キーマンインタビュー

ウイルスバスター発売15周年を迎えた
セキュリティ専業メーカーのこだわりとは


トレンドマイクロ株式会社 
コンシューマビジネス統括本部コンシューママーケティンググループ
プロダクトマーケティング課
田中淳一プロダクトマーケティングマネージャー

 トレンドマイクロは、今年、ウイルスバスターの第1号製品の発売から15周年を迎えた。競合他社がセキュリティ以外へも事業領域を広げるなか、セキュリティ分野に特化した専業メーカーとして、また、日本に根ざしたセキュリティベンダーとして成長を遂げてきた同社。これまでの15年間、なににこだわってウイルスバスター事業を拡大してきたのだろうか。そして、15年の経験をベースに、今後はどんな方向へ向かおうとしているのだろうか。同社コンシューマビジネス統括本部コンシューママーケティンググループプロダクトマーケティング課・田中淳一プロダクトマーケティングマネージャーに聞いた。



- -今年、ウイルスバスターの第1号製品の発売から15周年を迎えたそうですね。

トレンドマイクロ株式会社 コンシューマビジネス統括本部コンシューママーケティンググループプロダクトマーケティング課・田中淳一プロダクトマーケティングマネージャー
田中  そうです。振り返れば、この15年間に渡って、様々な脅威が、我々PCユーザの目の前に現れました。当初は、フロッピーディスクを介して感染するコンピュータウイルスだったものが、社内LANの普及や、インターネットの浸透、そして、ブロードバンド時代の到来というように、ユーザの利用環境が変化するのに伴い、脅威そのものが大きく変化してきました。従来は、感染すると、ファイルを壊したりPCの動作に不具合を起こすウイルスが主な脅威でしたが、スパイウェアのように、PC内の情報を除き見たりといった様々な悪さをする脅威が登場し、個人情報漏洩問題やフィッシング詐欺といった新たな問題も出てきました。トレンドマイクロは、そうした脅威の「変化」や「巧妙化」に対して、最新の技術を活用して解決し、ユーザが安心して、安全にインターネットを利用できる環境を提供し続けることに力を注いできました。それが、この15年間のトレンドマイクロの取り組みだといえます。

 環境変化に対応することを示すように、ウイルスバスターの製品名も少しずつ変化しています。

 例えば、2002年には、「ウイルスバスター2003 リアルセキュリティ」としましたが、これはスタンドアロンやインターネット環境のPCでも、あらゆるPCに対して、本格的なセキュリティを1本で提供します、ということを宣言したものです。

 また、2003年に発売した「ウイルスバスター2004 インターネット セキュリティ」は、プロードバンドの普及に伴って登場したインターネット時代の脅威に対して、完全対応したことを示したものです。

 そして、15周年を迎えた今年の製品では、「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」としました。名称を決定する過程では、数10種類にもおよぶ候補が出ましたが、この名称に決定したのは、新製品があらゆる脅威に対して、柔軟に対応できるものであることを示すことができるからです。



--具体的にはどんな点がフレックス(柔軟)なのでしょうか。

田中  我々を取り巻く脅威は、ますます高度化、巧妙化しています。また、ユーザの利用環境が、ブロードバンド化や、ユビキタス環境へと広がりはじめたのにあわせて、ウイルスそのものが蔓延する速度や範囲が急速に拡大しています。さらに、フィッシング詐欺やスパイウェアといった新たな脅威も広がっています。脅威にさらされる範囲と程度が深刻化しているのです。しかし、これまでの仕組みだけでは、万全な体制で対応することが難しくなってきました。こうした脅威に対して、これまで以上に柔軟に対応していく必要があります。そこで、柔軟性を持った総合セキュリティ対策が求められているのです。それを実現したのが、今回の「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」というわけです。セキュリティ対策という観点で見ると、数段の進歩を遂げたといっても過言ではないでしょう。



--「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」が示すハイブリッド型総合セキュリティソリューションとはどんなものでしょうか。

田中  ひとことでいえば、従来から提供している固有のクライアントPCを対象にしたセキュリティ機能とともに、新たにウェブ経由のサービスを提供し、常に最新の状況でセキュリティ対策を可能にするというものです。



--従来もオンラインを通じたアップデートサービスは行っていましたね。

田中  確かに、最新の脅威に対応するという意味で、パターンファイルをオンラインで提供し、アップデートすることは行ってきました。しかし、今回のオンライン対応では、もっと別の観点から大きな進化を遂げています。オンライン経由の新サービスでは、セキュリティに関する最新情報を提供する「セキュリティNOW」、オンラインでウイルスおよびスパイウェアの検出、削除、並びにセキュリティ診断を行う「オンラインスキャン」、スパイウェアが不正な動作をしていないかを常時監視する「セキュリテイウォッチャー」があります。また、万が一、PCを紛失したり、盗難にあった際に、データに鍵をかけることができるリモートファイルロック機能を12月はじめにはリリースできます。チャットを通じたサポートの提供に加え、リモートコントロールツールによるサポートも提供を始めています。こうした機能を活用することで、これまでとは異なった次元のセキュリティレベルが確保できます。例えば、仕事で出張先のPCを利用しなくてはならないという場合に、まず「オンラインスキャン」サービスを活用して、このPCがウイルスやスパイウェアに感染していないかを診断するといったこともできるようになります。ユビキタス社会の進展において、こうした使い方はますます増加してくるでしょう。ユーザの利用環境の変化にあわせて、柔軟なサービスを随時提供するということも、「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」の重要な開発コンセプトのひとつとなっています。



--利用環境の変化への対応という点で、ほかにも進化を遂げていますか。

田中  「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」では、1本のパッケージで3台のPCまでインストールを可能としました。これにより、ホームネットワーク環境をまとめて管理できるようにしています。いまや、家庭のPCは、一家に一台から、一人に一台の時代へと移行しつつあります。弊社の調査によると、1~3台のPCを保有しているという家庭は、全体の90%を占めます。こうしたユーザ環境の変化にあわせて、今回の新製品では、3台までのインストールを可能としたのです。



--フィッシング詐欺やスパイウェアといった新たな脅威への対策にも力を注いでいるようですね。

田中  当社では、2006年2月に、スパイウェア対策専用ソフトとして、「スパイバスター2006」を製品化しました。これを、今回の「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」に統合するとともに、150か所にのぼるシステム改変チェックを行う不審ソフトウェア警戒システムや、ルートキット検出・削除機能などの新たな機能を追加し、スパイウェア対策を大幅に強化しています。また、フィッシングチェッカーによって、ウェブサイトの安全性を瞬時に判定します。フィッシングチェッカーは、これまではInternetExplorerのツールバー形式で提供していましたが、ポップアップメッセージ機能にすることで、InternetExplorerに加えて、Firefoxにも対応できるようになりました。そのほか、新開発のヒューリスティック検索機能を搭載したリアルタイム検索エンジンの搭載や、不正プログラムによってインカミングポートなどが変更されようとした際に、ポップアップメッセージでユーザに注意喚起を促すパーソナルファイアウォール設定改変防止機能も搭載しています。新たな次元のセキュリティ環境を提供できると自負しています。



--「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」では、トレンドマイクロとしては初めて、他社製品からの乗り換え優待サービスを用意しましたね。

田中  これは、これまでは他社製品を使っていたというユーザに対しても、「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」の新たな機能を活用してほしいという提案とともに、製品そのものにそれだけの自信があることの表れだと受け取っていただいてもいいですね。「ウイルスバスター2007 トレンド フレックス セキュリティ」では、750万本の新規販売・更新を見込んでいます。昨年度の目標と比べ、これだけ計画を引き上げているのは、新規ユーザの利用拡大とともに、他社製品のユーザからの乗り換えを多く見込んでいるからです。



--強気の販売計画ですね。

田中  いままでご説明したように、機能面では大きな進化を遂げていますから、その点での自信はあります。ただ、その背景には、当社がこれまで18年間に渡って、セキュリティ専業メーカーとして歩んできたこと、そして、日本のユーザの声を最も反映した形で、開発を続けてきたというノウハウと実績があります。また、エンタープライズ向けのセキュリティ製品で高い実績をあげていることも当社の品質が高いことを証明するという意味で、見逃せない要素です。ゲートウェイやメールサーバ分野におけるセキュリティ製品では、当社は世界ナンバーワンのシェアを獲得しています。さらに、世界7拠点、800人体制で、24時間365日、最新の脅威を監視しているトレンドラボの存在も、品質の高いセキュリティ環境を提供できる要因のひとつです。日本でも、東京・新宿の本社ビルのなかに、トレンドラボのスタッフが常駐し、日夜努力を続けています。これまで他社製品を使っていたユーザにもぜひ使っていただきたい製品です。



--ウイルスバスターの15年の歴史のなかでは、2005年4月、パターンファイルの更新によって、多くのPCに不具合を発生させるといったことがありましたね。これはいまでも、ユーザの間に強い印象として残っています。

田中  当時、多くのユーザにご迷惑をおかけした事実は、いまでも社員の間に大きな反省として根づいています。ただ、裏を返せば、製品のクオリティに関して、徹底する風土が社内のなかに植え付けられました。あの事件をきっかけにして、トレンドマイクロの社内の仕組みや意識が大きく変わっています。失敗の教訓を糧にして、常に改善を加え、クオリティを高める努力をしており、そのレベルは過去のものとは比べものにならないほどです。同じような失敗をすることは、もう二度とないでしょう。ですから、むしろ、安心してトレンドマイクロの製品を使っていただけるのではないかと思います。



--これからの10年、トレンドマイクロはどんな進化を遂げるでしょうか。

田中  インターネットは驚くべき速度で、身近な社会インフラへと発展しました。今後も、ますます重要な社会インフラとして、さらに世の中に定着していくことになるでしょう。そして、PCだけでなく、携帯電話やあらゆるエレクトロニクス機器が、ネットで接続される社会が訪れることになるはずです。しかし、その一方で、残念ながら、脅威もますます進化を遂げると予想されます。こうしたなかで、多くのユーザが、安心して情報機器やデジタル家電製品を利用していただくための下地を作るのが、セキュリティ専業メーカーであるトレンドマイクロの役割だと信じています。インターネットを使うと様々な脅威にさらされるとか、インターネットを利用するのが怖いということを、ユーザに感じさせるようでは、我々の努力が足りないといえます。10年後には、インターネットセキュリティといえば、トレンドマイクロというブランドが定着することを目指したいですね。その時にも、トレンドマイクロはセキュリティに特化した専業メーカーであることは変わらないと思いますよ。


トレンドマイクロ株式会社 
コンシューマビジネス統括本部コンシューママーケティンググループ
プロダクトマーケティング課
田中淳一プロダクトマーケティングマネージャー


大塚商会、デルを経て、2004年5月にトレンドマイクロへ入社。
プロダクトマーケティングマネージャとして、法人向けのネットワーク
アプライアンス製品などを担当したあと、
2005年4月から個人向け製品のウイルスバスターを担当。


URL
  個人のお客さま:トレンドマイクロ
  http://www.trendmicro.co.jp/consumer/?bannerID=impress+tm




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第4回 NTTスマートコネクト
代表取締役社長 岡本 充由氏



第3回 TippingPoint
日本支社長 相馬正幸氏



第2回 トレンドマイクロ株式会社 コンシューマビジネス統括本部
コンシューママーケティンググループプロダクトマーケティング課
プロダクトマーケティングマネージャー
田中淳一氏



第1回 キングソフト株式会社
代表取締役:広沢一郎氏



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