◆MOVIE Watch(毎週金曜日発行:無料)─────―――──―───1998-11-27


☆今週のHEADLINE☆─────────────────────────────

●MOVIE Watchリアル・ランキング
 MOVIE Watchがオススメする今週の5本(平均値/ライター別評点)

●オススメ封切り情報
 『ダークシティ』 20世紀最後のカルトムービーになるであろう傑作!
 『ラブ&デス』 堅物英国紳士がアメリカのアイドル青年に恋をした
 『宋家の三姉妹』 中国近現代史を女性の視点から描く大河ドラマ
 ○公開作 CHECK5本!
 『恋の秋』『ショムニ』 ほか

●MOVIE PADDOCK 出走を待ちわびる新作情報(期待値%つき!)
 『ブラック・マスク(黒侠)』 『リーサル・ウェポン4』のジェット・リー最新作
 『SAFE』 化学物質過敏症にみる現代人の不安感 ほか

●映画4人衆
 『アウト・オブ・サイト』 作り手の遊び心が見事に開花!

●TOPICS
 『踊る大捜査線/THE MOVIE』、興収30億円突破 ほか

●興行成績ベストテン

●REVIEW
 『始皇帝暗殺』 めくるめく雄大な運命劇を、堂々とした語り口で再現

●オススメVIDEO
 『不夜城』 俳優陣の力演も光る灰色の街角
 『追跡者』 逃げるアクション、追いつめるサスペンス
 ○CHECK 6本!

●Weeklyレンタルビデオランキング
 ―やはりあのビデオがいきなりトップに―

●BS&CS今週の3本

●COLUMN
 【映画は音楽だ(11)】 内容も音楽も高水準の英国映画、年末封切り作品

●THE DAY OF BIRTH

●後記


                [◆◆◆MOVIE Watchリアル・ランキング◆◆◆]
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    現時点での劇場公開作からピック・アップした、MOVIE Watch独自の
        採点による上位5作品。今観るならこれだ!
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   『アウト・オブ・サイト』は、惜しくも6位でランクインならず。
   『ブギー・ナイツ』と『モンタナの風に抱かれて』は終了間近。
   期待の新作が続々登場する12月を目前にして、これからのライン
   ナップ変動が楽しみ。

             平均値/ライター別評点(5点満点)

                  唯  巴  古  冴
 1.ブギー・ナイツ      4.63 5.0 5.0 4.0 4.5
 2.モンタナの風に抱かれて  4.38 5.0 4.5 4.0 4.0
 3.ニルヴァーナ       4.13 4.5 4.0 4.0 4.0
 4.始皇帝暗殺        4.00 4.0 4.0 4.0 4.0
 5.トゥルーマン・ショー   3.38 4.5 4.5 2.5 2.0

                    [◆◆◆オススメ封切り情報◆◆◆]
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『ダークシティ』       20世紀最後のカルトムービーになるであろう傑作!
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11月28日より松竹東急洋画系にて公開 '98年/アメリカ/1時間40分 ◇監督・製作
・原案・脚本:アレックス・プロヤス ◇出演:ルーファス・シーウェル、ウィリア
ム・ハート、キーファー・サザーランド ◇配給:ギャガ、ヒューマックス

 ブランドン・リー主演の『クロウ/飛翔伝説』で映画ファンを唸らせた、アレック
ス・プロヤス監督の最新作。'40年代から'50年代のアメリカを思わせる奇妙な都市の
中で、記憶喪失の男が殺人事件に巻き込まれる。彼をつけねらう異形の男たち。やが
て彼は都市に隠される恐るべき真実を知ることになる。物語の猛烈なスピード感、ミ
ステリーとファンタジーの融合、そして圧倒的なビジュアルの質感。これが映画だ!
 □OFFICIAL SITE
  http://www.darkcity.com/
  http://www.gaga.co.jp/movie/darkcity1.html
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『ラブ&デス』        堅物英国紳士がアメリカのアイドル青年に恋をした
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11月28日より公開 '97年/イギリス/1時間33分 ◇監督・脚本:リチャード・クィ
ートニオスキー ◇原作ギルバート・アデア ◇出演:ジョン・ハート、ジェイソン
・プリーストリー、フィオナ・ロウイ ◇配給:エースピクチャーズ
 ―シネスイッチ銀座 11:00/13:00/15:00/17:00/19:00(~20:50)

 真面目で頑固なまでに保守的な初老の英国人作家が、あろうことかアメリカの青年
スターに一目惚れ。年齢の差も、文化の違いも、同性であるという障害も乗り越えて、
彼に一目会おうとロングアイランドへまっしぐら! 思慮分別を持ち合わせた老人が、
一途にスターの魅力にのめり込んで行く様子がおかしくて切ない。『ビバリーヒルズ
青春白書』のジェイソン・プリーストリーが、セルフパロディ風の役を好演している。
 □OFFICIAL SITE
  http://www.iijnet.or.jp/ASMIK/M/Ace/1998/LoveDeath/index.html
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『宋家の三姉妹』         中国近現代史を女性の視点から描く大河ドラマ
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11月28日より公開 '97年/香港、日本/2時間25分 ◇監督:メイベル・チャン ◇
脚本:アレックス・ロー ◇製作総指揮:製作者 ◇出演:マギー・チャン、ミシェ
ル・ヨー、ヴィヴィアン・ウー、ウィンストン・チャオ ◇配給:東宝東和
 ―岩波ホール 11:30/15:00/18:30(~21:00)

 19世紀末の中国で、裕福な宣教師チャーリー宋の家に生まれた三姉妹の実話を映画
化。三姉妹のうち長女・靄齢(アイレイ)は裕福な銀行家の妻に、次女・宋慶齢(ケ
イレイ)は革命家・孫文の妻に、三女・美齢(ビレイ)は蒋介石の妻になった。辛亥
革命、清朝滅亡、中華民国成立、国民党と共産党の内戦、日中戦争、中華人民共和国
成立など、激動の時代を駆け抜けた三姉妹の目から、中国の近現代史を描いた大作だ。
 □OFFICIAL SITE
  http://www.toho.co.jp/towa/souke/welcome-j.html
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○公開作 CHECK 5本!
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★=注目作 ★★=見て損はしない ★★★=これは必見! (未)=未見

■『恋の秋』 11月28日よりシャンテ・シネにて公開 ★★★
『春のソナタ』『冬物語』『夏物語』に続く、エリック・ロメール監督の「四季の物
語」シリーズ完結編。気だてのいい独身中年女性マガリに伴侶を見つけようと、彼女
の息子の恋人や、古くからの親友が東奔西走。大人たちの洒落たラブコメディだ。
 □OFFICIAL SITE
  http://www.toho.co.jp/cinema/koi/welcome-j.html

■『ショムニ』 11月28日より全国松竹系にて公開 ★
テレビドラマも大ヒットした安田弘之の人気コミックを、高島礼子と遠藤久美子主演
で映画化。脚本は『病院へ行こう』シリーズの一色伸幸。監督は『居酒屋ゆうれい』
の渡辺孝好。今回は映画用のオリジナル脚本だが、原作やテレビに比べてどうかな?
 □OFFICIAL SITE
  http://www.shochiku.co.jp/cinema/shomuni/index.html

■『カフェ・ブダペスト』 11月28日より新宿東映パラス2にて公開 (未)
東欧の社会主義が崩壊した1990年の夏。「西」を目指す東欧の人たちと、「西」での
生活にウンザリして「東」を目指そうとする人たちが、ブダペストにあるカフェで出
会った。ドキュメンタリー出身の女性監督、フェケテ・イボヤの劇映画デビュー作。

■『鯨捕りの海』 11月27日よりアテネ・フランセ文化センターにて公開 ★★
IWC(国際捕鯨委員会)の取り決めによって、現在日本は大規模な商業捕鯨を禁じら
れているが、沿岸捕鯨や資源調査のための調査捕鯨によって、伝統的な捕鯨技術が守
られている。これはそんな捕鯨の現場を記録した、貴重なドキュメンタリー映画だ。

■『東京国際フォーラム・PFFスペシャル'98』
               11月27日より東京国際フォーラム・映像ホール ★
映画作家への登竜門として定着しているPFF(ぴあフィルムフェスティバル)の特別
イベント。『裸足のピクニック』『ひみつの花園』の矢口史靖監督特集、過去のグラ
ンプリからの代表作品上映、PFFアワード'97のアンコール上映などが行われる。
                           [Written by 服部弘一郎]

                        [◆◆◆MOVIE PADDOCK◆◆◆]
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            出走を待ちわびる新作情報を、
            期待値%つきでお届けします!
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■『ブラック・マスク(黒侠)』
'99年新春/キネカ大森(期待値75%)
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某国の実験で作られた最強の戦士たちで構成される"701部隊"。人間性を取り戻すた
めに香港へ脱出し、身を潜める1人の男"ブラック・マスク"が、ある日、彼の周りで
起こった事件をきっかけに、悪を憎むヒーローとして敵に立ち向かっていくことにな
る。『リーサル・ウェポン4』でハリウッド・デビューを果たしたジェット・リーが、
『ダブル・チーム』のツイ・ハークとコンビを組んだ本格的SFアクション作品。共演
は、『つきせぬ想い』のラウ・チンワン、『天使の涙』のカレン・モク。
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■『SAFE』
'99年2月/ユーロスペース(70%)
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ロサンゼルスの瀟洒な邸宅に住む専業主婦、キャロル。恵まれた生活を送る彼女を、
ある日突然、化学物質過敏症の悪夢が襲った。頭痛、吐き気、めまい、出血、そして
パニック症状。苦しむキャロルに家族もまた戸惑いを隠せない。やがてキャロルは、
化学物質をまったく使わないで生活するコミューンを発見し……。『ベルベット・
ゴールドマイン』のトッド・ヘインズ監督が、環境ホルモンなど"見えない恐怖"に
苛まれながら生きる現代人の不安感を、スタイリッシュな映像で描き出す。出演は、
ジュリアン・ムーア、ザンダー・バークリーほか。
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■『ガールズ ナイト』
'99年春/シネスイッチ銀座(80%)
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とあるイギリスの田舎町。ジャッキーとドーンは40年来の親友で、義理の姉妹でもあ
る。工場で共に働く彼女たちの唯一のお楽しみは、毎週金曜日に開かれる"ガールズ
ナイト"のビンゴ大会。ある日、ドーンがビンゴで大金を当て2人は狂喜するが、喜び
も束の間、ドーンが脳腫瘍で余命幾ばくもないことが判明してしまう。ジャッキーは
ドーンを長年の夢だったラスベガス旅行に連れ出し、残された時間を思い出深いもの
にしようとするが……。出演は、『秘密と嘘』でゴールデン・グローブ賞を獲得した
ブレンダ・ブレッシン、『リタと大学教授』でアカデミー賞にノミネートされたジュ
リー・ウォルターズほか。

                         [◆◆◆映画4人衆◆◆◆]
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『アウト・オブ・サイト』 作り手の遊び心が見事に開花!
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銀行強盗を生業としてきたジャック・フォーリー(ジョージ・クルーニー)と、連邦
保安官のカレン・シスコ(ジェニファー・ロペス)。誕生日に私立探偵の父親(デニ
ス・ファリーナ)から、オートマチック銃のシグ380を贈られたカレンは、恋人に会
う途上、仕事で立ち寄ったグレイズ刑務所で、ジャックの脱獄を目撃してしまう。阻
止しようとして押さえられ、ジャックと共に逃走車のトランクに押し込められたカレ
ンだったが、あろうことか2人の間に奇妙な感情が芽生えはじめ……。
                         (満点は★5つ/半は★半分)

■途中「お色気ワルドラマ」かと心配しながらも最後まで見て納得。悪いコトしても
根が前向きなら未来はあるって、仏教やイスラムを匂わせる寛大さ。★★★半☆<唯>

■凝った作り、ジョージ・クルーニーの耳に残るイイ声。この映画、印象的に、声な
んだよね。音とも言える。その辺が女性の五感を刺激するかもね。 ★★★半☆<古>

■真っ暗な劇場の中、思いっきりイイ男&イイ女になったつもりで、やけにタイトで
ムーディな世界に身を置くというのも、まぁ、時にはいいかな。  ★★半☆☆<巴>

■常識を吹っ飛ばしたところにある信頼感や人間臭さが、ウィットに富んだ会話のウ
ラに見え隠れ。言葉のキャッチボールが真に成立する関係性は素敵。★★★半☆<冴>

 □OFFICIAL SITE
  http://www.toho.co.jp/cinema/out/welcome-j.html

                            [◆◆◆TOPICS◆◆◆]
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★『踊る大捜査線/THE MOVIE』、興収30億円突破
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10月31日に公開された『踊る大捜査線/THE MOVIE』は、11月16日までの17日間で全
国の興収が30億円を突破、4週目に入った先週末の銀座・新宿・渋谷3地区代表館集計
(興行成績ベストテン参照)で再び1位に返り咲きをみせ、現在も記録更新中。一方、
TV版のほうも、10月に放送された「踊る大捜査線 秋の犯罪撲滅スペシャル」の完全
版(時間枠の関係でカットされた20分ほどの映像を含む)が、来月22日午後7時から
放映されるもよう。ファンは要チェックだ。
 □OFFICIAL SITE
  http://www.odoru.com/
  http://toho-group.co.jp/movie/odoru/welcome-j.html
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★ビデオ版『タイタニック』、販売開始
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10月中旬の初回注文締め切り時点で、小売り・レンタル用を合わせて予約数が500万
セットを突破、一時は、「予約客が殺到し混乱になる」として日本コンパクトディス
ク・ビデオレンタル商業組合(CDVジャパン)から東京地裁に販売延期の仮処分申請
を出される騒ぎになったビデオ版『タイタニック』(2本組3,980円(税抜))だが、
11月20日から全国の書店やコンビニエンスストアで一斉に販売が開始され、クリスマ
ス・年末商戦の目玉として注目を浴びている。買いそびれた方もご安心を。
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★淀川長治氏 追悼映画100選
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11月11日に死去した淀川長治氏を追悼して、(株)ムービーチャンネルでは、同氏が
総監修した映画100選を来年2月からパワームービーで放送する。2月の放送予定は、
『オペラ座の怪人』('25/米)、『一日だけの淑女』('33/米)、『戦艦ポチョム
キン』('25/ソ連)、『フランケンシュタイン』('31/米)の4本(全タイトル共
同氏の解説付き)。
 □追悼映画100選 2月分作品紹介
  http://www.werde.com/movie/special/yodogawa.html
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★『ノストラダムス』、来年1月下旬公開
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国際的なプロジェクトとして、'94年に米・独・英を中心に共同製作された『ノスト
ラダムス』が、来年1月下旬から銀座シネパトス、新宿ジョイシネマなどで全国公開
されることになった。原案・監督はロジャー・クリスチャン(『エイリアン』美術監
督、『スター・ウォーズ』新シリーズの第2ユニット監督)、主演はチェッキー・カ
リヨ(『ニキータ』『小熊物語』)で、日本では阪神大震災、オウム事件などを配慮
して公開が延期されていた。
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★マニラトナム作品ほか、インド映画6本公開予定
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アジア映画社は、本年度公開の『ボンベイ』(マニラトナム監督)に続き、以下のイ
ンド映画6作品の版権を正式に取得、来春以降に一般ロードショー・監督特集などの
形で劇場公開を予定している(配給はアジア映画社/オフィスサンマルサン)。

『沈黙の旋律』('86年/マニラトナム監督)
『ナヤカン/顔役』('87年/マニラトナム監督)
『ダラバティ/題目』('91年/マニラトナム監督)
『ロージャー』('92年/マニラトナム監督)
『心から』('98年/マニラトナム監督)
『1942・愛の物語』('93年/ヴィドゥ・ヴィード・チョープラー監督)

                      [◆◆◆興行成績ベストテン◆◆◆]
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  『踊る大捜査線/THE MOVIE』が1位に返り咲き。4週目に入っても劇場は
  大賑わいをみせている。初登場の『アウト・オブ・サイト』は5位。待望
  のビデオ版が発売された『タイタニック』が7位に再浮上して、相変わら
  ずの人気を誇っている。
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  【配収】
 1 ↑( 2)踊る大捜査線/THE MOVIE           ( 4週)
 2 ↓( 1)トゥルーマン・ショー            ( 2週)
 3 →( 3)始皇帝暗殺                 ( 2週)
 4 ↑( 5)プライベート・ライアン           ( 9週)
 5 初(─)アウト・オブ・サイト            ( 1週)
 6 ↓( 4)時雨の記                  ( 2週)
 7 ↑(12)タイタニック                (49週)
 8 ↓( 7)ダイヤルM                  ( 5週)
 9 ↑(11)モンタナの風に抱かれて           ( 6週)
 10 →(10)シティ・オブ・エンジェル          (11週)

 興行通信社調べ1998/11/21~1998/11/22(銀座・新宿・渋谷3地区代表館集計)

                        [◆◆◆REVIEW◆◆◆]
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『始皇帝暗殺』 めくるめく雄大な運命劇を、堂々とした語り口で再現
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 刺客に家族を皆殺しにされ、自らの死を覚悟した盲目の少女が、自殺を装いつつそ
の刺客に向かって放った最後の一刺し。少女は刺客の気配から相手が右利きだろうと
推測したのだが、その剣は無情にも空を切り、刺客は利き手の左手で難なくその小さ
な体を貫いてしまう。
 緊張感あふれる展開で始まった本作は、人が悲しみを背負ったとき、その悲しみに
押し潰されるか、それを乗り越えて新たに生きる力を見出せるのかという、各々の岐
路に立たされた男2人の生き様を、合わせ鏡のように対照的に活写する。前者が後に
始皇帝となる政(せい)、後者がその政を暗殺しようとする刺客、荊軻(けいか)。
政は理想に燃える人物だったが、出生の秘密を知ったことで、実は父だった男を自殺
に追いやってしまい、その報われぬ愛が反作用して人を殺すことに無感覚になってい
く。反対に、荊軻は人を刺す瞬間に神々しいまでの神通力を発揮していたが、冒頭の
殺しを最後にその力を封印する。
 相対する両者がついに剣を交えたとき、荊軻の右手に握られた剣の先端は、まるで
何かを予言するかのように折れてしまうのだ。荊軻の死に際のひとこと、たとえ血の
気が失われても凛としているその顔つきは、多くの悲しみを受け入れることによって
得た、静かでしたたかな力強さに彩られて限りなく安らかなものに見える。そして、
政と荊軻、2人の対照的な男を愛し、雪の大地を歩み去っていく趙姫の胎内に宿る新
しい命。そこに、戦乱の時代だからこそ「生」へと受け継がれるものを育もうとする
確固たる視点がうかがわれて、現代の我々にも通じる堂々とした語りを可能にしてい
るといえよう。公開直前まで手直しを重ねたチェン・カイコー監督の映像に対するこ
だわりと共に、めくるめく雄大な運命劇を味わっていただきたい。
                            [Written by 渡辺一弘]

-------------------------[◆◆◆オススメVIDEO◆◆◆]------------------------
       寒くなってきたとはいいながら、まだまだ冬は序盤。
       火薬の量で血圧をあげて温まるよりも、役者の演技と
       ドラマの熱さでクールな風を楽しみたいところ。
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『不夜城』 俳優陣の力演も光る灰色の街角
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【データ】'98年/日本=香港/2時間2分(12/4発売:角川書店)
監督:リー・チーガイ 出演:金城武、山本未来、椎名桔平 原作:馳星周

 夜の訪れぬ街、歌舞伎町の一角に交錯する国籍、血筋、縁、執念。この街だからこ
そ、混血であることが主人公(金城武)を悩ませる。男から逃げてきたという謎の女
(山本未来)と、その先に訪れる因縁の男との再会が、張りめぐらされた導火線に火
をつける。年の瀬の冷たく重たい空気と、その中で擦れ合う人間たちの危険な攻防の
緊張感がクライマックスへと流れ込む感覚の妙を、まさにぴったりのこの季節にいか
が?
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『追跡者』 逃げるアクション、追いつめるサスペンス
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【データ】'98年/米/2時間11分(12/1発売:ワーナー・ホーム・ビデオ)
監督:スチュアート・ベアード 出演:トミー・リー・ジョーンズ、ウェズリー・スナ
イプス、ロバート・ダウニーJr

 冒頭から手に汗握ったかと思ったら、謎が浮上しつつの逃走劇。『逃亡者』の続編
としてトミー・リー・ジョーンズが新たな逃亡者を追跡。ウェズリー・スナイプス扮
する逃亡者は元CIA特殊工作員。追いつめられても執念で逃げのびるその先には……。
不可能を可能にする知力体力兼ね備えた逃亡者と、真相というもうひとつのターゲッ
トを、トミーが鼻(=勘)と貫禄でもってズンズンと追いつめていく。
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○CHECK 6本!
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■『深い河』2時間14分/日本(12/2発売:ポニーキャニオン)
インド旅行の面々が胸に抱くさまざまな過去と現在への想い、心を浄化する「神聖な
もの」の存在を描いた遠藤周作の名作の映画化。'95年公開以来の3年ごし待望のビデ
オ発売。秋吉久美子の熱演が光る。
監督:熊井啓 出演:秋吉久美子、奥田瑛二、井川比佐志、杉本哲太、三船敏郎

■『女優マルキーズ』2時間/西=仏=伊=スイス(12/4発売:アート・キャップ)
奔放な旅の踊り子が、壮絶なまでの激しさで恋に揺れ、舞台に踊った人生。今やほか
には考えられない適役のソフィー・マルソーが、火の玉のようなエロスとパッション
で激しく演じる。
監督:ヴェラ・ベルモン 出演:ソフィー・マルソー、ベルナール・ジロドー

■『真夜中のサバナ』2時間35分/米(12/1発売:ワーナー・ホーム・ビデオ)
青年が銃弾に倒れたある夜の事件。善と悪の違いも溶けてしまいそうな特異な町の空
気の中で、真実を追いかけ、迷い込んでいく主人公の作家をジョン・キューザックが
好演。
監督:クリント・イーストウッド 出演:ジョン・キューザック、ケビン・スペイシー

■『遥かなる帰郷』1時間58分/伊=仏=独=スイス(12/2発売:ポニーキャニオン)
第二次大戦終結によりアウシュビッツから解放された青年が、8ヶ月の旅路を経て故
郷をめざす。イタリアのベストセラー小説を映画化。
監督:フランチェスコ・ロージ 出演:ジョン・タトゥーロ 原作:プリモ・レーヴィ

■『絆』2時間3分/日本(12/4発売:東宝)
ある殺人事件に関係して浮上する男の過去。その隠された人生に触れていく刑事がや
がて知る、友情と愛の絆。
監督:根岸吉太郎 出演:役所広司、渡辺謙、麻生祐未、川井郁子

■『ブレイブ』2時間3分/米(12/4発売:クロックワークス)
ジョニー・デップが監督・脚本・主演をこなした、思い入れも深い意欲作。家族のた
め、大金と引き換えに「殺される仕事」を引き受けるネイティブアメリカンの物語。
監督・主演:ジョニー・デップ 出演:マーロン・ブランド、イギー・ポップ
                           [Written by 唯よーじゅ]

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【 1】(初)タイタニック                   フォックスホームエンターテイメント
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【 2】(6)ジャッカル                                                     東宝
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【 3】(2)スターシップ・トゥルーパーズ   ブエナビスタホームエンターテイメント
----------------------------------------------------------------------------
【 4】(1)エイリアン 4                     フォックスホームエンターテイメント
----------------------------------------------------------------------------
【 5】(-)フェイス/オフ                 ブエナビスタホームエンターテイメント
----------------------------------------------------------------------------
【 6】(4)スフィア                                       ワーナーホームビデオ
----------------------------------------------------------------------------
【 7】(10)メン・イン・ブラック      ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
----------------------------------------------------------------------------
【 8】(7)恋愛小説家                 ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
----------------------------------------------------------------------------
【 9】(-)マウス・ハント                                  CIC・ビクタービデオ
----------------------------------------------------------------------------
【10】(11)グッド*ウィル*ハンティング                      松竹ホームビデオ
----------------------------------------------------------------------------
*このランキングは全国の「TSUTAYA」571店舗のデータにより集計されてます。
()内は先週のランキング
                          □TSUTAYAのホームページ:http://www.tsutaya.co.jp/

            [◆◆◆BS&CS今週の3本◆◆◆]
                            セレクター:松岡洋子
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 11/30(月)『ユメノ銀河』 WOWOW(22:00~)
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夢野久作の傑作の1つとされる「少女地獄」の中から「殺人リレー」を原作に選び、
石井聰亙監督が撮り上げた異色の"少女モノ"。モノクロームの中で、少女を魅了する
バスの運転手を演じる浅野忠信が淡々と男の色気を発し、対するヒロイン小嶺麗奈が
また、16歳とは思えぬ色っぽさ。妖しく美しく、緊張感のある作品に仕上がっている。
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 12/2(水)『突然炎のごとく』 WOWOW(8:00~)
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フランス・ヌーベルバーグといえばこの人、トリュフォー監督。そしてヒロイン、
ジャンヌ・モロー。本作でも、彼女に恋する2人の男を振り回し、自由奔放に生きる
女性を演じ、その魅力がこの作品のすべてと言っても過言ではない。女性映画の最高
傑作と評されるのも納得。彼女の固く結んだ唇は意志の強さの象徴、「がんばりなさ
い」と諭される気持ちになる。ちょっとくじけ気味の夜に見たい。
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 12/4(金)『さびしんぼう』 CS-WOWOWシネプレックス(17:00~)
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こちらは約10年前の"少女モノ"、大林監督の尾道三部作最後の作品。女の子の持つ
2つの顔を演じる富田靖子がかわいらしく、尾美としのりの少しぼんやりとした雰囲
気が"初恋"のせつなさと重なってはまり役。かげの主役ともいえるショパンの「別れ
の曲」が心に残る。「最近心が薄汚れてきたな……」と感じている方におすすめ。

                            [◆◆◆COLUMN◆◆◆]
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【映画は音楽だ(11)】 内容も音楽も高水準の英国映画、年末封切り作品
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◆『ラブ&デス/オリジナル・サウンドトラック』
(キュールレコーズ/CR-0014/税抜価格\2,200)

 『エレファント・マン』のジョン・メリック、『エイリアン』のアンドロイド役を
経て、『1984』や『デッド・マン』などの出演作がある英国の渋め俳優、ジョン・
ハートと『ビバリーヒルズ青春白書』のジェーソン・プリーストリーとの変わった恋
物語。『ベニスに死す』の現代版といった趣だが、サウンドトラックはかの映画も
マーラーの美しい旋律が印象的だったように、こちらのサントラも印象深い。担当し
ているのは、ジ・インセクツとリチャード・グラスビー=ルイスがほぼ半々ずつ。両
者ともまだ馴染みが薄いアーティストだが、覚えておいて損はないはず。ジ・インセ
クツはトリップ・ホップ系のアーティストとしてマッシブ・アタックと並ぶポーティ
スヘッドのクライブ・ディーマーも参加しているほか、ミニマル・ミュージックの第
一人者であるトランペッターのジョン・ハッセルがフィーチャーされている。ただし
ポーティスヘッドのメンバーが参加しているからといって、決してその手のサウンド
に偏っていないところは好感がもてる。それからまたストリング・アレンジも美しい。

◆『ベルベット・ゴールドマイン/オリジナル・サウンドトラック』
(ポリドール/POCD-1279/税抜価格\2,427)

 60年代の音楽シーンを題材とした映画はわりと多く作られていると思うが、70年代
ロックシーンのあだ花“グラム・ロック”を初めて真正面から取り上げたのがこの映
画。一時期はシーンから忘れられた存在だったがミュージシャンへの影響は大。日本
ならイエロー・モンキーズなんかがそうだ。デヴィッド・ボウイをモデルとした主人
公を演じるのはユアン・マクレガー。サントラの中身はオリジナルと再演したグラム
・ロックの名曲たちが入り交じる。予告編でも流れていたプラシーボがカヴァーした
Tレックスの代表曲「20th センチュリー・ボーイ」は完ぺきなサウンド。さらに本作
の目玉はこのサントラ用に組んだバンド、ヴィーナス・イン・ファーズの5曲。レディ
オヘッドのメンバーに元スウェードのバーナード・バトラーときたら悪いわけがない。
単なる新曲だけ、または名曲だけ、の寄せ集めサントラではないロック・ファン待望
の1枚。                       [Written by 大竹利実]

              [◆◆◆THE DAY OF BIRTH(11/28~12/4)◆◆◆]
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11/28 ジョー・ダンテ(1946)、アニエスカ・ホランド(1948)、
    アレクサンダー・ゴドノフ(1949)、エド・ハリス(1950)、
    大貫妙子(1953)、松平健(1953)、安田成美(1966)、原田知世(1967)、
    アンナ・ニコル・スミス(1967)、松雪泰子(1972)

11/29 ガエターノ・ドニゼッティ(1797)、勝新太郎(1931)、高橋長英(1944)、
    ジョエル・コーエン(1954)、アンドリュー・マッカーシー(1962)

11/30 マーク・トゥエイン(1835)、ウィンストン・チャーチル(1874)、
    リドリー・スコット(1937)、田口トモロヲ(1957)、松本梨香(1968)

12/ 1 奈良岡朋子(1929)、ウディ・アレン(1935)、ベット・ミドラー(1945)、
    根津甚八(1947)、ジャコ・パストリウス(1951)

12/ 2 マリア・カラス(1923)、山崎努(1936)、
    ジャンニ・ヴェルサーチ(1946)、スティーヴン・バウアー(1956)

12/ 3 フランク・ジョスラン・ボーム(ライマン・フランク・ボーム)(1883)、
    アンディ・ウィリアムス(1930)、ジャン・リュック・ゴダール(1930)、
    オジー・オズボーン(1948)、サマンサ・フォックス(1951)、
    ダリル・ハンナ(1960)、カタリーナ・ヴィット(1965)、
    ブレンダン・フレイザー(1968)、高岡早紀(1972)

12/ 4 ジェラール・フィリップ(1922)、ジェフ・ブリッジス(1949)、
    マリサ・トメイ(1964)、宮村優子(1972)

▼星座別オススメ映画はwebへのリンクに移行しました。
 http://www.cup.com/yoge/tarot/astro/
占い協力:TAROT-ASTROLOGY OF THE WEEK

▼MOVIE WatchのHP
 http://www.watch.impress.co.jp/movie/

----------------------------◆◆◆ 後記 ◆◆◆----------------------------
■さて『アルマゲドン』のオールナイト行列(できるよね?)でお祭り気分を味わう
か、と思ったけど風邪が治ってない(泣)。健康な人も暖かい格好で行ってね。<唯>

■『アウト・オブ・サイト』は運命的直感で行動する男女の物語。しかし勘違いする
と恥ずかしいこともある。クリスマスを前にした季節、これからは特に要注意!<古>

■コーエン兄弟の最新作『ビッグ・リボウスキ』。ジョン・タトゥーロの登場シーン
が、もうサイコー。なぁんか、ボーリングがしたくなっちゃったなぁ。    <巴>

■単純な意思伝達手段を超えたことばの可能性はすごい。エルモア・レナードの原作
は、昔読んだクリスティの短編"Philomel Cottage"のスリルを超えた。    <冴>

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