FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~動機は?

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●過熱する「筋弛緩剤」報道
  「急変の守」こと守大助容疑者が点滴を担当した患者のうち、20人近くの容体が点滴直後に急変したことが分かっている。その後、死亡した患者もいたが、守容疑者の容疑は殺人未遂。11歳の少女に筋弛緩剤を点滴した疑いである。

  しかし、同容疑者の“罪状”はこの程度では済まないことは、これまでの新聞報道から容易に想像できる。警察も殺人容疑の立件に目標を置いて捜査を進めてきたはずで、朝日は同容疑者が点滴した後に「容体が急変して死亡した女性(当時89)の血液を鑑定に回した」と1面トップで報じている。

  同じ記事は読売にも掲載されているが、「殺人容疑を裏付ける重要な物的証拠」とみられるにもかかわらず、こちらは1面左肩(3段)。記事の文量は朝日の3分の1にとどまるが、ポイントはしっかり押さえている。

  これに対し、朝日の記事は、死亡した女性の保存血液を鑑定に回したという事実以外は、社会面の関連記事で扱っても良さそうな内容。1面トップに仕立てるために強引に膨らませたとの印象が拭えない。この事件に対する読者の最大の関心は、「犯行の動機」であることをゆめゆめお忘れなく。

  ◇経済関連のトップ記事は2本。東京は、東京都が都内の信用組合の経営基盤を強化するため100億円の新基金を創設する方針を決めたと報道。日経は、日米欧などの民間金融機関が共同で企業間電子商取引の国際的な決済の仕組みを構築するというニュースをトップに持ってきた。急拡大する企業間電子商取引を後押しするのが狙いという。

  ◇17歳からでも大学に「飛び入学」できるが、「18歳以上で、高卒同等以上」という条件が付されており、実際にこのハードルをクリアできた飛び入学者は9人に過ぎない。

  そこで文部科学省は、「飛び入学」の条件を外し、大学院の入学資格も緩和するなどの大学改革を実施する方針を決めた、と読売が報じている。

  「優れた才能」への例外措置を認めるこの改革案、どの教科も早くこなす「受験エリート」偏重教育を見直すきっかけとなるか。

  ◇毎日と産経は、自民党の話題。毎日によれば、党の政治制度改革本部が中選挙区制の復活を本格的に検討する方針を固めたという。「現行制度のゆがみ」が検討の動機というが、どう理屈を並べ立てても、「選挙に負けそうだから制度をいじる」(自由党の小沢一郎党首)という動機の不純さは隠せない。我田引水ですな、これは。

  自民党が、総裁の任期を現在の2年から3年にすることを本格検討、と産経が報じている。2年でも3年でも、いや4年でも構わないけど、ちゃんとしたリーダーを選びなさいよ。

  【経済・IT】
  ●止まらぬ“トリプル安”
  東証が10日発表した昨年の投資主体別売買動向(東京・大阪・名古屋の1・2部合計)によると、銀行、一般企業ともに2兆円近い売り越しとなり、「持ち合い解消が進んでいることを裏付けた」(毎日)。また、外人の売り越しも2兆3,623億円と、「91年以降で最大の『売り越し』となった」(読売)。

  東京市場は、持ち合い株の解消と外人売りが進んだ2000年の地合を引き継ぎ、10日も「急激な円安に株安が重なり、景気への危機感から一時長期金利も1年半ぶりの低水準になる大荒れのマーケット」(産経)となった。産経が<日本売り 止まらぬ連鎖>、毎日が<不安を象徴 円安加速>の見出しを掲げ、東京市場の大荒れぶりを経済面トップで報じている。

  ◇が、嘆いてばかりいられない。松下電器産業(6752)とダイエー(8263)が10日、新経営戦略を発表。松下については、『ニュースの見方』で袴田まさお氏が詳しく解説しているので省略する。

  ダイエーについては・・・。「脱・総合スーパー」に向けた創業以来の抜本的な改革と銘打っているが、再建の道程は依然険しい。日経が3面で詳細に報じているが、論評抜き。

  【トピック】
  ●化粧品のブランド?
  昨年秋に前面提携した東京海上火災保険(8751)、朝日生命保険、日動火災海上保険(8760)の新グループ名が「ミレア保険グループ」に決まった。

  合意した年(2000年)の「ミレニアム(千年紀)」にちなんだといい、「保険商品のブランド名にも活用する」(東京)というが・・・

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm

2001/01/11 09:05