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「日本の政治を読む」~激動の2001年展望

  ●過半数割れば、森首相退陣へ
  2001年の日本の政局は、7月の参院選で与党3党の過半数割れはあるのか、森喜朗首相退陣や政界再編に発展する可能性は―などが大きな焦点となる。参院選は、与党が昨年の衆院選並みの得票を確保できれば自公保連立政権を維持できるが、過半数を大きく割り込むようだと、政権の枠組み変更の可能性が出てくる。ひいては政界再編へとつながることもあり得えよう。

  また、森首相は参院選で与党が敗北すればもちろんのこと、株価低迷などで内閣支持率が急落した場合や失言、スキャンダルなどでも参院選前退陣の可能性がある。これに対し、民主党を中心とする野党政権樹立の可能性は、衆院解散・総選挙が早まり、これに勝利しない限り、早期の政権樹立は無理。参院選は次期衆院選をにらんだ野党間協力の試金石となるだろう。

  ●自民大敗の可能性も
  7月29日と想定される参院選は、定数が先の臨時国会で10削減され、242となったため、今回半数の121が改選される。非改選126と合わせると、124が過半数。このうち与党は自民61、公明13、保守2の計76が改選議席で、古賀自民党幹事長が打ち出した与党が過半数を維持するのに必要な「64議席」は何なくクリアできそうな数字にみえる。

  実際に、2000年6月の衆院選での各党比例代表得票を基に参院選をシミュレーションしてみると、自民62(1増)、公明8(5減)、保守0(2減)、民主35(23増)、自由6(3増)、共産6(2減)、社民4(3減)―と、民主党の躍進にかかわらず、与党3党は70議席と過半数を維持することになる。

  しかし、自民は3年前の参院選で「最低でも60確保」と予想されながら、実際には44にとどまった。自党に有利なようにと野党の反対を押し切って導入した非拘束名簿式も、肝心の候補者がそろわず、また複数区では候補者の一本化作業が難航するなど実際には「50程度」にとどまるのではとの厳しい見方も浮上している。

  ●小差なら自公保政権継続か
  では与党3党が過半数を1議席でも下回れば、政権交代や政権の枠組み変更につながるかと言えば、そうではない。野中広務前幹事長も「過半数を割ったら政局が不安定になるかも知れないが、政権は変わらない」としており、無所属議員や「無所属の会」、二院クラブなどに政権参画を呼び掛けて何とか過半数確保を狙うものとみられる。

  ただ与党3党が過半数を大きく割り込んだ場合、野党側は「参院議長を取り、与党の思うような議会運営はさせない」(菅直人民主党幹事長)と、あくまで衆院解散・総選挙に追い込む構え。野党各党の足並みがそろわず、共産を除くいずれかが連立政権入りする可能性もある。

  ●森後継は橋本、小泉氏ら
  森首相の早期退陣は早ければ3月。その条件となるのは内閣支持率が10%を割り込んだり、東証平均株価が1万2000円台に急落して、なおかつ何らの有効な手を打てなかった場合など。具体的には3月13日の自民党大会で9月に予定される党総裁選を前倒しするための公選規程を改正し、両院議員総会で新総裁(首相)を選出するなどの方法が考えられる。首相に新たなスキャンダルが発生すればもっと早まる可能性もある。

  後継候補は橋本龍太郎行革担当相、河野洋平外相、高村正彦法相、小泉純一郎元厚相ら。年末の内閣改造前では河野外相が最有力候補だったが、橋本氏の入閣でその座を譲った。また国民受けを狙うなら小泉氏の線もあり得る。ただ橋本氏は3年前の参院選に負けた時の首相という古傷が残っているほか、出身母体・橋本派幹部の野中氏や青木幹雄参院幹事長らが橋本氏の再登板に難色を示しているのが最大の難点。小泉氏も持論の郵政民営化に郵政族のドン・野中氏が反対している。いずれにしても最大派閥・橋本派の動向が決定的なカギを握る。

  参院選後だと民主党などを取り込むため、昨年末の「加藤の乱」で表舞台からいったん姿を消した加藤紘一、山崎拓両氏らの名がウルトラCで再浮上してくる可能性もある。

  ●憲法問題が政界再編の引き金に
  一方、野党側の参院選での選挙協力は、社民が独自性を発揮し、当面7選挙区にとどまっている。また民主党の菅氏がめざしていた選挙前の政権構想一本化も結局、参院選後に先送りとなった。今後、もっと選挙協力が進まなければ、自公保政権を過半数割れに追い込む「絶好の機会」(鳩山由紀夫民主党代表)を自ら逸することになりかねない。

  また民主党内は憲法改正に積極的な姿勢をみせる鳩山氏と慎重派の横路孝弘副代表が鋭く対立するなど大きな亀裂が入っている。参院選終了まで当面棚上げすることになったが、同問題は近い将来、党分裂の引き金ともなりかねない。

  憲法問題をめぐっては、自民党各派に独自の動きがみられるほか、従来正反対の考えを表明してきた自由党の小沢一郎党首と社民党の土井たか子党首が立場を超えて会談するなど政界再編のひとつの軸となる可能性が出てきている。

  [政治アナリスト 北 光一]


2001/01/05 09:28