我らWi-Fi環境改善隊!【Vol.3】
Wi-Fi中継機の導入で最強の電波環境に!……と思いきや!?

2016.8.12 日沼諭史

ネットギアの中継機「EX6120」を導入してみる

今やギガビット超にも対応するインターネット回線の速度を活かすため、この連載を通じてネットギアの無線LANルーター「Nighthawk R7500」を使い、家の隅々まで最も電波が届きやすいルーターの置き方を検証してきた。木造2階建ての筆者の自宅全体を1台のルーターで、可能な限り快適なWi-Fi環境になるようにカバーする、という方向性だ。

元々のルーターの性能の高さに加え、置き方の工夫も多少は影響があり、2階リビングでは実速度で下り200Mbps超、遅い1階の浴室でも80Mbps以上と、すでに十分な速度でインターネットを利用できている。が、しかし、ここ最近は風呂につかりながらスマートフォンで動画を見る、という習慣が生活に加わっている筆者。せめて浴室でも100Mbps超を達成して、自宅のどこでも一切不満のない理想のWi-Fi環境を満喫したい。

そのためには1台のルーターだけではそろそろ難しそうだ。というわけで、こういった場面で活躍するのが無線LAN中継機、もしくはWi-Fiエクステンダーと呼ばれるアイテムである。今回はルーターと同じネットギアの「EX6120」を導入してみることにした。

1台3役のIEEE 802.11ac対応高速無線LAN中継機

EX6120は、最大867MbpsのIEEE 802.11ac(5GHz帯)と最大300Mbpsの2.4GHz帯の、デュアルバンドに対応した中継機だ。手のひらサイズの筐体を、そのまま直接電源コンセントに差し込むだけで、既存のWi-Fi電波を拡張してより遠く、広く届かせることができる。

無線LAN中継機「EX6120」
コンセントにそのまま差し込んで使うタイプ

また、EX6120は電波を拡張する中継機として利用できるだけでなく、無線LAN機能のないルーターと接続してWi-Fiアクセスポイントに用いたり、本体に用意されている有線LANポートを使って、ほかの有線LANしか備えていないネットワーク機器をインターネットに接続したりと、合わせて3つの使い方ができるのも特徴となっている。1台3役をこなす、おトクな中継機なのだ。

有線LANポートを備え、アクセスポイントとして使ったり、有線LANしかないネットワーク機器を接続したりすることも可能

セットアップの方法は、一般的な中継機とさほど変わらない。いったんルーターの近くで電源コンセントに差し込み、中継機のWPSボタンとルーターのWPSボタンを順に押して、最後に中継機の管理画面にPCなどからアクセスして所定の操作を行うのみ。10分もあれば完了できるだろう。あとは電波を効果的に拡張できる場所に差し込み直すだけだ。

WPSボタンを押し、さらにルーター側のWPSボタンを押すことで連携できる
アンテナは角度調整が可能

EX6120はデュアルバンドということで、ルーター・中継機間と、中継機・デバイス(PCやスマートフォン)間の通信帯域を、いくつかのパターンから選択できるようにもなっている。

デフォルトでは、ルーター・中継機・デバイスの間でそれぞれ2.4GHz帯、5GHz帯の両方を使えるようにした「基本」設定が選択されている。これは、2.4GHzにしか対応していないルーターやデバイスが複数あるような場面でも、最も接続性がよく、パフォーマンスもそこそこ出やすい設定だ。

EX6120の設定を行う管理画面
標準の設定は「基本」。2.4GHz帯と5GHz帯の両方をバランスよく使える

特定の環境でパフォーマンスの向上を狙いたいなら、「FastLane Technology」によるデュアルバンドを活かした設定を選ぶ。これには2つの接続パターンがあり、1つはルーター・中継機間を2.4GHzで接続し、中継機とデバイスは5GHzで接続するというもの。ルーターと中継機の間に壁などがあり5GHz帯の電波が届きにくい環境で、使用デバイスが5GHzに対応している場合に適しているだろう。

もう1つはルーター・中継機間を5GHzで接続し、中継機とデバイスは2.4GHzで接続するというもの。5GHz対応のルーターを所有しており、かつルーターと中継機の間にあまり遮るものがないような環境で、デバイスは2.4GHzのみ対応のものが多いようなシチュエーションで有効な構成と言える。

「FastLane Technology」では、ルーター・中継機間を2.4GHzで接続するか、5GHzで接続するかを選択できる

「基本」「FastLane 2.4GHz接続」「FastLane 5GHz接続」の3パターンのうちどれを選ぶべきかは、主に所有機器に左右される。また、もちろん設置環境によっても実速度は変わってくるから、実際にそれぞれの設定を試してみないと分からないところもある。そんなわけで、EX6120の置き場所と接続パターンを変えながら、筆者宅での最適なセッティングを探ってみた。

検証に当たっては電波出力を100%とした

中継機で速度が低下!?

ルーター本体であるR7500の設置場所は、本連載で前回紹介したとおり、2階リビングの天井付近の棚の上。設置方法は壁掛けに近いスタイルとしている。

R7500は2階天井付近の棚に設置

これに対し中継機のEX6120は、2階リビングに比べて圧倒的に電波の弱い1階、そのほぼ中央に位置する壁に作り付けた棚「中継機専用置き場」をまずは選んだ。この中継機専用置き場は、筆者が自宅を建築士に設計してもらう際に、まさに中継機を設置するべく用意してもらったスペース。大きすぎないルーターであればすっぽり収まるサイズで、2階のルーターから壁を通して有線LAN接続(Cat 5e)できるようにもしている。

1階、建物のほぼ中央に設置した「中継機専用置き場」
ここにEX6120を差し込んだ
特に電波が弱いトイレと風呂。特にお風呂スマホすることが多くなってきたので、このあたりを中心に電波をよりよく届かせたい
1階中央設置時 電波強度測定結果グラフ

せっかく作ったこのスペース、使わないともったいない。1階の中央ということもあり、電波もまんべんなく広がるはず。果たして専用スペースの威力はいかに!

Wi-Fi解析アプリ「NETGEAR WiFi Analytics」を利用して、電波強度を2階リビング、1階トイレ、1階風呂、1階和室の4箇所で測定したところ、上図のとおり、たしかにルーターに比べて1階の和室、風呂では電波が改善している。

では、通信速度はどうか。今回は「iperf3」というネットワークパフォーマンス測定ツールを用い、ルーター本体に有線接続したサーバーPCと、Wi-Fi接続したクライアントPCとの間のデータ転送速度を計測した。ルーターのWi-Fiアクセスポイントに接続した場合と、中継機のアクセスポイントに直接接続した場合の値をグラフにしている。

1階中央設置時 転送速度測定結果グラフ
基本…FastLane Technology不使用
FL1…FastLane Technologyでルーター・中継機間を2.4GHzで接続
FL2…FastLane Technologyでルーター・中継機間を5GHzで接続

この結果を見ると、結論からいえば、中継機を使わない“ルーターのみ”のほうが高速であることが分かった。電波強度が弱くなっているとはいえ、それ以上にもともとのR7500の“地力”が大きく、中継機を介して通信するよりもまだ実速度上は高いパフォーマンスを発揮しやすいようだ。FastLane Technologyは、我が家ではあまり有効に働いていないことも見て取れる。

中継機を移動して再検証してみる……

結局ルーター1台が最適でした、というのはなんだかさみしい。あまり考えたくないことだが、家を建てる前から理想を目指すべく設計し、作ってもらった「中継機専用置き場」の位置や形状が、実は中継機置き場としては適していないのかもしれない、とも思い始めた。EX6120のような小さな中継機だと、中継機専用置き場の奥まったところに設置することになり、三方が壁に囲まれるような状況になっているのが、Wi-Fiの電波の妨げになっているとも考えられる。

涙をこらえながらEX6120を中継機専用置き場から取り外し、それよりも見通しのよい階段下、トイレのすぐ前の電源コンセントに移設し、再度同じ検証を行ってみた結果が以下のとおりだ。

トイレ前に中継機を設置。最初は足をひっかけそうかなとも思ったが、EX6120のコンパクトさのおかげで、意外に気にならない
トイレ前設置時 電波強度測定結果グラフ
トイレ前設置時 転送速度測定結果グラフ

中継機がトイレや風呂に物理的に近づいたことから、その付近の電波強度は当然ながら高まった。転送速度も大幅に改善し、1階トイレと風呂の両方で転送速度は100Mbpsを超えるレベル。特に風呂は、ルーターの速度を完全に圧倒し、これで家のどこでも実速度100Mbps超で通信できる環境が整った、ということになる。さようなら、中継機専用置き場……。

機器を導入するだけでなく、工夫することで本来の性能を引き出せる

宅内のWi-Fi環境を高速で、最適なものにするには、ルーターを高性能なものに変えるのはもちろん一番効果が高いが、ルーターの設置場所や設置の仕方、チャンネルの選択、そして今回紹介したような中継機を利用する際の設置場所や、設定方法なども重要であることが分かった。単にハードウェアを導入するだけでなく、そのセッティングを工夫することで、機器本来のパフォーマンスを引き出せるものなのだ。

今回の結果から言えば、お風呂スマホがはかどるように中継機まで導入するのは、コストを考えると微妙なところかもしれない。とはいえ、中継機がどれほどの効果があるかはお分かりいただけたはず。中継機がなくても、少なくとも木造2階建ての筆者宅では、ルーター1台だけでほぼ問題なく家全体をカバーできるわけで、R7500の性能の高さもあらためて実感した。

みなさんの自宅を高性能ルーター1台でまかなうか、工夫も加えて快適性アップを狙うか、さらに中継機も導入してさらなる高みを目指すか、その判断の参考になれば幸いだ。

(日沼諭史)

関連リンク

WiFI Analyticsをダウンロード(Google Play)
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.netgear.WiFiAnalytics&hl=ja
EX6120 製品情報
http://www.netgear.jp/products/details/EX6120.html

関連記事

“ヒラタクワガタスタイル”で電波改善に挑む。ルーターは「壁付けできるか」も重要!?、の巻

置き場所はもちろん自宅の間取りや周囲の電波干渉の度合いなど、ユーザーによって無線LANルーターの設置環境はさまざまだ。デフォルトのままでどんな家でも常に最大性能を発揮させられるとは限らない。というわけで今回は、R7500の設置方法を工夫することでどれくらい電波状況に変化が現れるのか、前回も使用したWi-Fi解析アプリ「NETGEAR WiFi Analytics」でチェックしつつ進めていきたい。

「WiFi Analytics」でルーター変更の恩恵を確認してみる、の巻

昨年11月、小ぢんまりとした質素な家を建てた筆者も、予算は少ないながらもせめてネットワーク環境にはこだわれるようにと、設計段階からいろいろな部分で熟考を重ねてきた。住み始めてすぐに導入した固定回線は、その地域で利用できるなかでは最も高速な最大2Gbpsの光回線。無線LANルーターなどの機材は既存のものを使い続けることにしたけれども、とりあえずこれで少なからず満足のいくネットワーク環境になった、はずだった。

超弩級の無線LANルーターが上陸間近。 ネットギア「Nighthawk X8(R8500)」を見てきた

ネットギアが米国で販売を開始した「Nighthawk X8 R8500」は、1000Mbps(2.4GHz)+2133Mbps(5GHz)+2133Mbps(5GHz)で合計5.3Gbpsのシステムスループットを実現する無線LANルーターの頂点に位置する製品だ。国内販売を前に上陸した米国版製品をネットギアジャパンで見てきた。

ネットギアのハイスペックWi-Fiルーター3種、使い分けはこれだ!

かつては安価な高速回線として人気だったADSLだが、最近は加入者の減少もあり、一部のプロバイダーではサービスの提供を終了するところも出てきている。その原因の1つは、モバイルの進化もあるだろうが、やはり光回線の普及も影響しているだろう。100Mbpsは言うに及ばず、地域によっては1~2Gbpsというギガビット通信が、リーズナブルな料金で利用できるようになってきたのは大きい。

Dynamic QoSで帯域を自動でコントロール 1733Mbps対応を果たしたネットギア「Nighthawk X4 R7500」

今回、ネットギアから新たに登場した「Nighthawk X4 R7500」は、本体に搭載された4本のアンテナを利用することで、4ストリームのMIMOによる通信を可能としており、433Mbps×4≒1733Mbpsという高い通信速度に対応。さらに、1.4GHz動作のデュアルコアプロセッサーを搭載することで、実際の通信を高速に処理できるようになっている。

オリジナルのフィードバックアンケートを作りましょう