネットを活用した給与計算や保険手続きなどの受託業務に乗り出す(日経)。間接部門の情報技術投資が遅れている中小企業などを支援するのが狙い。会社の懐具合を他人にのぞかれるのをためらう経営者には向かない代行業務である。

  【トピック】
  ●「勉強嫌い」でも・・・
  いよいよ受験シーズン。大学入試センター試験が終了。雪や事故による交通機関の遅れのため、一部の試験場で開始時間を繰り下げたほかには大きな混乱はなかったという。肝心の試験問題については英語と国語が昨年よりやや難化。受験生諸君、大学に入ることだけが目的ではない。ちなみに、朝日は、ブッシュ新大統領の素顔に触れて、「大学はエール、大学院はハーバード。いかにも秀才のようだが “勉強嫌い”を公言、読書も嫌いで、苦手は作文、政治学」というから、人生、一寸先は闇、何が起こるかわからないところが面白い。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/01.htm

2001/01/22 09:05