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Solaris 10 プレビュー版に見る次期Solaris



 2002年に現在のパッケージであるSolaris 9が発売されてから2年、そろそろ次のSolarisのメジャーバージョンアップ「Solaris 10」への期待が高まっている。Solaris 10については記者発表や開発者向けのカンファレンスなど多くの場所で、新機能などが紹介されるため注目しているユーザーも多い。2004年秋ごろリリースとささやかれているSolaris 10だが、その機能の多くは「Software Express」として無償ダウンロードできるプレビュー版ですでに公開されている。今回はこのSoftware Expressで公開されている機能と情報を元に、次期Solarisの最新情報についてプロダクト&ソリューション・マーケティング本部ソフトウェア事業部長の増月孝信氏に語っていただいた。


互換性維持が最大の目標

プロダクト&ソリューション・マーケティング本部ソフトウェア事業部長の増月孝信氏
 次期オペレーティングシステムの特徴といえば、通常は人目を引く新機能を紹介することが多い。しかし増月氏は「互換性の維持こそが最大の特徴であり、私たちの目標です」と語る。既存のSolarisユーザーのアプリケーションが問題なく動作することはもちろん、Linuxとの互換性をより強化することでミッションクリティカルなJ2EE環境のプラットフォームから、Windowsに席巻されているデスクトップ上のプラットフォームまで幅広い市場の拡大を目指している。


ソフトウェアパーティショニング機能「N1 Grid コンテナ」

 Solaris 10が実装する予定の「N1 Grid コンテナ」は、これまで「Zone」と呼ばれていた機能で、サーバー上で仮想的に独立した区画(コンテナ)を起動し、OSレベルでシステムをパーティショニングする。それぞれのコンテナは、アプリケーションレベルでは独立したSolarisに見える。増月氏はN1 Grid コンテナについてのメリットを「ソフトウェアパーティショニングでは、最大4,000個までシステムを分割できます。たとえば、深夜帯などに特定のシステムが利用していないハードウェアリソースを、他のシステムが利用するなど、ハードウェアパーティショニングでは得られない効率的な資源利用が可能になります」と述べた。


各コンテナはそれぞれ個別のSolaris環境として動作する
 N1 Grid コンテナでは、カーネル上に本来のSolarisであるグローバルゾーンが動作し、そのグローバルゾーンからすべてのコンテナが管理される。グローバルゾーンから各コンテナのリソースがアクセス可能であるため、Solarisの資源管理機能であるリソースマネージャと組み合わせることで、コンテナのリソースを集中的に管理できる。しかし、各コンテナは完全に独立しており、特定のコンテナがフリーズしても他のコンテナへの影響はない。また、コンテナから別のコンテナへのアクセスはできないため、セキュアな環境が保持されている。

 コンテナの最大数はハードウェアに依存するため、理論上ソフトウェア的にコントロール可能なコンテナ数の制限はない。


サービス稼働率向上への突破口「セルフ・ヒーリング機能」

 FMAと呼ばれるサンの独自アーキテクトで実現する「セルフ・ヒーリング機能」は、システムで発生する障害を検知して情報を収集し、自動リカバリなどをOSレベルで実現する。このセルフ・ヒーリング機能によってシステム稼働率が向上させ、障害の検知、切り分け、対処といった運用の煩雑さを軽減することが可能になる。増月氏は「サンはハードウェアとソフトウェアをトータルでリリースするシステムベンダです。そのため、ミッションクリティカルな環境において、システム障害をハードウェアとソフトウェアの両面から検知して対処する技術をもっています」と語った。


動的なトレース機能「Dtrace」

 「Dtrace」は、独自のスクリプティング言語を備えたシステム診断ツールである。カーネルレベルで監視ポイント(プローブ)を設定し、システムのデータを収集できる。設定できる監視ポイントは、30,000以上におよぶ。収集した監視データは、Dスクリプトと呼ばれるシンプルなスクリプティング言語を用いて管理・表示などを実行する。監視ポイントのON/OFFなどの切り替えなども再起動せずに実現可能で、システムの監視・運用や、システムチューニングには非常に強力なツールといえる。増月氏は「Dtraceは問題切り分けなどに威力を発揮する強力なツールです。Dtraceを使っていただければ、これまでのようにデバッグ用のOSなどを実行する必要がなくなります」と語った。

Dtraceのスクリプト例
#!/usr/sbin/dtrace -s
#pragma D option quiet
syscall::open*:entry
/copyinstr(arg0) == $1/
{
printf("%6d/%6d/%-15.15sn",
curthread->t_procp->p_cred->cr_uid,
pid, execname)
}


軍事レベルの高いセキュリティを保持し、パフォーマンスも向上

 Solaris 10では、軍事レベルのセキュリティを保持することが可能である。IPフィルタリング機能を標準で搭載し、ユーザーベースでのアクセスコントロールも可能である。「ユーザーのアクセスコントロールは、ロール(役割)を設定することで実現します。プリデザインされたロールは多く用意されていますが、ユーザーが独自にロールを設定することも可能です」と増月氏。しかしセキュリティ機能が高度になれば、その分だけ管理も煩雑になる。そこで高度なセキュリティを管理するツールも用意される。

 また、プレビュー版のため具体的な数値をあげることはできないが、FireEngineと呼ばれる高速なTCP/IPスタックを採用するなど、Solaris自身のパフォーマンスチューニングも進んでいる。


Software Express

 この記事中で何度も「プレビュー版」と呼んでいるのは、サンが無償で配布している「Software Express」である。定期的に更新されるため、いち早く最新のSolarisの機能を試したい技術者向けのバージョンだ。サンの社内においては、実際に社内の開発者が利用するサーバーである「jurassic」に導入されている。「Software Express」は単にβ版の配布にとどまらず、公式にサポート(ただし英語のみ)も行っている。増月氏は「是非一度Software Expressを導入して次期Solarisを触ってみてください。そして是非意見をいただきたい」と語った。



URL
  サン・マイクロシステムズ株式会社
 http://jp.sun.com/



( 北原静香 )



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