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ソフトバンク、簡単操作の配膳ロボ「サービィ」。月額99,800円から

ソフトバンクロボティクスは28日、配膳・運搬ロボット「SERVI(サービィ)」を発表。2021年1月から販売を開始する。

料金は3年プランで月額99,800円。初期費用はなく、保守費用が含まれている。現在、各社で実証実験を行なっているほか、物語コーポレーションでは300店以上への導入が決定しており、今後も続々と飲食業界での導入が進められる予定だという。

「Servi」は、飲食店やホテル・旅館、小売店などで従業員と共に働くことを目的に開発された配膳・運搬ロボット。簡単な操作で配膳・運搬ができ、従業員がより多くの時間を接客に充てることができる。

飲食店での実証実験では、従業員の接客時間を2倍に増やせるとの結果も出ており、これにより来店客の満足度も向上させることができるという。ニューノーマルの時代に、来店客との直接的な接触を削減させる使い方も可能だとしている。

配膳以外では、高い移動・運搬能力を活かした室内配送や販促、案内などにも活用でき、幅広い環境下で業務の効率化に寄与する。Bear Roboticsとのパートナーシップをベースに作られた。

配膳・運搬ロボット「ServiI(サービィ)」

特徴は3つ。まず1つ目は高い移動性能。3DカメラやLiDARなど各種センサーを使ってスムーズかつ安全な移動を実現する。人のほかカバンなど小さな物を滑らかに避け、料理などを安定して運ぶことができる。60cmの狭い通路も通り抜け可能で、人とのすれ違いもスムーズに行なえるという。

人や物をスムーズに回避

2つ目は、導入ハードルが低く操作もシンプルであること。マーカーを必要としないため導入が容易。また目的地を選んでタップするだけのシンプルな操作で、指定した場所へ自動で移動する。配膳・運搬後は重量センサーを使って料理などが取られたことを検知すると、自動で次のテーブル、またはホーム位置まで戻ることができる。

簡単操作で誰でも使える

3つ目は、実店舗での使いやすさを追求したこと。円形のフットプリントにより、360度どこからでも料理などの運搬物を載せられる。総積載量も35kgあり、重い食器や複数の料理なども一度に配膳できる。複数目的地の巡回機能で商品の訴求をしたり、遠隔での操作もできるなど、お店のシチュエーションに合わせて柔軟に活用できるとしている。

現場での使いやすさを追求

これらの機能により、飲食店ホールスタッフの負担だったキッチンとホールの往復作業を大幅に削減し、より多くの時間を接客などに使えるようにすることで、業務効率を最大化しながらサービス品質を高めることができるという。

人とロボットの共生を目指す

ソフトバンクロボティクスグループ 代表取締役社長 兼 CEO 冨澤文秀氏

発表会で、ソフトバンクロボティクスグループ代表取締役社長 兼 CEOの冨澤文秀氏は「我々は6年前にPepperを発売し、人とロボットとの共生というテーマを掲げてきた。ロボットの役割もニューノーマル時代には違うものが期待されていることを日々感じている」と述べ、すでに世界中で1万台以上の掃除ロボット「Whiz」が稼働していることや、8月末に行なわれた新型モデル「Whiz i」発表などについて触れた。

「Whiz i」はハードフロアへの対応強化などで清掃性能が「Whiz」の1.6倍にアップし、床面の新型コロナウイルス量を削減することを通じて空間浮遊ウイルス量を削減できるという。

続けて、人型ロボット「Pepper」についても「サーマルPepperパック」を提供開始したと発表。「サーマルPepperパック」は「Pepper」本体を含む「Pepper for Biz 3.0」のサービスとサーマルカメラ、そして発熱検知用のアプリケーションがセットになったパッケージソリューションで、発熱検知から声がけまでPepperが行なうことで、人件費削減につながるという。

そして新しい配膳・運搬ロボット「SERVI」を紹介した。狭い通路でも走行できる搬送ロボットであり、「イメージよりも利便性が高い」ロボットだという。

作業はロボットが行ない、人は人のサービスに集中

ソフトバンクロボティクス 常務執行役員 兼 CBO 坂田大氏

詳細はソフトバンクロボティクス 常務執行役員 兼 CBOの坂田大氏が紹介した。坂田氏は、コンセプトは「人とロボットの共生」だと再度強調。外食産業は厳しい状況にある。生産性改善と非接触ニーズに応えることは必須となっている。ホール業務は多岐にわたるが特に「配膳」と「下げ膳」の作業をロボットが担うことで、従業員の肉体的・精神的負担を軽減する。キッチンとテーブルのあいだはロボットが運ぶので、ホール従業員はホール内に留まって顧客サービスに集中できる。

飲食店での使い勝手を追求

「SERVI」は、米国のスタートアップBear Roboticsが開発パートナー。Bear Robotics CEOのJohn Ha(ジョン・ハ)氏は「ナンバーワンと言える自律走行配膳ロボットだ。番号を押すだけでキッチンからテーブルの配膳と下膳が可能になる。必ず飲食店でお役に立てる」とビデオコメントを寄せた。

「SERVI」は3Dカメラを3つ、LiDARを搭載。前方の死角はない。SLAM技術を使い、天井マーカーや床面マーカーは必要ない。一度マップを作れば最適ルートを走行する。60cmの幅があれば走行ができる。刻一刻と変化する環境のなかで人や物をスムーズに回避して移動できることや、360度どこからでも料理を取りやすい形状やホールの人との連携がしやすい点も評価されているという。

また、行き先ボタンとゴーボタンだけで操作できるので誰でも使える。重量をセンサーで検知しているので料理を届けたら次の目的地へ移動することができ、積載量が最大35kgあることで、客席回転率を劇的にあげることができるという。多くの店舗で実証実験を行ない、半年累計で3,000kmを安定稼働させることができ、大規模導入もすでに決定していると紹介した。

顧客の笑顔が従業員の笑顔を引き出す-デニーズ、とんでんなどで活用

会見には実証実験に参加している企業4社の代表も出席、それぞれコメントを述べた。まずファミレスの「デニーズ」を運営するセブン&アイ・フードシステムズ代表取締役社長の小松雅美氏は、ロボット導入背景について、コロナ収束後は間違いなく人手不足がやってくると考えており、ロボット導入の実証実験を進めていると述べた。「人は人でしかできないことに集中し、それ以外の部分はロボットにやってもらう。人手不足対応、生産性向上はもちろん、究極の目標としては、従業員が少人数でも負担がかからないようにすることを目的とし、それによってホスピタリティを実現することを目指す。それが結果的に業績につながることを期待している」と述べた。

実証実験の結果、料理提供と下げ膳の部分で従業員負担が減り、顧客接点に力が振り向けられ、顧客満足に繋がっているという。ロボットの動きなども好評で、従業員からも笑顔が増えるようになったという声があるとのこと。現在も実証実験を続けている。

六本木ヒルズ52階の「マドラウンジ」、国会議事堂の食堂「国会食堂」など運営するソルト・コンソーシアム代表取締役の井上盛夫氏は「かっこいい空間のなかでこのロボットをどう運用できるか」という課題に挑んできたという。青山一丁目のグリル料理「The Burn(ザ・バーン)」で実験を行ない、顧客からもペットのように可愛がられているという。また広尾の食・ウェルネス・ワークカルチャーの融合を目指す「EAT PLAY WORKS」では新しいスタイルを実証実験中。メンバーシップグランピング施設「Tokyo Classic CAMP」で、「森とロボットを共生させる」というコンセプトで実験を行なっていると語った。

ロボットについては使いこなせるスタッフとそうでないスタッフがいるが「日々接していると可愛いと思えるようになる」と述べた。そしてサービス向上、スタッフ同士のコミュニケーション円滑化、作業減少によるクリエイティビティの向上などに貢献していると語った。

和食レストラン「とんでん」などを運営するとんでんホールディングス代表取締役社長の長尾治人氏は、さいたま市の店舗で検証を進めてきたと紹介。「コロナ禍のなか、店舗に来店してもらう魅力をさらに進化させることが大きな課題。接客、料理品質、生産性の向上を目指している」と述べ、検証を行なってきたそうだ。

長尾氏は日々実際に「とんでん」を利用しているそうで、観察しているなかで、従業員の作業が変わってきていること、デザインの完成度が高いことなどに気づき、「フロア業務が『作業』ではなく『サービスを行なっている』というイメージに変わってくることで従業員満足度が上がり、客席により目が行き届くようになり接客時間が2倍になった」と述べた。これは顧客が無意識に感じる満足度をあげているのでないかと感じているという。顧客の感動・笑顔が従業員の自然な笑顔を引き出すことが一番重要だと述べ、明らかに出ている生産性の向上効果だけではなく、「笑顔を引き出すこと」が飲食店経営のなかで有難いと感じた点だと述べた。

食べ放題店舗の「焼肉きんぐ」や「ゆず庵」などを展開する物語コーポレーション代表取締役社長の加藤央之氏は、労働生産人口の減少と配膳労務負荷の軽減が大きな課題となっており、「SERVI」を検証したと述べた。加藤氏は「最初は半信半疑だった」そうだが、1日300回、8kmの配膳を実現できたという。同社の店舗は「おせっかい」を売りとしており、ホール店員が焼肉やしゃぶしゃぶの手助けをすることで付加価値をつけている。だが労務負荷の問題で完全には稼働していなかった。それをロボットを使うことで、適材適所を実現し、顧客満足度最大化を狙う。

ピーク時に下げ膳集中活用で日次売上が5万円アップ

ホール滞在時間が2倍に

ソフトバンクロボティクスの坂田氏は「各社のミッションに合わせて最大限活用してもらっている。ホール滞在時間が2倍になった」と述べた。また、ランチ時に下げ膳のみに特化させたところ座席回転率が21%向上し、日次売上が5万円アップしたという例を紹介した。今後は、配膳・下げ膳だけでなく開店準備作業時にも様々な道具をロボットに載せて次々と作業させていくなど、さらなる業務効率化の可能性を探っていく。これにより1日あたり9時間分の作業効率化が可能になり、これは約40万円/月くらいの作業に相当すると述べた。

1日あたり9時間分の作業を効率化可能

来店者満足度は95%。多くの客は「びっくりするか笑顔かのどちらか」で、再度来てみたいかと聞いたところ、多くの人が再来店したいと答えたという。また従業員からの評価については中には既にロボットに名前をつけて運用している店舗もあり、仲間として認めてもらっているようだと述べた。

従業員満足度も高い

飲食店以外でも様々な利用シーンで活用できると考えており、小売店での移動陳列台、品出しの手伝いなどのほか、医療施設やホテル・旅館での活用可能性も探る。

無料体験会も渋谷の「Pepper PARLOR」で開催する。導入予定顧客の使用している食器類を持ち込んでもらい、レストランの店舗環境を「Pepper PARLOR」で再現できる。坂田氏は「実物を見てもらえればだいたい良いと言ってもらうえる」と自信を示した。特に狭いところでも動ける、小さい障害物でも検知できることに加えて、オペレーションにスムーズに溶け込み、レストラン環境のなかでフィットする点を評価してもらっているという。

先行PoCは10社以上と進めており、現在は機体が足らない状況。単純に「やってみたい」だけではなく、ロボットを使ってどういうことをやるかといったゴールが明確で、特に、ロボットを使うためにオペレーションを変えたり、店舗内の床段差をなくすなど積極的にどう活用したらオペレーションや店舗の雰囲気が良くなるかと考えている企業と取り組むことが多いそうだ。

Servi体験会は受付中

広瀬すずさんも登場、近未来を体験

広瀬すずさん

発表会では「Whiz」のCMに出演している俳優の広瀬すずさんも登場。Serviによる配膳サービスを受けた。大好物だというニラを入れたパンケーキやハンバーガーのサーブを受けた広瀬さんは「こんなに近距離まで来てもらえるとは思わなかった。コミュニケーションしたくなった。斬新、新鮮なものだと思う。一緒に働くのはどんな感じなのか気になる。愛着がわくのは素晴らしい」とコメント。

そして「近々、レストランに行く機会がまた増えたときに、楽しみがまた一つ増えた。近未来の感覚をみなさんにも味わってもらいたい」と述べた。また「欲しいロボットは」と質問された広瀬さんは「家でちょっとしたことをやってくれるロボットがほしい」と語った。

ソフトバンクロボティクスの冨澤氏は「従業員満足度も上がっているので非常によかった」「いろんなところで活躍できるポテンシャルがある」と述べた。