法林岳之レビュー

5.7インチの大画面で
映像の美しさを追求したフラッグシップモデル

ケータイからスマートフォンへの移行により、多くの人が動画をはじめとする多彩なコンテンツサービスを楽しむようになったと言われている。そうした要素を最大限に楽しむことができるモデルとして、ソフトバンクからシャープ製スマートフォン「AQUOS Xx」が発売された。フラッグシップに位置付けられたモデルで、昨年発売のAQUOS Xx SoftBank 304SHの後継モデルになる。ひと足早く実機を試すことができたので、その仕上がりをチェックしてみよう。

求められる大画面化と持ちやすさのバランス

スマートフォンとケータイはどちらも電話やメール、インターネットなどを利用できるツールだが、ここ数年スマートフォンを使ってきた感覚からすれば、やはり、用途や利用頻度、利便性は大きく異なる。

確かに、変わらない部分もある。ケータイで利用してきた各携帯電話会社のメールサービスは、利用頻度こそ下がったものの、スマートフォンでも継続利用しているユーザーが多い。コンテンツサービスも、コンテンツプロバイダーがスマートフォン向けに移行したことで、同じコンテンツを楽しむことができる。

しかし、今まで以上に便利に使えるようになったサービスも多い。たとえば、ケータイ時代に欠かせないと言われた乗り換え案内サービスは、スマートフォンでは電車の乗り換えだけでなく、駅までの徒歩経路など、地図を含めた総合的な使い方が可能になった。同じことは音楽や映像などのコンテンツにも言える。スマートフォンでは単に端末に入れた音楽や映像を楽しむだけでなく、音楽配信サービスやYouTubeなどの動画サイトを利用できる。動画も、短時間のものを観るだけでなく、通勤通学などのちょっとした空き時間を積み重ねてドラマや映画をまるまる一本観るというユーザーも増えてきているという。

このように用途や利用頻度が拡がるようになってくると、最新のスマートフォンに求められるニーズもおのずと変わってくる。かつてはパフォーマンスばかりに注目が集まる傾向にあったが、現在はCPUなどによるパフォーマンスの差はそれほど大きなものではなく、むしろディスプレイのサイズや視認性、持ちやすさ、電池の持ちなどの省電力性能、他機種にない個性といったものが重視される傾向にあるようだ。

なかでもここのところ注目を集めているのが、ディスプレイサイズと持ちやすさの関係だろう。

映像コンテンツなどを楽しむのであれば、ディスプレイサイズは大きい方が望ましい。一時はその流れを受け、約6インチクラスのディスプレイを搭載する端末も登場したが、片手で操作しにくかったり、シャツの胸ポケットにも収まらないといった状況を生み出してしまった。

逆に、持ちやすさや携帯性を重視したコンパクトな画面では視認性がスポイルされることに加え、搭載するバッテリーサイズも小さくなり、実使用時間が短くなるといったことも起こる。

ディスプレイのサイズと持ちやすさの関係はよく議論になるが、実はそのバランスが大切になってくるわけだ。これが各社のフラッグシップモデルともなれば、なお一層、そのバランスを高い次元でまとめ上げなければならない。

今回、ソフトバンクから発売されたシャープ製スマートフォン「AQUOS Xx」は、こうした多様なニーズと期待に応えるべく、同社のフラッグシップモデルとして、しっかりと作り込まれた端末だ。約5.7インチという大画面のフルHD液晶ディスプレイを 幅79mm、薄さ8.7mmというスリムなボディにまとめあげ、大画面と持ちやすさをバランス良く両立させている。これに加え、世界最高レベルのスーパースロー映像を楽しめるカメラや、各方面で高い評価を得ている「エモパー2.0」など、最高峰のスペックで多彩なコンテンツを最大限に楽しめる端末として仕上げられている。「持って良し」「使って良し」「楽しんで良し」の三拍子が揃ったスマートフォンと言えそうだ。

動画などのエンターテインメントコンテンツを存分に愉しめる大画面スマホ「AQUOS Xx」

メタルフレームに約5.7インチのフルHD液晶を搭載

シャープ製スマートフォンの『顔』として、すっかり定着した感のある「EDGEST(エッジスト)」。本体の上と左右を狭額縁に仕上げることで、大画面のディスプレイを搭載しながら、ボディ幅の拡大を抑えているため、ディスプレイを持ち歩いているような感覚を楽しめる。

AQUOS Xx

前モデルSoftBank 304SHに引き続きメタルフレームを採用しているが、今回のAQUOS Xxはボディ側面をうまくラウンドさせてあり、スリムで持ちやすい形状となっている。スペックとしてはボディ幅が79mmとなっているが、8.7mmという薄さとボディ形状により、あまり大きさを感じさせない仕上がりだ。背面はミラーコーティングを施すことで、上質感のある輝きを演出する。指紋が付きやすいことが少し気になるが、3つのカラーバリエーションを側面部分の仕上げとともに引き立たせている。

5.7インチという大画面ながらボディサイズはコンパクト 金属製のボディ側面はラウンド形状となっており、手に優しい握り心地 ボタンまわりもカッチリ、高級感ある仕上り 背面は鏡面仕上げ

ディスプレイは前述の通り、一般的なスマートフォンとしては最大クラスとなる約5.7インチのフルHD対応「S-CG Silicon液晶」を採用する。ディスプレイが大型化すると、バックライトの光量や色味などに変化が出てしまうケースもあるが、液晶テレビ「AQUOS」をはじめ、液晶パネルメーカーとしてのシャープのこだわりが活かされ、新開発のバックライトとカラーフィルタを組み合わせた「S-Pure LED」(エスピュアレッド)が搭載される。従来機種に比べ、光の三原色すべての色の再現性を向上させ、全体的に非常に色鮮やかな映像を楽しむことができる。国内外の市場ではディスプレイにこだわりのあるメーカーを中心に、色の再現性を追求するモデルが出始めており、AQUOSスマートフォンもその競争軸に挑もうという構えだ。

また、ディスプレイの持つ性能を活かすため、AQUOS Xxには「おススメ画質モード」が新たに搭載される。プリセットされているアプリに限定されるが、テレビなどを視聴するときは色鮮やかに、写真などを表示するときは自然な印象に表示するように切り替えているという。さらに、従来モデルに引き続き、ディスプレイ点灯時や電話着信中に、ディスプレイのエッジに沿ってディスプレイを光らせるといった演出が楽しめる「EDGESTエフェクト」も搭載される。購入時の設定はオフになっているが、実際に使っているうえでもわかりやすいので、オンに切り替えることをおススメしたい。

ところで、ディスプレイが大型化したことで省電力性能が気になるところだが、本体には3000mAhのバッテリーが搭載されているうえ、シャープ製スマートフォンではおなじみの「エコ技」機能を使うことにより、バッテリー消費に関するコントロールを一括で設定することができる。一般的な利用であれば、「三日間」は十分に達成できる仕上がりと言えそうだ。

ワイドボディでも使いやすいユーザビリティ

このサイズのワイドボディを手にすると、「片手で持ったときに操作できるかな?」と気にする人もいるだろう。しかし、AQUOS Xxは従来モデルに引き続き、使いやすさを考えた機能がいくつも搭載されている。

たとえば、履歴キーを押したときに表示される「クイックランチャー」は、起動したアプリの履歴を表示して、切り替えられるだけでなく、お気に入りのアプリを登録しておいたり、ウィンドウ表示が可能なミニアプリを起動することもできる。大画面を活かし、Webページを閲覧しながら、ミニアプリでテレビをウィンドウ表示するといった使い方も可能だ。ちなみに、設定メニューから操作すれば、履歴キーで表示するメニューをAndroid標準のアプリ使用履歴に切り替えることも可能だ。

また、同じく従来モデルから継承した機能として、画面縮小モードキーボード幅寄せも片手操作などに便利だ。画面縮小モードはホームキーから斜め方向にスワイプすると、画面がひと回り小さく表示され、もう一度、同じ操作をすれば、元のサイズの表示に戻るというものだ。キーボード幅寄せは端末を右手で持つとき、左手で持つときのどちらでも操作しやすいように、画面に表示される文字入力のキーボードが左右に寄せて、表示される。ロック解除にパターンなどを利用しているときの画面も同様に左右に寄せて表示することが可能だ。

文字入力については、今回のAQUOS Xxから新たに「S-Shoin(スーパーショイン)」という日本語入力ソフトウェアが搭載された。かつて、シャープが販売していたワープロ専用機「書院」の名を受け継ぎ、ケータイ時代も「ケータイShoin」という日本語入力ソフトが開発されたが、今夏のモデルから、スマートフォン向けに開発されたものが搭載される。従来に比べ、約3倍の予測変換候補を収録し、予測入力時の定型表現などにも対応するが、ボディサイズが大きいだけに、フリック入力時のミスの自動補正はなかなか効果的だ。たとえば、「進行」と入力するために、「しんこう」と入力したつもりなのに、ア段のフリックをミスして、「しんこつ」と入力してしまっても予測変換候補には「進行」が表示される。

フリック入力ミスの補正

定型表現を予測表示

ユーザビリティという点では、「グリップマジック」も手放せなくなる機能のひとつだ。AQUOS Xxは本体側面にグリップセンサーを内蔵しており、本体を持つだけで画面がオンになる。設定を変更すれば、着信時には本体を握らないと、相手の連絡先の登録名を表示しないようにしたり、着信音を下げたり、コンテンツ再生時に音量を上げるといった動作もできる。

ちなみに、このグリップマジックと組み合わせる形で、「モーションでON/OFF」の「Bright Keep」や「水平に置いて消灯」などを設定しておくと、使いたいときは画面がオンになり、持ち続けているとオンの状態が続き、机の上に置くとオフに切り替え、バッテリーの消費を抑えるという動作が可能になる。ユーザーの利用シーンを考慮した賢明なユーザビリティのひとつだ。

世界最高スーパースロー映像が面白い

今回のAQUOS Xxには「GR certified」の認証を取得したカメラが搭載されている。

「GR certified」はリコーのデジタルカメラ「GRシリーズ」の開発陣による画質改善認証プログラムで、レンズについては周辺まで均質で高いコントラストと解像力が求められ、画像処理もきめ細やかなノイズ低減処理や自然かつ鮮鋭の高い画像処理が求められている。言わば、本格的な高画質デジタルカメラと同じ思想のクオリティが求められ、それをクリアしているということになる。ちなみに、レンズはF値1.9の明るいレンズを採用しており、暗いところでも速いシャッター速度でクリアな写真を撮ることができる

撮影機能としては光学式手ブレ補正が新たに搭載され、暗所での撮影でも手ブレしづらくなっている。また、夜間の撮影時などに人物をフラッシュON、背景を複数枚フラッシュOFFで撮影して明るい写真へと合成するNight Catch IIなどが従来モデルから受け継がれている。

カメラのユーザーインターフェイスも改善され、写真とムービーを同じファインダー画面から撮影できるようにしている。撮影モードも簡単に切り替えることができ、よく使う撮影モードがすぐに選べるようになっている。

昨今の「自分撮り」のニーズに応えるため、インカメラは従来モデルよりも広角撮影が可能で、複数人でいっしょに撮るだけでなく、さらにバックの風景などもいっしょに写せるほど、余裕がある。さらにワイドな画角が必要なときは、インカメラワイドという機能を使い、本体を右方向に回すように動かすことで、より多くの人数を写し込んだワイドな写真を撮ることができる。シンプルな自分撮りについてもワンタッチセルフタイマーが便利で、2秒後、もしくは5秒後にシャッターを切るように設定できる。

そして、今回のAQUOS Xxのカメラ機能で、ぜひ試して欲しいのが世界最高のスーパースロー映像だ。AQUOS Xxのカメラには1310万画素の最新ハイスピードCMOSイメージセンサーが採用されており、動画ではフルワイドVGAで秒間210フレーム、フルHDで秒間120フレームのハイスピード撮影ができる。このハイスピード撮影で撮った映像を、フレーム補間技術により、10倍のフレーム数に増やすことで、秒間2100フレーム、もしくは秒間1200フレームのスーパースロー映像を楽しむことができる。撮影したスーパースロー映像は基本的に端末で楽しむことが中心だが、エクスポートすることで、SNSに投稿したり、友だちや家族に渡すこともできる。今年の夏はぜひスーパースロー映像で、決定的なシーンを撮ってみて欲しい。

スーパースロー映像

タイムラプス撮影にも対応しているので、風景も今までと違ったテイストで楽しむことが可能だ。

タイムラプス撮影

話しかけて、楽しめるようになったエモパー2.0

昨年来、AQUOSスマートフォンのもうひとつの楽しみとして、着実に支持を拡げてきた「エモパー」だが、AQUOS Xxではさらに進化した「エモパー2.0」が搭載される。エモパーはシャープがお掃除ロボットの「COCOROBO(ココロボ)」などに搭載している人工知能「ココロエンジン」のノウハウを活かし、擬人化したAQUOS Xxがユーザーに話しかけてくるという斬新な機能だ。個人的にも実際に使い続けていて、スマートフォンがしゃべるという不思議な面白さにすっかりハマっている。

今回のAQUOS Xxに搭載されているエモパー2.0では、しゃべる内容が強化されると共に、新しい機能もいくつか追加され、一段とエモパーが楽しめるようになっている。

まず、話す内容については、天気やスケジュール、これまで近くで行なわれているイベントなどの話題を話していたが、今回はユーザーのニーズに合わせた話題を話すようになっている。あらかじめ、自分が好きな番組や有名人、気になるものなどを登録しておけば、それに関連するニュースや話題を話しかけてくるようになる。この機能強化に合わせ、新しいコンテンツに対応しており、今まで以上に幅広い話題を話しかけてくる印象だ。

次に、これまでのエモパーでは、基本的に実際に音を出してしゃべるのは自宅に限定されていた。これに対し、エモパー2.0では外出時もイヤホンを接続していると、「そろそろいつもの新宿ですね」や「周辺のご当地グルメは○○ですよ」といった情報を声で話しかけてくるようになる。AQUOSスマートフォンで音楽を楽しむため、イヤホンを接続している人も多いだろうが、そんな人はちょっとエモパーから話しかけられる機会が増えるわけだ。

3つめの進化としては、エモパーに聞き返すことができるようになった(在宅時のみ)。たとえばエモパーが「明日の天気は晴れ。降水確率は10%です」と言ったら、ユーザーが「ほかには?」「もう一回」などと話しかけると、追加の話題を話したり、最初に話した内容をもう一度、くり返してくれる。最初はちょっと気恥ずかしいかもしれないが、これは何度か試してみると、エモパーの話す内容も少し変化してくるような印象だ。

エモパーに「聞き返す」ことができるように

そして、こうしたエモパーの機能をどれくらい楽しんでいるのかを可視化できるようになっている。エモパーの気持ちだけでなく、エモパーが今、どんなことを気にかけているのかなどを画面で見ることができ、エモパーをもっと楽しんでみようという気にさせてくれる。

そして、キャラクターについては、従来の「えもこ」「さくお」「つぶた」に加え、熱血キャラクターの「おれんじん」、おっとりした不思議キャラクターの「秘書 桜田かおる」をダウンロードで追加できる。ちなみに、エモパーに関する話題は公式エモパー情報サイト「emopark(エモパーク)」で発信しているので、そちらも合わせて、チェックするようにしたい。

大画面で多彩なコンテンツを最大限に楽しめる「AQUOS Xx」は買い!

従来のケータイで利用してきた通話やメールに加え、多彩なコンテンツサービスを楽しむことができるスマートフォン。しかも、この数年のあいだに国内で提供されるスマートフォンのサービスが高度化してきたことで、今まで以上にスマートフォンに求められる要件も一段と高くなり、ユーザーの期待もかなり幅広くなってきた印象だ。

そんなスマートフォンの多彩なサービスを存分に楽しむためには、本体のパフォーマンスに加え、ユーザーが直接触れたり、見たりするディスプレイが重要であり、当然のことながら、そのサイズはもっとも気になる部分だ。今回発売されたAQUOS Xxは、5.7インチの大画面ディスプレイを搭載しながら、持ちやすく、扱いやすいボディに機能を凝縮している。加えて、「GR certified」の認証を受けたカメラ、世界最高のスーパースロー映像、そして、毎日が楽しくなるエモパー2.0など、ユーザーが最大限にスマートフォンを楽しめるように作り込まれている。AQUOS Xxはもっとスマートフォンを楽しみたいという欲張りなユーザーにこそ、ぜひ楽しんでもらいたい一台と言えるだろう。

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執筆: 法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話やスマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。主な著書は「できるWindows 8.1」をはじめ、「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-01F 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるゼロからはじめるタブレット超入門 Android 4対応」「できるポケット au Androidスマートフォン 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるWindowsタブレット Windows 8.1 Update対応」など、数多く執筆。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。ホームページはこちら