エプソンダイレクトの「Endeavor NJ3300」は、インテルの最新プラットフォーム「Calpella」に対応するスタンダードノートだ。CPUには、Calpellaプラットフォームの条件になっている、Arrandale世代のCore i7/i5/i3を搭載できる。Arrandale世代のCPUの特徴として、別途グラフィックス機能を搭載することなく、CPUが内蔵するIntel HD Graphics機能で画面出力が可能だ。


 この製品のメインターゲットはビジネスユーザーで、反射が少ないノングレア液晶の採用や、ノートなのにテンキーを備えているなど、ビジネスでの使いやすさを考えた製品作りがされている。ビジネス向けのノートというのは、使い勝手を最優先にして開発されているために飾り気がなく、店頭などでは目立たない製品が多い。しかし、使い勝手を重視して作られているからこそオールマイティで使いやすく、完成度が高いノートが多くなっている。この製品についても、多くのビジネス向けノートの例に漏れず、ビジネス用途はもちろん、家庭や個人の使用でも使いやすい、オールマイティなノートに仕上がっている。


 本製品はBTOに対応しており、CPU、メモリー、SSD/HDD、光学ドライブ、無線LANの有無、OSは自分が欲しい構成を選ぶことができる。今回試用したEndeavor NJ3300のパーツ構成は表の通りだ。

長時間の使用でも目が疲れにくいノングレア液晶を採用

エプソンダイレクト「Endeavor NJ3300」

 店頭で販売されているノートの多くは、液晶にグレア液晶を採用している。グレア液晶は、液晶画面の表面に光沢を持たせてある液晶のことで、表面での光の拡散がないため、画面が鮮明でキレイに見える。欠点は、蛍光灯などの光源が近くにあると画面への映り込みが激しくなり、長時間の使用で目が疲れやすいということだ。


 一方、ノングレア液晶というのは、液晶画面の表面に特殊な加工をすることで光沢をなくし、表面で光を拡散するようにした液晶のことだ。光が拡散されるので、グレア液晶と比べると見た目のハデさがなく、製品としての華やかさに欠ける。そのため、店頭販売されるノートでは採用されることが少ない。利点は、画面への映り込みが少なく、長時間の使用でも目が疲れにくいことだ。


 一長一短ある2つの方式だが、本製品の場合は長時間の使用が想定されるビジネス向けなので、ノングレア液晶を搭載している。周囲の明るさや光源の場所にもよるが、筆者の経験では連続で1時間以上ノートを使う場合にはノングレア液晶のほうが良い。たかが映り込みなのだが、文字を読んだり書いたりするときの映り込みは結構目への負担が大きい。本製品の場合には、蛍光灯下での目立つ映り込みはなく、周囲が明るくても画面が見やすい。ビジネス用途ではもちろん、パソコンを長時間使用する人にも使いやすい実用的な液晶だ。


 さて、そんな本製品の液晶だが、肝心の画面サイズは15.6型ワイドで、解像度は1,366×768ドットとなっている。ノートの場合、目と液晶の距離がデスクトップパソコンよりも近いため、15.6型ワイドともなると結構大きく感じる。実測での画面サイズは横345mm×縦195mmだ。画面を見ていて、首を動かさなければならないほどの大きさではなく、小さいと感じることもない。自然に見ることができる適度な大きさである。解像度も、1,366×768ドットというのは15.6型ワイドでは一般的な解像度なので、Windows 7の「DPIスケール」(文字の大きさを変える設定)を変更する必要がなく、文字の大きさがちょうどよくて見やすい。

液晶には、蛍光灯の下や明るい部屋でも映り込みがほとんどないノングレア液晶を採用している。グレア液晶よりも目が疲れにくいので長時間の使用に最適だ

画面サイズは15.6型ワイドで、解像度は1,366×768ドット。ノートを目の前に置いたときに、ちょうど良い大きさで、かつ見やすい解像度となっている

液晶のバックライトには低消費電力のLEDバックライトを採用している。その液晶ユニットを包む液晶カバーは光沢がありピアノのような高級感がある

フルサイズキーボードに加えてテンキーも搭載

 15.6型ワイド液晶を搭載する大型のノートなので、もちろんキーボードはキーピッチ19mmを確保したフルサイズキーボードを搭載している。キーストロークは深めの2.5mmで、デスクトップパソコンで使うキーボードに比較的近い感覚を実現している。キータッチは軽く、長時間の使用でも指への負担は少ない。キーボード全体としてはやわらかいタイプのキーボードとなっている。キー配列はとくに違和感があるところはなく、誰でもすんなり使えるだろう。ノートではぞんざいな扱いを受けがちなカーソルキーも、横一列に並ぶタイプではなく、上下左右に独立して配置されているのでデスクトップパソコンと同じ感覚で使用できる。そして、なによりテンキーを搭載しているのがうれしい。


 テンキーは、ノート用にUSB接続の単体製品が販売されているくらい需要があるもので、とくにビジネス用途には必須とも言える入力インターフェースだ。テンキーがあるのとないのとでは、数字の入力速度がまったく違う。多くの職場では、目の前にノートがあるのにも関わらず、電卓で計算している光景というのをよく見ると思う。ノートにテンキーが付いていれば、そういった無駄も省ける。


 家庭においても、家計簿の入力用にテンキーキーボードを購入するという話を聞く。テンキーを標準で搭載しているこのノートなら、ノートだけですべてを完結できる。ノングレア液晶と並んで、このノートの特徴となっている実用的な装備だ。

ビジネス用途ならフルサイズキーボードは必須。キーピッチ19mm、キーストローク2.5mmで、デスクトップパソコンに比較的近い操作感を提供する

テンキーの搭載で、数字を入力する際の効率は大幅に向上する。ビジネス用途でも家庭での使用でもテンキーは是非とも欲しい機能だ

 ビジネス向けをうたっているので、このノートは入力インターフェースの工夫が多い。タッチパッドもその1つだ。いわゆるマルチタッチに対応しており、タッチパッドの上に指を2つ置いて操作することができる。たとえば2本の指をタッチパッド上で上下に動かすと、ウィンドウなどの上下スクロールを行える。ほかにも、拡大縮小に対応しているソフトなら、2本の指を開いたり閉じたりすることで拡大縮小の操作を行うことができる。2本の指を左右に回せば画像の回転も可能だ。いちいち画面上の操作ボタンにマウスカーソルを持っていく必要がないので、慣れると素早く直感的に、しかも簡単に操作を行える。マルチタッチは、その便利さからスマートフォンで広く普及してきている。当然、ノートで使っても便利なので、今後はどんどん普及していくだろう。


 本製品のタッチパッドはデザイン面にも特徴があり、タッチパッドがパームレスト部分と完全に一体になっている。一体にすることでデザイン性を高めているだけでなく、パームレスト部分との溝がないために汚れにくいという利点がある。

タッチパッドはパームレスト部分と一体になっているため溝などがなく、汚れにくい。見た目の上質感にも貢献している

タッチパッドはマルチタッチに対応しているので、2本の指でスクロールや拡大縮小、回転などの操作を直感的に素早く行うことができる

タッチパッドは誤動作を防止するために、いつでもボタンでオン/オフを切り替えられる。無線LANのオン/オフもボタンで操作可能だ

パームレスト部分にあるLEDで、CapsLockや無線LANの状態、HDDアクセス、充電状況、電源の状態を確認できる。シンプルな表示なので見やすい

eSATAポートで外付けHDDに高速転送が可能

 本体に搭載しているインターフェースは、通常のノートで必要となるものは完全に網羅している。最新のノートなので画面出力端子も最新で、1本のケーブルで映像信号と音声信号を出力できるHDMI端子を標準で用意している。もちろん、従来のプロジェクターなどに接続できるミニD-SUB 15ピン端子も搭載しており、液晶+HDMI、液晶+ミニD-SUB 15ピン、HDMI+ミニD-SUB 15ピンの組み合わせでデュアルディスプレイ出力も行える。ビジネスで使う場合には重宝するはずだ。なお、HDMI端子はオプションの「HDMI-DVI変換アダプター(ケーブルタイプ)」を使用することで、DVI出力が可能になる。


 インターフェース関係でとくに便利なのは、External Serial ATA(eSATA)ポートである。本体の左側面に1ポート搭載しており、外付けのHDDなどを接続できる。eSATAは、内蔵HDDで使われているSerial ATA 3Gb/sポートの外付け用規格で、300MB/sの転送速度を持つ高速なインターフェースである。USB 2.0は60MB/sなので、帯域だけを見れば単純に5倍も速い。外付けHDDを接続する場合には、USB 2.0ではなくeSATAで接続すれば、HDDの速度を落とすことなく接続できる。簡単に言えば、内蔵HDDと同じ速度で使えるわけだ。このポートを使うことでデータのバックアップなども格段に快適になる。

本体前面には、メモリースティックやSDHCメモリーカード、MMCなどに対応する便利なメモリーカードスロットを備えている

本体背面にはバッテリーを搭載している。バッテリーの仕様は4,400mAh/47Whで6セルのリチウムイオン。スペック値で約3.3時間動作する

左側面には、左からミニD-SUB 15ピン、1000BASE-TのLAN、eSATA、USB 2.0、HDMI、ExpressCard/34スロットを搭載している

右側面には、左からヘッドホン(S/P DIF対応)、マイク、USB 2.0×2、光学ドライブを搭載している。光学ドライブはBTOで選択可能だ

BTOで光学ドライブにDVDスーパーマルチドライブを選択すると、DVD編集ソフトの「Nero 9」が付いてくるのでDVDへの書き込みなどを簡単に行える

ビジネス向けにも関わらず、搭載するステレオスピーカーの音質もなかなか。擬似サラウンドやサウンドエフェクトなどの設定も可能だ

BTOで自分に合った構成にカスタマイズできる

 本製品はBTOで購入できるので、価格重視の安い構成から豪華でパワフルなノートまで、用途に合わせて自由にパーツを選択できる。BTO以外でノートを購入すると、どうしても自分には不要なものが含まれていたり、思っていたよりも価格が高かったりするなど、納得できない部分が出てくることが多い。自分でパーツを選べるこのノートなら、そういった問題は起こりにくい。また、多くのノートでは不要なソフトが大量にプリインストールされているものだが、本製品の場合には標準の構成では余計なソフトはほとんどなく、必要最低限のソフトしかプリインストールされていない。このことも本製品の特徴で、ビジネス用途でも家庭での利用でも、使いやすいと感じる部分だ。常駐ソフトが少ないのでOSの起動時間も速く、同レベルのノートと比べるとサクサク動作する。


 BTOで選択できる詳細なパーツ構成はエプソンダイレクトの製品ページを見ていただきたいが、主要な部分のみ簡単に紹介しておこう。選べるCPUは4つで、Core i3-330M以外のCPUはインテル ターボ・ブースト・テクノロジー(TB)に対応している。具体的には、Core i7-620M(2.66GHz/TB時3.333GHz)、Core i5-520M(2.4GHz/TB時2.933GHz)、Core i5-430M(2.26GHz/TB時2.533GHz)、Core i3-330M(2.13GHz)の4つから選択可能だ。いずれのCPUも、CPU内にIntel HD Graphics機能を内蔵しており、CPUがグラフィックスの処理も行う。Intel HD Graphics機能は、簡単な3D処理も行える性能を持っており、ビジネス用途でも十分に高速な処理が可能だ。どのCPUもデュアルコアCPUだが、コア数を擬似的に増やすインテル ハイパースレッディング・テクノロジーに対応しているため、OSが認識するCPU数は4つとなっている。従来の単純なデュアルコアCPUよりも、ソフトの同時実行に強い。


 メモリーは、PC3-8500 DDR3 SDRAMに対応するSO-DIMMスロットを2本備えており、1GB×1枚、1GB×2枚、2GB×1枚、2GB×2枚の4パターンから選択できる。同容量のメモリーを2枚搭載時には帯域が倍になるデュアルチャンネルで動作するので、後から増設する予定がないのなら最初から2枚の構成を選ぶと良い。


 また、HDDの代わりに、高速なことで人気のインテル製SSD X25-Mの80GBを選択可能だ。これはちょっとマニアックな選択肢だが、スピードと耐衝撃性を優先するなら大きな魅力だ。なお、HDDもSSDもすべてSerial ATA 3Gb/sでの接続となっている。


 OSは、Windows 7 Ultimate、同Professional、同Home Premiumの各64bitと32bitのほか、ビジネス向けならではのWindows Vista BusinessとWindows XP Professionalを選択できる。Windows XP Professionalは、Windows 7 Professionalからのダウングレード提供である。OSの選択肢が多いのはうれしい。


 そのほか、光学ドライブにはDVD±R/RW/-RAM/-ROMに対応するDVDスーパーマルチドライブか、DVD-ROMドライブを選べる。

メモリースロットは、PC3-8500 DDR3 SDRAMに対応するSO-DIMMスロットを2本備えている。2枚搭載する構成を選べばデュアルチャンネルで動作する

通常は必要な容量のHDDを選べば良いが、パフォーマンスを優先するのならSSDのインテル X25-Mを選ぶという手もある

光学ドライブは、DVDスーパーマルチドライブとDVD-ROMドライブから選択できる。Calpellaプラットフォームなので接続はSerial ATA 3Gb/sだ

試用機が搭載していたCore i5-520Mは、アイドル時1.33GHz、負荷時2.4GHz、インテル ターボ・ブースト・テクノロジー時には2.933GHzにクロックが可変する

選択できるCPUすべてがインテル ハイパースレッディング・テクノロジーに対応しているので、どのCPUを選んでもOSからはCPUが4つ認識される

試用機でのWindows エクスペリエンス インデックスの値は4.4だった。3Dゲーム以外なら何でも快適にこなせる十分な性能だ

充実のサポートで購入時も購入後も安心

エプソンダイレクトならではの「納期保証サービス」

 本製品では、かなり充実したサポートを受けられる点も見逃せない。それは購入時から始まっており、まずBTOでパーツ構成を選べるにも関わらず、注文から最短2日で製品を届ける「納期保証サービス」を受けられる。さらに、万一製品が期日どおりに届かなかった場合には、5,000円のキャッシュバックを受けとれるのだ。条件はあるが、基本的には今日注文すれば明後日には届くのだから、これは便利だ。注文した製品が今どこにあるのか、発送されたのかといった情報をパソコンまたは携帯電話(iモード)からリアルタイムで確認することもでき、Webからの注文でもまったく不安を感じることはない。


 購入後のユーザーサポートについても、電子メールによるサポートのほかに、電話の場合には都合の良い時間をこちらから指定して、その時間に電話をかけてもらうことができるサービスを行っている。自分の都合に合わせて、時間があるときにサポートを受けられるので便利だ。


 故障時などの保証も充実している。通常、ノートなどの製品は購入時の保証書がないと修理などを受けることができない。しかし、エプソンダイレクトの場合には保証書がなくても通常通りの保証を受けることができる。これはなかなか画期的だ。ほかのメーカーにも是非見習ってもらいたい。また、工場出荷日から1年間は「一日修理」サービスを受けることができ、修理に必要な日数が一日となっている。具体的には、製品が修理センターに到着した日の翌日までに修理を完了し、返送を行うというサービスだ。1週間も2週間も待たされるなんてことはない。修理の申し込みはWebで行うことができ、指定の日時に運送業者が受け取りに来る。修理の進行状況もWebから確認が可能だ。


 そのほか、1度に20台以上注文する法人の場合には法人向けサービスを受けることができ、BIOSの設定変更やネットワークの設定、こちらで用意したHDDデータをすべてのパソコンに適用することなどが行える。もちろん、定額保守サービスなどを受けることも可能だ。


 まだまだ、Web通販に抵抗がある人も多いと思うが、これだけサポートが充実していれば安心して購入できるのではないだろうか。また、それでもWeb通販に抵抗がある場合には、直営のエプソンダイレクトプラザに行けば店頭で注文することもできる。


使い勝手の良さに加えてサポートまで含めた完成度の高さが魅力

 本製品はビジネス向けに開発されているということで、使い勝手の良さや、長時間使用しても疲れにくいということが大きな特徴となっている。つまりは、通常のノートよりも使いやすいノートになっているということだ。その特徴に加えて、BTOによる選択の幅や、エプソンダイレクトならではの充実したサポートなど、スタンダードノートとしてトータルで高い完成度を実現している。ビジネス用途はもちろん、家庭での使用でも満足できる、幅広いニーズに応えることができるノートだ。


[Text by 小林 輪]
Endeavor NJ3300
Calpellaプラットフォーム採用
ビジネスクライアント向け、メインストリーム機
基本構成価格 ¥64,680~