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「日本の政治を読む」~それでも残る森首相早期退陣必至の見方

  【今週の主な政治日程】

  ▼20日(月)衆院本会議で内閣不信任案採決
         共産党大会(静岡県熱海市、24日まで)
  ▼24日(金)森首相が東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス日中韓
         首脳会議に出席(シンガポール、25日まで)

  【今週の焦点】
  ●採決ぎりぎりまで切り崩し工作
  政局は、野党提出の内閣不信任決議案が20日夜採決されることが本決まりとなり、加藤紘一元幹事長対森喜朗首相の戦いの雌雄がいよいよ決する。19日深夜までの段階で、不信任案に対する賛成、反対の見通しは非常に微妙で、採決ぎりぎりまで両派の切り崩し工作が続くのは確実だ。また今回の騒ぎで森首相の指導力のなさがより一層鮮明になり、自民党主流派の中にも不信任案の可否にかかわりなく、森首相の早期退陣は避けられないとの見通しが強まっている。

  ●苦戦強いられる反主流派
  森首相に退陣を求めている加藤(45人)、山崎(19人)両派のうち、山崎派は意外に結束が固く、落ちこぼれが少ない。これに対し、肝心の加藤派は他党からの自民出戻り組も多いことなどから、加藤氏への同調者が予想以上に少なく、19日の宮沢蔵相ら反加藤グループの会合には14人が参加した。このため加藤氏自身が必死になって21世紀クラブや無所属議員も含め賛成者獲得に動いているものの、野中広務幹事長ら主流派の切り崩し攻勢は凄まじく、反主流派は苦戦を強いられている。

  ●20日正午が最大のヤマ
  党執行部の加藤、山崎両氏に対する離党勧告の回答期限は20日正午で、これまでに勧告を受け入れなければ、党除名となる段取り。このため、この時点までに双方がどれだけの人数を確保できるかが大きな焦点となる。仮に反主流派が可決に必要な人数を大きく下回るようだと、離脱者が雪崩をうつ可能性もある。

  ●公明からは激突回避要請も
  逆に、反主流派が可決可能な人数を確保するメドがたてば、主流派から森首相の早期退陣などの妥協案が提示される可能性も出てくる。また双方の勢力が全く拮抗し、不信任可決―衆院解散という不測の事態の可能性が残ったまま本会議採決に臨む情勢なら、与党の公明党から総選挙を避けるため、総裁選の前倒し実施の約束など激突回避要請の動きが出てくることも予想される。

  ●否決でも首相の早期退陣の声
  不信任案否決なら森内閣が「信任」されたことになるはず。しかし補正予算や重要法案を成立させた臨時国会終了後、森首相退陣を前提とした総裁選の前倒し実施を求める声が、主流派の橋本派などから上がるのではないかとの見方が強まっている。内閣支持率が依然低く、とても来年夏の参院選は森首相では戦えないとする意見が弱まらないため。野中幹事長や青木幹雄参院幹事長も再三、「国や党を守ることと、その後首相がどう判断するかは別」としており、不信任案の結果とは関係なく、森首相がそう遠くない時期に退陣に追い込まれるのはほぼ確実とみられる。

  ●否決なら苦しい立場の加藤氏
  一方、加藤氏は不信任採決前に森首相が退陣することを確約し、急きょ採決反対に回らない限り難しい立場に立たされそうだ。可決した場合でも自民党から除名され、同氏が一貫して主張してきた「自民党に残って改革」の道は閉ざされることになる。唯一、不信任案可決の後、内閣総辞職となり、その後の首班指名選挙で野党統一候補として「加藤首相」が誕生した時だけ加藤氏の「勝ち」となるが、その可能性は非常に低いと言わざるを得ない。また不信任案が否決された場合は、加藤派から一体何人が行動を共にするか疑問で、かつて自民党を離党した人々と同じような結果となる可能性が大きい。

  ●経世会支配打破が加藤氏決起の理由
  加藤氏がここまで突っ張った背景には、同氏が経世会(橋本派)抜きの政権を目指したことに最大の原因がある。加藤氏は昨年の自民党総裁選の際、橋本派幹部から「総裁選出馬を取り辞めれば次の首相はあんた」と持ち掛けられたが、「仮に首相になってもこれでは経世会のヒモつき」と拒絶した。

  従って、今回の行動も経世会支配の打破を狙ったものであり、その意味では野中、青木両氏とも加藤氏の懐柔に失敗したと言える。

  [政治アナリスト 北 光一]


2000/11/20 09:21