2000年1月23日、午後5時半。快晴。
ボクはいつもの日曜日の夕方と同じく、『笑点』をボーっと眺めていると、再びけたたましく電話が鳴った。日曜日に仕事がらみの電話が鳴ることは極めて少ない。なのでてっきり数少ない友人からの電話かと決めつけ、少し浮かれ気分で受話器を挙げた。しかし、ボクの予想は外れ、YOKOXからの事務的な取材要請だった。
そういったわけで、再び下北沢へ。今度のロケ地は、先日取材したビリヤード場に面した小さな路地である。現場に到着すると、すでに市川監督他、スタッフは顔を揃え、撮影の準備を行っている。それにしても今夜は寒い、寒すぎる! 裏通りなので人気が少なく、交通整理は滞りなく出来そうだが、人気が少ない分、体感温度が低く感じるのだ。前回ビリヤード場内で撮影した際は、やはり日が沈んでからの撮影だったが、冬に行う夜間での屋外での撮影は、“寒い”これありきだ。
スタッフは白い息を吐きながらの準備を続ける。そんな寒波の中、スタッフルームで待機していた原田芳雄さんと岸部一徳さんが、満を持して登場! もちろんスタッフのエスコート付き!
大変失礼なことだが、先日取材した時には、顔を見て名前が挙げられる出演者は一人もいなかった(今は違います!)。しかし、今日は子供の頃からブラウン管やスクリーンで見ていたこの両名により、おとといとはまた違った緊張感が取材班を支配する。スタッフの方はというと、そんな大御所(?)が登場しても、特に浮かれることも緊張することもなく、各自の現場に専念している。当然のことながら、その辺がプロフェッショナルなのだ。
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この日の原田さんの衣装は、着流しにゲタという出で立ち。見ているこっちが震えるくらい寒そうである。
(もちろん、この辺の防寒対策は用意周到であり、YOKOX撮影の写真も参照にしていただきたい。)
原田さんがこの格好のまま走るシーンを撮影するので、ゲタの音が夜の下北に鳴り響いていた。
続いて岸部さんも走る。こちらは原田さんとは対照的なコート姿で、幾分暖かそうだ。岸部さんは原田さんを追いかけるのだか、追いかけられてるのだかよくわからないが、とにかく走っている。飄々としたイメージの強い岸部さんが、一生懸命走るのは、新鮮かもしれない。カットの声が出るまで、ふたりとも全力疾走だ。大御所俳優が全力疾走する……こんな光景を目の当たりにするのも、そうない経験であろう
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屋外撮影必携の
サバイバル(?)グッズを発見

左の台車には、やかん、ビニール傘、軍手、毛布etc..
右の台車には、お湯の入ったポット、インスタントコーヒー、かぜ薬、使い捨てカイロetc..
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撮影終了直後。 奥中央には
黒いコート姿の岸部一徳さん。
スタッフはさっそく移動準備を開始。
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このシーンの撮影を終えると、50メートルほど離れた場所にある、これまた下北沢ではお馴染みのミスタードーナッツ前まで徒歩で移動。
機材類は台車やリアカーで「よいしょ、よいしょ」とスタッフとボランティアスタッフとで運ぶ。
アッという間に撤収し、狭い路地を移動した後、アッという間に配置する手際の良さは、見事としか言いようがない。おそらく『ざわざわ下北沢』のロケをしている間の下北沢では、見慣れた光景なのだろう。
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運ぶ当人は重いし寒くてハードワークに違いないが、端から見ると、なんともスムーズだ。
次のロケ地へ到着。道幅が狭いので
配置にも気を遣う。 →
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さっきの場所から、僅かしか離れていないのに、ここでは一変して人通りが激しい。下北沢の街の大部分がそうであるように、狭い道幅にも関わらず、さらには日曜の夜なのにも関わらず、若者を中心に人通りが途絶えないのだ。通行人の整理は、さっきより一層の注意が払われる。我々取材班もジャマにならないように気を付ける。
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前方の赤&黄の看板は
ミスタードーナツ
(カメラ後ろから)
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ミスタードーナツの向かいは雑貨屋
(カメラ横から)
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カメラ位置を直している間、監督は近くの雑貨屋の店主らしき人と会話をしていた。「ひょっとして、次回作は雑貨屋が舞台?」……というのは筆者の邪推。聞き取れなかったが、おそらく「お騒がせしまして」といった単なる雑談であろう。
ここでスタッフが原田さんをエスコートし、スタンバイさせる。さっきと同じ着流しである。今度のシーンはさき程の続きらしく、原田さんがミスド前を駆け抜けるシーンの撮影である。本番がスタート!
順調に撮影が行われ、もうすぐ撮影終了という時、ちょっとしたトラブルが発生した。
とある居酒屋の主人が、営業妨害だと言って、スタッフに激しくクレームを付けてきたのだ。下北沢全域に撮影の許可をもらっていても、こうした苦情が出てしまうという現実……。映画の撮影とは、スクリーンには決して映らない、こうした避けられないアクシデントが付き物なのだろう。
こちらは前のロケ地付近の店主さんとのやりとり。
協力を申し出たものの、こんなに大変だと思わなかったという驚きを、誰もが多かれ少なかれ感じるのだろう。
事前の許可を過信せず、当日の調整もぬかりないのだが、 穏便に済むケースばかりではない。
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「もうちょっと、この辺までで
お願いできますか?」
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撮影の方は、無事OKが出て、本日の日程は無事終了。
今日は人通りの多さや、芯まで冷える寒波、また撮影中のトラブル……これらへ柔軟な対応をするスタッフが印象的だった。もちろん、原田さん、岸部さんの両名の演技へ集中する姿も忘れられない。
個人的には先日取材した時は、勝手がわからず、あれよあれよという間に終わってしまったが、今回は現場の空気が若干わかるようになった分、妙な緊張感が続いていた。よって撮影終了の声を聞いて、急に安堵感が訪れる。
「家帰ったら、留守録しておいた『ASAYAN』でも見ようっかな……。そういや、『ASAYAN』でやってたリハウスCFガールのオーディションって、市川監督が審査してたんだよなあ」なんてことを考えつつ、筆者は帰路へ向かう。
当時、モーニング娘。は7人だった……。 |