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我らWi-Fi環境改善隊!【Vol.6】
広がる電波、ひらける未来、強まる家族の絆?
2台セットのルーター「Orbi」が、
戸建てのWi-Fi環境をますますパワーアップ!

2017/04/12 日沼諭史

Wi-Fi環境がパワーアップする、かもしれない「Orbi」

ネットギアが放つオシャレ家電風Wi-Fiルーター「Orbi」が、我が家にやってきた。ルーター本体と、ほとんど同じ形のサテライトルーターがセットになっており、2台を同時に設置して使うことで、Wi-Fi電波を最大限に拡張して家の隅々までネットワークにつながりやすくするものだ。

電波を拡張するという意味では、既存のWi-Fiエクステンダーを使った仕組みと似ているところはあるけれど、ユーザーが2台のうちどちらにつなげるかを意識しなくても、常にもっとも効率良く通信できる電波を捕まえられる点がOrbiの特徴となっている。技術面についての解説は詳しいレビューがあるので、そちらを参考にしていただきたい。

しかし、Orbiはなぜ2台セットなのか。Wi-Fiルーターは1台よりも2台のほうが宅内をカバーできる範囲が広がるから、というのは当然の理由だろう。加えて、あらゆるモノがネットワークにつながるIoT時代を迎えていることとも無関係ではないはずだ。家の至るところにネットワーク機器が増えれば、単純にその分広く電波を届かせる必要性が高くなる。

そしてもちろん、筆者のように子どものいる家庭でも、電波がより遠いところまで届くことは重要だ。昨今はPCやスマートフォン、タブレットなど、家族一人ひとりがそれぞれ1台以上のデバイスを持つのが当たり前になってきているけれど、全員が1カ所に固まって通信するなんてことはあまり考えられない。家のどこにいても十分な速度で通信できることが望ましいのだ。

そんな家庭に、Orbiはどれほどの性能を発揮してくれるだろうか。ここでは、戸建ての筆者宅にOrbiを設置して、ネットギアのWi-Fiエクステンダーを使用した時と比較し、Orbiだとどれくらい変わるのか、それによって主に戸建てに住む家族にとってどんな影響がありそうか、チェックしていきたいと思う。

子どもの将来も見越してWi-Fi環境を考える

まずは筆者の自宅の間取りについて、あらかじめ少し説明しておきたい。2階は家族が主に1日を過ごす場所で、リビング・ダイニング、キッチン、バルコニーがある。リビングはAV機器があり、オンラインの動画を見たり音楽を聞いたり、PCでWebサイトを見たりする、最もネットワーク負荷の高いところでもある。有線接続も想定した作りにはしているが、見栄えの良くないケーブルをできるだけ増やさないためにも、Wi-Fi環境は重要だ。

2階の間取り図。「Orbi」のところにWi-Fiルーターを置いている

Orbiを設置した棚付近の様子

2階には寝室も一応存在するが、現在は2人の子どものおもちゃ置き場となっていて、結局2階のキッチンを除く大部分は子どもの遊び場だったりもする。今のところ子どもにはほとんどスマートデバイスを使わせていないけれど、プログラミング教育が必修化される2020年は長女が小学校に入学するタイミング。その時は、きっとここで子どもがパソコンを使いまくることもあるだろう。来たるべき時に向けたネットワーク環境の構築という意味では、Orbiの電波の届き方だけでなく、ルーター単体としての性能も見極める必要がありそうだ。

AV機器が多数あり、ネットワーク負荷が高いと思われるリビング

1階は水回りと畳敷きの和室が2つ。現在はこの和室が寝室となっており、昼間はまれに筆者が自宅で仕事をする時に使うくらい。いずれ子どもが小学校高学年くらいになった時は、和室2つを長女、二女の部屋にしようかなと考えている。なので、仕事に使っている今もそうだが、将来的には子どもたちのためにも十分にWi-Fi電波を届かせる必要があるだろう。あまり親の目の届かないところでパソコンやインターネットを使ってほしくはないが、備えておいて損はない。

1階の間取り図。「サテライト」のところにルーター設置用のスペースがある

階段下のルーター置き場にOrbiを設置したところ

ちなみに、風呂、トイレは主に筆者がこっそりスマートフォンを使って動画を見たりする場所なので、ここには電波を潤沢に確実に届かせたい。また、屋外のガレージは今はほとんど物置状態ではあるけれど、将来的に子どもに手がかからなくなり、ゆとりができたら、バイクをのんびりいじるためのお父さん専用スペースになる予定である。ネットでいろいろ調べたりすることもあるだろう。ここでもある程度Wi-Fiを使えるようにしておきたい。

こっそりスマートフォンを持ち込んでいる風呂とトイレ。パソコンは計測のためであり、さすがに普段は持ち込んでいない

寝室として使っている和室。自転車は片付けようと思って1年以上経つ

ガレージ。普段はここに3台の通勤用自転車が入っていて、ごちゃごちゃである

以上のような筆者宅の状況や将来の目論見に最適なWi-Fiルーターには、2階リビングで家族みんながリッチコンテンツをストレスなく扱えて、1階では和室はもちろん風呂やトイレもカバーでき、あわよくば屋外のガレージでもネットにアクセスできるような電波、性能に余裕のあるものが求められる。Orbiはどうだろう。

Orbiは、どうやら単体性能については、通信のピーク速度より、どちらかというと、広い範囲にある多数のデバイスが快適に通信できるようにすることを主眼に据えた設計となっているようだ。デバイスとの最大通信速度は866Mbpsと抑え気味ながら、通信しているデバイスの位置に応じて電波の指向性を最適化するビームフォーミングや、複数機器の同時通信を高速に行えるMU-MIMOに対応しているのは、その表れと言える。

そんなOrbiが2台セットになっているわけで、これまで以上に広い範囲で安定して通信できるようになることは間違いない。ピーク速度も求められるネットワーク負荷が高くなりがちなリビングで、どれだけの性能を発揮できるかは気になるところだが、ここはひとつ、以前ネットギアのWi-Fiルーター「Nighthawk R7500」とWi-Fiエクステンダー「EX6120」を組み合わせた時の計測値とも比較しながら、Orbiの性能を確かめてみようではないか。

エクステンダー使用時から、底上げされる電波強度

今回も、R7500&EX6120の時と同じように、Orbi本体は2階リビング付近の棚に、サテライトは1階の中央にある作り付けのルーター置き場に設置した。また、以前EX6120で電波を拡張した時に、1階トイレ前に設置したほうが風呂・トイレの電波は改善することが判明しているため、Orbiのサテライトをトイレ前に置くパターンも確認することにした。間取り図にある数字の部分で計測している。

1階トイレ前に設置したOrbi

今回のOrbiのみ、壁を隔てた屋外のガレージにおける電波強度も計測している。先述のとおり、将来的にガレージでネット接続することを想定したためだが、さほど広くもない木造の戸建てでもあり、屋内だけだと2台あるOrbiが実力を十分に発揮できない可能性もあった。厚い壁に隔てられた場所でチェックすれば、二世帯住宅のように、より広く壁も多いであろう家でOrbiがどれくらい有効か、少しは想像できるだろう。

なお、R7500&EX6120の組み合わせ時は、明示的にアクセスポイントを指定して通信できるため、両方とも2.4GHz帯と5.0GHz帯の電波強度を記録していた。しかし、Orbiでは接続するアクセスポイント(本体なのか、サテライトなのか)が状況によって異なるため、わかりやすさも考慮してあえて2.4GHz帯と5.0GHz帯それぞれでもっとも良好な値をピックアップしている。結果は以下のグラフのとおりだ。

電波強度計測結果。サテライトを1階中央に設置したパターン

電波強度計測結果。サテライトを1階トイレ前に設置したパターン

グラフ上では、1階中央設置時も、トイレ前設置時も、平均的に電波強度が改善された。見事にR7500とEX6120のいいとこ取りをしたような結果で、この時点で実使用時の速度にも期待がもてる。トイレ前設置時のトイレ内の計測値はEX6120の方が良好ではあるが、EX6120が壁にぴったりくっつくような形で設置していたため、より計測ポイントに近かった影響もありそうだ。

Wi-Fiミレル」というアプリで電波強度をヒートマップ化したものを参考までに見てみよう。わずかだが、トイレと風呂、そしてガレージへの電波の届き具合が変化していることがわかる。サテライトの置き場所が多少異なるだけで、電波強度にもやはり相応の違いがあることから、二世帯住宅などではサテライトを世帯の境目付近に置くことで、全体をカバーしやすくなる可能性は高い。

2階のヒートマップ

1階のヒートマップ。サテライトを1階中央に設置したパターン

1階のヒートマップ。サテライトを1階トイレ前に設置したパターン

データの実転送速度は?

LANにおけるデータ転送速度もチェックしてみよう。電波強度を計測したのと同じポイントで、iperf3というコマンドラインツールを使ってクライアント・サーバー間のデータ転送速度を計測した。サーバー側はOrbi本体に有線(ギガビット)接続したMacBook、クライアント側はWi-Fi接続の802.11ac ビームフォーミング対応のMacBook Airとし、5回ずつ計測して最大値・最小値を省き、残り3回分の平均値をグラフにした。

データ転送速度計測結果。サテライトを1階中央に設置したパターン

データ転送速度計測結果。サテライトを1階トイレ前に設置したパターン

こちらも、平均的に底上げする結果となった。2階リビングでは300Mbps超えを達成し、スペック上はOrbiより高い最大1733MbpsのR7500を上回った。ピーク速度についても、Orbiはなかなか優秀な性能をもっているようだ。ただ1階では、サテライトの中央設置時とトイレ前設置時とであまり差はないように見える。距離が近くなっているせいか、中央設置時は和室とガレージの数値が少々上がっているものの、この程度の違いでは実用上はそこまで大きな差にならないかもしれない。

もしかすると、我が家はOrbi1台で十分にまかなえるのではないだろうか。そこで、2階リビングのOrbi本体だけを残し、データ転送速度を計測してみた結果が以下だ。オレンジのグラフが本体1台のみの計測値で、参考までにサテライトを1階中央に設置した時の計測結果も赤で並べている。

データ転送速度計測結果。Orbi本体1台のみのパターン(オレンジのグラフ)

1階風呂で誤差程度の逆転現象は発生しているものの、ほかは軒並み数値を落としている。特にガレージはまさかの一桁Mbpsという致命的な速度低下となっており、快適な通信はまず不可能な状態。ここまで遅いと時々切断状態に近くなり、Webサイトの閲覧もままならないことがある。やはり、それほど広くない木造住宅であっても、Orbiを2台セットで使うことにはそれなりに意味があり、より広い二世帯住宅などではルーター1台ではまったく機能しないであろうことが予想できる。

この状態で念のため「Wi-Fiミレル」のヒートマップも作ってみた。やはり1階の電波強度は全体的に低下し、右下の玄関やガレージはひときわ厳しい状況になっている。

1階のヒートマップ。Orbi本体1台のみのパターン

将来を考えるなら、「1台の高性能ルーター」より「2台のOrbi」

今回の結果を見る限り、少なくとも木造であっても2階以上ある戸建てでは、1台の高性能ルーター(R7500)より2台のOrbiのほうが、ほとんどの場面で電波強度が向上し、速度面でも上回ることがわかる。高性能ルーターにWi-Fiエクステンダー(EX6120)を組み合わせた場合よりも、やはり2台のOrbiのほうが平均的に快適度は高まる。接続先のアクセスポイントを気にせずシームレスに使えることも考えれば、家族の使い勝手の面でも明らかにOrbiに軍配が上がるだろう。

実売価格が4万6000円ほどと、どうしても価格が高く見えてしまうOrbi。なのだけれど、ある程度広さのある家や二世帯住宅で高性能ルーターを2台以上導入したり、Wi-Fiエクステンダーで電波を拡張したりする際のコストや使い勝手のことを思うと、2台セットのOrbiはかなりコストパフォーマンスが高いのではないだろうか。

サテライトは1台単位で追加していくこともできるので、3階建て、4階建てのような多層階の建物にマッチさせやすいのもOrbiの特徴だ。家族が増えた時にもっと広い家に移り住むことも見越して、今からOrbiを選んでおくのは、じつは賢い選択かもしれない。

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