2001年12月

vol.23『オーシャンズ11』

vol.22『プリティ・プリンセス』

vol.21『ピアニスト』

vol.20『アモーレス・ペロス』

2001年11月

vol.19『ハリー・ポッターと賢者の石』

vol.18『殺し屋1』

vol.17『ムッシュ・カステラの恋』

vol.16『インティマシー』

2001年10月

vol.15『Short6』

vol.14『メメント』

vol.13『GO』

vol.12『赤ずきんの森』

vol.11『ドラキュリア』

2001年9月

vol.10『陰陽師

vol.9『サイアム・サンセット』

vol.8『ブロウ』

vol.7『ブリジットジョーンズの日記』

2001年8月
vol.6『おいしい生活』

vol.4『キス・オブ・ザ・ドラゴン』

2001年7月
vol.3『まぶだち』

vol.2『がんばれ、リアム』

vol.1『眺めのいい部屋』


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  21世紀に明かされる、吸血鬼の驚くべき正体とは!?

    ニューオリンズのレコードショップで働くマリー(ジャスティン・ワデル)は黒いマントの見知らぬ男に襲われるという幻覚に悩まされていた。そしてロンドンでは、ヴァン・ヘルシング(クリストファー・プラマー)が運営する博物館の金庫が強盗に押し入られ、古い棺桶が盗み出される。強盗達が金目の物が入っていると思いこんでいたその棺桶には、100年も前に捕らえらた吸血鬼ドラキュリア(ジェラード・バトラー)が入っていた。長い眠りから覚め、次々と人間達を襲いながら、マリーのもとへと向かうドラキュリア。一方ではヘルシング教授とその甥サイモン(ジョニー・リー・ミラー)ドラキュリアの行方を追っていた。ドラキュリアがマリーを狙う理由とは? ドラキュリアは一体何者なのか?


  ウェス・クレイブン製作の新感覚吸血鬼映画が登場。しかしキャストがちょっと地味?

 

  前回、野村萬斎が演じたからこそ、『陰陽師』(安倍晴明)は良かったと書いたばかりだが、ほんと、キャスティングって大事だ。ドラキュラのようなキャラクターもの(?)は特に・・・・。というわけで、本作『ドラキュリア』のドラキュリア役のジェラード・バトラーなのだが、ドラキュラとしては地味というか、華が足りないんだよなぁ~~。やっぱり“吸血鬼”というからには、女性を虜にするようなフェロモンとか、滲み出る闇の住人としての悲哀とか、もしくはゾっとするような不気味さが欲しいところ。『エルム街の悪夢』、『スクリーム』シリーズのウェス・クレイヴンが総指揮、『グリーン・デスティニー』のピーター・パウがカメラを担当しているとのことで、かなり期待して観たんだけれど、吸血鬼モノとしてはちと物足りなかった(あ、そういやウェス・クレイヴンの『ヴァンパイア・イン・ブルックリン』もイマイチだったなぁ)。

 ドラキュリア狩りに執念を燃やすヘルシング教授役のクリストファー・プラマーは重厚な存在感を出していてマルなんだけど、ドラキュリアが捜し求めているヒロイン、マリーも妙に地味だし・・・。音楽もヘヴィー・メタル系を使っているし、脇役の吸血鬼化するギャル達はかなりB級映画的な雰囲気なので、思いきってもっとB級ホラーにしちゃった方が良かったかもしれない。ウィリアム・デフォーがドラキュラを怪演した『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』といい、どうも最近の吸血鬼モノの映画はゴシック・ホラーでもB級でもコメディでもない、中途半端な感じの作品が多い気がする。21世紀になったことだし、ここは一つ、リドリー・スコットあたりに迫力満点の王道吸血鬼映画を撮ってもらいたいものである。


  十字架、聖書もなんのその、怖いものナシのドラキュリアが現代のアメリカで大暴れ

 

 さて、ドラキュラと言えば、陽の光、銀、十字架、聖書、(この映画には登場しないけどにんにく)といったものが苦手なのは有名だが、本作のドラキュリアは、十字架も銀もへっちゃら。どんなことをしても死なない不死身のヴァンパイアなのである。それに、確か吸血鬼って処女の生き血を吸う魔物だったよね?
でも、このドラキュリアときたら、どう見ても絶対非処女なビッチ系の女性の生き血を吸いまくり。これも十字架同様、彼にとってはへっちゃらだったのかしらん?

 笑えたのはヒロインが勤めているレコード店がVirginだったこと。ヒロインはヴァージンだからか!?(いや、ただのタイアップなんだろうけど。ヒロインのルームメイトでドラキュリアの仲間入りをしちゃうビッチ系の女の子も同じくヴァージンの店員だったし)。それはさておき、なぜドラキュリアは銀の銃で撃とうが、何をしようが絶対に死なないのか??

 これは本作品で解き明かされる“ドラキュラの本当の正体”に関係する、物語のキモとなる部分。物語の最後にその意外な真実が明かされることになるのだが、真相は観てのお楽しみとして、一つだけヒントをお出ししよう。それは、この映画のキャッチコピー「我が名は、裏切り」である。もっとも、ストーリーの中で謎解き部分にあまり時間が割かれていないのが残念なのだが・・・。また、ドラキュリアの正体とともに、この作品のテーマとなっているのが「血縁」だ。ヒロイン、マリーは最初はドラキュリアが現れる悪夢にうなされるばかりの神経症気味の娘なのだが、序々に自分の中にある“血の使命”に目覚めていく。その姿がなかなか良い。 というわけで、多少キャスティングに不満を残しつつも、普通のホラー映画として見ればテンポもいいし、充分楽しめる作品ではあります。また、ドラキュラ好きの人は、ドラキュラの正体に関する新解釈(とんでも系)を楽しんで下さいませ。


(谷本 桐子)

2001年10月6日より丸の内ピカデリー2他、全国松竹洋画系にてロードショー

監督:パトリック・ルシエ
製作総指揮:ウェス・クレイヴン、マリアンヌ・マッダレーナ
脚本・製作:ジョエル・ソアソン
撮影:ピーター・パウ プロダクションデザイン:キャロル・スパイヤー
衣装:デニース・クローネンバーグ
出演:ジョニー・リー・ミラー、ジャスティン・ワデル、ジェラード・バトラー、クリストファー・プラマー、オマー・エプス他

2000年/アメリカ/98分/スネマスコープ/ドルビーデジタル

配給:アスミック・エース

宣伝:FREEMAN




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