既にFOMA HSDPA対応のワイヤレスWANモデルも投入されている「type P」および「type Z」に、新たなワイヤレスブロードバンドの選択肢「モバイルWiMAX」を内蔵するモデルが追加された。モバイルWiMAXはインフラ自体のスペックとして下り(受信)最大40Mbs、上り(送信)最大10Mbpsの通信速度を持ち、国内ではUQコミニュケーションズがインフラを構築しているワイヤレスブロードバンド通信サービスで、MVNOでのサービスも提供されている。現在、日本国内で利用可能なワイヤレスWAN接続としてはもっとも高速だ。今回、「type P」のモバイルWiMAX内蔵モデルを試用できたので、詳細なレビューをお届けする。
モバイルWiMAXをスマートに内蔵
![]() |
| WiMAXモジュールが搭載可能になった「VAIO type P」 |
![]() |
| アンテナは液晶背面に内蔵されている |
モバイルWiMAXは、端末を購入して即座に契約・使用を開始することができる。一部MVNOでの販売を除けば、契約をモバイルWiMAXでのインターネット接続で行えるからだ。モバイルWiMAX内蔵の「type P」を購入した場合、モバイルWiMAXでインターネット接続してWebブラウザーを起動すると、契約のためのポータルサイトに自動的に接続し、任意のサービスとの契約をすることができる。契約手続きが終了すると数分程度でモバイルWiMAXモジュールに契約情報がOn The Airで書き込まれ、インターネット接続が可能になる。
また、サービスプロバイダーとしてUQコミニュケーションズと契約すると、1契約で最大3台の端末でモバイルWiMAXが利用できる。同時にインターネット接続が可能なのは1端末だけだが、たとえばモバイルWiMAX内蔵「type P」に加え、同じくモバイルWiMAX内蔵「type Z」を買い増した場合でも、1端末の追加につき200円/月の追加料金のみで複数端末を利用できる。実際、3G通信モジュールのようにUSIMカードの差し替えが必要ない点は便利だ。USIMの差し替えを忘れて「いざ」という時に使えないという失敗もないのだから。
モバイルWiMAXがさらに生きる、「type P」ならではのスマートな使い勝手
モバイルWiMAXはインターネットに接続開始するときの認証手順なども完全に標準化されており、「type P」でもモバイルWiMAXモジュールの提供元であるインテル®製のユーティリティを利用する。モバイルWiMAXの場合端末と契約を紐付けして認証を行うため、接続IDやパスワードといったものは存在せず、そもそもインターネット接続に特別な手順がない。モバイルWiMAXのモジュールがオンでユーティリティが起動していればエリア内では自動でインターネットに接続する。もちろん手動で接続、切断を行うこともできる。契約手続きさえ済んでいれば、公衆無線LANを利用するよりもずっと楽だ。
また、通信機能の管理を行うVAIOオリジナルのアプリケーション「VAIO Smart Network」も、モバイルWiMAXにしっかり対応している。無線LANとモバイルWiMAXは排他利用(どちらかのみ利用可能)となっているが、「VAIO Smart Network」を利用すれば、モバイルWiMAXをオンにすると無線LANがオフに、無線LANをオンにするとモバイルWiMAXがオフになる。利用者は、いちいち両者のオン/オフを意識することなく、その都度どちらを使うかを選ぶだけでよいというわけだ。無線LANの設定でアクセスポイントに自動接続するようにしておけば、それぞれのエリア内でモバイルWiMAXをオン、無線LANをオンにするだけで自動でインターネットに接続してくれる。
![]() |
| 本体前面のスイッチでワイヤレスの機能の一括オン/オフが可能 |
魅力の低消費電力、モバイルで使うならやっぱり内蔵が正解
高速な通信速度が魅力のモバイルWiMAXだが、「type P」のようなモバイルノートではインターネット接続時の消費電力、つまりバッテリー動作への影響も気になるところだ。例えば無線LANより消費電力が大幅に大きい、USBタイプの通信モジュールの方が消費電力が小さい、なんてことになると、あえてモバイルWiMAX内蔵モデルを選択する理由も薄れてしまうだろう。また、消費電力が気になるからと、こまめにモバイルWiMAXをオフするようにしていると、エリア内なら自動でインターネットに繋がるメリットも薄れてしまう。
ここでは内蔵のモバイルWiMAXに加え、内蔵無線LAN、モバイルWiMAXのUSBタイプの通信モジュールであるUD01OK、それぞれをインターネット接続に用い、消費電力を比較してみた。それぞれの通信機能のみの消費電力を計測するのは事実上不可能なので、バッテリー動作時の「type P」全体の消費電力(ACPIのDischrge Rate)をそれぞれの状態で100秒監視し、100秒間で大きな変動がなくなった状態の平均値を消費電力として取り上げている。「type P」の電源プランは「VAIO標準設定」を基準に、自動スタンバイなどの省電力機能を無効にし、バックライトは実用的に十分と感じるちょうど中間の設定にしてある。
| 消費電力 | |||
| 未接続時 | 接続時 | ファイル転送時 | |
| ワイヤレスLAN(内蔵) | 4.9W | 5.1W | 7.4W |
| モバイルWiMAX(内蔵) | 4.8W | 4.9W | 7.5W |
| モバイルWiMAX(UD01OK) | 5.7W | 6.2W | 7.9W |
| ワイヤレス機能を全てオフ | 4.6W | ||
未接続時はワイヤレス機能をオンにしただけの状態(USB通信モジュールは装着しただけの状態)、接続時はインターネットに接続しただけの状態、ファイル転送時は大きなファイルをダウンロードしている状態だ。ちなみに全てのワイヤレス機能がオフの状態での「type P」全体の消費電力は4.6W程度だった。
内蔵モバイルWiMAXと内蔵無線LANは、同一チップで機能を実現していることもあるのか誤差に近い消費電力の差で、ファイル転送時以外はわずかだが内蔵モバイルWiMAXが消費電力は下回り、ファイル転送時では0.1Wだけ大きかった。少なくとも、無線LANと同じ感覚で内蔵モバイルWiMAXを使っても問題ないだろうし、それぞれ機能がオンになっているだけの状態での消費電力も、ワイヤレス機能オフの状態に対してプラス0.3~4ワットに収まっており、これなら移動中は常にモバイルWiMAXをオンにしておいてもバッテリー動作時間が極端に短くなることはなさそうだ。
対してUSBタイプの通信モジュールは全体に消費電力が高い。ファイル転送時の消費電力は悪くないが、インターネットに接続しているだけの状態での消費電力が内蔵の2つのモジュールに比べると1ワット以上も高い。USBタイプの通信モジュールは、複数PCで使いまわしが利くという利点はあるが、1契約で複数端末の利用もできるモバイルWiMAXでは、それほど大きなメリットにはならないともいえる。この結果を見るとモバイル利用でモバイルWiMAXの魅力を活かすには、やはり内蔵モジュールがベターと言えそうだ。
また以前のFOMAワイヤレスWAN内蔵モデルのレビューに基準を合わせて、Webブラウザーで8つのサイトのリロードを繰り返した場合のバッテリー動作時間も検証してみたが、ワイヤレスLANの126分に対し、内蔵モバイルWiMAXは129分と僅か3分だが長時間動作した。USB接続モジュールでは110分となり、内蔵モバイルWiMAXと比較すると15%ほど短いバッテリー動作時間だ。これらはあくまで一例ではあるが、モバイルでのバッテリー運用という面から見ると、内蔵モバイルWiMAXはかなり魅力的だろう。
| 連続Webアクセス | |||
| バッテリー動作時間 | |||
| ワイヤレスLAN(内蔵) | 126分 | ||
| モバイルWiMAX(内蔵) | 129分 | ||
| モバイルWiMAX(UD010K) | 110分 | ||
気になる通信品質は?
![]() |
| 山手線の各駅で検証 |
計測は筆者の行動範囲内のJRの山手線の駅で行った。山手線の南部に集中しているが、故意に選んだわけではない。また、下り最大40Mbps、上り最大10Mbpsの外付USBモジュール(UD01OK)でも同時に計測を行っている。速度計測に用いたサイトは「Radish Network Speed Testing」で、3回ずつ計測してその平均値を通信速度として用いている。
| 受信 | 送信 | |||
| 駅名 | 「type P」内蔵 | UD010K | 「type P」内蔵 | UD010K |
| 有楽町 | 7.63 | 11.60 | 1.83 | 2.26 |
| 品川 | 8.46 | 9.83 | 2.72 | 2.74 |
| 五反田 | 9.88 | 12.32 | 2.02 | 2.21 |
| 渋谷 | 4.80 | 5.04 | 1.84 | 1.78 |
| 平均 | 7.69 | 9.70 | 2.10 | 2.25 |
結果は表を参照してほしいが、内蔵モバイルWiMAXは、USBタイプの通信モジュールとのスペック差ほど実通信速度が遅いわけではないようだ。今回の計測結果で見れば、外付けUSB通信モジュールに対して受信速度が79%、送信速度が94%になった。特に送信速度においてはほとんど差が見られず、場所によっては内蔵モバイルWiMAXが上回っているところもある。
また、計測中に一度だけ、内蔵モバイルWiMAXのスペック上の理論最大値である送信3Mbpsを超える速度も記録した。さらに、外付けUSB通信モジュールでは圏外になってしまったり、接続できても実際にはほとんどパケットが流れてこないロケーションでも「type P」の内蔵モバイルWiMAXでは接続できることがあった。
2.5GHz帯を利用するモバイルWiMAXはアンテナの性能や向きなどの影響も受けやすいが、「type P」は無線LANと兼用のアンテナをディスプレイ部に内蔵しており、この点はコンパクトなUSBタイプの通信モジュールより有利に働いた可能性が高い。この結果を見る限り、通信速度を気にしてモバイルWiMAX内蔵モデルを避ける理由はあまりなさそうだ。
モバイルの不可能を可能にする「type P」+内蔵モバイルWiMAX
![]() |
例えばMOTION EYEを使ってイベントのライブ映像を高品質で配信サーバーに送信するといったことも、「type P」+内蔵モバイルWiMAXなら十二分な上り帯域を生かして単体でできてしまうだろう。例えば今までADSL回線があればできてしまったことは、「type P」+内蔵モバイルWiMAXならモバイル環境でも十分に可能になる。もっと現実的な使い方としては、出先で撮影した高解像度な静止画や動画のアップロードも、3Gでは所要時間的に無理だったことがモバイルWiMAXなら可能になることも多いはずだ。
もちろんモバイルWiMAXはまだまだサービスが開始されたばかりであり、現状では利用可能エリアも東名阪中心とまだまだ限定的だ。しかしまだエリアでないからといって、内蔵モバイルWiMAXを見送るのもちょっともったいない。モバイルWiMAXは単に3Gより高速なだけでなく、端末は売り切り、料金体系はシンプルこの上なく、さらに必要な時だけ使用して料金を支払うという使い方も可能となる予定(10月より1日単位の利用が可能)だ。旅行や出張時に利用するために内蔵モバイルWiMAXを選択するのもありだし、スマートな使い勝手を思えば内蔵モバイルWiMAXを買っておいて普段の行動エリアが利用可能エリアになるの待つのもありだろう。モバイル利用を目的にこれから「type P」を買うなら、とにかくモバイルWiMAX内蔵モデルにしておくのはおすすめだ。
【Reported by 坪山博貴】

フィード
















