FINANCE Watch
焦点ぼやけるIT関連予算~2001年度大蔵原案

  一般会計の総額が今年度当初予算比2.7%減の82兆6,524億円と、6年ぶりの減額になった2001年度予算の大蔵原案。本来、目玉となるべき項目の多くが2000年度補正予算に先取りして盛り込まれたこともあり、内容的にも迫力に欠く内容となった。

  日本経済が再び、成長カーブを描くための起爆剤として、注目を集めるIT施策にしても、非公共事業だけで今年度当初予算比6割増の3,600億円となったという規模ばかりが目立つ。「ITの皮を被った従来型事業」と眉をひそめたくなるような事業も散見されるなど、様々な事業が薄く広く入り込んだ結果、金額の大きさの割にはIT社会の実現へと導く政府の姿勢がぼやけてしまうものにとどまってしまった。

  ●198項目にのぼる
  森喜朗首相は大蔵原案の内示を前に、総額7,000億円の「日本新生特別枠」の内訳を決めたが、IT予算はその中で4割弱を占める2,504億円に上った。2001年度予算でのIT関係の大半をこの特別枠で確保した格好だ。非公共事業では179項目、公共事業では19項目の計198もの事業がその中に盛り込まれた。

  特別枠の中に入ったIT事業の多くが、世界最高水準の情報通信ネットワーク形成や電子政府の推進などという目標に向けた施策であるのは間違いない。道路、下水道、港湾施設の高度化による光ファイバー収容空間の整備など、まさに世界最高水準の情報通信ネットワークの構築をイメージさせる事業もしっかりと入った。

  ●ITには程遠い事業も
  しかし、なかには「離島空港の整備」(国土交通省)「山地災害の予知、高潮対応の迅速化のための災害情報システムの整備」(農水省)など、IT革命への対応というイメージを描くには骨を折りそうな事業も紛れていた。特別枠は、そんな事業が渾然一体となっていた。公共事業の「ばら撒き」批判が強い中、表玄関では撥ねられそうな事業が、「IT対策」という冠をつけて、特別枠で救われたと言えなくもない。

  特別枠以外のIT施策も、傾向は同じ。種々雑多な“IT事業”が、結果的には盛り込まれようとしている。これでは2003年から始まる地上波デジタル放送の推進事業や公共施設をインターネットで結ぶ地域網の整備など、折角の事業もその価値は薄れてしまう。IT社会の実現を本気で考えているのか―。政府に対し、そんな疑念さえも抱かせる2001年度IT予算である。

■URL
・2001年度予算大蔵原案
http://www.mof.go.jp/genan13/yosan.htm
・一般会計はマイナス2.7%~大蔵、来年度予算案を内示
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/12/20/doc1474.htm

(野崎英二)
2000/12/21 10:10